14話 脱出(2)
ー/ー「慎吾、無事で良かった!」
翔の意識がハッキリした様子に安堵しつつ床一面には水溜りが出来ていて、何度も何度も翔の背中にバケツに溜めた水をぶっかけている凛の姿に、一瞬度肝を抜かれてしまった。
「翔こそ、大丈夫か?」
「……真夏とは言えども、寒いな……」
全身びしょ濡れで震えているが、仕方がない。あの熱風を浴びてしまったのだから。
背中はシャツに守られているが、剥き出しの腕は赤く爛れており、今すぐに医療機関での治療が必要なのは明らかだった。
「ねえ、やっぱり病院に」
「だから、その話はもういいって」
「でも……」
「命が懸かってる時に、そんなこと言ってられないだろ?」
翔の珍しく強い物言いに一瞬身を引くが、その後のやりとりを聞くうちに経緯が分かってきた。
凛が翔を病院に行かせる為にゲームの離脱を頼んだらしい。しかしそれをしたら、凛は指輪を外してもらうパートナーがいなくなると説明を受けたらしい。
だからこそ翔は強く拒否していて、どこまでも納得な話だった。
……じゃあ、どうしてさっきは小春の名前を呼んでいたのだろう?
「圭祐が死んだら、私まで死ぬところだったんだけど! そこらへん分かってんの!」
俺達の会話の隙間に聞こえる、耳障りな金切り声。
カップルの片方が死ねば指輪が外せなくなり片方も死ぬ運命となるから、苛立ちが出るのは容易に想像がつく。
だけど何度も何度も同じ言葉を浴びせられ怒鳴られていたら、聞いている方だって参ってしまうだろう。
だからこそ気付けば俺は小田くんの腕を後ろからそっと引き、二人の間に入った。
「もういいだろ?」
「はぁー? アンタには関係ないんですけどぉ?」
「あるよ。友達なんだから」
それを聞いた小田くんは俺に目をやり、俯いてしまった。
「って言うかさー、アンタと一緒にいるようになってから、圭祐がヘンな影響受けてメイワクなんですけどぉ? マジで消えてくんない? アンタ達、目障りなんですけどぉー!」
ハッとしたように目を見開いた内藤さんは突如黙り込んでしまい、小田くんに目をやる。
一瞬目を泳がせた内藤さんは、「大体さー」と論点をズラしつつ、よりヒートアップしていく。
「ごめん、俺が悪いから……」
そう言う小田くんの声は震えていて、余計な口出しをしてしまったと悟る。
翔に肩を叩かれて戻っていくが、どうにも納得がいかなかった。
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