ep131 夕方

ー/ー



 空も酒呑みどもの顔面もすっかり赤らんだ頃。
 俺は表に出て外の空気を吸っていた。そこへ街路からドタバタと足音が近づいてくる。

「ダンナぁ!」
「もう勘弁してくれ!」

 トレブルとブーストだ。

「そろそろおれたちも飲ませてくれよ!」
「もう充分仕事はしたぜ!?」

 酒好きのふたりは切実に訴えた。

「で、異常は何もなかったんだな?」

「なにもねえよ! てゆーかよ? さすがに起こりようもねーじゃねえか?」
「そうだぜダンナ! キラースのヤローは大人しく結界に閉じ込められてんだろ? あの〔狂戦士〕の右腕とその部下たちが抜かりなくやってんだ! 今おれたちが警戒してもしょーがねーだろ!」

 コイツらの言うとおり、現在キラースはアイにより脱出不能な結界を張られた建物に幽閉されている。どういうわけか、ヤツはそれに素直に応じていた。昨日、あれだけ派手に登場しておいてのその態度。どう考えても矛盾している。

(ヤツの考えが読めない……)

 とはいえ一時的にはヤツの脅威は減少したと言える。だからこそカレンも宴に応じていた。それでも念のため、トレブルとブーストには警戒にあたらせていたというわけだ。

「わかった。あとは俺が代わるからお前らも飲んでこい。今日は酒場も早くに店じまいしそうだからな」

「よっしゃあ!」
「恩に着るぜダンナァ!」

 トレブルとブーストはヒャッハ〜と歓喜してドタドタと酒場へ駆けこんでいった。

「どんだけ飲みたいんだアイツら……」

 さてと街の様子をうかがいに行こうかと足を踏みだす。が、すぐに立ち止まった。

「このタイミングで何も起こらなければ〔狂戦士〕が戻るまで何も起こらないか」

 実は、あのお堅いカレンがわざわざ宴に参加したのも、それを試す意味があった。カレンはこう言った。

「街のギャングどものどんちゃん騒ぎにクローのみならず私まで参加する。それは敵にとっては絶好のタイミングだろう」

 もしキラースの部下及びヤツの息のかかった者どもが近隣に潜んでいて機会をうかがっていたなら、これほどの好機はないだろう。しかし何の動きも確認できなかった。無論、結界内のキラースは自分自身では動けない。
 
「確定的なことは言えないし、実際どこまでこちらの動きが掴まれているのかも判然としないが……」

 やはり今のところは何も起こらないと見ていいだろう。あるいは……キラースのような頭のオカシイ奴でも、ここヘッドフィールドではそうそうヘタな事はしでかせないとも考えられる。

「結局、すべては今この場にいない〔狂戦士〕が握っているってことか……」

 ジェイズキングとは、一体どんな男だろうか。どうもその男のことを考えると、なんだろうか、なにか血が騒いでくる……。


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 空も酒呑みどもの顔面もすっかり赤らんだ頃。
 俺は表に出て外の空気を吸っていた。そこへ街路からドタバタと足音が近づいてくる。
「ダンナぁ!」
「もう勘弁してくれ!」
 トレブルとブーストだ。
「そろそろおれたちも飲ませてくれよ!」
「もう充分仕事はしたぜ!?」
 酒好きのふたりは切実に訴えた。
「で、異常は何もなかったんだな?」
「なにもねえよ! てゆーかよ? さすがに起こりようもねーじゃねえか?」
「そうだぜダンナ! キラースのヤローは大人しく結界に閉じ込められてんだろ? あの〔狂戦士〕の右腕とその部下たちが抜かりなくやってんだ! 今おれたちが警戒してもしょーがねーだろ!」
 コイツらの言うとおり、現在キラースはアイにより脱出不能な結界を張られた建物に幽閉されている。どういうわけか、ヤツはそれに素直に応じていた。昨日、あれだけ派手に登場しておいてのその態度。どう考えても矛盾している。
(ヤツの考えが読めない……)
 とはいえ一時的にはヤツの脅威は減少したと言える。だからこそカレンも宴に応じていた。それでも念のため、トレブルとブーストには警戒にあたらせていたというわけだ。
「わかった。あとは俺が代わるからお前らも飲んでこい。今日は酒場も早くに店じまいしそうだからな」
「よっしゃあ!」
「恩に着るぜダンナァ!」
 トレブルとブーストはヒャッハ〜と歓喜してドタドタと酒場へ駆けこんでいった。
「どんだけ飲みたいんだアイツら……」
 さてと街の様子をうかがいに行こうかと足を踏みだす。が、すぐに立ち止まった。
「このタイミングで何も起こらなければ〔狂戦士〕が戻るまで何も起こらないか」
 実は、あのお堅いカレンがわざわざ宴に参加したのも、それを試す意味があった。カレンはこう言った。
「街のギャングどものどんちゃん騒ぎにクローのみならず私まで参加する。それは敵にとっては絶好のタイミングだろう」
 もしキラースの部下及びヤツの息のかかった者どもが近隣に潜んでいて機会をうかがっていたなら、これほどの好機はないだろう。しかし何の動きも確認できなかった。無論、結界内のキラースは自分自身では動けない。
「確定的なことは言えないし、実際どこまでこちらの動きが掴まれているのかも判然としないが……」
 やはり今のところは何も起こらないと見ていいだろう。あるいは……キラースのような頭のオカシイ奴でも、ここヘッドフィールドではそうそうヘタな事はしでかせないとも考えられる。
「結局、すべては今この場にいない〔狂戦士〕が握っているってことか……」
 ジェイズキングとは、一体どんな男だろうか。どうもその男のことを考えると、なんだろうか、なにか血が騒いでくる……。