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金は天下のまわりもの

ー/ー



 昔の人は言った。

 『金は天下のまわりもの』だそうだ。

 お金は国が国立印刷局にお願いして印刷して我々が日々貯蓄したり使用したりする。最近よく聞くキャッシュレス決済も含めて毎日、日々、お金持ちも一般人もみんなみんなお金を使っているのだ。
 
 今、目の前にいるひとりごとをボソボソ言ってるおじさんも労働の対価として賃金を貰い、それを使用して生きている。これはあのおじさんに限らず、日本人みんな……いや、世界中に生きてる人間みな自国や他国の通貨を使って生きている。そこに例外はない。

 いま、僕は電車の中で、『ドッグサロンとヘアサロンの雰囲気が似ている』ということを必死に訴えている音楽をエンドレスリピートで聞いている。今度、親友とカラオケに行った時に歌うためだ。

 たった今、3万円で買ったワイヤレスイヤホンの本体もケースですら充電が切れた。

「くそ、サビのいいところだったのに……」

 ちょうど『犬なのか人なのか』という歌詞でプツンと充電切れの音がした。


 電車の周りの知らない人の会話を聞くのは苦手だ。悪意が満ち満ちていることが多い。

 ほら、メイクが濃いギャルとメイク薄めのギャルの会話が聞こえる。

 「さっきの店ありえなくね? 現金のみの支払いって?」
 「それなー、今どき、ペイット1択でしょ」

 現金をバカにしている。バカな僕でもペイットの便利さはわかる。全国チェーンの最大手コンビニ系列のATMで1000円単位でチャージできたり登録口座やクレカの支払いと連携したりできる。なお、未成年はコンビニATMでしかチャージできないよう設定されている。これはいわゆるバーコード決済の一種だ。

「あとさー、ポイントとかの併用ができないのもムカつくよねー」
「そうそう、ペイット支払いにしたらポイントを二重どりできるに、二重支払いできないのがムカつくわー」

 ポイントの併用ができないのはだいぶ前にそういう仕様に変わったのだ。理由としては、二重払いだと店舗側の負担が膨大になりすぎるとのことだ。そうだ、店舗の利益が低くなるのだ。

「利益がでないなら事業失敗は当たり前……か」

 ギャル2人組は気がつけば声がしなくなっていた。ギャルの話の内容が面白くて目的の駅を過ごしている。


 ふと、思い出したが僕はイヤホンの充電がなくなった時用にイヤホンジャックケーブルと有線イヤホンを常時持っている。

「さて、カフェ……」

 先ほどのエンドレスリピートを聞こうとした。しかし、ある通知を見ておどろいた。人生初の推し配信者が配信を始めた。

 日本でトップ10の実力の持ち主だったがある時、急に引退動画を出して収益化したまま引退した。引退動画は意味がわからず、なにか精神的な病気を疑われていた。

 なお、この配信は四捨五入すれば10年ぶりに配信となる。

 最寄り駅に向かって電車に乗らないといけないので有線イヤホンを刺してその配信を聞き始めた。実は、配信を引退したきっかけは起業した会社の経営が波に乗り経営者として生きていく決意したからだと言っている。

「人助けだと思って……」

 配信者がかなり高額の投げ銭を求めている。いわゆる赤投げ銭だけだ。視聴者は不審に思って投げ控えをしている。そして、視聴者の1名がふざけて最低金額を投げ銭した。

「こんな金額じゃ私は助けられない。もっと高額! 赤投げ銭だけをくれ! それ以外はいらない! 低額を投げたらタイムアウトさせる」

 そんな横暴な……と思っていた。なぜ、そんなに赤投げ銭にこだわるかの理由を話しだした。起業を拡大しすぎたせいで傘下の企業の数社が悪事を多数行っていたらしく10億円以上の支払いがあるらしい。ウソかホントかもわからない。そんな情報を鵜呑みにはできない。配信を開いて10分もしないうちに10万人近くいた視聴者は2桁まで減りコメントも誹謗中傷があふれかえっている。

「きっと、あなたたちが持っているお札の何枚も元々は私の手元にあった可能性があります、返してくれないでしょうか? きっと、私の腕で数倍にして日本を元気にしてあなたに還元されます」

 誰も投げ銭をしない。そして、視聴者はどんどん消えていく。今や5人しかいない。もちろん、コメントももうない。配信者は永遠と昔のように自語りをしている。僕は配信は配信者が自語りするところだと思っているのでそれはそれで問題ない。ただ、だいたいが情に訴えかけてきている。僕も何もせず配信を抜けた。そもそも、そんな10億円以上の支払いをこの配信サイトで集まるわけがない。しかも、話を聞く限り、支払い期限は今日までだ。

「あぁ、これはダメな人だ、法で裁かれるべきだ」

 心がモヤモヤしたまま、地元の最寄り駅についた。

 僕は肩にかけていたウエストポーチから定期券を出すためカード入れを取り出した。このカード入れは定期券もお札も入れている。

 お札に目がいった。さっき、配信者が言った『きっと、あなたたちが持っているお札の何枚も元々は私の手元にあった可能性があります』という言葉を思い出した。

「……悪い意味で『金は天下のまわりもの』か……」


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 昔の人は言った。
 『金は天下のまわりもの』だそうだ。
 お金は国が国立印刷局にお願いして印刷して我々が日々貯蓄したり使用したりする。最近よく聞くキャッシュレス決済も含めて毎日、日々、お金持ちも一般人もみんなみんなお金を使っているのだ。
 今、目の前にいるひとりごとをボソボソ言ってるおじさんも労働の対価として賃金を貰い、それを使用して生きている。これはあのおじさんに限らず、日本人みんな……いや、世界中に生きてる人間みな自国や他国の通貨を使って生きている。そこに例外はない。
 いま、僕は電車の中で、『ドッグサロンとヘアサロンの雰囲気が似ている』ということを必死に訴えている音楽をエンドレスリピートで聞いている。今度、親友とカラオケに行った時に歌うためだ。
 たった今、3万円で買ったワイヤレスイヤホンの本体もケースですら充電が切れた。
「くそ、サビのいいところだったのに……」
 ちょうど『犬なのか人なのか』という歌詞でプツンと充電切れの音がした。
 電車の周りの知らない人の会話を聞くのは苦手だ。悪意が満ち満ちていることが多い。
 ほら、メイクが濃いギャルとメイク薄めのギャルの会話が聞こえる。
 「さっきの店ありえなくね? 現金のみの支払いって?」
 「それなー、今どき、ペイット1択でしょ」
 現金をバカにしている。バカな僕でもペイットの便利さはわかる。全国チェーンの最大手コンビニ系列のATMで1000円単位でチャージできたり登録口座やクレカの支払いと連携したりできる。なお、未成年はコンビニATMでしかチャージできないよう設定されている。これはいわゆるバーコード決済の一種だ。
「あとさー、ポイントとかの併用ができないのもムカつくよねー」
「そうそう、ペイット支払いにしたらポイントを二重どりできるに、二重支払いできないのがムカつくわー」
 ポイントの併用ができないのはだいぶ前にそういう仕様に変わったのだ。理由としては、二重払いだと店舗側の負担が膨大になりすぎるとのことだ。そうだ、店舗の利益が低くなるのだ。
「利益がでないなら事業失敗は当たり前……か」
 ギャル2人組は気がつけば声がしなくなっていた。ギャルの話の内容が面白くて目的の駅を過ごしている。
 ふと、思い出したが僕はイヤホンの充電がなくなった時用にイヤホンジャックケーブルと有線イヤホンを常時持っている。
「さて、カフェ……」
 先ほどのエンドレスリピートを聞こうとした。しかし、ある通知を見ておどろいた。人生初の推し配信者が配信を始めた。
 日本でトップ10の実力の持ち主だったがある時、急に引退動画を出して収益化したまま引退した。引退動画は意味がわからず、なにか精神的な病気を疑われていた。
 なお、この配信は四捨五入すれば10年ぶりに配信となる。
 最寄り駅に向かって電車に乗らないといけないので有線イヤホンを刺してその配信を聞き始めた。実は、配信を引退したきっかけは起業した会社の経営が波に乗り経営者として生きていく決意したからだと言っている。
「人助けだと思って……」
 配信者がかなり高額の投げ銭を求めている。いわゆる赤投げ銭だけだ。視聴者は不審に思って投げ控えをしている。そして、視聴者の1名がふざけて最低金額を投げ銭した。
「こんな金額じゃ私は助けられない。もっと高額! 赤投げ銭だけをくれ! それ以外はいらない! 低額を投げたらタイムアウトさせる」
 そんな横暴な……と思っていた。なぜ、そんなに赤投げ銭にこだわるかの理由を話しだした。起業を拡大しすぎたせいで傘下の企業の数社が悪事を多数行っていたらしく10億円以上の支払いがあるらしい。ウソかホントかもわからない。そんな情報を鵜呑みにはできない。配信を開いて10分もしないうちに10万人近くいた視聴者は2桁まで減りコメントも誹謗中傷があふれかえっている。
「きっと、あなたたちが持っているお札の何枚も元々は私の手元にあった可能性があります、返してくれないでしょうか? きっと、私の腕で数倍にして日本を元気にしてあなたに還元されます」
 誰も投げ銭をしない。そして、視聴者はどんどん消えていく。今や5人しかいない。もちろん、コメントももうない。配信者は永遠と昔のように自語りをしている。僕は配信は配信者が自語りするところだと思っているのでそれはそれで問題ない。ただ、だいたいが情に訴えかけてきている。僕も何もせず配信を抜けた。そもそも、そんな10億円以上の支払いをこの配信サイトで集まるわけがない。しかも、話を聞く限り、支払い期限は今日までだ。
「あぁ、これはダメな人だ、法で裁かれるべきだ」
 心がモヤモヤしたまま、地元の最寄り駅についた。
 僕は肩にかけていたウエストポーチから定期券を出すためカード入れを取り出した。このカード入れは定期券もお札も入れている。
 お札に目がいった。さっき、配信者が言った『きっと、あなたたちが持っているお札の何枚も元々は私の手元にあった可能性があります』という言葉を思い出した。
「……悪い意味で『金は天下のまわりもの』か……」