20 宣言してしまえ!

ー/ー



 ペルスピコーズの中央にそびえ立つ大聖堂。
 ミチルとチルクサンダーはその入り口付近の庭園に転移した。
 それでエーデルワイスも、イケメン達も、すぐにミチルの気配に気づくことが出来たのである。

 カミの眷属を名乗っても、チルクサンダーの見た目がザ・魔族なので聖堂に入ることは躊躇われた。
 中にいる修行僧が彼を見たら泡吹いて倒れるのは明白である。
 という訳で、ミチルはこの場で青空を背負って、エーデルワイスとイケメン達に事の経緯を説明した。


 
「だからね、とりあえずチルクサンダーはこんな見た目だけど、カミサマの眷属で間違いないと思うんだ」

 ミチルはまず連れてきた魔神の身分を証明した。
 記憶喪失だがカミの技術である召喚術が使えること。それから次元を操ったり、その意思の中でカミの眷属である我が身を確信していること。エーデルワイスにおよそ気取られずに監視出来ていたこと、などである。

「おい、クソチビ法皇。どうなんだ」

 そう聞いたのは、ペルスピコーズ最大の友好国アルブスの王子・エリオット。
 ミチルの拙い説明に、比較的おバカに分類されるジェイ・アニー・ルークは口を開けてポカンとしていた。経験と知識が豊富なジンであっても、宗教の壁がありイマイチよくわかっていない。
 イケメン内で頼れるのは彼の知見のみである。

「そうだな……確かに、チルクサンダーは見た目に反して聖なるオーラを纏っている。そんな彼自身がカミの眷属を名乗るなら、一定の信憑性はあるだろう」

 エーデルワイスの返答に、ミチルは手を叩いて喜んだ。

「さっすがえぇちゃん、話がワカル!」

 しかし、エリオットはまだ渋い顔をしている。

「……微妙な物言いしやがって。でもまあ、法皇サマがそう言うならとりあえずは信じてやるか」


 
 話の前提がまとまった所で、MC癖のあるジンが口を挟んだ。

「それで、カミの眷属である貴様がシウレンを召し上げる……とはどういう事だ?」

「シウレン? ミチルの事か?」

 チルクサンダーが首を傾げて聞き返すと、ジンはニヤリとドヤ顔で答えた。

「フッ、儂とミチルの間での呼び名よ。ミチルは儂にシウレンと呼ばれる事で、儂からの×××を×××……♡」

「……」

 下ネタと言うものを初めて聞いたカミの眷属は、意味がわからないながらもその気持ち悪さは感じ取っていた。

「ストーップ! せんせ、ストーップ!!」

 ミチルがワタワタと慌てる。他のイケメン達は呆れ顔、エーデルワイスは深い溜息。
 それでもジンは「してやったり」と満足気に笑っている。

 そんな多様な反応を見比べて、チルクサンダーは眉をひそめたままジンからの質問に答えた。

「やはり、こんな低俗なカリシムスに我がプルケリマは任せられん。お前達とセイソンの儀式など、ミチルにはさせぬ。我が大切に慈しむのだ」

「なっ……! それは困る! ミチルとカリシムスが儀式をしなければこの世界は癒されない!」

 エーデルワイスが焦って反論すると、チルクサンダーは冷たく言い放った。

「此度の異変は、ヒトの手による要因が多い。これを鎮めるのはヒトの責任、その自浄作用に我がミチルを巻き込むな。たまにはヒトのみの力で解決してみるがいい」

「だから法皇のワタシがミチルを召喚したのではないか! ミチルはこちら側の聖人、カリシムスとミチルは()()()()世界を癒す使命がある!」

「詭弁を申すな。ミチルは元は異世界の住人ぞ。それをあたかもカエルラ=プルーマ代表のような扱いで、全ての咎を押し付けるなど恥を知れ」

「む、むむむ……」

 法皇と魔神の攻防に、おバカなイケメン達は頭を捻って考えていた。



「つまり、どういうこと、です?」
「知らんけどミチルは異世界の人間だから、カエルラ=プルーマを救う義理はないってことじゃない?」
「だが、世界に異変が起きた時はそうやってきたのだろう?」
「だよなあ。本来ならカミサマがプルケリマを派遣してくれれば良かった話だろ?」



 法皇と魔神の言い合いは、気付かれてはいないがスケールの大きい話である。
 最初はカミがプルケリマを地上に遣わしていた。
 それが出来なくなると、今度は地上の人間が異世界からその代わりを召喚した。
 これは、常にカエルラ=プルーマの人間が他力本願である証拠である。誰かに解決の道を委ねている。その誰かの負担を「使命」とか「運命」で誤魔化して。

 法皇がそれに気づいていない訳ではないが、それよりも有効な手段がないことも事実。
 プルケリマの代わりとしてセイソンを召喚する事への「弱み」を指摘されて、エーデルワイスは二の句が告げなくなったのだ。

 そしておバカではあるが、イケメン達も雑談の中でそこにたどり着いていた。



「ていうかさあ、プルケリマが来なくなったのってなんで?」
「知らないな」
「王子様、知ってます?」
「うちの魔術最高顧問が言っただろ。人間が愚か過ぎてカミサマが怒ったって」



 四人の雑談と、二人の攻防。それを黙って聞いていた自称MCジンがゆっくりと口を開いた。

「貴様ら、その話は重要だが我らの管轄ではない」

 確かに、セイソン召喚システムを今後どうするかは法皇や国の指導者達のテーマである。
 カリシムスである彼らは、もっと別の危機感を持つべきだ。

「あの黒魔神はシウレンを召し上げると言っている。そうなったらどうなる? 我らはシウレンと儀式♡が出来ないんだぞ!」



 ガガーン!
 そういうことか!
 イケメン達は急に目の前が真っ暗になった。



「ミチルと、♡♡♡で♡♡♡な儀式が出来ないだとぉうぉう!?」
「そんな! それを希望に生きてきたのに!」
「つーか、ミチルはおれのもんだろ!」
「ミチルと未来永劫♡♡♡計画はどうなるのだ!?」
「そうだ! シウレンとの明るい×××()活が叶わないとは何たること!」



 急に焦ったイケメン五人は、チルクサンダーにくってかかった。
 しかし当のチルクサンダーは落ち着き払って言う。

「まあ、そもミチルがここに召喚されなければ我が本懐も果たされない。だから、先にミチルと出会っていたオマエ達への慈悲は我にもある」

「……ずいぶん偉そうだな」

 口喧嘩になったらエリオットの出番である。彼はチルクサンダーの上から目線な物言いに毒づいた。
 だが、やはりチルクサンダーは動じない。

「ミチルにも言われたからな。カミの眷属たる我が、慈悲をもってオマエ達のような低俗なヒトにも筋を通すのだ」

 ここで、それまで傍観していたミチルもふと考えを巡らせた。

 えーっと、オレは「オレに対して筋を通せ」って言ったんだけど。
 オレに是非を問えよ。ミチルはそう思ったのだが、エリオットが爆発するような剣幕で怒鳴ったので発言出来なかった。

「ふっざけんなよォオ! 『ミチルくれよ』って言われて『うん、いいよ』なんておれ達が言うわけねえだろ!!」

「ほお……ならば、やはり戦うか?」

 ニヤリとチルクサンダーがまた笑う。
 カミサマの眷属名乗るくせに、戦闘狂だ、コイツは!
 ミチルはこの場を戦場にしないために、懸命に頭を捻った。

 そして、ひとつの方法しかないと気づく。


 
「チルくん、ちょっと待て!」

 誰も怪我をさせないためには、ミチルが今抱いている感情を曝け出すしかない。

「儀式するとか、召し上げるとかの前にオレの意思を確認しろっつーの!」

 その言葉にイケメン達とチルクサンダーが目を見開いて注目した。
 途端にミチルは体が強張る。だって今からオレはすごい事を言うんだから。

「オレは、チルクサンダーにも感じちゃったの! みんなと同じドキドキ(うほうほ♡)をッ!!」



 もうしょうがない。腹をくくれ。

「だから、チルクサンダーは第六のイケメンなのーッ!!」



 オレの名はミチル。
 今からオレは「六股の」ミチル!


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 ペルスピコーズの中央にそびえ立つ大聖堂。
 ミチルとチルクサンダーはその入り口付近の庭園に転移した。
 それでエーデルワイスも、イケメン達も、すぐにミチルの気配に気づくことが出来たのである。
 カミの眷属を名乗っても、チルクサンダーの見た目がザ・魔族なので聖堂に入ることは躊躇われた。
 中にいる修行僧が彼を見たら泡吹いて倒れるのは明白である。
 という訳で、ミチルはこの場で青空を背負って、エーデルワイスとイケメン達に事の経緯を説明した。
「だからね、とりあえずチルクサンダーはこんな見た目だけど、カミサマの眷属で間違いないと思うんだ」
 ミチルはまず連れてきた魔神の身分を証明した。
 記憶喪失だがカミの技術である召喚術が使えること。それから次元を操ったり、その意思の中でカミの眷属である我が身を確信していること。エーデルワイスにおよそ気取られずに監視出来ていたこと、などである。
「おい、クソチビ法皇。どうなんだ」
 そう聞いたのは、ペルスピコーズ最大の友好国アルブスの王子・エリオット。
 ミチルの拙い説明に、比較的おバカに分類されるジェイ・アニー・ルークは口を開けてポカンとしていた。経験と知識が豊富なジンであっても、宗教の壁がありイマイチよくわかっていない。
 イケメン内で頼れるのは彼の知見のみである。
「そうだな……確かに、チルクサンダーは見た目に反して聖なるオーラを纏っている。そんな彼自身がカミの眷属を名乗るなら、一定の信憑性はあるだろう」
 エーデルワイスの返答に、ミチルは手を叩いて喜んだ。
「さっすがえぇちゃん、話がワカル!」
 しかし、エリオットはまだ渋い顔をしている。
「……微妙な物言いしやがって。でもまあ、法皇サマがそう言うならとりあえずは信じてやるか」
 話の前提がまとまった所で、MC癖のあるジンが口を挟んだ。
「それで、カミの眷属である貴様がシウレンを召し上げる……とはどういう事だ?」
「シウレン? ミチルの事か?」
 チルクサンダーが首を傾げて聞き返すと、ジンはニヤリとドヤ顔で答えた。
「フッ、儂とミチルの間での呼び名よ。ミチルは儂にシウレンと呼ばれる事で、儂からの×××を×××……♡」
「……」
 下ネタと言うものを初めて聞いたカミの眷属は、意味がわからないながらもその気持ち悪さは感じ取っていた。
「ストーップ! せんせ、ストーップ!!」
 ミチルがワタワタと慌てる。他のイケメン達は呆れ顔、エーデルワイスは深い溜息。
 それでもジンは「してやったり」と満足気に笑っている。
 そんな多様な反応を見比べて、チルクサンダーは眉をひそめたままジンからの質問に答えた。
「やはり、こんな低俗なカリシムスに我がプルケリマは任せられん。お前達とセイソンの儀式など、ミチルにはさせぬ。我が大切に慈しむのだ」
「なっ……! それは困る! ミチルとカリシムスが儀式をしなければこの世界は癒されない!」
 エーデルワイスが焦って反論すると、チルクサンダーは冷たく言い放った。
「此度の異変は、ヒトの手による要因が多い。これを鎮めるのはヒトの責任、その自浄作用に我がミチルを巻き込むな。たまにはヒトのみの力で解決してみるがいい」
「だから法皇のワタシがミチルを召喚したのではないか! ミチルはこちら側の聖人、カリシムスとミチルは|人《・》|と《・》|し《・》|て《・》世界を癒す使命がある!」
「詭弁を申すな。ミチルは元は異世界の住人ぞ。それをあたかもカエルラ=プルーマ代表のような扱いで、全ての咎を押し付けるなど恥を知れ」
「む、むむむ……」
 法皇と魔神の攻防に、おバカなイケメン達は頭を捻って考えていた。
「つまり、どういうこと、です?」
「知らんけどミチルは異世界の人間だから、カエルラ=プルーマを救う義理はないってことじゃない?」
「だが、世界に異変が起きた時はそうやってきたのだろう?」
「だよなあ。本来ならカミサマがプルケリマを派遣してくれれば良かった話だろ?」
 法皇と魔神の言い合いは、気付かれてはいないがスケールの大きい話である。
 最初はカミがプルケリマを地上に遣わしていた。
 それが出来なくなると、今度は地上の人間が異世界からその代わりを召喚した。
 これは、常にカエルラ=プルーマの人間が他力本願である証拠である。誰かに解決の道を委ねている。その誰かの負担を「使命」とか「運命」で誤魔化して。
 法皇がそれに気づいていない訳ではないが、それよりも有効な手段がないことも事実。
 プルケリマの代わりとしてセイソンを召喚する事への「弱み」を指摘されて、エーデルワイスは二の句が告げなくなったのだ。
 そしておバカではあるが、イケメン達も雑談の中でそこにたどり着いていた。
「ていうかさあ、プルケリマが来なくなったのってなんで?」
「知らないな」
「王子様、知ってます?」
「うちの魔術最高顧問が言っただろ。人間が愚か過ぎてカミサマが怒ったって」
 四人の雑談と、二人の攻防。それを黙って聞いていた自称MCジンがゆっくりと口を開いた。
「貴様ら、その話は重要だが我らの管轄ではない」
 確かに、セイソン召喚システムを今後どうするかは法皇や国の指導者達のテーマである。
 カリシムスである彼らは、もっと別の危機感を持つべきだ。
「あの黒魔神はシウレンを召し上げると言っている。そうなったらどうなる? 我らはシウレンと儀式♡が出来ないんだぞ!」
 ガガーン!
 そういうことか!
 イケメン達は急に目の前が真っ暗になった。
「ミチルと、♡♡♡で♡♡♡な儀式が出来ないだとぉうぉう!?」
「そんな! それを希望に生きてきたのに!」
「つーか、ミチルはおれのもんだろ!」
「ミチルと未来永劫♡♡♡計画はどうなるのだ!?」
「そうだ! シウレンとの明るい×××|性《・》活が叶わないとは何たること!」
 急に焦ったイケメン五人は、チルクサンダーにくってかかった。
 しかし当のチルクサンダーは落ち着き払って言う。
「まあ、そもミチルがここに召喚されなければ我が本懐も果たされない。だから、先にミチルと出会っていたオマエ達への慈悲は我にもある」
「……ずいぶん偉そうだな」
 口喧嘩になったらエリオットの出番である。彼はチルクサンダーの上から目線な物言いに毒づいた。
 だが、やはりチルクサンダーは動じない。
「ミチルにも言われたからな。カミの眷属たる我が、慈悲をもってオマエ達のような低俗なヒトにも筋を通すのだ」
 ここで、それまで傍観していたミチルもふと考えを巡らせた。
 えーっと、オレは「オレに対して筋を通せ」って言ったんだけど。
 オレに是非を問えよ。ミチルはそう思ったのだが、エリオットが爆発するような剣幕で怒鳴ったので発言出来なかった。
「ふっざけんなよォオ! 『ミチルくれよ』って言われて『うん、いいよ』なんておれ達が言うわけねえだろ!!」
「ほお……ならば、やはり戦うか?」
 ニヤリとチルクサンダーがまた笑う。
 カミサマの眷属名乗るくせに、戦闘狂だ、コイツは!
 ミチルはこの場を戦場にしないために、懸命に頭を捻った。
 そして、ひとつの方法しかないと気づく。
「チルくん、ちょっと待て!」
 誰も怪我をさせないためには、ミチルが今抱いている感情を曝け出すしかない。
「儀式するとか、召し上げるとかの前にオレの意思を確認しろっつーの!」
 その言葉にイケメン達とチルクサンダーが目を見開いて注目した。
 途端にミチルは体が強張る。だって今からオレはすごい事を言うんだから。
「オレは、チルクサンダーにも感じちゃったの! みんなと同じ|ドキドキ《うほうほ♡》をッ!!」
 もうしょうがない。腹をくくれ。
「だから、チルクサンダーは第六のイケメンなのーッ!!」
 オレの名はミチル。
 今からオレは「六股の」ミチル!