上辺の沈黙
ー/ー「おはよう」「おはよ」
一階に降りると、お母さんがエプロン姿で何かを作っていた。お父さんは椅子に座り新聞を読んでいる。昨日のようなギスギスした感じはまるでない。二人にとって喧嘩は些細なことだから。
「今日はたくさんあるわよー」
そう言ってお母さんは私に卵焼きを渡す。受け取って、お父さんのいる机まで持っていった。
「おーありがと」「お父さんも手伝え!」「ははは、分かってますよー」
何を持っていけば良いー、とお母さんに話しかける声を聞きながら、私は静かに卵焼きを机に並べていた。
この空気が嫌いだ。何にもなかったかのように過ぎていく日常が。部外者の私を巻き込んでおいて、苦しめておいて、本人たちは平気で仲良く過ごす日常。今日のたった今を切り取って虐待だなんて笑える。いいえにして正解だったんだ。
「澪〜よーっす」「よーっす!ってチャラいな、朝から」
あはは、と笑うのは親友のヒマリだ。こんな意味不明な会話、家じゃできない。
「今日早いじゃん、どした?」
隣り合った下駄箱で靴を履き替えながら聞いてみた。
「え、何そんなに意外?私だって7時半に起きれるんだからね」
「うん、それが普通だからね?」
ちなみに私は7時起きだねー。8時からだもんね学校。
「ご飯は抜いてきたけどね」
「え?何で?」
家から5分で着くヒマリにご飯を食べる時間がないはずがない。割とガチ目に疑問だった。だって15分あればいけるでしょコイツなら。
「えっと、まあ布団って出れないじゃないですかー」
「学校始まる30分前なのに?」
「だって、いつもは50分とかに家出るし?」
わあーまじかー
「おい、ガチで引くな??」
そんなこんな話しているうちに教室についた。
「...じゃあ、各自問題を解いてねー」
大人しい担任の一言でみんなは一斉に問題を解き始める。
授業は一番落ち着けた。勉強は好きじゃないけど、思考をあまり使わなくていい。思ったままに反応しとけばいいから楽だった。
この問題は簡単だから、包み隠さずその表情。すると解き終わった事に気がついた先生が私のノートを覗き込む。その先生を隠し見る私。
先生の顔が「おお」というものになる。合ってたのか。 「ん?」 間違ってるのか? 「あぁー」 解法は違えど合ってたパターンねー
もうそろそろ顔を上げそうな雰囲気を感じて、視線をノートに戻す。
「全問正解!すごいじゃん、ここ結構引っかかるんだよ」
「ありがとうございます」
ニコッと笑いかけておく。先生も満足そうな顔をして頷く。これで内申点も良しっと。
ていうか、ほんとに先生って面白い。なんでこんなに分かりやすいんだろう。こんなんだから、私みたいなのに内申かっさらわれるんだよ?
落胆というよりは興味だった。どれだけ気に入られるかというイージーゲーム。それを生徒の反感を買わずにやってみせる。退屈な日常が唯一輝く瞬間だった。
後ろから向けられるもう一つの視線に私は気づいていなかった。
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