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これが私の日常

ー/ー



「これ冷蔵庫に入れといてって言ったよね?腐っちゃうじゃないもおおおおおお」
「言ってたのはこっちだろ?それは聞いてねえよキレんなよ」


 私の両親はよく喧嘩をする。母が怒り出して、それに父がキレる。そしてまた......


「なんで!急に怒り出すのおおおお!!! 酷いよねえ、澪?」


 狂った目で私を見る。聞いておきながら自分に自信がないんだと思う。
 自分のだした種でキレるし、しまいには娘で第三者である私に同意まで求める。理解できない母に同意したくなくて、拒否して怒られるのも面倒で、私は曖昧に笑った。


 なんで私はこの意味の分からない怒り合いに巻き込まれないといけないんだろう。









「おはよう」 「おはよー」


 学校は誰かが一線を超えてしまわない限り平和だ。小学生ならまだしも、高校生は喧嘩とは無縁の時期。中学までで培った交渉術(コミュニケーション)で本音を隠し、衝突を躱す。


 全員が誰かを恨んでいて、表では微笑む。表面上の平穏だがそれで良かった。私の家族にも、友達に紹介できるほどの表面(おもて)が欲しかった。






 苦痛じゃない(たのしい)時間はあっという間に過ぎ、私には一枚の紙が配られた。


『児童虐待について』
 いじめのアンケートなんかも最近はよく配られる。不自由のない学校生活を送れているかを確認するための紙。この手紙もその一種だった。


 児童虐待には4つある。叩く蹴るなどの身体的虐待、傷つける言葉を言う心理的虐待、子供の世話を放棄するネグレクト、性的な行為をする性的虐待だ。
 傷つく言葉は言われないし、私は何もされてはいない。

『あなたは今虐待を受けていると感じますか?』
 その下には被害の内容を書く欄があった。


 私は『いいえ』に丸をした。


 ただ親の喧嘩を見ています、そのことしか被害として書けない私は虐待されているわけがなかった。
 虐待でもいじめでも無ければ、このすり減っていく精神は何なのだろう。あいにくそれを相談できる家族も友達もいなかった。










 私は冷静に人を分析するのが得意だ。だから私の苦痛の原因である、家族を分析した。
 母は意味が分からないことで怒る。分析しようがない。理解できないのだから。
 父はやられたらやり返すタイプだ。自分が正解だと思っているなら相手が認めるまでやめられない。


 どう考えても相性が悪すぎる。喧嘩が自然に起こってしまう。


 防ぎようがない、そう思った。でも一つのピースを見落としていた。


 私だ。


 自分で自分を分析する。無意識のうちにそのことから目を逸らしていた。


 自信がなくキレる母は私がいなければ自滅する。正しさを認めさせたい父は私がいなければ目的を見失う。さすがに、理解できない怪物に正論を並べたところで意味がないのは分かっているはずだ。


 私の曖昧な笑みが母に自信を与え、父に使命を与える。
 成り立たないはずの怒り合いを繋ぎ止めていたのは、私の曖昧さだった。

「あは、私のせいじゃん」

 涙なんてものは流れてこなかった。心が軽くなった気がした。悪い方向で、空っぽになってしまった。


 曖昧な笑顔が事の元凶なのだということは分かった。でもどうしたらいいの?ここで父側についたところで離婚するのがオチだ。来年から受験だし、それはどうしても避けたかった。


「あ...」


 別に、戦わなくても良いわけだ。そんな簡単なことに気づいただけだった。それでも心は満たされていく。
 私は次に備えて、とりあえず寝ることにした。



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「言ってたのはこっちだろ?それは聞いてねえよキレんなよ」
 私の両親はよく喧嘩をする。母が怒り出して、それに父がキレる。そしてまた......
「なんで!急に怒り出すのおおおお!!! 酷いよねえ、澪?」
 狂った目で私を見る。聞いておきながら自分に自信がないんだと思う。
 自分のだした種でキレるし、しまいには娘で第三者である私に同意まで求める。理解できない母に同意したくなくて、拒否して怒られるのも面倒で、私は曖昧に笑った。
 なんで私はこの意味の分からない怒り合いに巻き込まれないといけないんだろう。
「おはよう」 「おはよー」
 学校は誰かが一線を超えてしまわない限り平和だ。小学生ならまだしも、高校生は喧嘩とは無縁の時期。中学までで培った交渉術(コミュニケーション)で本音を隠し、衝突を躱す。
 全員が誰かを恨んでいて、表では微笑む。表面上の平穏だがそれで良かった。私の家族にも、友達に紹介できるほどの表面(おもて)が欲しかった。
 苦痛じゃない(たのしい)時間はあっという間に過ぎ、私には一枚の紙が配られた。
『児童虐待について』
 いじめのアンケートなんかも最近はよく配られる。不自由のない学校生活を送れているかを確認するための紙。この手紙もその一種だった。
 児童虐待には4つある。叩く蹴るなどの身体的虐待、傷つける言葉を言う心理的虐待、子供の世話を放棄するネグレクト、性的な行為をする性的虐待だ。
 傷つく言葉は言われないし、私は何もされてはいない。
『あなたは今虐待を受けていると感じますか?』
 その下には被害の内容を書く欄があった。
 私は『いいえ』に丸をした。
 ただ親の喧嘩を見ています、そのことしか被害として書けない私は虐待されているわけがなかった。
 虐待でもいじめでも無ければ、このすり減っていく精神は何なのだろう。あいにくそれを相談できる家族も友達もいなかった。
 私は冷静に人を分析するのが得意だ。だから私の苦痛の原因である、家族を分析した。
 母は意味が分からないことで怒る。分析しようがない。理解できないのだから。
 父はやられたらやり返すタイプだ。自分が正解だと思っているなら相手が認めるまでやめられない。
 どう考えても相性が悪すぎる。喧嘩が自然に起こってしまう。
 防ぎようがない、そう思った。でも一つのピースを見落としていた。
 私だ。
 自分で自分を分析する。無意識のうちにそのことから目を逸らしていた。
 自信がなくキレる母は私がいなければ自滅する。正しさを認めさせたい父は私がいなければ目的を見失う。さすがに、理解できない怪物に正論を並べたところで意味がないのは分かっているはずだ。
 私の曖昧な笑みが母に自信を与え、父に使命を与える。
 成り立たないはずの怒り合いを繋ぎ止めていたのは、私の曖昧さだった。
「あは、私のせいじゃん」
 涙なんてものは流れてこなかった。心が軽くなった気がした。悪い方向で、空っぽになってしまった。
 曖昧な笑顔が事の元凶なのだということは分かった。でもどうしたらいいの?ここで父側についたところで離婚するのがオチだ。来年から受験だし、それはどうしても避けたかった。
「あ...」
 別に、戦わなくても良いわけだ。そんな簡単なことに気づいただけだった。それでも心は満たされていく。
 私は次に備えて、とりあえず寝ることにした。