9輪:タッ!タバ…
ー/ー────それにしても暑過ぎる。
明日に体育祭の予行練習が控えているのだが、美鎖子はその前に燃え尽きてしまいそうだった。
明後日の本番が雨になって延期にならないかな、なんて考えたけれど、
次の週まで太陽のマークが並んだ天気予報を思い出し、軽く絶望していた。
これからビニールテープで作ったポンポンを割きに行かなければならない美鎖子は、その前に軽い休憩を取りたくなった。
なので始業式の日に、稜太郎と隠れたあの場所へ向かった。
水筒の紐をブラブラと振りながら廊下を歩き、1階階段の踊り場の奥にあるドアの前に立つ。
それから誰にも見られていないか確認し、静かに、慎重にドアノブを回した。
美鎖子「フプスッ?!」
誰もいないと思って開けたドアの目の前に人が座っていたので、美鎖子は変な声を出して驚いた。
三毛稜太郎「…あっ」
美鎖子(みっ三毛くん!しかもタッ!タバ…コ?)
美鎖子が目を大きく見開かせて固まっていると、
稜太郎は唇を器用に動かしてタバコらしきものをすべて口の中に含み、ガリガリと音を立てながら噛み始めた。
そしてすべてを飲み込むと、口元を指差して「シュガーシガレット」と説明した。
美鎖子「あっあ…あぁ、ごっ御一服中のところ失礼致しました」
美鎖子は開けたドアを閉めて、校舎内に戻ろうとした。
しかし閉じようとしたドアがいきなりガッと固まって、閉まらなくなった。
美鎖子(え?!)
美鎖子がドアの下の方を確認すると、稜太郎ががっちりとドアを掴んで押さえていた。
これからビニールテープで作ったポンポンを割きに行かなければならない美鎖子は、その前に軽い休憩を取りたくなった。
なので始業式の日に、稜太郎と隠れたあの場所へ向かった。
水筒の紐をブラブラと振りながら廊下を歩き、1階階段の踊り場の奥にあるドアの前に立つ。
それから誰にも見られていないか確認し、静かに、慎重にドアノブを回した。
美鎖子「フプスッ?!」
誰もいないと思って開けたドアの目の前に人が座っていたので、美鎖子は変な声を出して驚いた。
三毛稜太郎「…あっ」
美鎖子(みっ三毛くん!しかもタッ!タバ…コ?)
美鎖子が目を大きく見開かせて固まっていると、
稜太郎は唇を器用に動かしてタバコらしきものをすべて口の中に含み、ガリガリと音を立てながら噛み始めた。
そしてすべてを飲み込むと、口元を指差して「シュガーシガレット」と説明した。
美鎖子「あっあ…あぁ、ごっ御一服中のところ失礼致しました」
美鎖子は開けたドアを閉めて、校舎内に戻ろうとした。
しかし閉じようとしたドアがいきなりガッと固まって、閉まらなくなった。
美鎖子(え?!)
美鎖子がドアの下の方を確認すると、稜太郎ががっちりとドアを掴んで押さえていた。
まるでゾンビ映画のワンシーンのようだった。
美鎖子(なっなにぃ、なんですかぁ…)
美鎖子は恐る恐るドアを開け直した。
すると稜太郎がこちらを真っ直ぐに見上げていた。
稜太郎「休みたかったんじゃないの?」
稜太郎は首を傾けながら聞いた。
その優しさが胸に沁みて、美鎖子の表情筋が一瞬綻ぶ。
けれど美鎖子は首を横に振って顔に気合を入れ直すと、
「いやなんかもう大丈夫になりましたありがとうございました」と早口で言って再度ドアを閉めようとした。
稜太郎「なんか…!また気付いてないみたいだけど顔色悪いよ…!」
稜太郎が声を張ったので、美鎖子はドアを閉めようとしていた手を止めた。
そしてもう片方の手で自分の顔に触れた。
美鎖子(…たしかに、冷たい)
暑さで熱っていたはずの頬は、何度触り直しても冷たかった。
するとドアが勝手に大きく…いや、稜太郎がドアを開けた。
そして手招きすると、自分の横に座るようコンクリートの段差を軽く叩いた。
美鎖子は一瞬迷ったがお辞儀をするように頷いて、彼の横にゆっくりと腰を下ろした。
稜太郎は何事もなかったかのようにジャージのポケットから箱を取り出し、シュガーシガレットを1本出した。
彼がシュガーシガレットをタバコのように咥える様子を見て、
美鎖子(なっなにぃ、なんですかぁ…)
美鎖子は恐る恐るドアを開け直した。
すると稜太郎がこちらを真っ直ぐに見上げていた。
稜太郎「休みたかったんじゃないの?」
稜太郎は首を傾けながら聞いた。
その優しさが胸に沁みて、美鎖子の表情筋が一瞬綻ぶ。
けれど美鎖子は首を横に振って顔に気合を入れ直すと、
「いやなんかもう大丈夫になりましたありがとうございました」と早口で言って再度ドアを閉めようとした。
稜太郎「なんか…!また気付いてないみたいだけど顔色悪いよ…!」
稜太郎が声を張ったので、美鎖子はドアを閉めようとしていた手を止めた。
そしてもう片方の手で自分の顔に触れた。
美鎖子(…たしかに、冷たい)
暑さで熱っていたはずの頬は、何度触り直しても冷たかった。
するとドアが勝手に大きく…いや、稜太郎がドアを開けた。
そして手招きすると、自分の横に座るようコンクリートの段差を軽く叩いた。
美鎖子は一瞬迷ったがお辞儀をするように頷いて、彼の横にゆっくりと腰を下ろした。
稜太郎は何事もなかったかのようにジャージのポケットから箱を取り出し、シュガーシガレットを1本出した。
彼がシュガーシガレットをタバコのように咥える様子を見て、
美鎖子は“様になり過ぎてる”と思った。
美鎖子もそんな稜太郎に感化され、水筒のカップにスポーツドリンクを注ぐと、お酒のようにちびちび飲み始めた。
そうやって飲みたくなったのだ。
美鎖子(……沈黙)
始業式の日も沈黙の時間はあったけれど、それは稜太郎が美鎖子の名前を思い出そうとしてできた間だった。
けれど今回は…。
美鎖子は稜太郎の様子を盗み見たが、よく分からなかった。
そして“まぁ話すことないから良いんですけどね”とすぐに開き直った。
美鎖子からして、稜太郎は色々と読めなかった。
稜太郎の元々の気質のせいなのか、
美鎖子の“三毛くんはツッパリだ”という固定概念が邪魔をしているせいなのか。
それとも美鎖子の空気感知センサーが誰にでも使える代物ではないからなのか。
美鎖子はそんなことを考えながら、稜太郎を横目で観察し始めた。
今日も軽くまとめられたリーゼントに小さい丸いサングラス。
レンズの色も透き通る深緑色のままだ。
口元を見ると、咥えているシュガーシガレットが上下に揺れている。
右手首には緑色のハチマキが雑に巻かれていた。
お下がりなのか、少し黄ばんだ体操服が肩まで捲られていて、裏地がほつれたジャージのズボンも脛辺りまで捲られていた。
美鎖子もそんな稜太郎に感化され、水筒のカップにスポーツドリンクを注ぐと、お酒のようにちびちび飲み始めた。
そうやって飲みたくなったのだ。
美鎖子(……沈黙)
始業式の日も沈黙の時間はあったけれど、それは稜太郎が美鎖子の名前を思い出そうとしてできた間だった。
けれど今回は…。
美鎖子は稜太郎の様子を盗み見たが、よく分からなかった。
そして“まぁ話すことないから良いんですけどね”とすぐに開き直った。
美鎖子からして、稜太郎は色々と読めなかった。
稜太郎の元々の気質のせいなのか、
美鎖子の“三毛くんはツッパリだ”という固定概念が邪魔をしているせいなのか。
それとも美鎖子の空気感知センサーが誰にでも使える代物ではないからなのか。
美鎖子はそんなことを考えながら、稜太郎を横目で観察し始めた。
今日も軽くまとめられたリーゼントに小さい丸いサングラス。
レンズの色も透き通る深緑色のままだ。
口元を見ると、咥えているシュガーシガレットが上下に揺れている。
右手首には緑色のハチマキが雑に巻かれていた。
お下がりなのか、少し黄ばんだ体操服が肩まで捲られていて、裏地がほつれたジャージのズボンも脛辺りまで捲られていた。
ツッパリの解像度高いなぁ、と美鎖子はつい感心してしまった。
さらに目線を下の方にやると、
赤いくるぶし丈の靴下のワンポイント刺繍であるビーグル犬と目が合った。
美鎖子は気がつくと、目線だけでなく完全に身体ごと彼の方に向けていた。
なので正面にゆっくり向き直し、口を真一文字に結んだ。
途端に気まずさから逃げ出したくなり、手の甲で頬を触り体温を確かめた。
美鎖子(さっきよりマシ、かしら…でもまだ冷たいような…。
でもこの気まずさから早く解放されたい!)
美鎖子はコップに残ったスポーツドリンクを急いで飲み干すと、コップを水筒に被せて勢いよく閉めた。
そして素早く立ち上がり「あの!もう!」と言ったその瞬間。
美鎖子の視界はゆっくりと、白くぼんやりとフェードアウトしていった。
美鎖子(あっ…脳貧血だ…やっちゃった…
低血圧ユーザー(?)としてあるまじき行為だよ…これは…)
美鎖子が脳貧血だと客観視できた時には、もうすでに遅かった。
美鎖子が脳貧血だと客観視できた時には、もうすでに遅かった。
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