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7輪:中学デビュー失敗

ー/ー




 美鎖子(みさこ)が特に何もせずとも、稜太郎(りょうたろう)と関わることはなかった。

別々のクラスのため、そもそも関わる機会が滅多にないのだ。


 2人が人命救助を(おこな)った日。

体育館で行われていた始業式で教頭先生が

“うちの学校の生徒が、今朝心臓マッサージを行った”とかなんとか大々的に話したそうだ。

そのためか、美鎖子は2・3日の間たくさんの生徒から話しかけられた。

しかしそれは2・3日の間だけで、それ以降はパタリと止んだのだ。


 後から聞いた話だと、スマホで撮られていた救命処置の動画がSNS上で炎上したそうだ。

<なぜ周りの大人たちは手伝わなかったのか>

<中学生が心臓マッサージをして大人が何もしないなんて、同じ大人として恥ずかしい>

<わたしなら手伝った>

あらゆる批判コメントが飛び交ったらしい。


 そして炎上した投稿者の内の1人が、
<倒れた時の様子や行った処置を記録しようと思った。動画は警察などに提出してある>などと釈明したけれど、その投稿がまた炎上。

多くの動画と投稿アカウントは削除されたらしい。

しかし未だに稜太郎がモザイクを貫通した(?)動画が、炎上動画として拡散が続いているそうだ。


神楽(かぐら)美鎖子(みさこ)(SNS上で炎上している動画に映っている人とは関わりたくない、よね…)

 美鎖子はそう考えていた。



 美鎖子は別に期待していた訳ではないけれど、たくさんの生徒に話しかけられた時に、この中に将来友達になる人がいるかもしれないと思いながら話をしていた。

しかし結果として、友達は1人もできなかった。


 というのも同級生たちは<#(ハッシュタグ)春から桃中>というタグを使って、入学前からとっくにSNS上で繋がりを持っていたらしい。

たしかに始業式の日には、クラスの中では複数の仲良しグループがすでに完成していた。

最初から美鎖子は友達作りムーヴ(その流れ)に出遅れていた訳である。



 始業式から数日経って、クラスで委員会決めが行われた。

進行のため最初に学級委員を決めなければならないので、担任の先生が立候補や推薦を求めた。

しかし誰も手を挙げることはなく、学級委員決めは速攻で躓いてしまった。

“誰か手上げないかな” “推薦で学級委員を任せるのはちょっとなぁ”
“早く決まらないかな” “早く終われぇ”という空気感が教室に広がっていく。


 そんな空気感に耐え切れなくなった美鎖子は、とうとう手を挙げてしまった。

中学生生活において、美鎖子の“良い子ポジション”が確定した瞬間だった。



 中学1年生の4月はすべての授業が始まったばかりなので、中学生活の中でも最も宿題が少ない時期だと言える。

しかし始業式から2週間が過ぎると、美鎖子の席の周りにはいつも宿題を書き写す子たちで溢れた。

この子たちはゴールデンウィークの課題をどうやってこなすんだろう、と美鎖子が無駄な心配をしてしまうほどだった。


 宿題を見せてあげる係(?)に加えて、美鎖子は放課後の教室で5月分の学級新聞を書いていた。

というのも『学級新聞は持ち帰り禁止』という学校特有の謎ルールが存在するため、
手伝うにしても、教室でひとりぼっちで新聞を作らざるを得なかった。


 同級生のみんなは部活動の体験入部に行ったというのに、美鎖子は広報委員の主な活動内容である学級新聞を清書までしていた。

にも関わらず、作成者の部分に自分の名前を書かなかった。


 ゴールデンウィークが明けると、すぐに体育祭の準備期間が始まる。

この調子だと体育祭委員の仕事までやりかねないと美鎖子は怯えていた。





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 |美鎖子《みさこ》が特に何もせずとも、|稜太郎《りょうたろう》と関わることはなかった。
別々のクラスのため、そもそも関わる機会が滅多にないのだ。
 2人が人命救助を|行《おこな》った日。
体育館で行われていた始業式で教頭先生が
“うちの学校の生徒が、今朝心臓マッサージを行った”とかなんとか大々的に話したそうだ。
そのためか、美鎖子は2・3日の間たくさんの生徒から話しかけられた。
しかしそれは2・3日の間だけで、それ以降はパタリと止んだのだ。
 後から聞いた話だと、スマホで撮られていた救命処置の動画がSNS上で炎上したそうだ。
<なぜ周りの大人たちは手伝わなかったのか>
<中学生が心臓マッサージをして大人が何もしないなんて、同じ大人として恥ずかしい>
<わたしなら手伝った>
あらゆる批判コメントが飛び交ったらしい。
 そして炎上した投稿者の内の1人が、
<倒れた時の様子や行った処置を記録しようと思った。動画は警察などに提出してある>などと釈明したけれど、その投稿がまた炎上。
多くの動画と投稿アカウントは削除されたらしい。
しかし未だに稜太郎がモザイクを貫通した(?)動画が、炎上動画として拡散が続いているそうだ。
|神楽《かぐら》|美鎖子《みさこ》(SNS上で炎上している動画に映っている人とは関わりたくない、よね…)
 美鎖子はそう考えていた。
 美鎖子は別に期待していた訳ではないけれど、たくさんの生徒に話しかけられた時に、この中に将来友達になる人がいるかもしれないと思いながら話をしていた。
しかし結果として、友達は1人もできなかった。
 というのも同級生たちは<|#《ハッシュタグ》春から桃中>というタグを使って、入学前からとっくにSNS上で繋がりを持っていたらしい。
たしかに始業式の日には、クラスの中では複数の仲良しグループがすでに完成していた。
最初から美鎖子は|友達作りムーヴ《その流れ》に出遅れていた訳である。
 始業式から数日経って、クラスで委員会決めが行われた。
進行のため最初に学級委員を決めなければならないので、担任の先生が立候補や推薦を求めた。
しかし誰も手を挙げることはなく、学級委員決めは速攻で躓いてしまった。
“誰か手上げないかな” “推薦で学級委員を任せるのはちょっとなぁ”
“早く決まらないかな” “早く終われぇ”という空気感が教室に広がっていく。
 そんな空気感に耐え切れなくなった美鎖子は、とうとう手を挙げてしまった。
中学生生活において、美鎖子の“《《都合のいい》》良い子ポジション”が確定した瞬間だった。
 中学1年生の4月はすべての授業が始まったばかりなので、中学生活の中でも最も宿題が少ない時期だと言える。
しかし始業式から2週間が過ぎると、美鎖子の席の周りにはいつも宿題を書き写す子たちで溢れた。
この子たちはゴールデンウィークの課題をどうやってこなすんだろう、と美鎖子が無駄な心配をしてしまうほどだった。
 宿題を見せてあげる係(?)に加えて、美鎖子は放課後の教室で5月分の学級新聞を書いていた。
というのも『学級新聞は持ち帰り禁止』という学校特有の謎ルールが存在するため、
手伝うにしても、教室でひとりぼっちで新聞を作らざるを得なかった。
 同級生のみんなは部活動の体験入部に行ったというのに、美鎖子は広報委員の主な活動内容である学級新聞を清書までしていた。
にも関わらず、作成者の部分に自分の名前を書かなかった。
 ゴールデンウィークが明けると、すぐに体育祭の準備期間が始まる。
この調子だと体育祭委員の仕事までやりかねないと美鎖子は怯えていた。