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違いの分かる男

ー/ー



 とある領域で、数体のエイリアンが商業用スペースシップを乗っ取る事件が発生した。



 職員たちは全滅。

 エイリアンたちは人間に擬態する能力を使い、一人ずつ静かに殺していったという。



 依頼により急行したヴァイとエリシアは、手分けして船内を捜索し、大半のエイリアンを駆逐した。残るは最後の一体のみ。



 ——コツコツ。



 暗い通路をヴァイが歩いている。片手にライト、もう片方にはレーザー銃を構え、警戒しながら周囲を見回していた。



「さぁて……どこに隠れてやがる。」



 ——ヒタヒタ。



 静かな足音が通路の曲がり角から聞こえてきた。

 ヴァイは銃のエネルギーをチャージしながら、慎重に角へと近づく。



 ——バッ!



「ハッ!」



 彼が飛び出したその先にいたのは——エリシアだった。



「待って!撃たないで!」

 エリシアが両手を上げて止める。



「なんだ、お前か。」



 ヴァイは銃を下ろして深いため息をついたが、すぐに表情を引き締めた。



「紛らわしい真似すんなよ。あと一体、どこに隠れてるかわかんねぇんだぞ。」



 エリシアは息を整えながら、真剣な顔で答えた。



「それが……どうやらこっちの区画にはいませんわね。でもまだ油断は禁物ですわ。」



 二人は互いにうなずき、再び周囲を警戒しながら捜索を再開した。



 だが、その瞬間——。





「ヴァイ!離れて!」





 後ろからエリシアの叫ぶ声が響いた。



「そいつは偽物ですわよ!」

「なにぃ!」



 ——バッ!



 ヴァイが振り返ると、二人のエリシアが対峙していた。



「どっちだ!?」

 ヴァイは銃を構えたまま混乱する。



「目を覚ましなさい!あっちが偽物!」

「違いますわよ!そっちでしょ!?」



 二人のエリシアはお互いを指差して、必死に偽物だと主張している。



「ちょちょちょ……待て待て。とりあえずお前ら横に並べ!」



 ヴァイが指示すると、二人のエリシアは渋々ながらも横に並ぶ。しかし、その直後——。



「きええエエェえェエ〜!」
「キエぇ〜!」



 二人が同時に怒りの叫び声を上げた。



「うるせえ!並べや!」



 二人を横に並ばせたヴァイは、しばらくじっと観察していたが、首をかしげた。



「これは……見分けがつかんな。」



 その一言に、二人のエリシアは同時に声を上げた。



「何言ってますの!私の方が肌艶がいいでしょ!?」



「いんや!このスベスベモチモチ肌の私が本物ですわ!」



 二人は互いに自分の肌をアピールし始め、ヴァイの困惑はさらに深まった。



「いやいや、どっちも自信満々すぎて余計にわからねぇんだが。」



 ヴァイは頭をかきながらため息をつき、再び二人をじっと見比べる。



 ヴァイはふとポケットに手を入れた。



 ——ガサ。



 出てきたのはチーズバーガーの包み紙。任務後に食べようと、食糧庫から掻っ払ってきたものだった。

 ヴァイはそれを半分に割り、二人のエリシアに差し出した。



「とりあえず、お前らこれでも食え。な?」



 二人のエリシアはヴァイを睨みつける。

「ぐぬぬ……」
「ぐぬぬ……」



 しばらく渋っていたが、結局二人ともバーガーを受け取ってむしゃむしゃと食べ始めた。



 ——むしゃむしゃ。



「そうそう、言い忘れてたが——。」



「なんですの!?」
「あん!?」

 二人が口を揃えて問い詰める。



「本物は生まれながらの貴族だ。だからよ?食い方でわかるんだよ。下品なチンピラみてえな食い方なんかあり得ねえゼェ?」



 その言葉に、左のエリシアが一瞬固まった。そしてスッと姿勢を正し、おちょぼ口で優雅に食べ始めた。



 ——バシュゥン!



 次の瞬間、ヴァイの銃口が閃光を放つ。



「ギョワアアアァア!」



 左のエリシアは悍ましいエイリアンの姿に戻り、そのまま地面に崩れ落ちた。



「ま、そういうわけだ。」



 ヴァイは銃を仕舞いながら振り返り、本物のエリシアに片手を挙げて合図した。



「お嬢様。じゃあ帰るぞ。」



 任務を終え、二人はヴァイのスペースシップに乗り込む。



 スペースシップの中で、エリシアが口を開いた。



「ところでヴァイ。」

「あん?」



「さっき、本物は生まれながらの貴族とか、下品な食い方しないとか言ってましたわねぇ……。」



「あぁそうだぜ?我ながらセンスいいダロォ?」



 ヴァイは得意げに答えるが、エリシアの目がじっと彼を見つめる。



「でもそっちの方を撃ちましたわね。」



「そりゃ偽物に決まってるからなぁ。」



「……」
「……」



 微妙な沈黙が二人の間に漂う。





「え、じゃあなに?私は……チンピラなんですわね……。」





「……」



「食い方も……え?なあ……おい……あ?」



 エリシアがじわじわと詰め寄る中、ヴァイは無言のまま息を吸い込む。



 ——スウウウゥ。



 そして——。





「ちょ!イテ!おいおい!待てよ!うお!あぶねえ!操縦してんだぞ!!おい!落ち着けって!ちょちょちょ痛え!ああああぁ!」





「キエエエェエえぇえええ〜!」



 エリシアの怒りが爆発し、ヴァイに容赦ない攻撃が加えられる。

 その間も、スペースシップは上下左右に激しく蛇行しながら漂流物を避けていった。



 遠ざかる船の光が、銀河の彼方に消えていくのだった。



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 とある領域で、数体のエイリアンが商業用スペースシップを乗っ取る事件が発生した。
 職員たちは全滅。
 エイリアンたちは人間に擬態する能力を使い、一人ずつ静かに殺していったという。
 依頼により急行したヴァイとエリシアは、手分けして船内を捜索し、大半のエイリアンを駆逐した。残るは最後の一体のみ。
 ——コツコツ。
 暗い通路をヴァイが歩いている。片手にライト、もう片方にはレーザー銃を構え、警戒しながら周囲を見回していた。
「さぁて……どこに隠れてやがる。」
 ——ヒタヒタ。
 静かな足音が通路の曲がり角から聞こえてきた。
 ヴァイは銃のエネルギーをチャージしながら、慎重に角へと近づく。
 ——バッ!
「ハッ!」
 彼が飛び出したその先にいたのは——エリシアだった。
「待って!撃たないで!」
 エリシアが両手を上げて止める。
「なんだ、お前か。」
 ヴァイは銃を下ろして深いため息をついたが、すぐに表情を引き締めた。
「紛らわしい真似すんなよ。あと一体、どこに隠れてるかわかんねぇんだぞ。」
 エリシアは息を整えながら、真剣な顔で答えた。
「それが……どうやらこっちの区画にはいませんわね。でもまだ油断は禁物ですわ。」
 二人は互いにうなずき、再び周囲を警戒しながら捜索を再開した。
 だが、その瞬間——。
「ヴァイ!離れて!」
 後ろからエリシアの叫ぶ声が響いた。
「そいつは偽物ですわよ!」
「なにぃ!」
 ——バッ!
 ヴァイが振り返ると、二人のエリシアが対峙していた。
「どっちだ!?」
 ヴァイは銃を構えたまま混乱する。
「目を覚ましなさい!あっちが偽物!」
「違いますわよ!そっちでしょ!?」
 二人のエリシアはお互いを指差して、必死に偽物だと主張している。
「ちょちょちょ……待て待て。とりあえずお前ら横に並べ!」
 ヴァイが指示すると、二人のエリシアは渋々ながらも横に並ぶ。しかし、その直後——。
「きええエエェえェエ〜!」
「キエぇ〜!」
 二人が同時に怒りの叫び声を上げた。
「うるせえ!並べや!」
 二人を横に並ばせたヴァイは、しばらくじっと観察していたが、首をかしげた。
「これは……見分けがつかんな。」
 その一言に、二人のエリシアは同時に声を上げた。
「何言ってますの!私の方が肌艶がいいでしょ!?」
「いんや!このスベスベモチモチ肌の私が本物ですわ!」
 二人は互いに自分の肌をアピールし始め、ヴァイの困惑はさらに深まった。
「いやいや、どっちも自信満々すぎて余計にわからねぇんだが。」
 ヴァイは頭をかきながらため息をつき、再び二人をじっと見比べる。
 ヴァイはふとポケットに手を入れた。
 ——ガサ。
 出てきたのはチーズバーガーの包み紙。任務後に食べようと、食糧庫から掻っ払ってきたものだった。
 ヴァイはそれを半分に割り、二人のエリシアに差し出した。
「とりあえず、お前らこれでも食え。な?」
 二人のエリシアはヴァイを睨みつける。
「ぐぬぬ……」
「ぐぬぬ……」
 しばらく渋っていたが、結局二人ともバーガーを受け取ってむしゃむしゃと食べ始めた。
 ——むしゃむしゃ。
「そうそう、言い忘れてたが——。」
「なんですの!?」
「あん!?」
 二人が口を揃えて問い詰める。
「本物は生まれながらの貴族だ。だからよ?食い方でわかるんだよ。下品なチンピラみてえな食い方なんかあり得ねえゼェ?」
 その言葉に、左のエリシアが一瞬固まった。そしてスッと姿勢を正し、おちょぼ口で優雅に食べ始めた。
 ——バシュゥン!
 次の瞬間、ヴァイの銃口が閃光を放つ。
「ギョワアアアァア!」
 左のエリシアは悍ましいエイリアンの姿に戻り、そのまま地面に崩れ落ちた。
「ま、そういうわけだ。」
 ヴァイは銃を仕舞いながら振り返り、本物のエリシアに片手を挙げて合図した。
「お嬢様。じゃあ帰るぞ。」
 任務を終え、二人はヴァイのスペースシップに乗り込む。
 スペースシップの中で、エリシアが口を開いた。
「ところでヴァイ。」
「あん?」
「さっき、本物は生まれながらの貴族とか、下品な食い方しないとか言ってましたわねぇ……。」
「あぁそうだぜ?我ながらセンスいいダロォ?」
 ヴァイは得意げに答えるが、エリシアの目がじっと彼を見つめる。
「でもそっちの方を撃ちましたわね。」
「そりゃ偽物に決まってるからなぁ。」
「……」
「……」
 微妙な沈黙が二人の間に漂う。
「え、じゃあなに?私は……チンピラなんですわね……。」
「……」
「食い方も……え?なあ……おい……あ?」
 エリシアがじわじわと詰め寄る中、ヴァイは無言のまま息を吸い込む。
 ——スウウウゥ。
 そして——。
「ちょ!イテ!おいおい!待てよ!うお!あぶねえ!操縦してんだぞ!!おい!落ち着けって!ちょちょちょ痛え!ああああぁ!」
「キエエエェエえぇえええ〜!」
 エリシアの怒りが爆発し、ヴァイに容赦ない攻撃が加えられる。
 その間も、スペースシップは上下左右に激しく蛇行しながら漂流物を避けていった。
 遠ざかる船の光が、銀河の彼方に消えていくのだった。