表示設定
表示設定
目次 目次




9話 人気ミーチュバーの秘密(2)

ー/ー




『前にも、翼くんが他の女と歩いてたみたいな書き込みあったし。一応、確認したら?』
『えー、別にどうでもいいしー。あいつはただの踏み台。ただの顔だけ男。まあ、アクセサリーってやつw』
『マジ! まあ、愛莉がいいなら、いーんだけどね』


 おそらく個人のやり取りだろうけど、そんなプライベートなもの、一体どうやって!

「何これ! ……紗栄子(さえこ)! あんた、裏切ったの!」
「ち、違う! 確かに相手は私だけど、こんなのバレバレじゃない! 私がそんなことするわけ……」

 そう言い返すのは、音霧(おときり)紗栄子さん。いつも西条寺さんと一緒に居る女子の一人だ。

「嘘吐くなぁー! 私が気に入らねぇーんだろ! まあ、そうだよね? 私がバズるまでは、あんたが頂点だったもんねぇ~? でもさ、ちょっと子綺麗なだけで、あんたつまんないんだわー! 絶対、私にはなれないしね! あーあ、惨め……。あ……」

 突き刺さるような視線は、後方に居た俺でも感じ取れるぐらいだった。
 それを浴びた西条寺さん本人は、時が止まったかのように硬直していた。

「あっ、あ~、違うのぉ! 驚かせようと思ってさ~」

 またいつもの戯けた表情に戻したが、それに笑いかける生徒は誰もいない。
 ただ周囲を見渡し、目配せで会話をしているようだった。
 そうは言っても、傍観者の俺達より気にかける人がいるのでは?
 そう思ったが彼氏の神宮寺くんのみ、いつもの柔らかな表情を浮かべていた。

「分かってるよー。アンチの捏造だって」
「そう! そうなの! もう嫌になっちゃうよねぇ? じゃあ指輪を……」

 ははっと笑った西条寺さんが、手を伸ばした途端。

『待ってください。誰が暴露は一つだと言いました?』
「え?」
『そう、次は神宮寺くん。あなたの暴露です』
「俺ぇ? えー、何だろうなぁ?」

 そうは言うがやたら目が泳いでいて、心当たりがあるのだと、鈍い俺ですら察せられる。

『神宮寺翼は、複数のファンに手を出し遊んでいる』

 その言葉と共に映し出されたのは、マスクはしているが神宮寺くんだと分かる人物で、西条寺さんとは違う女性と写真に写っていた。
 都会の街中を手を繋いで歩いている場面や、買い物をしている様子、物陰に隠れてキスをしている写真まであった。
 その途端、教室中は悲鳴に包まれる。
 それは女子のもので、「嘘っ!」「絶対違うし!」「ありえないし!」が大半を占めていた。

「あっ、あんなものどこからぁー!」

 神宮寺くんは、いつもの柔らかな表情はなくなり、その目はギラギラと血走っていた。

『うわあ、節操ありませんね! ファンに手を出すなんて! こちらでも調査していましたが、五十人は超えてるんじゃないですかぁー?』
「こ、これは合成だ!」

 そう言い、西条寺さんにでも、俺達にでもなく、カメラに向かって声を荒らげていた。

『その他にもありますよ? 「めいみん」さんって、ご存知ですよね?』
「は? あ、いや……」
『駆け出しのミーチューバだそうですね?』

 その言葉と共に映し出されたのは、ミーチューバチャンネル。
 題名は「カップルミーチューバ、翼と付き合ってみた」だった。

『俺だって、あんな頭カラッポなワガママ姫と好きで付き合ってるわけじゃねーし。まー、ぶっちゃけ収益は良いし、仕方がなくってやつー? 俺はね、君のような頭が良い子が好きなんだー。どお、これからも会わない? もちろん、秘密で。君となら、良い関係を築けると思うんだー』

 それは隠し撮りしたかのように神宮寺くんの無防備な音声が録音されており、その後も続く生々しいやり取りに、男の俺でも耳を塞ぎたくなるほどだった。

『つまらん男、三十一点。まあこれで、あのあいりんに勝てたからいっか!』

 その締め括りの文章が出てきて、動画は終わっていた。

『この動画は音声のみだったことから信憑性がなく、また削除申請からすぐに消された為に、闇に葬られたようですね。しかし、暴露者は動画をダウンロードしていた。どれだけ嫌われているのですか、神宮寺くん? いや、その彼女である西条寺さんを傷付けるのが狙いだったのかもしれませんね? まあいずれにしても相手の女性はあなたを好きになったのではなく、女として西条寺さんに勝ちたかっただけ。残念でしたねぇー』

 主催者のどこまでも煽るような言い草に、関係ないこちらまで怒りが湧き立ってくる。
 なんだ? なんなんだよ、こいつ? 確かに神宮寺くんがしてたことは最低だけど、ここまでこき下ろさなくても!

「テメェー! 出てこい、この野郎ぉー!」

 スマホを頭上より叩きつけ、それでも飽き足らず、感情のまま何度となく踏みつける。
 その姿に前方に座っていた女子達は怯えて身をたじろぎさせ、小春は俯き両耳を塞いで震えていた。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 10話 カップルミーチュバーの機密(3)


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…




『前にも、翼くんが他の女と歩いてたみたいな書き込みあったし。一応、確認したら?』
『えー、別にどうでもいいしー。あいつはただの踏み台。ただの顔だけ男。まあ、アクセサリーってやつw』
『マジ! まあ、愛莉がいいなら、いーんだけどね』
 おそらく個人のやり取りだろうけど、そんなプライベートなもの、一体どうやって!
「何これ! ……|紗栄子《さえこ》! あんた、裏切ったの!」
「ち、違う! 確かに相手は私だけど、こんなのバレバレじゃない! 私がそんなことするわけ……」
 そう言い返すのは、|音霧《おときり》紗栄子さん。いつも西条寺さんと一緒に居る女子の一人だ。
「嘘吐くなぁー! 私が気に入らねぇーんだろ! まあ、そうだよね? 私がバズるまでは、あんたが頂点だったもんねぇ~? でもさ、ちょっと子綺麗なだけで、あんたつまんないんだわー! 絶対、私にはなれないしね! あーあ、惨め……。あ……」
 突き刺さるような視線は、後方に居た俺でも感じ取れるぐらいだった。
 それを浴びた西条寺さん本人は、時が止まったかのように硬直していた。
「あっ、あ~、違うのぉ! 驚かせようと思ってさ~」
 またいつもの戯けた表情に戻したが、それに笑いかける生徒は誰もいない。
 ただ周囲を見渡し、目配せで会話をしているようだった。
 そうは言っても、傍観者の俺達より気にかける人がいるのでは?
 そう思ったが彼氏の神宮寺くんのみ、いつもの柔らかな表情を浮かべていた。
「分かってるよー。アンチの捏造だって」
「そう! そうなの! もう嫌になっちゃうよねぇ? じゃあ指輪を……」
 ははっと笑った西条寺さんが、手を伸ばした途端。
『待ってください。誰が暴露は一つだと言いました?』
「え?」
『そう、次は神宮寺くん。あなたの暴露です』
「俺ぇ? えー、何だろうなぁ?」
 そうは言うがやたら目が泳いでいて、心当たりがあるのだと、鈍い俺ですら察せられる。
『神宮寺翼は、複数のファンに手を出し遊んでいる』
 その言葉と共に映し出されたのは、マスクはしているが神宮寺くんだと分かる人物で、西条寺さんとは違う女性と写真に写っていた。
 都会の街中を手を繋いで歩いている場面や、買い物をしている様子、物陰に隠れてキスをしている写真まであった。
 その途端、教室中は悲鳴に包まれる。
 それは女子のもので、「嘘っ!」「絶対違うし!」「ありえないし!」が大半を占めていた。
「あっ、あんなものどこからぁー!」
 神宮寺くんは、いつもの柔らかな表情はなくなり、その目はギラギラと血走っていた。
『うわあ、節操ありませんね! ファンに手を出すなんて! こちらでも調査していましたが、五十人は超えてるんじゃないですかぁー?』
「こ、これは合成だ!」
 そう言い、西条寺さんにでも、俺達にでもなく、カメラに向かって声を荒らげていた。
『その他にもありますよ? 「めいみん」さんって、ご存知ですよね?』
「は? あ、いや……」
『駆け出しのミーチューバだそうですね?』
 その言葉と共に映し出されたのは、ミーチューバチャンネル。
 題名は「カップルミーチューバ、翼と付き合ってみた」だった。
『俺だって、あんな頭カラッポなワガママ姫と好きで付き合ってるわけじゃねーし。まー、ぶっちゃけ収益は良いし、仕方がなくってやつー? 俺はね、君のような頭が良い子が好きなんだー。どお、これからも会わない? もちろん、秘密で。君となら、良い関係を築けると思うんだー』
 それは隠し撮りしたかのように神宮寺くんの無防備な音声が録音されており、その後も続く生々しいやり取りに、男の俺でも耳を塞ぎたくなるほどだった。
『つまらん男、三十一点。まあこれで、あのあいりんに勝てたからいっか!』
 その締め括りの文章が出てきて、動画は終わっていた。
『この動画は音声のみだったことから信憑性がなく、また削除申請からすぐに消された為に、闇に葬られたようですね。しかし、暴露者は動画をダウンロードしていた。どれだけ嫌われているのですか、神宮寺くん? いや、その彼女である西条寺さんを傷付けるのが狙いだったのかもしれませんね? まあいずれにしても相手の女性はあなたを好きになったのではなく、女として西条寺さんに勝ちたかっただけ。残念でしたねぇー』
 主催者のどこまでも煽るような言い草に、関係ないこちらまで怒りが湧き立ってくる。
 なんだ? なんなんだよ、こいつ? 確かに神宮寺くんがしてたことは最低だけど、ここまでこき下ろさなくても!
「テメェー! 出てこい、この野郎ぉー!」
 スマホを頭上より叩きつけ、それでも飽き足らず、感情のまま何度となく踏みつける。
 その姿に前方に座っていた女子達は怯えて身をたじろぎさせ、小春は俯き両耳を塞いで震えていた。