7話 一回目前 密告アプリの仕様(2)
ー/ー 廊下に出てきて、いつものように円になる。翔、凛、小春、俺。
男子女子が必ず隣同士で、凛の隣は翔、小春の隣は俺だった。
でもそれは付き合っているとかは関係なく中学生の頃からで、小春が──。
「翔が指輪を外すなと言ってくれなかったら、危なかったよ。本当に、ありがとうな」
全く、翔には助けられてばかりだ。
「どうして、指輪を外したらいけないと分かったの?」
凛はいつも通り鋭い眼差しで、迷いのない指摘を突いてくる。例え、彼氏にでも。
「あ……。いや、何となく。ほら、映画とかでの、お約束の展開だろ?」
問いに答えるのに一瞬間があったような気がしたが、確かにそれに合わせて用心する気持ちも充分に理解出来た。
「……そう」
凛は力無く返事し、スカートのポケットより透明ケースに入れたスマホを取り出す。
「うわあ、本当にインストールされてる……」
凛の歪めた表情に、俺達もスマホを出すと変わらず圏外だったが、見覚えのないアプリが増えていた。それは指輪と同じドクロがアイコンになっており、何とも気味が悪かった。
「圏外なのに、アプリが起動するの?」
震えた小春の声に俺達も疑念を持ったが、その指を動かすことは出来ない。情けないことに恐怖心が勝ってしまった。
「あ、開いた」
あまりにもあっけらかんと呟くのは、凛。彼女は気が強く、非常時に一番勇敢に行動を取れるタイプだ。
中二の林間学校でウォークラリーがあり、俺達はそこで道を間違えて迷ってしまった。
翔、小春、俺はオロオロとしていたのに凛だけはシャキッとしていたな。
野に咲く凛とした花のようだと、翔がボソッと呟いていたのを、俺は今でも覚えている。
凛のスマホを俺達三人が画面を覗き込むと、映像が赤点滅に光りピー、ピー、ピーと大きな警告と思わせる音が鳴り響いた。
俺達は身を怯ませるが、持ち主であり一番近距離に居るはずの凛はスマホに視線を落としたままだった。
こんな時まで。
肝が据わった姿に感服し、そして自分が情けなかった。凛も怖いだろうに……。
「あー。これダメみたい」
凛が俺達に差し出してきたスマホ画面には、『持ち主以外の閲覧を禁止します』と表示されている。
「ちょっと試してみるから、スマホから視線外してくれる?」
もどかしい心情で俺達がスマホより目を逸らすと、凛より中が見れたと告げられる。
つまり持ち主以外の第三者が覗いていたと、アプリは判断したということか。
あまりの高性能に、俺達の表情が歪んでゆく。
何かの検証か何かで、ここまでのものを作ったりするのか? と。
何か手掛かりが得られないかと、各々とアプリを起動すると、そこには『カップルデスゲーム』と血が垂れるような赤文字が浮かんできた。
「ひっ!」
情けなく漏れた声を飲み込み、スマホを投げ出したい気持ちを抑えて震える指でスマホを操作していくと、先程説明にあった【指輪が爆発するルール違反】、【ゲーム説明】、【特記事項】【密告のやり方】とルールが確認出来る仕様となっていた。
そして一番下にある項目は、【密告】だった。
恐る恐るそのボタンに触れると『密告相手の名前』、『密告内容』、『密告の証拠品を提示』など細かく記入欄が設けてあり、頭がクラクラしてくる。
極め付けにはこのアプリを経由すれば圏外でも、検索アプリや過去のメッセージアプリを閲覧出来るというよく分からない仕様があることだった。
……そこまで俺達に密告をさせたいのか?
主催者と自称する、相手の狂気を感じ取った。
ダメ元で主催者のアプリを経由してメッセージアプリを開き、電話機能をタップする。
しかし、いつもみたいに呼び出し画面になることもなく、「かけ直す」と表示されるだけ。メッセージを打ち込み送ろうとするが、未送信マークが付き相手には届いていないと察せられる。
親に連絡することも、叶わないということか。
翔も凛も、親や兄弟とも通じないと言っていることから、外部との連絡は取れないようだ。
圏外であることから、当然電話も通じなかった。
母さん、父さん。
「ちょっと出てくる」、その言葉だけで昨日は帰らなかった。心配させてしまっているかもしれないと思うと、スマホを持つ手にグッと力が入る。
「……ねえ。最近、親の様子がおかしかった……とかある?」
小春はスマホに目を向けたまま、ボソッと呟いた。
……親の様子?
俺と翔は顔を合わせるが、凛は変わりなかったかなぁと、日常会話のように返していた。
「そっか。……良かった」
小さく溜息を吐いた小春は、次は窓から外の景色を見上げていた。
そこには変わらずにヘリコプターが迂回しており、これも仕掛けにしては大きすぎるよなっと思わず眺め続けてしまう。
「ん?」
機体横の文字が「警視庁」と、見えたような気がした。
いや、まさか。そんなはずないだろ!
さすがにそこまで出来るわけないって。警察名乗るって大問題だろ。
これは何かの撮影なんだよ。だから、だから……。
「慎吾。ねえ、大丈夫?」
こちらをまじまじと見つめる小春に、俺の息は大きく切れており、額から多量の汗が流れていたと気付く。
「あ。ごめん、ごめん。大丈夫だから」
差し出されたミニハンカチで汗を拭う。それはキャラクターのうさぎの刺繍されてあり、高校生が持つには少し可愛すぎるかもしれないが、俺はそんな小春が好きだったりする。
これ以上、不安にさせてはならない。
そんな思いで、今目にしたものを自分の中でなかったことにした。
こうして、永遠に感じる時間を過ごしているとスマホより低い音声が聞こえた。
男子女子が必ず隣同士で、凛の隣は翔、小春の隣は俺だった。
でもそれは付き合っているとかは関係なく中学生の頃からで、小春が──。
「翔が指輪を外すなと言ってくれなかったら、危なかったよ。本当に、ありがとうな」
全く、翔には助けられてばかりだ。
「どうして、指輪を外したらいけないと分かったの?」
凛はいつも通り鋭い眼差しで、迷いのない指摘を突いてくる。例え、彼氏にでも。
「あ……。いや、何となく。ほら、映画とかでの、お約束の展開だろ?」
問いに答えるのに一瞬間があったような気がしたが、確かにそれに合わせて用心する気持ちも充分に理解出来た。
「……そう」
凛は力無く返事し、スカートのポケットより透明ケースに入れたスマホを取り出す。
「うわあ、本当にインストールされてる……」
凛の歪めた表情に、俺達もスマホを出すと変わらず圏外だったが、見覚えのないアプリが増えていた。それは指輪と同じドクロがアイコンになっており、何とも気味が悪かった。
「圏外なのに、アプリが起動するの?」
震えた小春の声に俺達も疑念を持ったが、その指を動かすことは出来ない。情けないことに恐怖心が勝ってしまった。
「あ、開いた」
あまりにもあっけらかんと呟くのは、凛。彼女は気が強く、非常時に一番勇敢に行動を取れるタイプだ。
中二の林間学校でウォークラリーがあり、俺達はそこで道を間違えて迷ってしまった。
翔、小春、俺はオロオロとしていたのに凛だけはシャキッとしていたな。
野に咲く凛とした花のようだと、翔がボソッと呟いていたのを、俺は今でも覚えている。
凛のスマホを俺達三人が画面を覗き込むと、映像が赤点滅に光りピー、ピー、ピーと大きな警告と思わせる音が鳴り響いた。
俺達は身を怯ませるが、持ち主であり一番近距離に居るはずの凛はスマホに視線を落としたままだった。
こんな時まで。
肝が据わった姿に感服し、そして自分が情けなかった。凛も怖いだろうに……。
「あー。これダメみたい」
凛が俺達に差し出してきたスマホ画面には、『持ち主以外の閲覧を禁止します』と表示されている。
「ちょっと試してみるから、スマホから視線外してくれる?」
もどかしい心情で俺達がスマホより目を逸らすと、凛より中が見れたと告げられる。
つまり持ち主以外の第三者が覗いていたと、アプリは判断したということか。
あまりの高性能に、俺達の表情が歪んでゆく。
何かの検証か何かで、ここまでのものを作ったりするのか? と。
何か手掛かりが得られないかと、各々とアプリを起動すると、そこには『カップルデスゲーム』と血が垂れるような赤文字が浮かんできた。
「ひっ!」
情けなく漏れた声を飲み込み、スマホを投げ出したい気持ちを抑えて震える指でスマホを操作していくと、先程説明にあった【指輪が爆発するルール違反】、【ゲーム説明】、【特記事項】【密告のやり方】とルールが確認出来る仕様となっていた。
そして一番下にある項目は、【密告】だった。
恐る恐るそのボタンに触れると『密告相手の名前』、『密告内容』、『密告の証拠品を提示』など細かく記入欄が設けてあり、頭がクラクラしてくる。
極め付けにはこのアプリを経由すれば圏外でも、検索アプリや過去のメッセージアプリを閲覧出来るというよく分からない仕様があることだった。
……そこまで俺達に密告をさせたいのか?
主催者と自称する、相手の狂気を感じ取った。
ダメ元で主催者のアプリを経由してメッセージアプリを開き、電話機能をタップする。
しかし、いつもみたいに呼び出し画面になることもなく、「かけ直す」と表示されるだけ。メッセージを打ち込み送ろうとするが、未送信マークが付き相手には届いていないと察せられる。
親に連絡することも、叶わないということか。
翔も凛も、親や兄弟とも通じないと言っていることから、外部との連絡は取れないようだ。
圏外であることから、当然電話も通じなかった。
母さん、父さん。
「ちょっと出てくる」、その言葉だけで昨日は帰らなかった。心配させてしまっているかもしれないと思うと、スマホを持つ手にグッと力が入る。
「……ねえ。最近、親の様子がおかしかった……とかある?」
小春はスマホに目を向けたまま、ボソッと呟いた。
……親の様子?
俺と翔は顔を合わせるが、凛は変わりなかったかなぁと、日常会話のように返していた。
「そっか。……良かった」
小さく溜息を吐いた小春は、次は窓から外の景色を見上げていた。
そこには変わらずにヘリコプターが迂回しており、これも仕掛けにしては大きすぎるよなっと思わず眺め続けてしまう。
「ん?」
機体横の文字が「警視庁」と、見えたような気がした。
いや、まさか。そんなはずないだろ!
さすがにそこまで出来るわけないって。警察名乗るって大問題だろ。
これは何かの撮影なんだよ。だから、だから……。
「慎吾。ねえ、大丈夫?」
こちらをまじまじと見つめる小春に、俺の息は大きく切れており、額から多量の汗が流れていたと気付く。
「あ。ごめん、ごめん。大丈夫だから」
差し出されたミニハンカチで汗を拭う。それはキャラクターのうさぎの刺繍されてあり、高校生が持つには少し可愛すぎるかもしれないが、俺はそんな小春が好きだったりする。
これ以上、不安にさせてはならない。
そんな思いで、今目にしたものを自分の中でなかったことにした。
こうして、永遠に感じる時間を過ごしているとスマホより低い音声が聞こえた。
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