第181話 ゲテモノだらけパニック
ー/ー キノコまみれのその階層は、明かりで照らしてみると、視認できるくらいの胞子が舞っているのがよく見えた。まるで霧のように視界を遮っている。
「きらめきの銀河大旋風!」
我の詠唱とともに、目の前に風が解き放たれ、胞子がバァーっと退けられる。
それと同時に視界も切り開かれた。
ミモザ特製の魔力の蓄積石のおかげで消耗を気にすることはないが、相変わらず、身体への負担は大きい。突き出した腕がピリピリする。
できることなら継続的に周囲に風を放ち続けていたいが、無理そうだ。
「よし、先を急ぐぞ。変な輩が出てこぬうちにな!」
「む、寅の方角に気配があります」
トラの方角って何!?
そう訊ねようと思ったときには、ヤスミは左に向かって何かナイフのようなものを投げつける。トラってそっちなの? よく分からん。
すると、巨大キノコの影から大きな蛇が、今まさに食いかかろうとしてきていた。
が、ヤスミの投げた金属製のソレが頭に突き刺さり、地面に縫い付けられるように固定される。なんという冷静で的確な判断なんだ。
こんな巨大な蛇、我やミモザなんか丸呑みにされてしまうではないか。こわっ。
「ふひぃぃっ! フィーさん、右からも何か臭いのが近付いてきます!」
「何!?」
正反対の方向に向き直る前に、クラメが前に躍り出る。
「全て受け入れる吸引!」
突如としてクラメを中心に猛烈な暴風が吹き荒れる。
正確に言えば、クラメの顔面に向かって全てが吸引されていく。
そこらを舞っていた胞子が吸い取られ、それと同時にキノコの影からナメクジが、吸い寄せられて姿を現した。隠れてこっちの様子を伺っていたのか。
「えいっ!」
再び、ヤスミが先端の尖った武器を投げ放つ。
巨大なナメクジは一瞬だけもがき、ピクンピクンと地面の上で力尽きる。
「く、クラメ……? 大丈夫なのか? 今、思いっきり胞子を吸い込んだが」
「ふひ、大丈夫です。わ、私の魔法は、どんな猛毒も、む、無効にします」
「そ、そうなのか。凄い魔法を習得しているな」
「はい。リコリスさんに、ふひ、教えてもらったんですよ」
途端に納得してしまった。
アイツならそのくらいトンデモな魔法、いくらでも作れるだろうな。
それでいて、クラメでも使えるようにすることも造作もない。
「フィーしゃん! あ、あれを見てくらしゃい!」
ミモザが前方に向けて明かりを突き付ける。
クラメの吸引により、胞子の霧が広範囲に消えたおかげで、隠れている輩が次々に姿を現していた。……というか、我の突風魔法、役に立った?
一応、あの蛇と蟲の注意を惹く程度には役に立ったのかもしれないが。
それにしたって、蜘蛛やら蛇やらナメクジやら。
うじゃうじゃと気味の悪い洞穴だ。
「ふひ、あの蜘蛛が密集しているところに穴が。き、きっと下層への道ですね」
思っていたより近い位置にあったのか、ぽっかりと空いた床に大穴に霧蜘蛛たちが懐中の発光筒の光に当てられ、逃げ込んでいる様子もそこから見てとれた。
「だがあの数を全部相手にはしていられないぞ。ここは一気に走り抜けるしかない」
「皆殿、拙者の後ろについてきてください!」
ヤスミが走り出す。そして我らもそれに続く。
多分、本気で走ったら追いつけないんだろうな、というのは分かった。
いい具合に歩幅も調整してくれているのか、ヤスミから離されることはなかった。
「そこっ!」
ヤスミの手から放たれた武器がバシバシ的確に障害を除去し、立ち止まることなく一気に次の階層への道を切り開いていく。
さっきから投げてるソレ、何? 一体いくつ携帯してるの? 重くないの?
「皆殿、このまま穴に飛び込みますよ!」
先陣を切って、ヤスミが下層に続く穴へと飛び込む。
それに続くように、ミモザとクラメ、そして我も飛び込んでいった。
穴の中は傾斜があり、落ちていくというよりも滑り降りていく感じだった。
勢いに任せて穴に飛び込んでしまったが、この下の層はどうなっているんだ。
不安を抱えていたが、滑っている体勢のせいで手に持った懐中の発光筒では上手く前方を照らしだすことができなかったため、その先が見えない。
高所からの落下とか勘弁してほしいのだが。
滑り降りていくスピードは加速していくも、目の前一杯に闇が広がる。
「うぐっ?!」
次の瞬間、何かが我の身体に巻き付いてくる感覚に襲われる。
かと思えば、何かにドスンとぶつかった。暗くてよく見えない。
何故だか身体が浮かんでいるような気がする。地に足がついている感覚がない。
「皆殿……静かに」
間近からヤスミがボソリと小さな声でいう。
懐中の発光筒が周囲を照らした。
「むぎゅぅ……」
「ふひぃ……」
なんということか、密着した状態でミモザとクラメがいた。
なんか身動きがとれないなと思ったら、我も含めて縄でグルグルに縛られている。
「どうやら、下に霧蜘蛛が集っているようです」
下を見下ろして、またギョッとする。
ワラワラ、うじゃうじゃと、霧蜘蛛の群れが見えた。気持ち悪っ。
そしてそこでようやくして自分の状況を把握できた。
穴の出口は床がなかったのだ。そこで先に降りていたヤスミが縄を引っかけて三人を同時に吊り上げ、落ちないようにしてくれていたわけだ。
よくぞそれを一瞬で判断したな。というか、小柄とはいえ、よく三人も同時に吊り上げることができたな。意外と怪力なのかもしれない。
「あのまま落ちてたらさすがに蜘蛛に食われていたかもしれんな……」
いくら温厚とはいえ、あんなところにドボンと落っこちたら敵対されるだろうな。
九死に一生を得るとはこのことか。
「ふひゅぅぅぅ……ここも一段と臭いが……それに揺れてて気分も……」
「ごめんなさい、クラメ殿。今しばらく辛抱を」
三人とも縄でグルグル巻きにされた挙げ句、宙にぶらんぶらんの状態。
とっさに壁にフックで引っかけてくれたようだが、不安定すぎて怖い。
ヤスミは鉤爪を両手足につけて、器用に壁を移動する。その姿はまるで蜘蛛だな。
「丁度いい足場がありました。今、引き上げますよ」
ガクンと身体が揺れ、浮遊感に襲われる。
助けられているとはいえ、あまり気分のいいものではない。
そのまま身体は上へ上へと持ち上げられていき、どうにか地に足がついた。
「皆殿、お怪我はありませんか?」
「助かったぞ、ヤスミ……ああ、生きた心地がしなかった」
「見たところ、随分広い空間のようですね。天井の高さからいっても先ほどの階層の倍以上はあるみたいですが」
「多分床が抜けてしまったのかもしれましぇん。大きい集落だと巣穴を固めきれずに落っこちてしまうこともたまにあるんでふよ」
それは何だかマヌケな蜘蛛だな。だからあんなに床にウジャウジャしてるのか。
確かに数が増えれば重量に耐えられなくなるのだろうが。
「つまりそれだけ幹部が大きくなっているという証拠れす」
「……幹部? あの蜘蛛どもの統括するボスがいるのか?」
「集落の規模は女王のカピャシチーで決まりまふから」
キャパシティな。
「群れが大きくなるにつれて、幹部も成長し、その環境に応じて別の個体に進化するんでふよ」
「あの蜘蛛にそんな生態があるのか……」
「ヤスミしゃん。あの中に体格が他より倍以上大きいクモしゃんはいまふか?」
「いえ、拙者が見た限りではこれまでと同じくらいの大きさですよ」
それだけ聞くとミモザは息を飲み、顔を強ばらせ、言葉を選ぶように間を空ける。
「どうやらこの巣穴のボスは、操糸の幻影蜘蛛で間違いないれすね」
ミモザは青ざめた顔で、そう言った。
「きらめきの銀河大旋風!」
我の詠唱とともに、目の前に風が解き放たれ、胞子がバァーっと退けられる。
それと同時に視界も切り開かれた。
ミモザ特製の魔力の蓄積石のおかげで消耗を気にすることはないが、相変わらず、身体への負担は大きい。突き出した腕がピリピリする。
できることなら継続的に周囲に風を放ち続けていたいが、無理そうだ。
「よし、先を急ぐぞ。変な輩が出てこぬうちにな!」
「む、寅の方角に気配があります」
トラの方角って何!?
そう訊ねようと思ったときには、ヤスミは左に向かって何かナイフのようなものを投げつける。トラってそっちなの? よく分からん。
すると、巨大キノコの影から大きな蛇が、今まさに食いかかろうとしてきていた。
が、ヤスミの投げた金属製のソレが頭に突き刺さり、地面に縫い付けられるように固定される。なんという冷静で的確な判断なんだ。
こんな巨大な蛇、我やミモザなんか丸呑みにされてしまうではないか。こわっ。
「ふひぃぃっ! フィーさん、右からも何か臭いのが近付いてきます!」
「何!?」
正反対の方向に向き直る前に、クラメが前に躍り出る。
「全て受け入れる吸引!」
突如としてクラメを中心に猛烈な暴風が吹き荒れる。
正確に言えば、クラメの顔面に向かって全てが吸引されていく。
そこらを舞っていた胞子が吸い取られ、それと同時にキノコの影からナメクジが、吸い寄せられて姿を現した。隠れてこっちの様子を伺っていたのか。
「えいっ!」
再び、ヤスミが先端の尖った武器を投げ放つ。
巨大なナメクジは一瞬だけもがき、ピクンピクンと地面の上で力尽きる。
「く、クラメ……? 大丈夫なのか? 今、思いっきり胞子を吸い込んだが」
「ふひ、大丈夫です。わ、私の魔法は、どんな猛毒も、む、無効にします」
「そ、そうなのか。凄い魔法を習得しているな」
「はい。リコリスさんに、ふひ、教えてもらったんですよ」
途端に納得してしまった。
アイツならそのくらいトンデモな魔法、いくらでも作れるだろうな。
それでいて、クラメでも使えるようにすることも造作もない。
「フィーしゃん! あ、あれを見てくらしゃい!」
ミモザが前方に向けて明かりを突き付ける。
クラメの吸引により、胞子の霧が広範囲に消えたおかげで、隠れている輩が次々に姿を現していた。……というか、我の突風魔法、役に立った?
一応、あの蛇と蟲の注意を惹く程度には役に立ったのかもしれないが。
それにしたって、蜘蛛やら蛇やらナメクジやら。
うじゃうじゃと気味の悪い洞穴だ。
「ふひ、あの蜘蛛が密集しているところに穴が。き、きっと下層への道ですね」
思っていたより近い位置にあったのか、ぽっかりと空いた床に大穴に霧蜘蛛たちが懐中の発光筒の光に当てられ、逃げ込んでいる様子もそこから見てとれた。
「だがあの数を全部相手にはしていられないぞ。ここは一気に走り抜けるしかない」
「皆殿、拙者の後ろについてきてください!」
ヤスミが走り出す。そして我らもそれに続く。
多分、本気で走ったら追いつけないんだろうな、というのは分かった。
いい具合に歩幅も調整してくれているのか、ヤスミから離されることはなかった。
「そこっ!」
ヤスミの手から放たれた武器がバシバシ的確に障害を除去し、立ち止まることなく一気に次の階層への道を切り開いていく。
さっきから投げてるソレ、何? 一体いくつ携帯してるの? 重くないの?
「皆殿、このまま穴に飛び込みますよ!」
先陣を切って、ヤスミが下層に続く穴へと飛び込む。
それに続くように、ミモザとクラメ、そして我も飛び込んでいった。
穴の中は傾斜があり、落ちていくというよりも滑り降りていく感じだった。
勢いに任せて穴に飛び込んでしまったが、この下の層はどうなっているんだ。
不安を抱えていたが、滑っている体勢のせいで手に持った懐中の発光筒では上手く前方を照らしだすことができなかったため、その先が見えない。
高所からの落下とか勘弁してほしいのだが。
滑り降りていくスピードは加速していくも、目の前一杯に闇が広がる。
「うぐっ?!」
次の瞬間、何かが我の身体に巻き付いてくる感覚に襲われる。
かと思えば、何かにドスンとぶつかった。暗くてよく見えない。
何故だか身体が浮かんでいるような気がする。地に足がついている感覚がない。
「皆殿……静かに」
間近からヤスミがボソリと小さな声でいう。
懐中の発光筒が周囲を照らした。
「むぎゅぅ……」
「ふひぃ……」
なんということか、密着した状態でミモザとクラメがいた。
なんか身動きがとれないなと思ったら、我も含めて縄でグルグルに縛られている。
「どうやら、下に霧蜘蛛が集っているようです」
下を見下ろして、またギョッとする。
ワラワラ、うじゃうじゃと、霧蜘蛛の群れが見えた。気持ち悪っ。
そしてそこでようやくして自分の状況を把握できた。
穴の出口は床がなかったのだ。そこで先に降りていたヤスミが縄を引っかけて三人を同時に吊り上げ、落ちないようにしてくれていたわけだ。
よくぞそれを一瞬で判断したな。というか、小柄とはいえ、よく三人も同時に吊り上げることができたな。意外と怪力なのかもしれない。
「あのまま落ちてたらさすがに蜘蛛に食われていたかもしれんな……」
いくら温厚とはいえ、あんなところにドボンと落っこちたら敵対されるだろうな。
九死に一生を得るとはこのことか。
「ふひゅぅぅぅ……ここも一段と臭いが……それに揺れてて気分も……」
「ごめんなさい、クラメ殿。今しばらく辛抱を」
三人とも縄でグルグル巻きにされた挙げ句、宙にぶらんぶらんの状態。
とっさに壁にフックで引っかけてくれたようだが、不安定すぎて怖い。
ヤスミは鉤爪を両手足につけて、器用に壁を移動する。その姿はまるで蜘蛛だな。
「丁度いい足場がありました。今、引き上げますよ」
ガクンと身体が揺れ、浮遊感に襲われる。
助けられているとはいえ、あまり気分のいいものではない。
そのまま身体は上へ上へと持ち上げられていき、どうにか地に足がついた。
「皆殿、お怪我はありませんか?」
「助かったぞ、ヤスミ……ああ、生きた心地がしなかった」
「見たところ、随分広い空間のようですね。天井の高さからいっても先ほどの階層の倍以上はあるみたいですが」
「多分床が抜けてしまったのかもしれましぇん。大きい集落だと巣穴を固めきれずに落っこちてしまうこともたまにあるんでふよ」
それは何だかマヌケな蜘蛛だな。だからあんなに床にウジャウジャしてるのか。
確かに数が増えれば重量に耐えられなくなるのだろうが。
「つまりそれだけ幹部が大きくなっているという証拠れす」
「……幹部? あの蜘蛛どもの統括するボスがいるのか?」
「集落の規模は女王のカピャシチーで決まりまふから」
キャパシティな。
「群れが大きくなるにつれて、幹部も成長し、その環境に応じて別の個体に進化するんでふよ」
「あの蜘蛛にそんな生態があるのか……」
「ヤスミしゃん。あの中に体格が他より倍以上大きいクモしゃんはいまふか?」
「いえ、拙者が見た限りではこれまでと同じくらいの大きさですよ」
それだけ聞くとミモザは息を飲み、顔を強ばらせ、言葉を選ぶように間を空ける。
「どうやらこの巣穴のボスは、操糸の幻影蜘蛛で間違いないれすね」
ミモザは青ざめた顔で、そう言った。
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