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いつも読んでくれてありがとう!

ー/ー



 エリシアとヴァイは喫茶店で暇を潰していた。



 目の前には食べ終わったシロノワールの皿と空になったコーヒーカップが置かれている。店内には心地よいBGMが流れていたが、二人のテーブルだけは妙に静かだった。



 ——ポチポチ。



 ヴァイはスマホを片手にLINEのやり取りをしている。

 一方、エリシアもずっとスマホをいじりながら何かに夢中になっている様子だった。



「はぁ……」



 突然、エリシアが深いため息をついた。その声に気づき、ヴァイが顔を上げる。



「あぁん?どうしたァ?」



 相変わらず軽い調子で問いかけるヴァイに、エリシアはスマホをテーブルに置き、やや苛立った表情を浮かべた。



 エリシアは顔を上げて答えた。



「いや、『小説家になろう』に投稿してる小説が全然伸びませんの。」



 ヴァイは思い出したように「あぁ」と声を漏らす。



「……あぁ、そういえばお前、小説書いてたな。」



 以前、エリシアが「やっと一人だけ見てくれた」と嬉しそうに話していたのを思い出す。しかし、それは結局ウェブクローラーだったというオチだった。



「だからこうやって投稿するたびに……アナリティクスを……」



 ——ポチポチポチポチ。



 エリシアはスマホをタップし続け、アクセス解析の画面を更新し続けている。その姿には執念すら感じられる。



「で、今どんくらい見てんだよ。」



 ヴァイがニヤニヤしながらエリシアのスマホを覗き込む。



 ——本日のアクセス解析:合計57pv



 その数字を見た瞬間、ヴァイは吹き出しそうになりながら笑った。



「ゴミみてえだなぁ!」

「死ね!」



 エリシアはスマホを握りしめながら、ヴァイを鋭く睨みつけた。空気が一瞬だけピリつくが、ヴァイは全く動じることなく、さらに笑みを深めるのだった。



 「おっかしいですわねぇ……こんだけ書いてるのに、もうちょっと増えても良いはずなんですのに……。」



 エリシアはスマホを凝視しながら、苛立たしげに言った。



「知らねえよ。黙って書いとけよ。」

 ヴァイは肩をすくめながら冷たく言い放つ。



「感想も一件もつかないんですのよ!」



 その言葉に、ヴァイは少しの間考えるような仕草を見せると、ニヤリと笑った。



「ところでお前ヨォ……、他の奴らが書いた小説に感想書いたことあるか?」



「はぁ?書きませんわよ、めんどくさい。」



 エリシアが即答すると、ヴァイの笑みはさらに広がった。



「そういうことだゼェ。」



 ——バシン!



 その一言が、強烈なブーメランとなってエリシアに突き刺さる。

「……」



 エリシアはスマホを握りしめたまま無言になり、テーブルを睨みつけた。ヴァイはそんな彼女の様子を見て、ニヤニヤ笑いながらコーヒーを飲むのだった。


 
 「ぐぬぬ……」



 エリシアはヴァイを睨みつけるが、彼は飄々とした態度で話題を変えた。



「そうだ、俺のツレの話してやろうか?」

「……あん?」



「そいつラーメンが好きでなぁ。いつも通ってるラーメン屋があんだよ。地元の……まあ『知る人ぞ知る』ってカンジの店でよ。要するにマイナーなわけ。」



 ヴァイは話を盛り上げるように身振り手振りを加えながら続けた。



「でさ、それがテレビの……『鼓動のグルメ』だったかなぁ……みたいな番組で紹介されてな。そっからしばらくしたら、スッゲエエエ行列できてやんの!」



「ラーメンがどうかしましたの!?」



 エリシアは苛立ちながら突っ込むが、ヴァイは気にせず話を続けた。



「そしたらそいつ、『もう行かねえ』って言ってやんの!ゲヘヘヘヘ!いや、理由聞いたらさ、『行列できた途端味が落ちた』だの『有名になってミーハーどもに荒らされた』だの、わけわかんねえこと言ってんだよ!」



「……」



 エリシアは興味半分、呆れ半分といった顔で聞いていたが、ヴァイはさらに話を続けた。



「で、俺ヨォ……あいつに黙って一人で食いに行ったんだわ。そしたらお前、味なんかほとんど変わってねえの!確かによ、客が多いもんで麺の湯切りが甘いとかでスープがちょっと薄かった気はしたけど、別に大した違いじゃねえぜ?」



 エリシアは顎に手をやりながら考え込むように言った。



「もしかしてそれって、『マイナーな店知ってる俺かっけええええ!』じゃありませんの?」



 ——ビシッ!



 ヴァイは勢いよく人差し指を突きつけた。

「そうそれ!」



 ヴァイは咳払いを一つしてから、少し落ち着いた様子で話し始めた。





「だからヨォ、お前さぁ……な?小説が伸びなくてもよぉ……マイナー小説にはマイナーなりの良さがあるってもんだゼェ?」





「……」



 エリシアは無言のままじっとヴァイを睨む。その肩が小刻みに震えている。



 ——プルプル……。



 数秒の沈黙の後——。





「オラああぁ!待てやゴルアァ!キエえぇエえええぇ〜!」





 ——ガシャァン!



 怒りに燃えたエリシアの手から放たれた巨大な氷柱が、近くに放置されていた自転車を木っ端微塵にした。



 ヴァイはその光景に目を丸くしながらも、ひょいひょいと魔法をかわしながら逃げ回る。



「誰が!売れないマイナー小説家ですって!?こっちは書籍化目指してんですの!」



「ゲヒャヒャヒャ!書籍化だってよ!自費出版でもしてろよ!」



 エリシアの怒声とヴァイの笑い声が喫茶店の外にまで響き渡る中、破壊された自転車だけが惨状を物語っていた。



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 エリシアとヴァイは喫茶店で暇を潰していた。
 目の前には食べ終わったシロノワールの皿と空になったコーヒーカップが置かれている。店内には心地よいBGMが流れていたが、二人のテーブルだけは妙に静かだった。
 ——ポチポチ。
 ヴァイはスマホを片手にLINEのやり取りをしている。
 一方、エリシアもずっとスマホをいじりながら何かに夢中になっている様子だった。
「はぁ……」
 突然、エリシアが深いため息をついた。その声に気づき、ヴァイが顔を上げる。
「あぁん?どうしたァ?」
 相変わらず軽い調子で問いかけるヴァイに、エリシアはスマホをテーブルに置き、やや苛立った表情を浮かべた。
 エリシアは顔を上げて答えた。
「いや、『小説家になろう』に投稿してる小説が全然伸びませんの。」
 ヴァイは思い出したように「あぁ」と声を漏らす。
「……あぁ、そういえばお前、小説書いてたな。」
 以前、エリシアが「やっと一人だけ見てくれた」と嬉しそうに話していたのを思い出す。しかし、それは結局ウェブクローラーだったというオチだった。
「だからこうやって投稿するたびに……アナリティクスを……」
 ——ポチポチポチポチ。
 エリシアはスマホをタップし続け、アクセス解析の画面を更新し続けている。その姿には執念すら感じられる。
「で、今どんくらい見てんだよ。」
 ヴァイがニヤニヤしながらエリシアのスマホを覗き込む。
 ——本日のアクセス解析:合計57pv
 その数字を見た瞬間、ヴァイは吹き出しそうになりながら笑った。
「ゴミみてえだなぁ!」
「死ね!」
 エリシアはスマホを握りしめながら、ヴァイを鋭く睨みつけた。空気が一瞬だけピリつくが、ヴァイは全く動じることなく、さらに笑みを深めるのだった。
 「おっかしいですわねぇ……こんだけ書いてるのに、もうちょっと増えても良いはずなんですのに……。」
 エリシアはスマホを凝視しながら、苛立たしげに言った。
「知らねえよ。黙って書いとけよ。」
 ヴァイは肩をすくめながら冷たく言い放つ。
「感想も一件もつかないんですのよ!」
 その言葉に、ヴァイは少しの間考えるような仕草を見せると、ニヤリと笑った。
「ところでお前ヨォ……、他の奴らが書いた小説に感想書いたことあるか?」
「はぁ?書きませんわよ、めんどくさい。」
 エリシアが即答すると、ヴァイの笑みはさらに広がった。
「そういうことだゼェ。」
 ——バシン!
 その一言が、強烈なブーメランとなってエリシアに突き刺さる。
「……」
 エリシアはスマホを握りしめたまま無言になり、テーブルを睨みつけた。ヴァイはそんな彼女の様子を見て、ニヤニヤ笑いながらコーヒーを飲むのだった。
 「ぐぬぬ……」
 エリシアはヴァイを睨みつけるが、彼は飄々とした態度で話題を変えた。
「そうだ、俺のツレの話してやろうか?」
「……あん?」
「そいつラーメンが好きでなぁ。いつも通ってるラーメン屋があんだよ。地元の……まあ『知る人ぞ知る』ってカンジの店でよ。要するにマイナーなわけ。」
 ヴァイは話を盛り上げるように身振り手振りを加えながら続けた。
「でさ、それがテレビの……『鼓動のグルメ』だったかなぁ……みたいな番組で紹介されてな。そっからしばらくしたら、スッゲエエエ行列できてやんの!」
「ラーメンがどうかしましたの!?」
 エリシアは苛立ちながら突っ込むが、ヴァイは気にせず話を続けた。
「そしたらそいつ、『もう行かねえ』って言ってやんの!ゲヘヘヘヘ!いや、理由聞いたらさ、『行列できた途端味が落ちた』だの『有名になってミーハーどもに荒らされた』だの、わけわかんねえこと言ってんだよ!」
「……」
 エリシアは興味半分、呆れ半分といった顔で聞いていたが、ヴァイはさらに話を続けた。
「で、俺ヨォ……あいつに黙って一人で食いに行ったんだわ。そしたらお前、味なんかほとんど変わってねえの!確かによ、客が多いもんで麺の湯切りが甘いとかでスープがちょっと薄かった気はしたけど、別に大した違いじゃねえぜ?」
 エリシアは顎に手をやりながら考え込むように言った。
「もしかしてそれって、『マイナーな店知ってる俺かっけええええ!』じゃありませんの?」
 ——ビシッ!
 ヴァイは勢いよく人差し指を突きつけた。
「そうそれ!」
 ヴァイは咳払いを一つしてから、少し落ち着いた様子で話し始めた。
「だからヨォ、お前さぁ……な?小説が伸びなくてもよぉ……マイナー小説にはマイナーなりの良さがあるってもんだゼェ?」
「……」
 エリシアは無言のままじっとヴァイを睨む。その肩が小刻みに震えている。
 ——プルプル……。
 数秒の沈黙の後——。
「オラああぁ!待てやゴルアァ!キエえぇエえええぇ〜!」
 ——ガシャァン!
 怒りに燃えたエリシアの手から放たれた巨大な氷柱が、近くに放置されていた自転車を木っ端微塵にした。
 ヴァイはその光景に目を丸くしながらも、ひょいひょいと魔法をかわしながら逃げ回る。
「誰が!売れないマイナー小説家ですって!?こっちは書籍化目指してんですの!」
「ゲヒャヒャヒャ!書籍化だってよ!自費出版でもしてろよ!」
 エリシアの怒声とヴァイの笑い声が喫茶店の外にまで響き渡る中、破壊された自転車だけが惨状を物語っていた。