#5
ー/ー 当時最新と呼ばれていた300番代のキャメル級貨物船が既にいくつも退役している、いつかの未来。
一人の新人航宙船乗りが運輸会社、キャメルトレーダーに入社した。新人が配属された船は、最新型の500番代からみれば数世代前の老朽艦と呼ぶことすら憚られるような船だった。ドックで配属先の船をを目にした新人は思わずぼやく。
「はぁ、ついてないな……宇宙海賊も出ないような辺境向けの定期輸送業務って言っても、こんな船じゃいつ事故ることやら」
配属先としては外れとしか言いようがないが、下等旅行を乗り次ぐあてのない旅。大きな時代の変化を凍れる眠りの中で迎えたほどの、長い旅路の末にようやく手にした働き口をふいにする訳にもいかない。新人は肩を落としながら「オールドキャメル」と呼ばれる船のブリッジへと出頭した。
「私の船へようこそ、新人君」
出迎えてくれた船長は老朽艦にふさわしい、老人としか呼びようのない年齢の男性だった。生体年齢は少なく見積もって70歳以上、戸籍年齢だと数百歳は軽く超えていそうな船長は「オールドキャメル」にはぴったりの風貌だ。似合いの船長とはいえ、自分の勤務先として考えれば、あまりにも年老いている船にも、船長にも一抹の不安を感じざるを得ない。
「あの、船長……この船、大丈夫なんでしょうか?同型艦はもう何百年も前にみんな退役してるような、歴史博物館に飾られてる代物ですよね?」
不安から配属先の艦を酷評するような事を口走ってしまう新人。普通なら叱責される発言だが、老船長は慣れているのか優しく微笑むと告げた。
「技術革新で時代は変わったけど、それでもこの船はまだまだ現役だよ。なにせこの船は女神様の祝福を受けているからね」
「女神様、ですか?」
確かに危険な宇宙を旅する航宙船乗りには験を担ぎ、信仰を重んじるものも多い。
「そう、二人の女神様さ」
ジョウと名乗った老船長は壁に掲げられた一枚の写真を優しい眼差しで見つめながら、そう繰り返した。
「この船はね、最新の500番代よりもずっと軽やかに大宇宙を翔るんだ。オールドキャメルと言う名は、この船が鈍足だからそう呼ばれてるんじゃない。どうやってもこの船に勝てない連中がやっかんで付けた、名誉ある二つ名なんだよ」
――虹色の瞳が印象的で、一目見たら忘れられない銀髪の少女。
――輝くような笑顔が魅力的な、紅色の瞳とライトブラウンの髪を持つ少女。
写真に写っていたのは、かつてこの船を、そして宇宙を救った二人の少女の姿だった。
「キャメル067」。後に伝説となった水晶の歌い手によって再調律を施された船は、その名を「オールドキャメル」に変えた今もなお現役で、大宇宙を翔けている。
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