2話 閉じ込められた六組
ー/ー昨日は夏休みに入って、初めての日曜日。
小春とは次の日に会う予定だったが、昼頃にメッセージが来て「五時に学校へ来て欲しい」と連絡があった。しかも、「制服を着て来るように」と指定までして。
そんな小春の文面に要領を得なかったが、何か困っているのかと無理矢理自分を納得させた俺は、学校へと向かった。
すると裏門から入ってきて欲しいと追加で連絡がきて、不審に思いながら入って行って。……記憶は、そこで途切れていた。
その呼び出しのメッセージを確認しようとしたが、電波が立っていない現状から、それは無理だった。
小春も同様の常套句で学校に来ていたが、一つだけ相違点がある。それは、呼び出し時間が夕方四時半だということだった。
何者かが、計画的にこの場所に生徒を集めたかもしれない。その可能性に、ゾクリと背筋が凍りついた。
スマホが表示する時間は、七時三十二分。
小春のスマホも同様の時刻らしく、確かに朝登校して来る時、太陽は廊下方面から差してきている。
今が朝だとしたら、俺達は十二時間以上も学校で眠っていたということなのか?
状況が分かっていくごとに今度は意味が分からなくなっていき、とにかく何か手掛かりを得ようと窓から周囲を見渡す。
三階からの景色はいつもと同じ校庭だが、異変があるのは校門の先。全身黒をまとったような人物が、数えきれないくらいに立ち尽くしている。
何なんだよ、あれ!
心の奥より押し寄せる恐怖に足を掴まれたように動けないでいると、遠くより放たれる振動と騒音は段々と大きくなり、次は心臓を掴まれたような錯覚を起こす。
パラパラパラパラ。
轟音を立てていたのは上空から見えるヘリコプターだったようで、広がる青い空と入道雲を遮るかのように飛び回っている。
「なんだ……、あれかぁ」
周りの生徒たちの溜息を聞きながら共に安堵するが、しかしそのヘリコプターは学校上空を迂回しており、明らかに挙動がおかしい。
──何か、あったんだ。
非日常過ぎる光景に、只事ではないのだと俺達に不穏の空気を伝えてくる。
視線を廊下の方に戻して周囲を見渡すと、目に入ったのは天井に黒い光沢の丸い物が一定の間隔で続いている光景で、スーパーなどで見る監視カメラのように見えた。
いや、まさかと思い直すが、突然指先に違和感を覚えたような気がして、思わず指を視線の元に持ってくる。
ドクロの指輪は不気味に笑っており、まるで目が合ったような気がして、顔を背ける。
……昨日より記憶がないのは、この指輪のせいではないか?
いかに非現実的なことを思考し始めていると自覚はしていが、これにより悪い電波でも出ているんじゃないかと、都合良く責任転嫁させる矛先を見つけてしまっていた。
この意味が分からない現状を何とか打破したくて、冷たい金属の指輪に指をかける。
「指輪を外すなー!」
恐怖でざわつく声から、確かな意思を感じ取れる声が俺の耳に響いてくる。
そっちに目を向けると、頭一つ飛び抜けた長身にシャツの腕から伸びる、日焼けしたゴツい筋肉。
一目で分かる声の主は、俺と隣のクラスで友人の斉藤 翔だった。
二年二組の翔も来ているということは、ここにいるのは同じクラスの生徒だけじゃないのか?
その後ろを走ってくるのは二年二組の大林凛で、その答え合わせは簡単に出来てしまった。
俺の抜けかけていた指輪をグッと奥に押し込んだ翔の指先までも頼もしく、それは身長にも出ていて百七十五センチあるらしい。
野球部所属で短髪が良く似合い、キリッとした目に、整った鼻筋を持ち合わせている。カッターシャツの第一歩ボタンを開け適度に着崩した制服が似合い、野球のユニホームも、ラフな私服まで着こなしてしまう。
まさに俺の理想を絵に描いたような存在だ。
しかし、そんな翔が言う指輪は外すなの意味。一体、どうゆうことだろうか?
『そうですね。外さない方が賢明だと思います』
突如ポケットより響いた無機質な声はスマホの受話口より放たれているようで、感情が読み取れない淡々としたものだった。
液晶画面に目をやるといつもの待機画面ではなく、見たこともない赤色の三日月が映し出されている。
「誰! 誰なのー!」
畳み掛けるように起こる非日常の数々に、パニック状態になっていた生徒達による悲鳴に包まれていく。
暑い廊下が、よりむさ苦しくなった。
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