ep125 再会
ー/ー 【3】
「信用できるのか? 彼女は」
宿屋の食堂の席に着くなり、俺は向かいのカレンに尋ねた。
「アイは約束を反故にするような奴ではない」
カレンはすこぶる冷静に答える。
「彼女があのように言うなら今は従ったほうがいいと思う。ましてやキラースまで現れたのだからな。ここでヘッドフィールドと衝突するのはリスクが高すぎる」
「クロー。気持ちはわかるけど落ち着いて。まずはあの女を待とう」
隣のエレサが俺の膝に手を置いてなだめるように言ってきた。俺は落ち着いていないのか? 焦っているのか?
「ああ、大丈夫だ」
そう答えると、エレサは俺の膝を撫でで微笑んだ。彼女の目は妙に優しげだった。
「嬢ちゃん、元気だといいがな」
「ああ」
トレブルとブーストがそう口にした時、入口のドアがガラッと開き、女ギャングがつかつかと入ってきた。その横には、見慣れた顔の少女がいる。
「シヒロ!」
俺を筆頭に一同はガタッと立ち上がった。
「みなさぁぁん!」
身体のどこも拘束されていないシヒロは勢いよく駆け寄ってきた。
「嬢ちゃん!」
「無事で良かったぜ!」
トレブルとブーストが安堵の笑顔で迎えた。それを見てエレサとカレンも微笑した。
「く、クローさぁん」
シヒロは俺に接近してきて、俺の胸にそっと額を寄せてくる。
「クローさぁん。ごめんなさい……」
俺はシヒロの頭にポンと手を添えて優しくなでる。
「なんでシヒロが謝るんだ? 謝るのはこっちだ」
「クローさぁん」
シヒロは潤んだ瞳で俺を見上げた。それは紛れもなく純真な少女の目。決して傷つけてはならないもの。
「そうだシヒロ。これを」
俺はシヒロに彼女の所持品一式が入っていたカバンを渡す。
「あ、ありがとうございます!」
「ちゃんと執筆ノートも入っている」
「クローさぁん……」
俺はシヒロの頭をもうひとなですると、アイへ視線を移す。
「別にシヒロが自分の荷物を持っているぐらいはいいだろ?」
アイは目で頷いてから、
「魔剣使い。悪いがここまでだ。もう彼女を連れていく」
ピシャリとこの場を締めた。
俺はカレンに視線を送る。彼女は無言でこくんと頷いた。
「シヒロ」
俺は少女の小さい肩に手を添えて言い聞かせた。
「もう少しだけ待っていてくれ」
「はい。ぼくはクローさんを信じて待っています」
シヒロは精一杯に笑って見せた。それからカレンとエレサの方へ向いた。
「まさかカレンさんもいるなんて…ありがとうございます。エレサさんもありがとうございます」
シヒロは彼女たちにお辞儀をした。
「それではもう行く。念のためもう一度言っておくが尾行はナシだ。わかったな?」
アイは強く念を押してきた。
「わかった。ただひとつ聞かせてくれ」とカレン。
「なんだ?」
「アイ。シヒロの拉致は、お前の望むような仕事か?」
カレンはいぶかしがっている。どういう意図の質問だろうか。
「そう思うか?」
アイの顔はかすかに渋くなったように見えた。
「いや.……わかった」
それ以上カレンは問いたださなかった。
一瞬、部屋に沈黙が落ちる。
間もなくアイはきびすを返すと、シヒロを促して出口へ歩いていく。シヒロは一度だけ振り返って、訴えるように俺の目をじっと見つめてきた。
「……」
しかしなにも口にせず、そのまま去っていった。
「ダンナ。本当に追わなくてもいいのか?」
「てゆーか力づくで取り返すチャンスだぜ?」
トレブルとブーストの言うことはもっともだ。けど、カレンの言うとおり俺もアイという女ギャングは敵ながら信用できると思った。まず、シヒロに身になんの枷も施していないこと。くわえて彼女は部下も連れずひとりでシヒロを連れてきたこと。さらにはシヒロも自分から逃げようとしなかったこと。それは決して脅されているふうでもなかった。なんなら今はこうしていることが最善だとでも言いたげだった。
「……」
俺はこのなんだか茶番めいた一連に、彼らの持つなんらかの事情を推察した。そして自分の中で密かに、ジェイズという男への興味がふつふつと湧いてきていることに気づく。
すべてのことは繋がっているようで矛盾しているようで霧隠る。あるいはこれは〔魔導剣〕を手に取り〔魔導剣士〕となった俺の中の何かがそうさせているのだろうか……。
「信用できるのか? 彼女は」
宿屋の食堂の席に着くなり、俺は向かいのカレンに尋ねた。
「アイは約束を反故にするような奴ではない」
カレンはすこぶる冷静に答える。
「彼女があのように言うなら今は従ったほうがいいと思う。ましてやキラースまで現れたのだからな。ここでヘッドフィールドと衝突するのはリスクが高すぎる」
「クロー。気持ちはわかるけど落ち着いて。まずはあの女を待とう」
隣のエレサが俺の膝に手を置いてなだめるように言ってきた。俺は落ち着いていないのか? 焦っているのか?
「ああ、大丈夫だ」
そう答えると、エレサは俺の膝を撫でで微笑んだ。彼女の目は妙に優しげだった。
「嬢ちゃん、元気だといいがな」
「ああ」
トレブルとブーストがそう口にした時、入口のドアがガラッと開き、女ギャングがつかつかと入ってきた。その横には、見慣れた顔の少女がいる。
「シヒロ!」
俺を筆頭に一同はガタッと立ち上がった。
「みなさぁぁん!」
身体のどこも拘束されていないシヒロは勢いよく駆け寄ってきた。
「嬢ちゃん!」
「無事で良かったぜ!」
トレブルとブーストが安堵の笑顔で迎えた。それを見てエレサとカレンも微笑した。
「く、クローさぁん」
シヒロは俺に接近してきて、俺の胸にそっと額を寄せてくる。
「クローさぁん。ごめんなさい……」
俺はシヒロの頭にポンと手を添えて優しくなでる。
「なんでシヒロが謝るんだ? 謝るのはこっちだ」
「クローさぁん」
シヒロは潤んだ瞳で俺を見上げた。それは紛れもなく純真な少女の目。決して傷つけてはならないもの。
「そうだシヒロ。これを」
俺はシヒロに彼女の所持品一式が入っていたカバンを渡す。
「あ、ありがとうございます!」
「ちゃんと執筆ノートも入っている」
「クローさぁん……」
俺はシヒロの頭をもうひとなですると、アイへ視線を移す。
「別にシヒロが自分の荷物を持っているぐらいはいいだろ?」
アイは目で頷いてから、
「魔剣使い。悪いがここまでだ。もう彼女を連れていく」
ピシャリとこの場を締めた。
俺はカレンに視線を送る。彼女は無言でこくんと頷いた。
「シヒロ」
俺は少女の小さい肩に手を添えて言い聞かせた。
「もう少しだけ待っていてくれ」
「はい。ぼくはクローさんを信じて待っています」
シヒロは精一杯に笑って見せた。それからカレンとエレサの方へ向いた。
「まさかカレンさんもいるなんて…ありがとうございます。エレサさんもありがとうございます」
シヒロは彼女たちにお辞儀をした。
「それではもう行く。念のためもう一度言っておくが尾行はナシだ。わかったな?」
アイは強く念を押してきた。
「わかった。ただひとつ聞かせてくれ」とカレン。
「なんだ?」
「アイ。シヒロの拉致は、お前の望むような仕事か?」
カレンはいぶかしがっている。どういう意図の質問だろうか。
「そう思うか?」
アイの顔はかすかに渋くなったように見えた。
「いや.……わかった」
それ以上カレンは問いたださなかった。
一瞬、部屋に沈黙が落ちる。
間もなくアイはきびすを返すと、シヒロを促して出口へ歩いていく。シヒロは一度だけ振り返って、訴えるように俺の目をじっと見つめてきた。
「……」
しかしなにも口にせず、そのまま去っていった。
「ダンナ。本当に追わなくてもいいのか?」
「てゆーか力づくで取り返すチャンスだぜ?」
トレブルとブーストの言うことはもっともだ。けど、カレンの言うとおり俺もアイという女ギャングは敵ながら信用できると思った。まず、シヒロに身になんの枷も施していないこと。くわえて彼女は部下も連れずひとりでシヒロを連れてきたこと。さらにはシヒロも自分から逃げようとしなかったこと。それは決して脅されているふうでもなかった。なんなら今はこうしていることが最善だとでも言いたげだった。
「……」
俺はこのなんだか茶番めいた一連に、彼らの持つなんらかの事情を推察した。そして自分の中で密かに、ジェイズという男への興味がふつふつと湧いてきていることに気づく。
すべてのことは繋がっているようで矛盾しているようで霧隠る。あるいはこれは〔魔導剣〕を手に取り〔魔導剣士〕となった俺の中の何かがそうさせているのだろうか……。
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