「進級したわ!」
「おめでとう」
「進級したのよ!」
「あと、1年よろしくな」
「妖怪の私が、高校3年生なのよ!」
「この前まで、2年生だったからな」
「妖怪の私なのに、3年生になれたのよ!」
「おめでとう……」
絶える気配の無いマシンガントークを机に突っ伏しながら、何とか答える。眠い………
「………もっと、何かない!?」
「……何が欲しいんだよ?」
「始業式が終わった後、新しい名札をもらう時のあの緊張感! 備品管理シールを貼り替えられるのとは訳が違うのよ。自分の名前が、新しい教室のドアに貼り出される……ああ、生きてて良かったわ」
「……いや、そうかも知らんが………」
「凄い事なのよ!」
「進級は、前から決まってたじゃねぇか……?」
いや、確かに人攫いの付喪神が進級すんのも高校生活を送るってのも凄いけど、朝のローテンションでそんな事言われても頭が追い付かん。
「もっと、驚きなさいよ!」
「もぅ、十分驚いてるよ……」
「驚き方が足らないわ!」
「勘弁してくれ……」
いつも外見て黄昏てる癖に、何で朝はやたらハイテンションなんだお前は……?
「はぁ………もぅ、いいわ。横島君に気の利いた台詞を期待しても仕方ないしね」
「そりゃ、どうも……」
「褒めてない……でも、やっぱり感慨深いわね」
「そうだね……」
結局、元に戻るのかよ……?
「私じゃなくて、あなたの話よ」
「俺の……?」
「去年のこの時期……あなた、結構喜んでたじゃない「進級出来て良かった〜」って」
「…………そういや、そうだったな」
進級出来て喜んでると言うより、留年しなくて良かったって安堵してた気がすんだが、それは言わなくても良いか。
「確かに、1年の終わり頃は、かなり焦ってた気がするよ」
「そうでしょ?なのに、2年は割と余裕そうだったじゃない。やっぱり、人は成長するものなのよね『青春』だわ♪」
………………成長と言うより、あの頃は余り学校に来れなかったのが主な原因だったんだけどな。糞女にこき使われた所為で………まぁ、それこそイチイチ言わんでいいな……
それに、言われて悪い気はしない。
だから、姿勢はだらけ切ったままだったが、顔だけは愛子に向けて提案した。
「なら、今日は始業式だけだし、お互いの進級を祝して皆でどっか行くか?花見は一緒に行けなかったしな」
※『血桜』参照
「良いわね♪ちょうど、紹介したい店があったのよ」
「へぇ、どんな店?」
随分、楽しそうだな。
ファミレスやファストフード店何か進めるとは思わねぇから、個人店か何かか?
「『魔鈴魔法料理店』って言うの♪もう、凄いのよ♪♪特に主人の魔鈴って人__」
「ごめん。やっぱ、いいわ……」
あそこは、 “鬼門” なんだよ。あの娘に会うかもしんないしな………