表示設定
表示設定
目次 目次




虎・鎮静

ー/ー



 再び木へ飛び移るステルス。

 高低差を使って攻められると厄介過ぎる。以前討伐した猿の妖怪が、周りの樹木を利用した戦法使って来たけど、それに似てるな。


※『狒狒』を参照


 でも状況は、あん時よりも悪いぞ。ステルスの方が猿よりパワーもスピードも上だ。おまけに “ステルス・ハウリング” (仮名)なんて飛び道具まで、持ってやがる。


 ステルス……お前は自分を “張り子の虎” なんて自虐してたけど、とんでもねぇな。今のお前は、立派な “ステルス・タイガー” じゃねぇか………


※「ステルス」から離れられない男


「糞っ、またか……」
“グラアアアァァーーーー!!!”


 さっきと同じように飛んでくる霊波咆哮を、悪態をつきながら躱す雪之丞……それは、いいんだが…………



 ズドオオォォーーーンッ!!



 ああっ……また………!

 木には当たらなかったが、今度は地面を穿ちやがった。


“ガルゥッ!”
「ちぃっ……」


 これまた、同じように雪之丞の避け際に襲い掛かるステルス。だが、流石に予想は付いてたようで躱し切る。


「しゃらくせぇっ!!」
“ガゥッ!”


 そして、お返しとばかりに回し蹴りを放つが、これまた跳躍して躱される……なんつー反射神経とバネだよ!キリがねぇぞ。

 ただ、そうに感じてるのは俺だけじゃない………


「デケェ癖にちょこまかすんなっ!!」
「止せっ!撃つな!!」
「ちっ……」


 勢いで霊波砲を撃とうとする、雪之丞を慌てて止める。撃ち合いになったら、それこそ終わりだ。収拾が着かなくなって、2人で逃げることになりかねない。

 俺達はそれでもいいけど、あいつは良くて逮捕。悪けりゃ………洒落抜きで射殺……?


“ガアッ!グルァッ!”


 ただ、そんな俺の心配お構いなしにステルスは吠えまくる。

 この野郎、溜め撃ちから小出しに切り替えて来やがった。ますます森に傷が付くじゃねぇか、人の気も知らねぇで……!!


 ズドンッ! ズブォンッ!
 

「あんの……糞虎、調子に乗りやがって!!」


 ………………大分苛ついてるけど、元を辿ればお前が喧嘩吹っ掛けたんだからな……


 ボゴォンッ! ドォゴォンッ!

 
 ただ、呆れてばかりもいられねぇ。

 これが長引いた分だけ、森がエラい事になる。おまけで(雪之丞)がブチ切れたら、それこそさっき想像した最悪の未来一直線だ。

 とにかく、今すぐにでも奴を止めないと不味い……!


「文殊を使うっ!合図したら離れろ!!」
 

 そう言って、ポケットにある文殊に手を伸ばす。

 
「糞が!目ぇ覚ましたら、ぶっ飛ばしてやる……!」


 それに対して、不承不承頷く雪之丞………勝負なら、また出来る。今回は我慢しろ。
 


 ズドンッ! ズブォンッ! ズガァンッ!……



 …………落ち着け。

 降りてきた瞬間決めれば、一瞬で勝負は付く。俺は気を鎮めながら、ステルスの動きを注視する。

 そして……


“グラアァッ!!”


 木上から、雪之丞に襲い掛かるステルス。

 ここだな……着地する瞬間なら身動き取れねぇ。


「今だっ!」


 掛け声と同時に『眠』と刻んだ文殊を投擲!雪之丞もそれに合わせて、後ろへ跳ぶ。

 ちょうど、ステルスの死角を突いた。

 後は、発動させて決まる。そう思った瞬間だった……


「グガァッ!」
「!?」


 やべぇ…………思うと同時に、反射的に木の裏に飛び込む!



 ヴアアァァーーーーンッ!!



「ぐおっ……」


 奴の手前で、文殊が破裂した!

 ステルスの振り向き様に放ったステルス・ハウリングを受けた文殊が、霊的不安定に陥って爆発しちまったんだ。

 木が遮ってくれたお陰でダメージはなかったが、軽くない耳鳴りが残る。

 
 俺の声と雪之丞の動きから、反射的に何かあると勘付かれたか!?それとも、仕掛けるには距離が遠すぎたのか?
 
 ………………多分両方だ。

 あいつの野性的超感覚は、余程のことをしないと不意を衝けねぇらしい。


 いや……それよりも、2人はどうなった?俺よりも距離は近かった筈…………

 慎重に………ゆっくりと立ち上がり、木の陰から視線を覗かせる。


「マジかよ…………!!」


 結論から言うと……2人共立っていた。だが、無事と言うわけじゃなく、どっちもダメージは避けられなかったようだ。衣服や鎧は焼け焦げて、煙が上がってる。当然、軽傷じゃないだろう。

 ただ、気力は両者とも衰えてなかった。腰を落として睨み合う2人から立ち昇るのは、煙だけでなく闘志のオーラ…………少なくとも俺には、それを含んでるように見えた。


 ……どうするか?

 今なら、もう一回文殊を投げれば簡単に片が着きそうだけど…………


「…………………………」
“……………………………”


 ………………もう少し待ってみるか……ここで連中に水を差すのは、少し違う気がした。


「……………………」
“グルルル…………”


 どっちが先に動く?

 2人とも余力はねぇ。次の一撃で決まるだろう……


「おおおーーっ!!」
“グゥアアァァーーッ!!”


 同時か……!



 ドガァッ……!!
 


 数メートルの距離を一瞬で潰して、両者が激突…………そして………


“グゥァ…………”



 ドサッ………………


 倒れたのはステルスだった……

 リーチこそ奴の方が長かったが、それが雪之丞に届くことはなかった。雪之丞の方が、一瞬早く掻い潜ったからだ。

 その勢いのまま繰り出された拳は、ステルスの鳩尾に深々と突き刺さり、一気に奴の意識を刈り取っていた。
 

 ………しっかりと決着を見届けてた俺は、2人に近づく。


「不満そうだな………」
「実質、2対1だからな。出来れば、もっと五分の条件でやりたかったぜ……」


 まぁ、文殊の誤爆を俺の攻撃とすれば2対1かもな。

 雪之丞も一緒に喰らったけど、ステルスは至近距離に居た分ダメージも深かったか。

 でも…………
 
 
「機会な__」


 “機会ならいくらでもある” ……そう言おうと思った瞬間に、遠くから見える光に思わず口を噤む。


「やべぇ!!」
「騒ぎ過ぎたな……!」


 こんなこと言い合ってる間にも近付いて来る、複数の足音…………




    ◇◇◇


「なんだ、これは………!?」
「酷いな……一体何があったんだ?」

「何かが、爆発したあとにも見えるけど……見えたか?」
「いや……音だけだ。とにかく警察を呼んだ方がいいな」


 
 その後も警備員達は辺りを懐中電灯で照らしていたが、数分もすると立ち去っていった。


「行ったな……?」
「ああ…」


 小声で話す雪之丞に、俺も同じように小声で返す。

 俺達はさっきまで一応物陰に隠れちゃいたが、懐中電灯で何回も照らされた。

 普通(・・)なら、速攻で見つかってたろう。

 普通ならな……


「バレないのは良いんだけど……全然見えねぇな」
「俺もだよ。ステ……タイガーそこに居るよな?」

「ここに居るよ」
「だから、どこだよ?」


 その辺に寝そべってないか、軽く足を振ってんだが全く当たらない。


「俺の声のする方だよ!踏むなよ」
「いや……踏むなよって」


 グニッ……


「ぐえっ……」
「あっ、踏んだ……ここか」


 取り敢えず踏んだ辺を手で弄ると、ステルスのどっか(・・・)に触れた。ちなみに後で知ったが、俺はステルスの鳩尾を踏んだらしい……許してくれ。


 何言ってるか解らないと思うが、隠れる間の無かった俺達は、ステルスを含めて全員文殊で “透化” してる。

 要するに、警備員達に見つからないよう透明になったわけだ。お陰で連中の目を誤魔化す事は出来たが、お互いも見えなくって四苦八苦してるのが最中だ。

 隠形には便利だけど、複数じゃ使えねぇな。これ……



「持ったか?」
「持った!連中が来る前に逃げよう」


 そんな事を考えつつも、俺達は前後でステルスを担ぎながら森を一気に抜ける。

 出口を出た頃には、パトカーのサイレンが聞こえて来た。間一髪だったぜ……


 後、ステルスの破壊した森は文殊で修復しておいた。

 完全に元通りには行かなかったけど、あれくらいならそう騒ぎにもならないだろう。



    ◇◇◇
 
「さてと……こいつは、どうする?」


 未だ気絶してるステルスを見ながら、雪之丞が呟く。

 当たり前だが、もうこいつは人間に戻ってる。こいつのタフさなら、何もしなくてもそのうち起きるだろうな……
 
 コインパーキングまで戻ってきた俺達は、取り敢えず車の荷台にこいつは横にして、それぞれ座席にいる。付け加えると身体も透明状態から戻ってる。
 

「事情を聞くのは、起きてからでいいだろ?送ってやろうぜ」
「家……知ってるのか?」
「知らん」


 ステルスが俺の部屋に来ることはあっても、その逆は今まで無かった。今度押しかけてみるか?

 
「何処に送る気だよ……?」
「ここからなら、小笠原さんの事務所に近い。行ってみよう」
「閉まってたら?」


 時刻は既に11時過ぎ……確かに、やってないかもしれないな。

 
「俺の部屋に泊めてやるよ。お前の事務所よりは近いだろ?」




    ◇◇◇

 
「何だ?こんな時間………そ…そいつは、タイガー!?」


 幸いにも事務所の明かりは、まだ点いてた。

 そして、ステルスを担いで来た俺達に驚いているのは、3人組の傭兵の1人『ボビー』


 この男は屈強な3人の中では、比較的小柄な男で眼鏡が特徴…………あれ、眼鏡は『ジョー』だったかな?

 駄目だ……忘れた。一度一緒に仕事をした…………やらされただけだしな。


 正直な所、隊長格のヘンリー以外ぶっちゃけ印象が薄い。

 何故、ヘンリーは覚えてるかと言うと……余り思い出したくないから、いいや…………


「武威、後は頼む……」
「ああ」

 とにかく後のステルスの事を雪之丞へ押し付けると、俺はそそくさと退散した。


 ボビーだかジョンだか解らねぇ野郎はともかく、ステルスや゙小笠原さんにこの格好を見られたくないからな……

 


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 虎・前進


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 再び木へ飛び移るステルス。
 高低差を使って攻められると厄介過ぎる。以前討伐した猿の妖怪が、周りの樹木を利用した戦法使って来たけど、それに似てるな。
※『狒狒』を参照
 でも状況は、あん時よりも悪いぞ。ステルスの方が猿よりパワーもスピードも上だ。おまけに “ステルス・ハウリング” (仮名)なんて飛び道具まで、持ってやがる。
 ステルス……お前は自分を “張り子の虎” なんて自虐してたけど、とんでもねぇな。今のお前は、立派な “ステルス・タイガー” じゃねぇか………
※「ステルス」から離れられない男
「糞っ、またか……」
“グラアアアァァーーーー!!!”
 さっきと同じように飛んでくる霊波咆哮を、悪態をつきながら躱す雪之丞……それは、いいんだが…………
 ズドオオォォーーーンッ!!
 ああっ……また………!
 木には当たらなかったが、今度は地面を穿ちやがった。
“ガルゥッ!”
「ちぃっ……」
 これまた、同じように雪之丞の避け際に襲い掛かるステルス。だが、流石に予想は付いてたようで躱し切る。
「しゃらくせぇっ!!」
“ガゥッ!”
 そして、お返しとばかりに回し蹴りを放つが、これまた跳躍して躱される……なんつー反射神経とバネだよ!キリがねぇぞ。
 ただ、そうに感じてるのは俺だけじゃない………
「デケェ癖にちょこまかすんなっ!!」
「止せっ!撃つな!!」
「ちっ……」
 勢いで霊波砲を撃とうとする、雪之丞を慌てて止める。撃ち合いになったら、それこそ終わりだ。収拾が着かなくなって、2人で逃げることになりかねない。
 俺達はそれでもいいけど、あいつは良くて逮捕。悪けりゃ………洒落抜きで射殺……?
“ガアッ!グルァッ!”
 ただ、そんな俺の心配お構いなしにステルスは吠えまくる。
 この野郎、溜め撃ちから小出しに切り替えて来やがった。ますます森に傷が付くじゃねぇか、人の気も知らねぇで……!!
 ズドンッ! ズブォンッ!
「あんの……糞虎、調子に乗りやがって!!」
 ………………大分苛ついてるけど、元を辿ればお前が喧嘩吹っ掛けたんだからな……
 ボゴォンッ! ドォゴォンッ!
 ただ、呆れてばかりもいられねぇ。
 これが長引いた分だけ、森がエラい事になる。おまけで|奴《雪之丞》がブチ切れたら、それこそさっき想像した最悪の未来一直線だ。
 とにかく、今すぐにでも奴を止めないと不味い……!
「文殊を使うっ!合図したら離れろ!!」
 そう言って、ポケットにある文殊に手を伸ばす。
「糞が!目ぇ覚ましたら、ぶっ飛ばしてやる……!」
 それに対して、不承不承頷く雪之丞………勝負なら、また出来る。今回は我慢しろ。
 ズドンッ! ズブォンッ! ズガァンッ!……
 …………落ち着け。
 降りてきた瞬間決めれば、一瞬で勝負は付く。俺は気を鎮めながら、ステルスの動きを注視する。
 そして……
“グラアァッ!!”
 木上から、雪之丞に襲い掛かるステルス。
 ここだな……着地する瞬間なら身動き取れねぇ。
「今だっ!」
 掛け声と同時に『眠』と刻んだ文殊を投擲!雪之丞もそれに合わせて、後ろへ跳ぶ。
 ちょうど、ステルスの死角を突いた。
 後は、発動させて決まる。そう思った瞬間だった……
「グガァッ!」
「!?」
 やべぇ…………思うと同時に、反射的に木の裏に飛び込む!
 ヴアアァァーーーーンッ!!
「ぐおっ……」
 奴の手前で、文殊が破裂した!
 ステルスの振り向き様に放ったステルス・ハウリングを受けた文殊が、霊的不安定に陥って爆発しちまったんだ。
 木が遮ってくれたお陰でダメージはなかったが、軽くない耳鳴りが残る。
 俺の声と雪之丞の動きから、反射的に何かあると勘付かれたか!?それとも、仕掛けるには距離が遠すぎたのか?
 ………………多分両方だ。
 あいつの野性的超感覚は、余程のことをしないと不意を衝けねぇらしい。
 いや……それよりも、2人はどうなった?俺よりも距離は近かった筈…………
 慎重に………ゆっくりと立ち上がり、木の陰から視線を覗かせる。
「マジかよ…………!!」
 結論から言うと……2人共立っていた。だが、無事と言うわけじゃなく、どっちもダメージは避けられなかったようだ。衣服や鎧は焼け焦げて、煙が上がってる。当然、軽傷じゃないだろう。
 ただ、気力は両者とも衰えてなかった。腰を落として睨み合う2人から立ち昇るのは、煙だけでなく闘志のオーラ…………少なくとも俺には、それを含んでるように見えた。
 ……どうするか?
 今なら、もう一回文殊を投げれば簡単に片が着きそうだけど…………
「…………………………」
“……………………………”
 ………………もう少し待ってみるか……ここで連中に水を差すのは、少し違う気がした。
「……………………」
“グルルル…………”
 どっちが先に動く?
 2人とも余力はねぇ。次の一撃で決まるだろう……
「おおおーーっ!!」
“グゥアアァァーーッ!!”
 同時か……!
 ドガァッ……!!
 数メートルの距離を一瞬で潰して、両者が激突…………そして………
“グゥァ…………”
 ドサッ………………
 倒れたのはステルスだった……
 リーチこそ奴の方が長かったが、それが雪之丞に届くことはなかった。雪之丞の方が、一瞬早く掻い潜ったからだ。
 その勢いのまま繰り出された拳は、ステルスの鳩尾に深々と突き刺さり、一気に奴の意識を刈り取っていた。
 ………しっかりと決着を見届けてた俺は、2人に近づく。
「不満そうだな………」
「実質、2対1だからな。出来れば、もっと五分の条件でやりたかったぜ……」
 まぁ、文殊の誤爆を俺の攻撃とすれば2対1かもな。
 雪之丞も一緒に喰らったけど、ステルスは至近距離に居た分ダメージも深かったか。
 でも…………
「機会な__」
 “機会ならいくらでもある” ……そう言おうと思った瞬間に、遠くから見える光に思わず口を噤む。
「やべぇ!!」
「騒ぎ過ぎたな……!」
 こんなこと言い合ってる間にも近付いて来る、複数の足音…………
    ◇◇◇
「なんだ、これは………!?」
「酷いな……一体何があったんだ?」
「何かが、爆発したあとにも見えるけど……見えたか?」
「いや……音だけだ。とにかく警察を呼んだ方がいいな」
 その後も警備員達は辺りを懐中電灯で照らしていたが、数分もすると立ち去っていった。
「行ったな……?」
「ああ…」
 小声で話す雪之丞に、俺も同じように小声で返す。
 俺達はさっきまで一応物陰に隠れちゃいたが、懐中電灯で何回も照らされた。
 |普通《・・》なら、速攻で見つかってたろう。
 普通ならな……
「バレないのは良いんだけど……全然見えねぇな」
「俺もだよ。ステ……タイガーそこに居るよな?」
「ここに居るよ」
「だから、どこだよ?」
 その辺に寝そべってないか、軽く足を振ってんだが全く当たらない。
「俺の声のする方だよ!踏むなよ」
「いや……踏むなよって」
 グニッ……
「ぐえっ……」
「あっ、踏んだ……ここか」
 取り敢えず踏んだ辺を手で弄ると、ステルスの|どっか《・・・》に触れた。ちなみに後で知ったが、俺はステルスの鳩尾を踏んだらしい……許してくれ。
 何言ってるか解らないと思うが、隠れる間の無かった俺達は、ステルスを含めて全員文殊で “透化” してる。
 要するに、警備員達に見つからないよう透明になったわけだ。お陰で連中の目を誤魔化す事は出来たが、お互いも見えなくって四苦八苦してるのが最中だ。
 隠形には便利だけど、複数じゃ使えねぇな。これ……
「持ったか?」
「持った!連中が来る前に逃げよう」
 そんな事を考えつつも、俺達は前後でステルスを担ぎながら森を一気に抜ける。
 出口を出た頃には、パトカーのサイレンが聞こえて来た。間一髪だったぜ……
 後、ステルスの破壊した森は文殊で修復しておいた。
 完全に元通りには行かなかったけど、あれくらいならそう騒ぎにもならないだろう。
    ◇◇◇
「さてと……こいつは、どうする?」
 未だ気絶してるステルスを見ながら、雪之丞が呟く。
 当たり前だが、もうこいつは人間に戻ってる。こいつのタフさなら、何もしなくてもそのうち起きるだろうな……
 コインパーキングまで戻ってきた俺達は、取り敢えず車の荷台にこいつは横にして、それぞれ座席にいる。付け加えると身体も透明状態から戻ってる。
「事情を聞くのは、起きてからでいいだろ?送ってやろうぜ」
「家……知ってるのか?」
「知らん」
 ステルスが俺の部屋に来ることはあっても、その逆は今まで無かった。今度押しかけてみるか?
「何処に送る気だよ……?」
「ここからなら、小笠原さんの事務所に近い。行ってみよう」
「閉まってたら?」
 時刻は既に11時過ぎ……確かに、やってないかもしれないな。
「俺の部屋に泊めてやるよ。お前の事務所よりは近いだろ?」
    ◇◇◇
「何だ?こんな時間………そ…そいつは、タイガー!?」
 幸いにも事務所の明かりは、まだ点いてた。
 そして、ステルスを担いで来た俺達に驚いているのは、3人組の傭兵の1人『ボビー』
 この男は屈強な3人の中では、比較的小柄な男で眼鏡が特徴…………あれ、眼鏡は『ジョー』だったかな?
 駄目だ……忘れた。一度一緒に仕事をした…………やらされただけだしな。
 正直な所、隊長格のヘンリー以外ぶっちゃけ印象が薄い。
 何故、ヘンリーは覚えてるかと言うと……余り思い出したくないから、いいや…………
「武威、後は頼む……」
「ああ」
 とにかく後のステルスの事を雪之丞へ押し付けると、俺はそそくさと退散した。
 ボビーだかジョンだか解らねぇ野郎はともかく、ステルスや゙小笠原さんにこの格好を見られたくないからな……