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虎・変化

ー/ー




「ぬぅおおぉぉぉぉ〜〜っ!!」
「オラオラッ!んな、もんかぁ!!?」


 駄目だな。ドツボ(・・・)にはまってる……

 果敢に攻撃するものの、雪之丞に鼻唄混じりに躱され続けるステルスを見ながら、そう思った。
 

 俺達の事務所でステルスの特訓を開始してから、大体3週間目に入ったくらいか?

 初日のように、牛みたいな突進を繰り返すことはなくなったけど、如何せん動きが鈍すぎて雪之丞を全く捉えられてない。

 本人もそれは解ってるようで、構えや動きをコンパクトにして少しでも速く動こうと努力はしてんだが、中々上手く行かない。

 寧ろ動きを窮屈なものにして、本来長所であったはずの力感や迫力まで消しちまってる。縮こまってるデカい奴なんて、ただの案山子だ……
 
 これなら、前のように力任せに突っ込んでる方が、まだマシな気がするぜ。




   ◇◇◇


「お2人共、今日もありがとうございましたジャー」
「おう、お疲れ」
「お疲れさん」

「明日も来て、大丈夫ジャー?」
「ああ、別に構わねぇよ」
「………………」

「なら、また明日!お疲れ様ジャー」


 そう言ってステルスは帰って行った。

 全く成果が見えてないのに、不思議と足取りは悪く見えなかった。


「……どう思う?」


 そうして、ステルスの姿が見えなくなってから雪之丞に聞いてみる。


「やる毎に悪くなってる……」
「お前も、そう思うか」


 やっぱり、こいつも同意見だったか………そう思ってると、雪之丞は更に続ける。
 

「なぜか気落ちしてないから言わなかったけど、一度どっかで打ち切った方がいいかもしんねぇ。最悪、使いもんにならなくなるぞ」
「そうだな、今のまま続けても意味がない……」
 

 何回も言うけど、ステルスは決して弱くない。

 単独戦闘は苦手かもしれないが、サポーターとしては他の追随を許さない。十分過ぎるほど周りの役に立ってるし、それは周りも十分に承知してる。

 
 ……問題なのは、本人がそれを認識(・・)出来ていないこと。


 極端な言い方だが、本人に自信が付くなら、こんな修行わざわざ(・・・・)しなくてもいいとさえ俺は思ってる。

 それでも止めなかったのは、別の方向からアプローチするのも良いかもしれないと思ったからだ。だが、今のままじゃ雪之丞の言うように潰れかねねぇ……
 



    ◇◇◇


「……駄目ジャな」


 事務所からの帰り道、ここ最近の自分を振り返りながらワッシは独り言ちた……そして、周りに誰も居ないことを慌てて確認するのが何か虚しい。

 考え事に夢中になり過ぎて、この前のように “変質者” 扱いされては堪らないんジャー…………

※『虎・迷走』参照

 取り敢えず頭を振って、先日のアホな出来事をイメージから追い出してから再び最近の自分を思い出す。

 2人の素早い動きに対応しようと、ここの所ずっと自分の動きを細かくしとったが、結果は前よりも酷くなってる。

 攻撃を避けられるのは前と一緒ジャが、以前に比べてワッシの動きを恐がらなくなっとる(あくまで以前との比較であって、元から大して恐がられておらんのジャが……)。

 多分、この動きは自分に合ってはいないんジャろう。言い換えれば、前みたいに我武者羅に突っ込むことは、2人の動きを抑制もしていたんジャ。

 なら、前と同じに戻せば良いんジャろうか?

 しかし、戻したところで振り出しに戻るだけジャろう……元々、手も足も出ないから、自分なりに工夫して動きを変えてみたんジャ。
 

 なら、どうする?


 別の手段を考えたいんジャが、そんなもん簡単に思いつければ苦労なんかせん……いや、それ以前にワッシは “理想の(自分)” をイメージ出来てすらいない。

 この前、真っ先にしなきゃならないと自分に誓ったばかりなのに、あれから丸で形になっていない。

 形にならないから、修行の中でヒントを見出そうと思ってたけど、結局小手先の動きを変えただけに終始して大失敗。

 
「完全な行き止まりジャ…………」

 
 突破口はないか、無い知恵絞って考えて結局何も無いことに気付いて頭を抱えたくなる。


「君……別に “行き止まり” じゃないよ」
「えっっ!!?」


 まずい!また、やってしもうた!!

 見渡せば、いつの間にかワッシは駅の構内いた。そして、話し掛けてきたのは駅員さん。不思議そうな顔をしてワッシを見とる。変質者扱いされてないだけマシか……


「何処に行きたいの?」
「いえいえ!大丈夫ジャーー!!」


 しどろもどろになりながら、逃げるようにその場を後にする。いかんいかん、こんなこと繰り返してたら本当にこの駅を利用出来んようになってしまう。




    ◇◇◇
 

 rrrrr♪  rrrrr♪


「もしもし……」
「あ、タイガー」

「エミさんですか、どないしました?」
「悪いんだけど、急な仕事が入ったワケ!明日は学校が終わったら、すぐ事務所に来て頂戴」

「解りましたジャー」
「よろしく〜♪」


 下宿先のマンションに帰って早々に鳴り響く電話を取るとエミさんからの仕事の指示ジャった。

 これで明日の修行は行けんようになってしまった。彼等も明後日から仕事に入るようジャから、暫く修行はお預けジャな……


 ジャけど、これで良かったかも知れん。

 とにかく諦めないように空元気だけ出してやってきたが、今のまま続けても成果は出ない。

 これを機に自分の理想について、もう一度よく考えるんジャ。




    ◇◇◇


「ご馳走様ジャー、それじゃあ、ワッシはこれで……」


 翌日、学校の屋上で昼食(ピートさんの差し入れ)を速攻で平らげると、すぐに腰を上げた。
 

「早いな」
「もう行くんですか?」
「図書室に用があるんジャー、それじゃあ、お先に」


 横島さんとピートさんにそう挨拶すると、ワッシはそそくさと屋上を後にした。ちなみに、今日の修行に出れないことは既に横島さんに伝え済みジャ。




    ◇◇◇


「やっぱり、虎の武器は “爪” と “牙” ジャな……」


 ページに写る写真を見ながら呟く。

 机の上に開いているのは、動物図鑑。見てる動物は勿論 “虎” ジャ……!


 我ながら、変なことをしてると思う。自分の理想を探す為とはいえ滅多に来ない図書室に来て、こうして動物図鑑なんか開いてる姿は、端から見たら物凄く滑稽ジャなかろうか……?

 ジャけど、頭で考えても解らん以上、やれることは何でもやるしかない。


 休み時間の終わりが迫ってたので、取り敢えず見てる図鑑だけ借りて図書室を出た。
 

 慣れないことはしたが、幸いにも収穫はあった。

 虎は獲物を狩る時こそ、背後から襲い掛かるが、雄同士で縄張り争いする時はガチンコ(・・・・)で闘うんジャ!

 …………と言うより忘れていた。

 元々、ジャングル育ちの自分は虎の習性なんて熟知してる筈ジャ。虎とは本来そう言った威風堂々とした存在なのに、弱気になり過ぎて悪いとこにばかり目を向けていたんジャ……


「間抜けな話ジャな……」


 今度は、教室に戻る廊下を歩きながら呟いた。



    ◇◇◇


 学校を終え、仕事を終え、深夜0時過ぎに帰宅する。

 今日は早い方ジャな。朝帰りだって珍しくないし、もっと遅くなることもある。


 こういう時は、すぐにシャワーを浴びて着替えるんジャが今回は違った。そのまま部屋の真ん中に座り込むと、鞄から図書室で借りた図鑑を取り出して床の上に開く。
 
 見るのは勿論、昼間の虎のページ。そこには、相手の虎に今にも飛び掛からんとする勇ましい虎が写っている。


 そして、それを見ながら昼間と同じように思考に没頭する。本当は、仕事中もずっとこれがしたくて仕方なかった。何かが見えそうで、見えない。むず痒くて、落ち着かない……そんな感覚。

 明日も学校ジャが、納得するまでやらないと寝れなそうジャ……


 横島さんには「自分で “理想の虎” を作ればいい」と言われた。ワッシもその通りだと思い、自分なりに色々考えてきたが、 “そもそも” そんな必要ないんジャなかろうか? 

 元々、これはワッシが「虎は後ろから飛び掛かる卑怯者」なんて、馬鹿な勘違いをしたのが始まりジャ。

 だが、今日になって、その誤解は解けた……いや、思い出したと言った方が良いかも知らん!
 


 虎は、卑怯者なんかジャない………

 “勇猛果敢で何も恐れない” ワッシの憧れた存在は端から、そこにあったんジャ!!


 虎は自分の領域を侵そうとする者が現れたら、己の誇りに掛けて全力で戦う。

 気高く……そして、雄々しく………


 自分で何も考える必要なんかない。

 ワッシは始めから、彼等の姿や動きをイメージして自分を近づけて行けば良かったんジャ。
 

 …………そして、ワッシにはそれを可能にする武器(・・)がある!


 ふと、時計を見ると3時を回っていた。

 でも、眠気は全くない。それどころか、体の底から活力が湧き出して走り出したい気分ジャ!!



 ガラッ!!



 おもむろにベランダの扉を開く!!

 真冬の冷たい空気が一気に部屋に流れこんで来たが、知ったことジャなかった!



「ワッシは虎に成るっ!!虎に成るんじゃああぁぁぁーーーーーっっ!!!!!」



 月(出てないけど)へ向かって、目一杯の咆哮!!

 気高く、雄々しく、雄大に……この声が月(方向合っとるジャろうか?)に届くことを信じて。


 
 翌朝、「奇声を上げるなと」大家さんに怒られたのは、また別の話ジャ…………

 



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「ぬぅおおぉぉぉぉ〜〜っ!!」
「オラオラッ!んな、もんかぁ!!?」
 駄目だな。|ドツボ《・・・》にはまってる……
 果敢に攻撃するものの、雪之丞に鼻唄混じりに躱され続けるステルスを見ながら、そう思った。
 俺達の事務所でステルスの特訓を開始してから、大体3週間目に入ったくらいか?
 初日のように、牛みたいな突進を繰り返すことはなくなったけど、如何せん動きが鈍すぎて雪之丞を全く捉えられてない。
 本人もそれは解ってるようで、構えや動きをコンパクトにして少しでも速く動こうと努力はしてんだが、中々上手く行かない。
 寧ろ動きを窮屈なものにして、本来長所であったはずの力感や迫力まで消しちまってる。縮こまってるデカい奴なんて、ただの案山子だ……
 これなら、前のように力任せに突っ込んでる方が、まだマシな気がするぜ。
   ◇◇◇
「お2人共、今日もありがとうございましたジャー」
「おう、お疲れ」
「お疲れさん」
「明日も来て、大丈夫ジャー?」
「ああ、別に構わねぇよ」
「………………」
「なら、また明日!お疲れ様ジャー」
 そう言ってステルスは帰って行った。
 全く成果が見えてないのに、不思議と足取りは悪く見えなかった。
「……どう思う?」
 そうして、ステルスの姿が見えなくなってから雪之丞に聞いてみる。
「やる毎に悪くなってる……」
「お前も、そう思うか」
 やっぱり、こいつも同意見だったか………そう思ってると、雪之丞は更に続ける。
「なぜか気落ちしてないから言わなかったけど、一度どっかで打ち切った方がいいかもしんねぇ。最悪、使いもんにならなくなるぞ」
「そうだな、今のまま続けても意味がない……」
 何回も言うけど、ステルスは決して弱くない。
 単独戦闘は苦手かもしれないが、サポーターとしては他の追随を許さない。十分過ぎるほど周りの役に立ってるし、それは周りも十分に承知してる。
 ……問題なのは、本人がそれを|認識《・・》出来ていないこと。
 極端な言い方だが、本人に自信が付くなら、こんな修行|わざわざ《・・・・》しなくてもいいとさえ俺は思ってる。
 それでも止めなかったのは、別の方向からアプローチするのも良いかもしれないと思ったからだ。だが、今のままじゃ雪之丞の言うように潰れかねねぇ……
    ◇◇◇
「……駄目ジャな」
 事務所からの帰り道、ここ最近の自分を振り返りながらワッシは独り言ちた……そして、周りに誰も居ないことを慌てて確認するのが何か虚しい。
 考え事に夢中になり過ぎて、この前のように “変質者” 扱いされては堪らないんジャー…………
※『虎・迷走』参照
 取り敢えず頭を振って、先日のアホな出来事をイメージから追い出してから再び最近の自分を思い出す。
 2人の素早い動きに対応しようと、ここの所ずっと自分の動きを細かくしとったが、結果は前よりも酷くなってる。
 攻撃を避けられるのは前と一緒ジャが、以前に比べてワッシの動きを恐がらなくなっとる(あくまで以前との比較であって、元から大して恐がられておらんのジャが……)。
 多分、この動きは自分に合ってはいないんジャろう。言い換えれば、前みたいに我武者羅に突っ込むことは、2人の動きを抑制もしていたんジャ。
 なら、前と同じに戻せば良いんジャろうか?
 しかし、戻したところで振り出しに戻るだけジャろう……元々、手も足も出ないから、自分なりに工夫して動きを変えてみたんジャ。
 なら、どうする?
 別の手段を考えたいんジャが、そんなもん簡単に思いつければ苦労なんかせん……いや、それ以前にワッシは “理想の|虎《自分》” をイメージ出来てすらいない。
 この前、真っ先にしなきゃならないと自分に誓ったばかりなのに、あれから丸で形になっていない。
 形にならないから、修行の中でヒントを見出そうと思ってたけど、結局小手先の動きを変えただけに終始して大失敗。
「完全な行き止まりジャ…………」
 突破口はないか、無い知恵絞って考えて結局何も無いことに気付いて頭を抱えたくなる。
「君……別に “行き止まり” じゃないよ」
「えっっ!!?」
 まずい!また、やってしもうた!!
 見渡せば、いつの間にかワッシは駅の構内いた。そして、話し掛けてきたのは駅員さん。不思議そうな顔をしてワッシを見とる。変質者扱いされてないだけマシか……
「何処に行きたいの?」
「いえいえ!大丈夫ジャーー!!」
 しどろもどろになりながら、逃げるようにその場を後にする。いかんいかん、こんなこと繰り返してたら本当にこの駅を利用出来んようになってしまう。
    ◇◇◇
 rrrrr♪  rrrrr♪
「もしもし……」
「あ、タイガー」
「エミさんですか、どないしました?」
「悪いんだけど、急な仕事が入ったワケ!明日は学校が終わったら、すぐ事務所に来て頂戴」
「解りましたジャー」
「よろしく〜♪」
 下宿先のマンションに帰って早々に鳴り響く電話を取るとエミさんからの仕事の指示ジャった。
 これで明日の修行は行けんようになってしまった。彼等も明後日から仕事に入るようジャから、暫く修行はお預けジャな……
 ジャけど、これで良かったかも知れん。
 とにかく諦めないように空元気だけ出してやってきたが、今のまま続けても成果は出ない。
 これを機に自分の理想について、もう一度よく考えるんジャ。
    ◇◇◇
「ご馳走様ジャー、それじゃあ、ワッシはこれで……」
 翌日、学校の屋上で昼食(ピートさんの差し入れ)を速攻で平らげると、すぐに腰を上げた。
「早いな」
「もう行くんですか?」
「図書室に用があるんジャー、それじゃあ、お先に」
 横島さんとピートさんにそう挨拶すると、ワッシはそそくさと屋上を後にした。ちなみに、今日の修行に出れないことは既に横島さんに伝え済みジャ。
    ◇◇◇
「やっぱり、虎の武器は “爪” と “牙” ジャな……」
 ページに写る写真を見ながら呟く。
 机の上に開いているのは、動物図鑑。見てる動物は勿論 “虎” ジャ……!
 我ながら、変なことをしてると思う。自分の理想を探す為とはいえ滅多に来ない図書室に来て、こうして動物図鑑なんか開いてる姿は、端から見たら物凄く滑稽ジャなかろうか……?
 ジャけど、頭で考えても解らん以上、やれることは何でもやるしかない。
 休み時間の終わりが迫ってたので、取り敢えず見てる図鑑だけ借りて図書室を出た。
 慣れないことはしたが、幸いにも収穫はあった。
 虎は獲物を狩る時こそ、背後から襲い掛かるが、雄同士で縄張り争いする時は|ガチンコ《・・・・》で闘うんジャ!
 …………と言うより忘れていた。
 元々、ジャングル育ちの自分は虎の習性なんて熟知してる筈ジャ。虎とは本来そう言った威風堂々とした存在なのに、弱気になり過ぎて悪いとこにばかり目を向けていたんジャ……
「間抜けな話ジャな……」
 今度は、教室に戻る廊下を歩きながら呟いた。
    ◇◇◇
 学校を終え、仕事を終え、深夜0時過ぎに帰宅する。
 今日は早い方ジャな。朝帰りだって珍しくないし、もっと遅くなることもある。
 こういう時は、すぐにシャワーを浴びて着替えるんジャが今回は違った。そのまま部屋の真ん中に座り込むと、鞄から図書室で借りた図鑑を取り出して床の上に開く。
 見るのは勿論、昼間の虎のページ。そこには、相手の虎に今にも飛び掛からんとする勇ましい虎が写っている。
 そして、それを見ながら昼間と同じように思考に没頭する。本当は、仕事中もずっとこれがしたくて仕方なかった。何かが見えそうで、見えない。むず痒くて、落ち着かない……そんな感覚。
 明日も学校ジャが、納得するまでやらないと寝れなそうジャ……
 横島さんには「自分で “理想の虎” を作ればいい」と言われた。ワッシもその通りだと思い、自分なりに色々考えてきたが、 “そもそも” そんな必要ないんジャなかろうか? 
 元々、これはワッシが「虎は後ろから飛び掛かる卑怯者」なんて、馬鹿な勘違いをしたのが始まりジャ。
 だが、今日になって、その誤解は解けた……いや、思い出したと言った方が良いかも知らん!
 虎は、卑怯者なんかジャない………
 “勇猛果敢で何も恐れない” ワッシの憧れた存在は端から、そこにあったんジャ!!
 虎は自分の領域を侵そうとする者が現れたら、己の誇りに掛けて全力で戦う。
 気高く……そして、雄々しく………
 自分で何も考える必要なんかない。
 ワッシは始めから、彼等の姿や動きをイメージして自分を近づけて行けば良かったんジャ。
 …………そして、ワッシにはそれを可能にする|武器《・・》がある!
 ふと、時計を見ると3時を回っていた。
 でも、眠気は全くない。それどころか、体の底から活力が湧き出して走り出したい気分ジャ!!
 ガラッ!!
 おもむろにベランダの扉を開く!!
 真冬の冷たい空気が一気に部屋に流れこんで来たが、知ったことジャなかった!
「ワッシは虎に成るっ!!虎に成るんじゃああぁぁぁーーーーーっっ!!!!!」
 月(出てないけど)へ向かって、目一杯の咆哮!!
 気高く、雄々しく、雄大に……この声が月(方向合っとるジャろうか?)に届くことを信じて。
 翌朝、「奇声を上げるなと」大家さんに怒られたのは、また別の話ジャ…………