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不安・三

ー/ー



 
「安心しろ。ただの “目眩まし” だ……」


 連中から遠ざかった地点にまで来て、俺はそう独り言ちた。

 閃光爆弾『輝耀眼』(今回は目玉じゃないけど……)。

 デカい音と閃光を放つ事に特化してるだけで、殺傷能力なんて殆どない。まぁ………さっきみたいな、ハッタリかますには有効だけどな。

 

 “あっちの方から聴こえてきたよな?”
 
 “一体なにがあったんだ………?”
 
 “何か爆発したのかしら?”

 “警察呼んだほうが……”


 ………………やべぇな、さっきの騒ぎで野次馬が集まって来やがった。


 これじゃ、萩原探すどころじゃねぇな。ここが潮時か……… 

 奴等に顔を見られても面倒なんで、俺は野次馬達から逃れるように公園を出た。

 
 電話、家、そして公園……これで空振り3連発。おまけに馬鹿共には絡まれるし散々だぜ。

 ただ、今まで溜め込んでた鬱憤を馬鹿にぶつけたお陰で大分冷静になれた。不安は、まだあるけど焦ってもどうにもならない。


 取り敢えず萩原の家まで戻ろう。これ以上、ここに居ても拉致があかないしな。


 

    ◇◇◇


 公園を出て10分後、俺は再び萩原の住むマンションまで戻ってきた。時刻は、10時半を回っている。


「流石に、もう戻って来てるよな?」 


 俺のただの取り越し苦労なら、既に戻ってるはず……俺は再び文珠を取り出す。勿論、来た時と同様中を確認するためだ。


 これで、あいつが居れば普通に帰る。

 ………だけど、もし戻ってなかったら昨日のことを家族に全部話そう。彼等だって、流石におかしいと思ってるだろう。

 そうして、文珠に文字を刻もうとした時だった……



「横島君……?」
「萩原か!?」


 声のした方を向くとジャージ姿の萩原が立っていた。運動するためだからか、いつもしてるリボンは付けてないが、それ以外に特に変わった様子は見られない。


「何してるの?こんなところで……」
「お前の様子が気になったんだよ。昨日、変なこと言ってたからな」

「変なこと……?」
「 “悪霊のせいかも” とか言ってたろ?んで今日学校に来なかったから、何かしら起こったんじゃないかと思ったんだけど……何も無いみたいだな」


 少なくとも、俺の目の前に居るこいつが何かしらの霊障に悩んでるようには見えなかった。その辺は安心してもよさそうだが……もしかしたら、こいつ本人じゃなくて別の人間だったのか?


「あっ……いや、言ったね。そんなこと…………それで、わざわざ?なら、電話してくれたら良かったのに……」
「電話したけど、居なかったろ?お袋さんが “公園に行った” って言ってたから、さっきまで見に行ってたんだよ。ってか、お前逆方向から来たよな?公園には、行かなかったのか?」


 そう……こいつは俺が来た方向とは、真逆の道から来た。公園の方に行ってたとしたら、そっちから来るなんてあり得ない。


「ああ、ここのところ夜になると、あの公園に “暴走族” が集まるんだよ。お母さんには、いつもの習慣で “公園に行く” なんて言っちゃったけど、最近は別の道使ってるの。横島君会わなかった?」
「………………アッテナイ」


 …………なら、いくら探しても見つかるはずねぇよな。 


「何、その間……?」
「いや、そんなことより悪霊って何だよ?一体何があったんだ?」
「そ、それは……」


 悪霊の話になると、萩原は昨日と同様言い淀む………やっぱり人には言い難い事情があるのか?

 俺は一息ついてから、口を開いた。


「どうしても、言いたくないなら無理には聞かないよ……お前、無事みたいだしな。ただ、本当にヤバそうなら、そうなる前に相談して欲しい。俺に言いたくないなら、ピートやステ……タイガーにでも言えばいい。力になってくれるよ」




不安・三 萩原
「横島君……」


 なんとも、ありきたりな台詞だな……かと言って、他に気の利いた台詞なんて思い浮かばないんだから仕方ないか。


「何事も無くて良かったよ。じゃあ帰るから、明日学校でな
。それと、余り遅くなると家族が心配するぞ」


 …………最後は親父の説教臭くなっちまった。少し恥ずいな……これも、妙神山で歳喰ったせいか?

 そんな気恥ずかしさを誤魔化すように踵を返そうとした時だった……


「__かが出るんだよ……」
「え?何?」


 聞こえねぇ……取り敢えず帰るのを中断して、向き直る。

 すると萩原は怒ったような、恥ずかしがってるような声で言い直した。


「だから、 “お腹” が出てきちゃったんだよ!」


 そう言って、両手で自分のウエスト部分を擦る。


「何で……?」


 ………………どうゆう意味だ?

 腹が出たのと、悪霊に何の関係が??

 
「解んない!!最近、運動しないでゴロゴロしてただけなのに不思議でしょうがないよ!それで、きっと悪霊が何か悪さしたんじゃないかなぁ〜…………なんて」
「……………………………………」

 

 ………………んな、理由あるかっっっ!!!!!
  
  
 そう言った、怨霊や妖怪は確かに居るよ!

 でも、もしそうなら周りが直ぐに気付くわ!そもそも、隠すことなんて出来ねぇ!!

 

 どう考えたって “運動しないで、食って寝てた” のが原因だろうがあっ!!!


 ………………と、声を大にして言いたい。

 言いたいんだが、ここまで散々 “お預け” 喰らった状態で出て来た答えが余りに衝撃(お些末)過ぎて言葉が出てこない。


「……………………そ、それ(悪霊)を何とかして欲しかったのか……?」


 辛うじて、そう言葉を絞り出す……


「そう!それも、あるし__」


 まだ、何かあんのかよ……?


「横島君の “モンジュ” ……だっけ?それって何でも出来るんでしょ?私のお腹も、それで何とかならないかなぁ〜なんて!」
「……………………」

 
 テメェ…………文珠は、神にだって匹敵する能力なんだぞ!それを、たった100円で……!!!!


「でも〜、流石に言うの恥ずかしかったし、図々しいかなぁ〜と思って言うの止めたの……ごめんね、何か心配掛けちゃったみたいで♪」


 そう言って、片目を閉じて “ゴメン” のポーズをする萩原…………こいつも割と可愛らしい顔してるから、そついったお茶目な格好をするとそれなりに魅力的なんだが、今の俺にそれを感じる余裕は無かった……


「お、怒っちゃった……?」
「……………………」


 お、落ち着けぇ…………怒鳴るな。キレるな……こいつは、ちゃんと謝ってんだ。


 鼻から大量に空気を吸って、口からゆっくり吐く。それを複数回繰り返す…………いいぞ、落ち着いてきた。


「ま……まぁ、いいよ。そ…そうか、こんな遅くなったのはそれだけ長くジョギングを頑張ってたんだな」
「あっ、それは違う。途中で偶然友達に会ってマ◯クでお喋りしてたの♪お腹も空いちゃって、夜なのにハンバーガー食べちゃったよ……駄目だねぇ」

「走れ!豚ぁっっ(怒号)!!!」
「ひど〜〜い(泣)!!!」
 


 疲れた……無駄に疲れた…………


 ちなみにだが、こいつが昨日元気を無くしてたのはダイエットして腹を空かしてたせい。

 そして今日学校を休んだのは、その後自棄食いしたら腹痛起こして寝込んだだけ………………もう、何も言えねぇ。
 
  


 ――後日、某警察署――


「本当だよ!!刑事さん。そいつは、何も無い所から爆弾を創り出したんだよ!それを投げ付けられた瞬間にドカーンって!」
「凄いな、手品師か……」
「信じてねぇだろっ!!!?」

 


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 「安心しろ。ただの “目眩まし” だ……」
 連中から遠ざかった地点にまで来て、俺はそう独り言ちた。
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 デカい音と閃光を放つ事に特化してるだけで、殺傷能力なんて殆どない。まぁ………さっきみたいな、ハッタリかますには有効だけどな。
 “あっちの方から聴こえてきたよな?”
 “一体なにがあったんだ………?”
 “何か爆発したのかしら?”
 “警察呼んだほうが……”
 ………………やべぇな、さっきの騒ぎで野次馬が集まって来やがった。
 これじゃ、萩原探すどころじゃねぇな。ここが潮時か……… 
 奴等に顔を見られても面倒なんで、俺は野次馬達から逃れるように公園を出た。
 電話、家、そして公園……これで空振り3連発。おまけに馬鹿共には絡まれるし散々だぜ。
 ただ、今まで溜め込んでた鬱憤を馬鹿にぶつけたお陰で大分冷静になれた。不安は、まだあるけど焦ってもどうにもならない。
 取り敢えず萩原の家まで戻ろう。これ以上、ここに居ても拉致があかないしな。
    ◇◇◇
 公園を出て10分後、俺は再び萩原の住むマンションまで戻ってきた。時刻は、10時半を回っている。
「流石に、もう戻って来てるよな?」 
 俺のただの取り越し苦労なら、既に戻ってるはず……俺は再び文珠を取り出す。勿論、来た時と同様中を確認するためだ。
 これで、あいつが居れば普通に帰る。
 ………だけど、もし戻ってなかったら昨日のことを家族に全部話そう。彼等だって、流石におかしいと思ってるだろう。
 そうして、文珠に文字を刻もうとした時だった……
「横島君……?」
「萩原か!?」
 声のした方を向くとジャージ姿の萩原が立っていた。運動するためだからか、いつもしてるリボンは付けてないが、それ以外に特に変わった様子は見られない。
「何してるの?こんなところで……」
「お前の様子が気になったんだよ。昨日、変なこと言ってたからな」
「変なこと……?」
「 “悪霊のせいかも” とか言ってたろ?んで今日学校に来なかったから、何かしら起こったんじゃないかと思ったんだけど……何も無いみたいだな」
 少なくとも、俺の目の前に居るこいつが何かしらの霊障に悩んでるようには見えなかった。その辺は安心してもよさそうだが……もしかしたら、こいつ本人じゃなくて別の人間だったのか?
「あっ……いや、言ったね。そんなこと…………それで、わざわざ?なら、電話してくれたら良かったのに……」
「電話したけど、居なかったろ?お袋さんが “公園に行った” って言ってたから、さっきまで見に行ってたんだよ。ってか、お前逆方向から来たよな?公園には、行かなかったのか?」
 そう……こいつは俺が来た方向とは、真逆の道から来た。公園の方に行ってたとしたら、そっちから来るなんてあり得ない。
「ああ、ここのところ夜になると、あの公園に “暴走族” が集まるんだよ。お母さんには、いつもの習慣で “公園に行く” なんて言っちゃったけど、最近は別の道使ってるの。横島君会わなかった?」
「………………アッテナイ」
 …………なら、いくら探しても見つかるはずねぇよな。 
「何、その間……?」
「いや、そんなことより悪霊って何だよ?一体何があったんだ?」
「そ、それは……」
 悪霊の話になると、萩原は昨日と同様言い淀む………やっぱり人には言い難い事情があるのか?
 俺は一息ついてから、口を開いた。
「どうしても、言いたくないなら無理には聞かないよ……お前、無事みたいだしな。ただ、本当にヤバそうなら、そうなる前に相談して欲しい。俺に言いたくないなら、ピートやステ……タイガーにでも言えばいい。力になってくれるよ」
「横島君……」
 なんとも、ありきたりな台詞だな……かと言って、他に気の利いた台詞なんて思い浮かばないんだから仕方ないか。
「何事も無くて良かったよ。じゃあ帰るから、明日学校でな
。それと、余り遅くなると家族が心配するぞ」
 …………最後は親父の説教臭くなっちまった。少し恥ずいな……これも、妙神山で歳喰ったせいか?
 そんな気恥ずかしさを誤魔化すように踵を返そうとした時だった……
「__かが出るんだよ……」
「え?何?」
 聞こえねぇ……取り敢えず帰るのを中断して、向き直る。
 すると萩原は怒ったような、恥ずかしがってるような声で言い直した。
「だから、 “お腹” が出てきちゃったんだよ!」
 そう言って、両手で自分のウエスト部分を擦る。
「何で……?」
 ………………どうゆう意味だ?
 腹が出たのと、悪霊に何の関係が??
「解んない!!最近、運動しないでゴロゴロしてただけなのに不思議でしょうがないよ!それで、きっと悪霊が何か悪さしたんじゃないかなぁ〜…………なんて」
「……………………………………」
 ………………んな、理由あるかっっっ!!!!!
 そう言った、怨霊や妖怪は確かに居るよ!
 でも、もしそうなら周りが直ぐに気付くわ!そもそも、隠すことなんて出来ねぇ!!
 どう考えたって “運動しないで、食って寝てた” のが原因だろうがあっ!!!
 ………………と、声を大にして言いたい。
 言いたいんだが、ここまで散々 “お預け” 喰らった状態で出て来た答えが余りに衝撃(お些末)過ぎて言葉が出てこない。
「……………………そ、|それ《悪霊》を何とかして欲しかったのか……?」
 辛うじて、そう言葉を絞り出す……
「そう!それも、あるし__」
 まだ、何かあんのかよ……?
「横島君の “モンジュ” ……だっけ?それって何でも出来るんでしょ?私のお腹も、それで何とかならないかなぁ〜なんて!」
「……………………」
 テメェ…………文珠は、神にだって匹敵する能力なんだぞ!それを、たった100円で……!!!!
「でも〜、流石に言うの恥ずかしかったし、図々しいかなぁ〜と思って言うの止めたの……ごめんね、何か心配掛けちゃったみたいで♪」
 そう言って、片目を閉じて “ゴメン” のポーズをする萩原…………こいつも割と可愛らしい顔してるから、そついったお茶目な格好をするとそれなりに魅力的なんだが、今の俺にそれを感じる余裕は無かった……
「お、怒っちゃった……?」
「……………………」
 お、落ち着けぇ…………怒鳴るな。キレるな……こいつは、ちゃんと謝ってんだ。
 鼻から大量に空気を吸って、口からゆっくり吐く。それを複数回繰り返す…………いいぞ、落ち着いてきた。
「ま……まぁ、いいよ。そ…そうか、こんな遅くなったのはそれだけ長くジョギングを頑張ってたんだな」
「あっ、それは違う。途中で偶然友達に会ってマ◯クでお喋りしてたの♪お腹も空いちゃって、夜なのにハンバーガー食べちゃったよ……駄目だねぇ」
「走れ!豚ぁっっ(怒号)!!!」
「ひど〜〜い(泣)!!!」
 疲れた……無駄に疲れた…………
 ちなみにだが、こいつが昨日元気を無くしてたのはダイエットして腹を空かしてたせい。
 そして今日学校を休んだのは、その後自棄食いしたら腹痛起こして寝込んだだけ………………もう、何も言えねぇ。
 ――後日、某警察署――
「本当だよ!!刑事さん。そいつは、何も無い所から爆弾を創り出したんだよ!それを投げ付けられた瞬間にドカーンって!」
「凄いな、手品師か……」
「信じてねぇだろっ!!!?」