透き通るような青色に、ふわりと雲が浮いていて。
そのわた雲に見下ろされ、キャラック船は海を行く。
ただ漫然と広がる、青と白のコントラストに。
どこかへと向かう、海鳥たちが混じっていた。
そんな窓越しの風景から、ふとそよ風が吹き込むと。
船室にいる少女の髪が、やわらかくなびいて。
長い亜麻色を押さえながら、少女は窓に目線をやり。
そして小さく、ため息をつく。
——故郷はもう、見えなくなっていた。
流れていくわた雲たちを、少女はしばらく眺めては。
それからまた、広げていた荷物を大きな革のカバンにしまっていく。
地図やコンパス、革水筒や片手サイズのスコップ。
そんなものを詰め込んで、カバンをなんとか閉じると。
少女はぼんやりと、これからのことに想いを馳せた。
もうすぐ、長い長い旅が始まるのだ。
そこに大層な目的だとか、一生かけて叶えたい夢だとか。
何か一つくらいはあればよかったのだろうが、あいにくそんなものはない。
あるのはくだらない口約束だけで。
それすら、果たす意味もとうになくなっている。
そんなカビの生えた約束でも、果たさきゃいけない気がして。
少女はやり遂げる自身もないのに、この旅を始めたのだ。
「もうすぐエルクですぜ」なんて。
扉の向こうから声がして。
見えもしない相手に会釈してから。
少女は、真っ白なマントを羽織ると。
その空色の瞳で、船室をぐるりと見渡す。
そしてゆっくりと深呼吸をして。
ミルクティーのような、やわらかい色の髪をなびかせながら。
少女シルヴィカは、カバンを手に取った。