表示設定
表示設定
目次 目次




再会・三

ー/ー



「砂棲(させい)と言う妖怪が、この砂浜に潜んでいる可能性があります……鴉は、その妖怪についてはご存知ですか?」
「いえ……知りません」
 

 自分の左隣を数メートル程離れて歩く、氷雅の問いに俺は正直に答えた。協力を宣言したものの、ここまで離れて歩くのは、お互いの警戒心の現れだ。


「余り有名な妖怪じゃありませんけど、昔から浜辺で目撃される “砂の妖怪” ですわ。元々は浜辺で命を落とした者の怨霊の集合体、それが妖怪化したものです。自分の力が強くなる満月の晩にいきなり現れて、その場にいる怨霊を吸収して更に力を得て強大になる……とても厄介な存在です」
「満月の晩に怨霊を吸収?じゃあ、ここに怨霊が集まったのは……」

「ええ、砂棲の発する微量な妖気に引き寄せられたと見ています。それが奴の出現する前兆で、明日の晩に出てきて一気に吸収する積りなんでしょう」


 ふと空を見上げると、確かに満月に一歩手前まで満ちた月が輝いてる。氷雅が「明日になると厄介」と言っていたのはこういう意味か……だが…………


「それだけで、その “砂棲” と決めつけるのは少し無理がありませんか?怨霊なんて、人の少ない所なら何処にでも出る」
「前兆は、それだけじゃありませんわ……」


 そう言って、氷雅は波打ち際を指す。その先には打ち上げられた、大小様々な大量の貝殻が目に入った。

 貝殻?浜辺に貝殻なんか当たり前…………いや、何でこんなに?他の季節に比べて、冬は少なくなる傾向なのに……

 そんな訝しむ俺の様子に気付いたのか、氷雅が更に口を開く。


「気づかれましたね。この季節で、あの量は明らかに異常ですわ………奴は色んな所の砂浜を行き来してるようで、あの貝殻は他の浜から奴が運び込んだ物と言われています。そして、極めつけは下から聞こえる “砂の鳴き声” 」
「……下から!?」


 言われて、自分の踏みしめる砂に意識を向けてみる。

 ………………駄目だ、他の雑霊が気になって砂からは感じ取れない。


「元々、怨霊の集合体と言ったように砂から、彼等の無念の声が聞こえてきます。でも、余程意識を集中しなければ解らないと思いますわ。私にも、この砂浜のどこに潜んでいるかまでは解りません。それが奴を厄介たらしめてる理由でもあります」
「……いつから、気付いていたんです?」

「おかしいと思ったのは、この浜に来てすぐですわ。砂を踏んだ瞬間に、変な違和感を覚えました」
「………………」


 踏んだ瞬間……!?

 それだけで違和感に気づけるのか?さっき俺の接近を察知したように、この女の霊感は俺や雪之丞とは比べ物にならないかもしれない。


 …………まぁ、それも氷雅が本当のことを話してることが前提なんだが……今は信じるしかないか。


「それら全ての状況を合わせた上で判断した訳ですね。それで……その “砂棲” が居たとして、どうやって見つけるんです?そいつの強さは?」
「地道に微量な妖波を辿るしかありませんわ。強さですけど、古の記録では村が一つ壊滅したらしいです、当時の家屋の倍くらい大きかったとか……でも、それは著しく力が強くなる満月の晩であって、その日以外なら “そこまで” ではないはずです」


 当時の家屋の倍となると………大体20メートル前後ってことか?
 
 俺がそんな風に考えているのとは別に、未だ漂っている雑霊の方に目を向ける氷雅。


「でも……見つけ出すには、完全に “雑音” を消す必要がありますわね」
 

 さっきの霊盾で粗方吹き飛びはしたが、辺りにはまだ幾らか残ってる。

 元々、全部除霊しなきゃならないから別にいいんだが…………


「うっかり奴の上を歩いて、襲い掛かっては来ないんですかね?」
「そうならないよう願うしか、ありませんわ。ただ、満月の夜以外に人が襲われた記録はなかったから、可能性は低いと思いますけど……」


 下にいるかも知れない妖怪に意識を向けながら(俺には解らんが)雑魚の除霊か……ゾッとしねぇな。


「間違えて私を斬らないで下さいよ……」
「そちらこそ、雑霊と一緒に吹き飛ばさないで頂きたいですわ」


 お互いに悪態とも、嫌味とも取れるような応酬をしながら、前に出る。物理的距離は変わらないが、精神的距離は縮まった…………のか?



 
    ◇◇◇


 バシュッ


 空中を漂う怨霊は霊手で仕留める。この場にいるのは、今ので最後だ。


「そっちは、どうです?」
「これで……最後ですわ」


 向こうも終わったらしい。自分と少し離れた場所で、怨霊を切り捨てた氷雅が答えるが、声に少し疲労感が出ている。俺もなんだが、肉体よりも精神的疲労感だろう。

 
 氷雅と再び雑魚を狩り出してから、1時間半ほど経過して既に日を跨いでる。だだっ広い海岸を、端から端まで歩いて目に付いた怨霊を除霊。氷雅は霊刀、俺は霊手(たまに霊盾)。

 その間、特に会話も無く “それぞれ” が黙々と雑魚を処理……横目で氷雅を見ていたが特に怪しい動きは見られなかった。今回に限って言えば、本当に協力してるのかもしれない。


 まぁ、それは置いといて除霊の方なんだが……
 
 始めに大量に相手してた時と違って、散発的に相手してるだけなんで脅威はないが、作業感が強すぎてヘタる…………と言うか、普通に面倒臭くて疲れた。

 2人居たから、この程度の時間で済んだけど俺1人なら倍の時間が……いや、多分中断して明日に回したろうな。

 そうなったら、氷雅の言う “砂棲” ってのが浜に出て来て大暴れか。
 

 どんな奴かは、まだ解らないけど俺とマリアで止めれたかどうか…………
 



「……奴の居所、解りましたか?」
「……………………」
 

 周りには雑魚が消えたのを確認して、氷雅に問う……が、奴は答えない。砂浜に片手を付いてた上で、目を閉じて集中している感じだ。

 砂に流れる妖気を探ってるのか?

 氷雅に合わせて、俺も砂に意識を集中してみるが…………


 駄目だ……やはり、俺には感じ取れない。

 鳴き声どころか、妖気の片鱗も感じ取れないぞ。本当に、この浜にそんな妖怪がいるのか……?


「氷__」
「……移動しますわ」


 俺が口を開きかけたと同時に、氷雅は立ち上がると別方向へ歩き始める。何か解ったんだろうか?

 ただ、聞いても答えなさそうなので、その後を俺も無言でついて行く。




    ◇◇◇


 数十メートル程歩いたくらいだろうか?氷雅がおもむろに刀を鞘から抜き放つ。

 一瞬身構えたが、氷雅は俺を見ることもなく刀を半ばくらいまで砂地に突き立てると、片膝を付いた。


「忍の本領は情報収集……それは、霊能が加わっても同じですわ」


 そう言って、砂に手を着いた時と同じように目を閉じる……

 刀を通して、砂下に潜む妖気を探ってるのか?

 その姿勢のまま十数秒……立ち上がって刀を鞘に納めると、同じように無言で歩き出す。そして、これまた同じように付いていく俺………


 無言だと、本当に不安になるな。ここまで特に何も無かったが、この女への疑念が完全に消えてるわけじゃない。
 
 探すフリをして、人を罠に嵌めようとしてるんじゃないかと言う考えも頭に浮かび始めていたが、俺は敢えて黙っていた。

 本当に騙す気なら、何か言ったところで “はぐらかされる” だけだろうしな……それとは別に、この女はプライドが高い。やるなら、真正面から来る気がする。

 忍らしくはないが、勝負事に関しては剣士としての側面が強いのかもしれない。


 そんな俺の考えを余所に、黙々と歩き続ける氷雅。そして、また数十メートル程歩いて砂地に刀を突き刺して集中。それを2回ほど……始めを含めれば、3回目で状況に変化が現れた。


「居ましたわ……」


 ゆっくりと立ち上がった、氷雅は指を指すが何か表情がおかしい。捜し物を見つけた歓喜ではなく、何か訝しむような……取り敢えず、俺も同じ方向を見る。


「…………近いですね」
「ええ……アレで良く起きませんでしたわね…………」


 氷雅の指した場所は、別に何の変哲もない砂浜の一帯…………俺には何も解らない。ただ、問題はそこじゃない。

 その場所の俺達から見て右隣、精々10メートル先に半径10メートル近いのクレーターが生々しく残っていた。要は俺が、始めに霊盾で爆破した場所だ……


「本当に、あそこなんですか?近くで霊的な爆発があったのに、何の変化もないなんて……」
「私だって信じられませんわ………始めは、あなた(霊)の残滓かと思いましたけど、それとは別に微量な妖気を感じましたの」


 疑いの言葉を発する、俺に対する氷雅の顔は真剣そのもので、特に嘘を言ってるようには感じられなかった。

 なら……


「どうすれば、起きるんですか?」
「割と浅い所に潜んでます。あそこに隣と同じ爆弾を落とせば、起きるんじゃないかと………」
「なるほど……」

 
 とは言ったものの、どうしたもんか…………

 氷雅の言う通りなら、ここで砂棲が本調子を出す前に叩き起こして、退治するのが手っ取り早い気もする。だが、何となく踏ん切りが付かない……そんな安直に起こして平気だろうか?


「もし、2人で対処出来なかった場合はどうなります?奴は砂浜の外には出れるんですか?」
「特性上、砂地以外動けませんわ。今ここは全面的に封鎖されてますから、もし倒すのが無理でも外の被害は心配しなくても大丈夫です」


 最悪は、回避出来るわけか……今から協会に応援を要請するって選択肢もあるけど、すぐに動いてくれる保証もないしな。
 
 待ってる内に氷雅の言う満月の晩になっちまえば、折角予兆に気付けた意味も無くなる…………腹括るか。


「解りました、やりましょう………準備はいいですか?」
「ええ、いつでもいいですわ!」


 俺は右手に意識を集中する……いや、氷雅に言葉を掛ける前に既に始めていた。

 そして、霊盾の生成が終わるとそのまま氷雅に言われた地点に投擲!



 ドォゴオオォォン!!



 轟音と共に巻き上がる大量の砂粒……やがて…………






再会・三 砂
 ザァァアアアアーーーー!!



 爆発音が止んだと同時くらいに、急激に盛り上がる砂地!


 当たりなのか…………!!?
 



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 再会・四


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「砂棲(させい)と言う妖怪が、この砂浜に潜んでいる可能性があります……鴉は、その妖怪についてはご存知ですか?」「いえ……知りません」
 自分の左隣を数メートル程離れて歩く、氷雅の問いに俺は正直に答えた。協力を宣言したものの、ここまで離れて歩くのは、お互いの警戒心の現れだ。
「余り有名な妖怪じゃありませんけど、昔から浜辺で目撃される “砂の妖怪” ですわ。元々は浜辺で命を落とした者の怨霊の集合体、それが妖怪化したものです。自分の力が強くなる満月の晩にいきなり現れて、その場にいる怨霊を吸収して更に力を得て強大になる……とても厄介な存在です」
「満月の晩に怨霊を吸収?じゃあ、ここに怨霊が集まったのは……」
「ええ、砂棲の発する微量な妖気に引き寄せられたと見ています。それが奴の出現する前兆で、明日の晩に出てきて一気に吸収する積りなんでしょう」
 ふと空を見上げると、確かに満月に一歩手前まで満ちた月が輝いてる。氷雅が「明日になると厄介」と言っていたのはこういう意味か……だが…………
「それだけで、その “砂棲” と決めつけるのは少し無理がありませんか?怨霊なんて、人の少ない所なら何処にでも出る」
「前兆は、それだけじゃありませんわ……」
 そう言って、氷雅は波打ち際を指す。その先には打ち上げられた、大小様々な大量の貝殻が目に入った。
 貝殻?浜辺に貝殻なんか当たり前…………いや、何でこんなに?他の季節に比べて、冬は少なくなる傾向なのに……
 そんな訝しむ俺の様子に気付いたのか、氷雅が更に口を開く。
「気づかれましたね。この季節で、あの量は明らかに異常ですわ………奴は色んな所の砂浜を行き来してるようで、あの貝殻は他の浜から奴が運び込んだ物と言われています。そして、極めつけは下から聞こえる “砂の鳴き声” 」
「……下から!?」
 言われて、自分の踏みしめる砂に意識を向けてみる。
 ………………駄目だ、他の雑霊が気になって砂からは感じ取れない。
「元々、怨霊の集合体と言ったように砂から、彼等の無念の声が聞こえてきます。でも、余程意識を集中しなければ解らないと思いますわ。私にも、この砂浜のどこに潜んでいるかまでは解りません。それが奴を厄介たらしめてる理由でもあります」
「……いつから、気付いていたんです?」
「おかしいと思ったのは、この浜に来てすぐですわ。砂を踏んだ瞬間に、変な違和感を覚えました」
「………………」
 踏んだ瞬間……!?
 それだけで違和感に気づけるのか?さっき俺の接近を察知したように、この女の霊感は俺や雪之丞とは比べ物にならないかもしれない。
 …………まぁ、それも氷雅が本当のことを話してることが前提なんだが……今は信じるしかないか。
「それら全ての状況を合わせた上で判断した訳ですね。それで……その “砂棲” が居たとして、どうやって見つけるんです?そいつの強さは?」
「地道に微量な妖波を辿るしかありませんわ。強さですけど、古の記録では村が一つ壊滅したらしいです、当時の家屋の倍くらい大きかったとか……でも、それは著しく力が強くなる満月の晩であって、その日以外なら “そこまで” ではないはずです」
 当時の家屋の倍となると………大体20メートル前後ってことか?
 俺がそんな風に考えているのとは別に、未だ漂っている雑霊の方に目を向ける氷雅。
「でも……見つけ出すには、完全に “雑音” を消す必要がありますわね」
 さっきの霊盾で粗方吹き飛びはしたが、辺りにはまだ幾らか残ってる。
 元々、全部除霊しなきゃならないから別にいいんだが…………
「うっかり奴の上を歩いて、襲い掛かっては来ないんですかね?」
「そうならないよう願うしか、ありませんわ。ただ、満月の夜以外に人が襲われた記録はなかったから、可能性は低いと思いますけど……」
 下にいるかも知れない妖怪に意識を向けながら(俺には解らんが)雑魚の除霊か……ゾッとしねぇな。
「間違えて私を斬らないで下さいよ……」
「そちらこそ、雑霊と一緒に吹き飛ばさないで頂きたいですわ」
 お互いに悪態とも、嫌味とも取れるような応酬をしながら、前に出る。物理的距離は変わらないが、精神的距離は縮まった…………のか?
    ◇◇◇
 バシュッ
 空中を漂う怨霊は霊手で仕留める。この場にいるのは、今ので最後だ。
「そっちは、どうです?」
「これで……最後ですわ」
 向こうも終わったらしい。自分と少し離れた場所で、怨霊を切り捨てた氷雅が答えるが、声に少し疲労感が出ている。俺もなんだが、肉体よりも精神的疲労感だろう。
 氷雅と再び雑魚を狩り出してから、1時間半ほど経過して既に日を跨いでる。だだっ広い海岸を、端から端まで歩いて目に付いた怨霊を除霊。氷雅は霊刀、俺は霊手(たまに霊盾)。
 その間、特に会話も無く “それぞれ” が黙々と雑魚を処理……横目で氷雅を見ていたが特に怪しい動きは見られなかった。今回に限って言えば、本当に協力してるのかもしれない。
 まぁ、それは置いといて除霊の方なんだが……
 始めに大量に相手してた時と違って、散発的に相手してるだけなんで脅威はないが、作業感が強すぎてヘタる…………と言うか、普通に面倒臭くて疲れた。
 2人居たから、この程度の時間で済んだけど俺1人なら倍の時間が……いや、多分中断して明日に回したろうな。
 そうなったら、氷雅の言う “砂棲” ってのが浜に出て来て大暴れか。
 どんな奴かは、まだ解らないけど俺とマリアで止めれたかどうか…………
「……奴の居所、解りましたか?」
「……………………」
 周りには雑魚が消えたのを確認して、氷雅に問う……が、奴は答えない。砂浜に片手を付いてた上で、目を閉じて集中している感じだ。
 砂に流れる妖気を探ってるのか?
 氷雅に合わせて、俺も砂に意識を集中してみるが…………
 駄目だ……やはり、俺には感じ取れない。
 鳴き声どころか、妖気の片鱗も感じ取れないぞ。本当に、この浜にそんな妖怪がいるのか……?
「氷__」
「……移動しますわ」
 俺が口を開きかけたと同時に、氷雅は立ち上がると別方向へ歩き始める。何か解ったんだろうか?
 ただ、聞いても答えなさそうなので、その後を俺も無言でついて行く。
    ◇◇◇
 数十メートル程歩いたくらいだろうか?氷雅がおもむろに刀を鞘から抜き放つ。
 一瞬身構えたが、氷雅は俺を見ることもなく刀を半ばくらいまで砂地に突き立てると、片膝を付いた。
「忍の本領は情報収集……それは、霊能が加わっても同じですわ」
 そう言って、砂に手を着いた時と同じように目を閉じる……
 刀を通して、砂下に潜む妖気を探ってるのか?
 その姿勢のまま十数秒……立ち上がって刀を鞘に納めると、同じように無言で歩き出す。そして、これまた同じように付いていく俺………
 無言だと、本当に不安になるな。ここまで特に何も無かったが、この女への疑念が完全に消えてるわけじゃない。
 探すフリをして、人を罠に嵌めようとしてるんじゃないかと言う考えも頭に浮かび始めていたが、俺は敢えて黙っていた。
 本当に騙す気なら、何か言ったところで “はぐらかされる” だけだろうしな……それとは別に、この女はプライドが高い。やるなら、真正面から来る気がする。
 忍らしくはないが、勝負事に関しては剣士としての側面が強いのかもしれない。
 そんな俺の考えを余所に、黙々と歩き続ける氷雅。そして、また数十メートル程歩いて砂地に刀を突き刺して集中。それを2回ほど……始めを含めれば、3回目で状況に変化が現れた。
「居ましたわ……」
 ゆっくりと立ち上がった、氷雅は指を指すが何か表情がおかしい。捜し物を見つけた歓喜ではなく、何か訝しむような……取り敢えず、俺も同じ方向を見る。
「…………近いですね」
「ええ……アレで良く起きませんでしたわね…………」
 氷雅の指した場所は、別に何の変哲もない砂浜の一帯…………俺には何も解らない。ただ、問題はそこじゃない。
 その場所の俺達から見て右隣、精々10メートル先に半径10メートル近いのクレーターが生々しく残っていた。要は俺が、始めに霊盾で爆破した場所だ……
「本当に、あそこなんですか?近くで霊的な爆発があったのに、何の変化もないなんて……」
「私だって信じられませんわ………始めは、あなた(霊)の残滓かと思いましたけど、それとは別に微量な妖気を感じましたの」
 疑いの言葉を発する、俺に対する氷雅の顔は真剣そのもので、特に嘘を言ってるようには感じられなかった。
 なら……
「どうすれば、起きるんですか?」
「割と浅い所に潜んでます。あそこに隣と同じ爆弾を落とせば、起きるんじゃないかと………」
「なるほど……」
 とは言ったものの、どうしたもんか…………
 氷雅の言う通りなら、ここで砂棲が本調子を出す前に叩き起こして、退治するのが手っ取り早い気もする。だが、何となく踏ん切りが付かない……そんな安直に起こして平気だろうか?
「もし、2人で対処出来なかった場合はどうなります?奴は砂浜の外には出れるんですか?」
「特性上、砂地以外動けませんわ。今ここは全面的に封鎖されてますから、もし倒すのが無理でも外の被害は心配しなくても大丈夫です」
 最悪は、回避出来るわけか……今から協会に応援を要請するって選択肢もあるけど、すぐに動いてくれる保証もないしな。
 待ってる内に氷雅の言う満月の晩になっちまえば、折角予兆に気付けた意味も無くなる…………腹括るか。
「解りました、やりましょう………準備はいいですか?」
「ええ、いつでもいいですわ!」
 俺は右手に意識を集中する……いや、氷雅に言葉を掛ける前に既に始めていた。
 そして、霊盾の生成が終わるとそのまま氷雅に言われた地点に投擲!
 ドォゴオオォォン!!
 轟音と共に巻き上がる大量の砂粒……やがて…………
 ザァァアアアアーーーー!!
 爆発音が止んだと同時くらいに、急激に盛り上がる砂地!
 当たりなのか…………!!?