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衝動

ー/ー



 魔王城の一室で、エリシアとゴブリン族の王であるゴブリンキングが対談していた。



 対談とは言っても、ゴブリンキングが魔王城を訪問した際の形式的な挨拶の場である。

 キングと名はついているものの、ゴブリンキングは地方の一王に過ぎない。魔王城の幹部たちは彼にとって「親会社の幹部」のような存在だった。



「——というわけで、エリシア様にもご挨拶をと思いましてですねぇ。」

 ゴブリンキングは頭を下げながら、丁寧に言葉を並べた。



「あら〜それはどうも……。」

エリシアは気のない口調で微笑みながら答えた。


 
そして、ふと思い出したように問いかける。



「ところで……地元ではだいぶ反対勢力を抑え込む、やり手だと聞いてますわよ。」



 その言葉に、ゴブリンキングは一瞬ぎょっとした顔をしたが、すぐに笑顔を取り繕った。



「いやいや、お恥ずかしい限りでございますよ。すべて我が国の平和のため、民のために日々努力を……。」



 エリシアは微笑みを浮かべたまま、じっとゴブリンキングを見つめている。その視線に気づいたキングは、背筋を正しながら言葉を続けた。



 会話の途中、エリシアはふと妙な衝動に駆られた。





(こいつ、今ぶん殴ったらどうなるんでしょう……)





 ——ホワンホワ〜ん。



 エリシアの中で妄想が広がり始める。



(やっぱり怒りますわね。そりゃそうですわね、一応「王」なんだからメンツがあるし……流石に殴られたら怒りますわ。)



 頭の中で、ゴブリンキングが激昂して立ち上がる様子が浮かぶ。



(きっとやり返してくるでしょうけど……いやいや、それも多分、秒で私が勝つに決まってますわ。)



 妄想の中では、エリシアが冷ややかな笑みを浮かべながらゴブリンキングを一撃で倒している。その後の展開を考えて、さらに思考は続く。



(で、その後どうするつもりかしらねぇ?泣きながら土下座でもする?それとも私を恨んで反乱を起こす?まぁ、どちらにしても私が全部ねじ伏せるだけですけど。)



 そんなことを考えているうちに、ゴブリンキングの声がふと耳に戻ってきた。



「……でございますよ。はい、まさに我々の地方でも——」



 現実に引き戻されたエリシアは、何食わぬ顔でうなずきながら、ゴブリンキングの話を聞くふりを再開した。



(まぁ、殴るのはまた今度でいいですわね。)



 だが、どうしても衝動は止まらなかった。





(蹴飛ばしても一緒ですかねぇ……。ていうか、なんかガラ空きなんですわ……。)





 エリシアの頭の中で、再び妄想が広がり始める。



 ——ホワンホワ〜ん。



(きっと蹴飛ばされたゴブリンは、喚きながら魔界の上層部に苦言を申し立てますわね。それで私の方に忠告が来て……。)



 エリシアはそこでふっと笑みを浮かべた。



(でも、割とどうでもいいですわね〜。)



 妄想の中では、魔界の幹部たちがゴブリンキングを指差して笑い、口々に言い放っている。



「隙を見せた方が悪い。」
「避ければいいのに。」

「相手がエリシア様なら、むしろ光栄じゃないか。」



 ゴブリンキングは涙目になりながら、幹部たちの言葉に何も言い返せない。魔界とは、そういう非情な場所だった。



 現実に戻ったエリシアは、ゴブリンキングの話を聞きながら、ちらりと彼の足元に目を向けた。



(本当に蹴飛ばしたらどうなるのかしらねぇ……。まぁ、でも今日はやめておきますわ。)



 エリシアは心の中でそう結論を出すと、涼しい顔でゴブリンキングの話を促すようにうなずいてみせた。



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 魔王城の一室で、エリシアとゴブリン族の王であるゴブリンキングが対談していた。
 対談とは言っても、ゴブリンキングが魔王城を訪問した際の形式的な挨拶の場である。
 キングと名はついているものの、ゴブリンキングは地方の一王に過ぎない。魔王城の幹部たちは彼にとって「親会社の幹部」のような存在だった。
「——というわけで、エリシア様にもご挨拶をと思いましてですねぇ。」
 ゴブリンキングは頭を下げながら、丁寧に言葉を並べた。
「あら〜それはどうも……。」
エリシアは気のない口調で微笑みながら答えた。
そして、ふと思い出したように問いかける。
「ところで……地元ではだいぶ反対勢力を抑え込む、やり手だと聞いてますわよ。」
 その言葉に、ゴブリンキングは一瞬ぎょっとした顔をしたが、すぐに笑顔を取り繕った。
「いやいや、お恥ずかしい限りでございますよ。すべて我が国の平和のため、民のために日々努力を……。」
 エリシアは微笑みを浮かべたまま、じっとゴブリンキングを見つめている。その視線に気づいたキングは、背筋を正しながら言葉を続けた。
 会話の途中、エリシアはふと妙な衝動に駆られた。
(こいつ、今ぶん殴ったらどうなるんでしょう……)
 ——ホワンホワ〜ん。
 エリシアの中で妄想が広がり始める。
(やっぱり怒りますわね。そりゃそうですわね、一応「王」なんだからメンツがあるし……流石に殴られたら怒りますわ。)
 頭の中で、ゴブリンキングが激昂して立ち上がる様子が浮かぶ。
(きっとやり返してくるでしょうけど……いやいや、それも多分、秒で私が勝つに決まってますわ。)
 妄想の中では、エリシアが冷ややかな笑みを浮かべながらゴブリンキングを一撃で倒している。その後の展開を考えて、さらに思考は続く。
(で、その後どうするつもりかしらねぇ?泣きながら土下座でもする?それとも私を恨んで反乱を起こす?まぁ、どちらにしても私が全部ねじ伏せるだけですけど。)
 そんなことを考えているうちに、ゴブリンキングの声がふと耳に戻ってきた。
「……でございますよ。はい、まさに我々の地方でも——」
 現実に引き戻されたエリシアは、何食わぬ顔でうなずきながら、ゴブリンキングの話を聞くふりを再開した。
(まぁ、殴るのはまた今度でいいですわね。)
 だが、どうしても衝動は止まらなかった。
(蹴飛ばしても一緒ですかねぇ……。ていうか、なんかガラ空きなんですわ……。)
 エリシアの頭の中で、再び妄想が広がり始める。
 ——ホワンホワ〜ん。
(きっと蹴飛ばされたゴブリンは、喚きながら魔界の上層部に苦言を申し立てますわね。それで私の方に忠告が来て……。)
 エリシアはそこでふっと笑みを浮かべた。
(でも、割とどうでもいいですわね〜。)
 妄想の中では、魔界の幹部たちがゴブリンキングを指差して笑い、口々に言い放っている。
「隙を見せた方が悪い。」
「避ければいいのに。」
「相手がエリシア様なら、むしろ光栄じゃないか。」
 ゴブリンキングは涙目になりながら、幹部たちの言葉に何も言い返せない。魔界とは、そういう非情な場所だった。
 現実に戻ったエリシアは、ゴブリンキングの話を聞きながら、ちらりと彼の足元に目を向けた。
(本当に蹴飛ばしたらどうなるのかしらねぇ……。まぁ、でも今日はやめておきますわ。)
 エリシアは心の中でそう結論を出すと、涼しい顔でゴブリンキングの話を促すようにうなずいてみせた。