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第100話 海人の指導者

ー/ー



「効いた…のか…?」
イルの言葉で少々不安になったが、大丈夫だろう。
こいつは、今ので致命傷とまでは行かないまでもそれなりの傷を負ったはず。あとは、ここを逃さず叩くのみだ。
俺は剣を抜き、技を放つ。

「…」
マズい。このタイミングで、いい技が出てこない。というか、よく考えたら剣の技なんかろくに知らない。
必死に考えた。
そうだ、俺が知ってる剣の技には、この前閃いたやつがある…。
すぐに行動に移した。
「奥義 [火剣の舞い]」

剣に火の力を込め、高速で振るう。
水中だし、火の力はかき消されてしまうような気もしたが、意外にもそうでもなく、異形の肌を斬りつけたときに炎がちらつくのが見えた。
あとは斧で決めるか…と思ったその時、再びリトの声が飛んできた。
「[草薙の打ち払い]!」
異形の胴体に、先ほどよりも大きな斬撃がほとばしった。
異形の体は真っ二つに…はならなかったが、それでも結構な深さまで切れた。

リトは再び薙刀を振りかぶる。
しかし、その間に異形が彼女の方を向き、若干ふらつきながらも口を開け、なんと複数本の牙を飛ばした。
リトは慌てて体を捻ったが、3本ほど左胸に受けてしまった。
「リト…!」
それを見て、次はイルが行く。
飛んでくる牙を避けながら異形の顔の前まで近づき、
「剣技 [逆鱗裂き]!」
剣を勢いよく下から上に振り上げる。
それは銘の通り、鱗を裂くイメージで出された一撃だった。

…それで思った。
技というのは、結局はイメージが大事なのだ。
それは言い換えれば、例え技を出したことがなくともイメージさえ掴めればなんら問題はないということだ。
そうだとすれば、俺は…。

とにかく、イルの技で異形は完全に倒れた。
リトはこの異形を昔から恐れていたらしく、イルはよくやった、勇気あるなと褒めていた。
リトは少し照れながら、「私は、みんなを守るためにやっただけだよ…」と言った。



「さて…話を戻そうか。こいつを開ける方法…だな」

「あー、それなんだが…」
樹が頭を掻きながら言った。
「たぶん、海人の力が必要だと思う。海人が力を流すことで、ロックが外れるようになってると見た」

「海人…それってつまり、純正の海人でなきゃダメなの?」

「いや、海人系種族ならなんでもいいだろう。リトかイル、試してみてくれないか?」
樹が二人の顔を見た所、リトが頷いて前に出た。
彼女が扉に手をかけて目を閉じると、扉全体が青く光った。
「…よし、成功だ。これでロックは解除できたはずだ、行こう」

そうして、俺とリトは扉を開いた…。




奥に並ぶ、一つ一つが豪華な椅子。
その中央にある、妙に立派な椅子。
そして、そこから入り口まで一直線に引かれた紫のカーペット。
今までの部屋とは違ってやたら豪華なその様は、アルバン城の玉座の間を思わせる。

部屋の奥には5つの椅子が並べられており、その全てに槍を手にしたマクダットが座っている。そして玉座…と言うべきか、中央の椅子には他のマクダットメンバーより大柄な海人が座っていた。
それは頭の半分くらいが海藻で覆われており、また体の所々にヒトデや貝がくっついている。
そいつは俺達を見て、重々しい声で言った。
「…来たか、地上の不届き者ども」

「ああ、はるばる来てやったぜ。…俺達が来ることは、知ってたんだな?」

「無論だ。故にわざわざこうして、腕の立つ同士を集めておいたのだからな」

その海人を見て、イルが言った。
「皆さん、あいつです!あいつがマクダットの指導者、深海人マーガルです!」

マーガルと呼ばれた海人は、イルを睨んで言った。
「ほう…貴様が私のことを知っておったとは。…まあいい。して、陸人よ。お前たちはリトの連れてきた助っ人だな?」

「助っ人…ねえ。まあ、そんなとこかな」

「ならば、お前たちもまた、我らの邪魔をするつもりでいるのだな?」
ああそうだ…と言いたい所だが、その前に一応の確認をする。
「一体、何をするつもりなんだ?」

「我らの目的は簡単だ。全ての海人を統一し、陸人どもを一人残らず殺す…」

すると、樹が反応した。
「なんでそんな事を!」

「ああ、勘違いするな…我々の最終目的は、美しい海を…素晴らしき我らの世界を取り戻すこと。今言った計画は、その一環に過ぎない」

「なんで海人を統一する必要がある?」

「陸人は我らと同等、あるいはそれ以上に数が多い存在。故に海人が一致団結しなければ、我々の目的は果たせぬ。だが、それはまだ道半ばだ」
それを聞いて、イルが叫んだ。
「当然だ!海人は、この広い海の中で自由に生きる存在。それを勝手に侵す奴らに、誰も賛同なんかするわけないだろ!」

「明らかな目的があらば、その達成のために団結するのは当然のことだ。協力しない者が馬鹿なのであって、協力するのが当たり前だ」

「お前らがしてる事は、ただの独裁政治だ!みんなを常に監視して、暴力と脅しで恐怖を植え付けて、無理やり考え方を統一しようとするなんて…そんなの、絶対に間違ってる!」

「我々は海人の、ひいては海の未来を思うからこそ行動している。貴様のように、ただ我らに抗うだけの者こそ間違っている。有意義な暮らしを手にするためには、我慢や犠牲が必要な事もあるのだ」

「こんなやり方で、平和な暮らしが手に入ると思うか!第一、陸人を滅ぼして、私達に何のメリットがあるんだ!」

「知らない、とは言わせんぞ…?奴らはこの数百年間、海を汚し、海人の存在を無視している。このままでは、我らは奴らによって滅ぼされる。ならば、その前に滅ぼす他あるまい」

なるほど、つまりこいつらは、元々は陸の者達による海の汚染に怒っていたのか。
だが、そこからやがて極端な思考に陥り、陸人を根絶やしにするしかないと思い込むようになったのだろう。
「だとしても陸人の命を奪う必要はないし、そのために海人を虐げるなんてもってのほかだ!彼らは私達と同じく、知性のある存在なんだ…話し合おうという考えが、なぜ出てこない!」

「奴らが真に知性がある存在であるなら、こんなにも長い間海を汚そうとは思わないはずだ…奴らとて、我らの存在を知っているのだからな」
マクダットの指導者は、ひときわ大きな槍を出して言った。
「そいつらに肩入れすると言うなら、貴様も我らの敵だ。…哀れだな、海人としての誇りを失うとは」

「それはどっちだろうな!お前たちは同族を虐げ、陸人に対する不満と怒りを振り回し、それを周りにも押し付け…異人として、最底辺のことをしているだろう!」

「ふん…なんとでも言うがいい」
マーガルはイルを軽くあしらい、俺達に目線を移してきた。
「さあ、陸人よ。お前たちの力、見せてもらおうか。私の両隣にいる4人は、全て我らの中でも優れた腕を持つ選りすぐりの者。まずは…こいつらを全て倒して見せるがいい」









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「効いた…のか…?」イルの言葉で少々不安になったが、大丈夫だろう。
こいつは、今ので致命傷とまでは行かないまでもそれなりの傷を負ったはず。あとは、ここを逃さず叩くのみだ。
俺は剣を抜き、技を放つ。
「…」
マズい。このタイミングで、いい技が出てこない。というか、よく考えたら剣の技なんかろくに知らない。
必死に考えた。
そうだ、俺が知ってる剣の技には、この前閃いたやつがある…。
すぐに行動に移した。
「奥義 [火剣の舞い]」
剣に火の力を込め、高速で振るう。
水中だし、火の力はかき消されてしまうような気もしたが、意外にもそうでもなく、異形の肌を斬りつけたときに炎がちらつくのが見えた。
あとは斧で決めるか…と思ったその時、再びリトの声が飛んできた。
「[草薙の打ち払い]!」
異形の胴体に、先ほどよりも大きな斬撃がほとばしった。
異形の体は真っ二つに…はならなかったが、それでも結構な深さまで切れた。
リトは再び薙刀を振りかぶる。
しかし、その間に異形が彼女の方を向き、若干ふらつきながらも口を開け、なんと複数本の牙を飛ばした。
リトは慌てて体を捻ったが、3本ほど左胸に受けてしまった。
「リト…!」
それを見て、次はイルが行く。
飛んでくる牙を避けながら異形の顔の前まで近づき、
「剣技 [逆鱗裂き]!」
剣を勢いよく下から上に振り上げる。
それは銘の通り、鱗を裂くイメージで出された一撃だった。
…それで思った。
技というのは、結局はイメージが大事なのだ。
それは言い換えれば、例え技を出したことがなくともイメージさえ掴めればなんら問題はないということだ。
そうだとすれば、俺は…。
とにかく、イルの技で異形は完全に倒れた。
リトはこの異形を昔から恐れていたらしく、イルはよくやった、勇気あるなと褒めていた。
リトは少し照れながら、「私は、みんなを守るためにやっただけだよ…」と言った。
「さて…話を戻そうか。こいつを開ける方法…だな」
「あー、それなんだが…」
樹が頭を掻きながら言った。
「たぶん、海人の力が必要だと思う。海人が力を流すことで、ロックが外れるようになってると見た」
「海人…それってつまり、純正の海人でなきゃダメなの?」
「いや、海人系種族ならなんでもいいだろう。リトかイル、試してみてくれないか?」
樹が二人の顔を見た所、リトが頷いて前に出た。
彼女が扉に手をかけて目を閉じると、扉全体が青く光った。
「…よし、成功だ。これでロックは解除できたはずだ、行こう」
そうして、俺とリトは扉を開いた…。
奥に並ぶ、一つ一つが豪華な椅子。
その中央にある、妙に立派な椅子。
そして、そこから入り口まで一直線に引かれた紫のカーペット。
今までの部屋とは違ってやたら豪華なその様は、アルバン城の玉座の間を思わせる。
部屋の奥には5つの椅子が並べられており、その全てに槍を手にしたマクダットが座っている。そして玉座…と言うべきか、中央の椅子には他のマクダットメンバーより大柄な海人が座っていた。
それは頭の半分くらいが海藻で覆われており、また体の所々にヒトデや貝がくっついている。
そいつは俺達を見て、重々しい声で言った。
「…来たか、地上の不届き者ども」
「ああ、はるばる来てやったぜ。…俺達が来ることは、知ってたんだな?」
「無論だ。故にわざわざこうして、腕の立つ同士を集めておいたのだからな」
その海人を見て、イルが言った。
「皆さん、あいつです!あいつがマクダットの指導者、深海人マーガルです!」
マーガルと呼ばれた海人は、イルを睨んで言った。
「ほう…貴様が私のことを知っておったとは。…まあいい。して、陸人よ。お前たちはリトの連れてきた助っ人だな?」
「助っ人…ねえ。まあ、そんなとこかな」
「ならば、お前たちもまた、我らの邪魔をするつもりでいるのだな?」
ああそうだ…と言いたい所だが、その前に一応の確認をする。
「一体、何をするつもりなんだ?」
「我らの目的は簡単だ。全ての海人を統一し、陸人どもを一人残らず殺す…」
すると、樹が反応した。
「なんでそんな事を!」
「ああ、勘違いするな…我々の最終目的は、美しい海を…素晴らしき我らの世界を取り戻すこと。今言った計画は、その一環に過ぎない」
「なんで海人を統一する必要がある?」
「陸人は我らと同等、あるいはそれ以上に数が多い存在。故に海人が一致団結しなければ、我々の目的は果たせぬ。だが、それはまだ道半ばだ」
それを聞いて、イルが叫んだ。
「当然だ!海人は、この広い海の中で自由に生きる存在。それを勝手に侵す奴らに、誰も賛同なんかするわけないだろ!」
「明らかな目的があらば、その達成のために団結するのは当然のことだ。協力しない者が馬鹿なのであって、協力するのが当たり前だ」
「お前らがしてる事は、ただの独裁政治だ!みんなを常に監視して、暴力と脅しで恐怖を植え付けて、無理やり考え方を統一しようとするなんて…そんなの、絶対に間違ってる!」
「我々は海人の、ひいては海の未来を思うからこそ行動している。貴様のように、ただ我らに抗うだけの者こそ間違っている。有意義な暮らしを手にするためには、我慢や犠牲が必要な事もあるのだ」
「こんなやり方で、平和な暮らしが手に入ると思うか!第一、陸人を滅ぼして、私達に何のメリットがあるんだ!」
「知らない、とは言わせんぞ…?奴らはこの数百年間、海を汚し、海人の存在を無視している。このままでは、我らは奴らによって滅ぼされる。ならば、その前に滅ぼす他あるまい」
なるほど、つまりこいつらは、元々は陸の者達による海の汚染に怒っていたのか。
だが、そこからやがて極端な思考に陥り、陸人を根絶やしにするしかないと思い込むようになったのだろう。
「だとしても陸人の命を奪う必要はないし、そのために海人を虐げるなんてもってのほかだ!彼らは私達と同じく、知性のある存在なんだ…話し合おうという考えが、なぜ出てこない!」
「奴らが真に知性がある存在であるなら、こんなにも長い間海を汚そうとは思わないはずだ…奴らとて、我らの存在を知っているのだからな」
マクダットの指導者は、ひときわ大きな槍を出して言った。
「そいつらに肩入れすると言うなら、貴様も我らの敵だ。…哀れだな、海人としての誇りを失うとは」
「それはどっちだろうな!お前たちは同族を虐げ、陸人に対する不満と怒りを振り回し、それを周りにも押し付け…異人として、最底辺のことをしているだろう!」
「ふん…なんとでも言うがいい」
マーガルはイルを軽くあしらい、俺達に目線を移してきた。
「さあ、陸人よ。お前たちの力、見せてもらおうか。私の両隣にいる4人は、全て我らの中でも優れた腕を持つ選りすぐりの者。まずは…こいつらを全て倒して見せるがいい」