第99話 宮殿内進撃
ー/ー内部には思ったより敵はいなかった。
最初に敵に遭遇したのは、宮殿に入ってから5分ほど経ってからだったし、そいつと交戦してる間に増援が来るような事もなかった。
ただ、次に出会った敵は仲間を連れていたので、同時に4人を相手することになったが。
敵はマクダット、すなわち過激派の海人。
初めて戦う相手であり、また地上とは違った自由な動きを見せてくる相手だったが、なんとか勝てた。
向こうにできる動きは、こちらにもできる。
また宮殿自体どちらかと言えば狭く、割とすぐに探索できた…2階までしかない上、部屋も2階合計で7つしかないとは思わなかった。
どうやら、この組織は規模自体はそこまで大きくないようだ。
「[居合い打ち]!」
樹が技を決め、剣持ちのマクダットを倒す。
ここまでに現れた奴らの武器は槍と剣。そして、水の術も使ってくる。
その中でも自身の周囲に複数の丸い穴を作り出し、そこから水流を噴き出す「メノスジェット」という術は特に強そうに感じた。
地上にいる時にあれを食らったら、ひとたまりもないな…と思ったのである。
幸いにも、今はリトのおかげで水に耐性がある。
水の攻撃を受けた時、無効化は出来ないまでも、ダメージの軽減が出来る。
それは相手の術攻撃を受けた時にわかった。「海流し」といったか、高波のような水のかたまりが押し寄せてくるという明らかに強そうな術を食らったことがあったのだが、その際思ったよりダメージを受けなかったのだ。
致命傷になるどころか、普通に堪えられる程度の痛みしか感じなかった。
おかげで、向こうが術を出してきてもゴリ押しで突っ切って反撃できた。
その後も水術を使う奴はちょくちょく出てきたが、特に意識することもなく普通に対応するだけでいけた。
やっぱりゲームでなくても、耐性って大事なんだなと思った。
リト…もとい海人の力のおかげで、水を恐れる必要がなくなる。それは俺にとって大きなメリットである。
まあ、逆を言えば敵の海人たちも同じ耐性を持っているという事でもあるが、こちらは水術は誰も使わないので実質無問題と言える。
また武器にしても、マクダットたちが剣や槍を手にして繰り出してくる技はそこまで強力なものではなかった。
見たことない技ばかりだったが、それはなんとなくわかった。
仮に受けても、治癒魔法で簡単に回復できるくらいの傷にしかならない。
これなら、致命傷を受けるより断然マシだ。
剣持ちは樹などに倒してもらえばいいし、槍持ちは相性の問題で楽に倒せる。と言っても、かなり自由な動きをしてくるから、地上とはまた違った意味での苦労はあるが。
こちらの周りを高速で泳ぎながら切り刻んできたり、錐揉み回転しながら突っ込んできたりするのは、水中ならではの振る舞いと言えるだろう。
だが、それならこちらも同じように舞えばいいだけ。
決して敵が有利ではなく、むしろこちらが有利なまである。
そんなわけで、敵を蹴散らしながら進んでいくのは容易だった。
しかし、そんな快進撃も長くは続かなかった。
俺達は、おそらく最深部であろう部屋の入口までやってきたのだが、その扉が開かないのだ。
しかも、扉に鍵穴のようなものも見当たらない。
「っ…これ、鍵はないタイプの扉だよな。でも、そうなると何で開かないんだ?」
俺は、扉のノブをガチャガチャ回したり、扉自体をつついたりしながら言った。
「なにか、奥でつっかえてるんじゃない?」
煌汰がそう言うが、それはなさそうな気がする。
「いや…おそらくだが、この扉は魔法でロックがかけられてるんだ。そしてそれを開けるには…」
樹は言葉を切り、息を吸い込む。
「特定の属性を扱う者の存在が必要だ」
そのとき、一隊の後方にいた猶の声が飛んできた。
「姜芽!異形だ!」
振り向いたその瞬間、俺達の後ろにいたメンバーに何か、巨大な影が襲いかかった。
「…!」
目の前で俺達の視界を塞ぎ、建物を破壊したそれは、全身を大きく振った後にこちらを振り向いてきた。
それは体長7メートルはあろうかという巨大なサメだった…ただし顔、特に目は血走っていて完全に普通のサメのそれではないが。
「さ、サメ…!?」
その姿を見て、リトが悲鳴をあげた。
「ま…『マリーミラー』だ!」
それを聞いて、樹が分析した。
「マリーミラー…!?そうか、異様なほどデカいサメの異形か…!」
いや、それは見てわかる…というのはさておき、このままではまずい。
[アクスカッター]を放ち、遠距離からの攻撃を試みる。
しかし、その体は頑丈なようで傷一つつかない。
それどころか、奴は口を開けてこちらを睨んできた。
「…みんな、避けろ!」
俺が叫ぶのとほぼ同時に、異形は突っ込んできた。
幸い、なんとかジャンプして躱せたが、さっきまで俺が立っていた床は大きくへこんでいた。
当たっていたら、それこそひとたまりもなかっただろう。
「おい、こっちだ!」
天井のすぐそばで、樹が呼んでいた。
異形がそちらを向くと、樹は両手を構え、
「食らいやがれ、化け物…![マリンラッド]!」
小さな魔弾を複数生成し、マシンガンのように撃ち出した。
当たった所で魔弾が盛大に弾け、黒い煙が立ったのでいい感じか…と思ったのだが、数秒後にまた突っ込んできた。
樹はそれを回避しつつ[居合い打ち]を決めていたが、それもさして効いてないようだった。
と、リトとイルが浮き上がり、それぞれ薙刀と剣で技を繰り出した。
「[払い打ち二段]!」
「[蛇尾返し]!」
ともに武器を振り回して複数の斬撃を放つ、多段攻撃技だった。
すると、異形の肌に複数の傷が生まれた。
それは小さなものだが、異形は確かに軽いうめき声をあげた。
「おっ…!やったか!」
「いえ、軽い傷を負わせただけです…まだ、致命傷には!」
すると、リトが薙刀を立て、目を閉じた。
そして、数秒の沈黙の後、薙刀を振りかぶった。
「奥義 [海楼の光の乱れ]…!」
リトの力が収束した薙刀の一振りは、白い斬撃となって飛び、異形の傷に命中した。
それは凄まじい音と共に傷を切り刻み、異形が恐ろしい声を上げ、沈んだ。
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