「断罪」第三節
ー/ー「逆に聞きましょうか? 全てを取り上げられた教授に、何ができますか?」
「私は! 私は! 日本の未来のために!」
「未来を作るのは教授ではない。彼らだって、希望を捨てたわけではなかった」
この場の支配者とし――責任者として立ち続けていた。
「――まさか」
「そのまさかです。全部、奪われた者の気持ちを聞いてみましょうか?」
「よくも邪魔を! 悪魔だ! 血も涙もない悪魔だ! 都と奈美のせいだな! いいように、使われているのだろう! そうだろう!」
「違います。いずれ、自分に返ってくると、思いませんでしたか? あなたには罰を受けてもらいます」
湊は孝がしてきたみたいに、内面を踏みにじったのだ。
「都と奈美に関しては私が悪かった! だから、許してくれ!」
湊は孝の絶望に染まった顔を、見たかった。絶望した顔を見ていい気味だと思った。
今日の瞬間を待っていた。ずっと、ずっと、待ち望んでいた。奈美と都、孤児とはいえたくさんの子供たちを殺し続けてきたのである。
報復を考えていた日から、孝とは血のつながりはない赤の他人となった。
二度と会うつもりはない。
「どこまでも、みすぼらしい男ですね。」
「謝っているだろう! なぜ、許してくれない! 家族だろう! 私がいなければ、お前たちは生きてはいない!」
「止めてください。都合のよい時だけ、家族だと言わないでください。不愉快です。さようなら」
その場がライトで照らし出された。邪魔にならないために、数歩後ろへと下がる。
孝が警察官に囲まれた。
「午後七時五十分。十河孝。十河――いや、相田都君、十河奈美さんの殺害及び山口鈴さんへの性的虐待、銃刀法違反で逮捕する」
逮捕状が広げられて、容疑が読み上げられていく。少し距離をおいていた湊にも、しっかりとした口調だったために、耳に入っていた。孝の手に手錠がかけられるのが見える。
――終わったよ、都。
――見ていたか?
――希望通りに教授を倒したよ。
都に呼びかけた。
今頃、奈美と会えているだろうか。
寝転んで、星空を見上げる。
都会では見られない奇麗な星空だった。キラキラと星が輝いている。
星空に心が浄化されていく。
湊は名前を呼ばれ汚れを払って立ち上がる。
――なぁ、都。
――お前は今、幸せか?
――求めている郷はそこにあるのか?
湊は都に心の中で、問いかけた。
ごぅと強い風が吹く。
反射的に目を閉じる。
やがて、風は通り過ぎていく。
――ありがとう。
――湊兄さん。
――僕は叶えられそうで、今、幸せだよ。
風にのって都の声が聞こえた気がした。
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