表示設定
表示設定
目次 目次




ep121 いざ、ヘッドフィールドへ

ー/ー



  【2】


「この馬車で、夜には確実にヘッドフィールドに着くだろう」

 揺れる車内で頭からローブを被ったカレンが言った。
 
「もっといい馬車は用意できなかったのかよ? 軍で使ってるのとかよ?」

 ブーストが不満をたれる。たしかに荷台を座席にした食物輸送用の馬車は、天下の魔法剣士カレンが手配したにしては低品質な輸送機と言わざるをえない。

「ヘッドフィールドを警戒してか?」

 俺はカレンに尋ねる。カレンはこくっと頷いた。

「ヘッドフィールドはギャングの街だ。流れ者の体で行くのが無難だ」

「クロー。なんでこの女と同行しなければならないんだ」

 エレサが明からさまに不機嫌な態度で口を挟んできた。

「この女?」
 カレンの眉がピクッとなる
「私の名はカレンだ。失礼も大概にしろ、ダークエルフ」

「わたしはエレサ。オマエこそ失礼」

「なに?」

「おいおいやめろやめろ」

 俺は二人の仲裁に入る。この二人はどうも馬が合わないらしい。
 出発前からエレサは不機嫌だった。一方、カレンはカレンでお堅いので、エレサの不良な態度を良しとしなかった。

「ねえクロー」

 不良なダークエルフが俺の腕を掴んでくる。

「なんだ?」

「クローは女たらしなの? それにしたってこんな女隊長のどこがいいの?」

 ちょっとエレサさん。突然なにを言い出すんですか。

「なっ、クロー! お前は私をそんな目で見ていたのか!?」

 いやいや。カレンさんまでなに言い出してるんですか。

「ねえクロー」
「おいクロー!」

 迫ってくる女性ふたり。急にそんなラブコメ展開されても困るんですが。

「おふたりさん。ダンナの一番のお気に入りはシヒロの嬢ちゃんだ。なんせダンナはロリコンだからな」

 なぜかトレブルがドヤ顔で言い切った。しかも事実ではないことを。

「そうなの?」
「それは本当なのか??」

 またまた迫りくる女性ふたり。俺はハァーッとひとつため息をついてからトレブルに手を伸ばし、ゴツンと一発ゲンコツをくれてやった。

「てぇ! なにすんだよダンナ!」

「俺はロリコンじゃない。第一シヒロはそういうアレでもない」

「わ、わかったよダンナ! そう怒らねえでくれ!」

「シヒロはクローの恋人ではなかったのか?」

 エレサがやけに敏感に反応した。俺はうんざりしながら答えた。

「そうだよ」

「そ、そうなんだ」

 なぜかエレサの顔が少し嬉しそうに見えた。

「?」

 俺が疑問の目を彼女に向けると、やにわにズイっとカレンが迫ってくる。

「おいクロー。結局、お前は私をふしだらな目で見ていたのか?」

 カレンはそこをハッキリしないと気が済まないらしい。俺は面倒臭くなっていた。

「見てない。そこまで飢えていない」

 この答え方は間違いだった。

「そこまで飢えてない、だと? キサマ……いったい私のことを何だと思っているんだ!?」

 女隊長の導火線に火がついた。

「えっ、別に他意はなかったんだけど。気に障ったなら謝るが……」

「クロー! 私に対して失礼だとは思わないのか!?」

「いや、だからそういうつもりじゃ……」

「じゃあどういうつもりだ!」

「女隊長うるさい。落ち着け。てゆーかもう黙れ」

 エレサが冷たく突っ込んだ。その瞬間、カレンの眼が座った。

「……おいダークエルフ。私の名はカレンだ。何度言ったらわかる」

 案の定カレンは怒りを表す。

「わたしの名はエレサ。何度言ったらわかる」

 エレサは相手を小馬鹿にするように鸚鵡返しで返した。

「ダークエルフ。馬車を降りたら決着をつけるか?」

「のぞむところ。女隊長ごときにわたしは負けない」

 バチバチと睨み合う女性ふたり。血気盛んな牝ライオン二頭を前に、俺は頭を抱える。

「トレブル、ブースト。お前らなんとかしてくれ」

 同じ男性側として、コイツらは味方をしてくれると思った俺はバカだった。

「さすがダンナだな」
「ああ。モテる男はちげえな」

 トレブルとブーストはわざとらしく感心してみせた。コイツら、百パー面白がってやがる。

「お前ら……」

 俺は再びハァーッと深い溜息をついた。
 エレサとカレン。仲が悪いのは仕方ない。相性だってあるんだ。しかしそれにしたってもう少し人間関係うまいこといかないもんだろうか。なんて前世で人間関係に苦しんで離職を繰り返した俺に言う資格はなかった。
 まあ、何とかなるだろう。知らんけど。……。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む ep122 ヘッドフィールド


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



  【2】
「この馬車で、夜には確実にヘッドフィールドに着くだろう」
 揺れる車内で頭からローブを被ったカレンが言った。
「もっといい馬車は用意できなかったのかよ? 軍で使ってるのとかよ?」
 ブーストが不満をたれる。たしかに荷台を座席にした食物輸送用の馬車は、天下の魔法剣士カレンが手配したにしては低品質な輸送機と言わざるをえない。
「ヘッドフィールドを警戒してか?」
 俺はカレンに尋ねる。カレンはこくっと頷いた。
「ヘッドフィールドはギャングの街だ。流れ者の体で行くのが無難だ」
「クロー。なんでこの女と同行しなければならないんだ」
 エレサが明からさまに不機嫌な態度で口を挟んできた。
「この女?」
 カレンの眉がピクッとなる
「私の名はカレンだ。失礼も大概にしろ、ダークエルフ」
「わたしはエレサ。オマエこそ失礼」
「なに?」
「おいおいやめろやめろ」
 俺は二人の仲裁に入る。この二人はどうも馬が合わないらしい。
 出発前からエレサは不機嫌だった。一方、カレンはカレンでお堅いので、エレサの不良な態度を良しとしなかった。
「ねえクロー」
 不良なダークエルフが俺の腕を掴んでくる。
「なんだ?」
「クローは女たらしなの? それにしたってこんな女隊長のどこがいいの?」
 ちょっとエレサさん。突然なにを言い出すんですか。
「なっ、クロー! お前は私をそんな目で見ていたのか!?」
 いやいや。カレンさんまでなに言い出してるんですか。
「ねえクロー」
「おいクロー!」
 迫ってくる女性ふたり。急にそんなラブコメ展開されても困るんですが。
「おふたりさん。ダンナの一番のお気に入りはシヒロの嬢ちゃんだ。なんせダンナはロリコンだからな」
 なぜかトレブルがドヤ顔で言い切った。しかも事実ではないことを。
「そうなの?」
「それは本当なのか??」
 またまた迫りくる女性ふたり。俺はハァーッとひとつため息をついてからトレブルに手を伸ばし、ゴツンと一発ゲンコツをくれてやった。
「てぇ! なにすんだよダンナ!」
「俺はロリコンじゃない。第一シヒロはそういうアレでもない」
「わ、わかったよダンナ! そう怒らねえでくれ!」
「シヒロはクローの恋人ではなかったのか?」
 エレサがやけに敏感に反応した。俺はうんざりしながら答えた。
「そうだよ」
「そ、そうなんだ」
 なぜかエレサの顔が少し嬉しそうに見えた。
「?」
 俺が疑問の目を彼女に向けると、やにわにズイっとカレンが迫ってくる。
「おいクロー。結局、お前は私をふしだらな目で見ていたのか?」
 カレンはそこをハッキリしないと気が済まないらしい。俺は面倒臭くなっていた。
「見てない。そこまで飢えていない」
 この答え方は間違いだった。
「そこまで飢えてない、だと? キサマ……いったい私のことを何だと思っているんだ!?」
 女隊長の導火線に火がついた。
「えっ、別に他意はなかったんだけど。気に障ったなら謝るが……」
「クロー! 私に対して失礼だとは思わないのか!?」
「いや、だからそういうつもりじゃ……」
「じゃあどういうつもりだ!」
「女隊長うるさい。落ち着け。てゆーかもう黙れ」
 エレサが冷たく突っ込んだ。その瞬間、カレンの眼が座った。
「……おいダークエルフ。私の名はカレンだ。何度言ったらわかる」
 案の定カレンは怒りを表す。
「わたしの名はエレサ。何度言ったらわかる」
 エレサは相手を小馬鹿にするように鸚鵡返しで返した。
「ダークエルフ。馬車を降りたら決着をつけるか?」
「のぞむところ。女隊長ごときにわたしは負けない」
 バチバチと睨み合う女性ふたり。血気盛んな牝ライオン二頭を前に、俺は頭を抱える。
「トレブル、ブースト。お前らなんとかしてくれ」
 同じ男性側として、コイツらは味方をしてくれると思った俺はバカだった。
「さすがダンナだな」
「ああ。モテる男はちげえな」
 トレブルとブーストはわざとらしく感心してみせた。コイツら、百パー面白がってやがる。
「お前ら……」
 俺は再びハァーッと深い溜息をついた。
 エレサとカレン。仲が悪いのは仕方ない。相性だってあるんだ。しかしそれにしたってもう少し人間関係うまいこといかないもんだろうか。なんて前世で人間関係に苦しんで離職を繰り返した俺に言う資格はなかった。
 まあ、何とかなるだろう。知らんけど。……。