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第99話 随伴艦隊の帰還

ー/ー



「パープルキティからの通信回線を開きます」とエリカ。

「先輩、助けに来てやったぜ」
 どや顔のアリサが正面のモニターに映った。

「さっきの重力エネルギー砲を撃ったのはあなたなの?」とリリス。

「そうだよ、大したもんだろ」とアリサ。「あたしはまだ現役の魔女だよ」

「しわ取り、頑張ったみたいね」とリリス。

「地球にいたときは忙しくて手入れする時間がなかったんだ」とアリサ。「こっちが本来のあたし!」

「ところであなた、こんなところで何してるのよ」とリリス。「任務はどうしたの」

「パープルキティの任務は続けてますよ」とアリサ。「恒星への衝突コースに乗った涙の魔術師様の白鷺(はくろ)翆鶴(すいかく)をちゃんとトレースしてる。それにゲート付近は敵の残骸だらけで、通信の邪魔なんだよ。放射線量だって高いし」

「だからって、私たちを付けてきてたの?」とリリス。

「先輩と随伴艦隊のことが心配で後を追ってきたんだ」とアリサ。

「あなたが心配なのは、ホルストだけでしょ」とリリス。

「行き別れた義理の息子に、十五年ぶりに再会した母親の気持ちを分かってくださいよ、先輩」とアリサ。

「へえ。それにしてはずいぶん塩対応だったそうじゃない。武志がぼやいてたわよ。せっかく対面の場を用意したのに、ひどい剣幕だったって」とリリス。

「作戦の打ち合わせって聞いてたのに、いきなりホルストに会わされたんだ。びっくりして腰が抜けたんだよ。仕方ないだろ」とアリサ。

「あいかわらずツンデレね」とリリス。「吾郎は、本当にあなたに嫌われてると思ってるわよ」

 通信がざわついた。

「おい、この通信、盗聴されてるぞ」とアリサ。

「海軍の艦長どもに傍聴させてる。吾郎があんたの義理の息子だと聞いて驚いてるんだろう」とリリス。

「先輩、何で最初に言ってくれなかったんだ!」とアリサ。

「奴らとは隠し事をしないことにしている」とリリス。

「プライバシーを考えろ!」とアリサ。

「あなたこそ、戦場に出る前にちゃんと告っておきなさいよ。ホルスト、本当はあなたのことを愛してるのよって」とリリス。

「うるせえ!」とアリサ。「わたしの母親としての愛情を茶化すな!」

「吾郎、今度アリサに会ったら問答無用でハグしてやれ。うれしょん漏らして喜ぶぞ」とリリス。

「アリサ大佐、おれ……」と吾郎。

「馬鹿野郎! ここで返事するな!」とアリサ。

「もったいないわね。せっかくのチャンスなのに」とリリス。「気の利いたことを言ってあげなさいよ」

「からかいやがって」とアリサ。「わたしは先輩みたいな破廉恥女じゃねえんだ!」

「面白くないわね」とリリス。「それなら、もう通信を切るわよ。ツンデレのショタコン大佐」

「恥ずかしくてやってられねえよ」とアリサ。「魔女コスプレのロリババア大佐殿、あばよ!」

 艦長だけが残った通信回線で吾郎が言った。「佐藤大尉、義勇軍と防空隊はいつもこんな感じなのか?」

「ええ、いつもこんな感じよ」
 恵子が真面目に答えた。


 通信艦パープルキティと合流した第一随伴艦隊は敵艦隊の追撃を振り切った。

 敵母星付近での戦役から六日後、通信艦パープルキティ以外の第一随伴艦隊がゲートをくぐって太陽系のフォボス沖に帰還した。

 第二特別攻撃作戦開始から二十日後、パープルキティは恒星からの光量とスペクトルの変化を観測した。超新星爆発の兆候と思われた。パープルキティの艦長、高田アリサ大佐はゲート制御指令部の佐々木武史中将にこの状況を報告した。

 地球人類側のゲート制御部隊は、ゲート通信によるアリサ大佐からの連絡ののち、急遽三時間後にゲートを開いた。敵地惑星系の恒星は以前と比べ物にならないほどの強い光を放出しており、パープルキティの乗員は全員が減光用のゴーグルと放射線防護服を身につけていた。パープルキティは無事にゲートをくぐってフォボス沖に帰還した。



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「先輩、助けに来てやったぜ」
 どや顔のアリサが正面のモニターに映った。
「さっきの重力エネルギー砲を撃ったのはあなたなの?」とリリス。
「そうだよ、大したもんだろ」とアリサ。「あたしはまだ現役の魔女だよ」
「しわ取り、頑張ったみたいね」とリリス。
「地球にいたときは忙しくて手入れする時間がなかったんだ」とアリサ。「こっちが本来のあたし!」
「ところであなた、こんなところで何してるのよ」とリリス。「任務はどうしたの」
「パープルキティの任務は続けてますよ」とアリサ。「恒星への衝突コースに乗った涙の魔術師様の|白鷺《はくろ》と|翆鶴《すいかく》をちゃんとトレースしてる。それにゲート付近は敵の残骸だらけで、通信の邪魔なんだよ。放射線量だって高いし」
「だからって、私たちを付けてきてたの?」とリリス。
「先輩と随伴艦隊のことが心配で後を追ってきたんだ」とアリサ。
「あなたが心配なのは、ホルストだけでしょ」とリリス。
「行き別れた義理の息子に、十五年ぶりに再会した母親の気持ちを分かってくださいよ、先輩」とアリサ。
「へえ。それにしてはずいぶん塩対応だったそうじゃない。武志がぼやいてたわよ。せっかく対面の場を用意したのに、ひどい剣幕だったって」とリリス。
「作戦の打ち合わせって聞いてたのに、いきなりホルストに会わされたんだ。びっくりして腰が抜けたんだよ。仕方ないだろ」とアリサ。
「あいかわらずツンデレね」とリリス。「吾郎は、本当にあなたに嫌われてると思ってるわよ」
 通信がざわついた。
「おい、この通信、盗聴されてるぞ」とアリサ。
「海軍の艦長どもに傍聴させてる。吾郎があんたの義理の息子だと聞いて驚いてるんだろう」とリリス。
「先輩、何で最初に言ってくれなかったんだ!」とアリサ。
「奴らとは隠し事をしないことにしている」とリリス。
「プライバシーを考えろ!」とアリサ。
「あなたこそ、戦場に出る前にちゃんと告っておきなさいよ。ホルスト、本当はあなたのことを愛してるのよって」とリリス。
「うるせえ!」とアリサ。「わたしの母親としての愛情を茶化すな!」
「吾郎、今度アリサに会ったら問答無用でハグしてやれ。うれしょん漏らして喜ぶぞ」とリリス。
「アリサ大佐、おれ……」と吾郎。
「馬鹿野郎! ここで返事するな!」とアリサ。
「もったいないわね。せっかくのチャンスなのに」とリリス。「気の利いたことを言ってあげなさいよ」
「からかいやがって」とアリサ。「わたしは先輩みたいな破廉恥女じゃねえんだ!」
「面白くないわね」とリリス。「それなら、もう通信を切るわよ。ツンデレのショタコン大佐」
「恥ずかしくてやってられねえよ」とアリサ。「魔女コスプレのロリババア大佐殿、あばよ!」
 艦長だけが残った通信回線で吾郎が言った。「佐藤大尉、義勇軍と防空隊はいつもこんな感じなのか?」
「ええ、いつもこんな感じよ」
 恵子が真面目に答えた。
 通信艦パープルキティと合流した第一随伴艦隊は敵艦隊の追撃を振り切った。
 敵母星付近での戦役から六日後、通信艦パープルキティ以外の第一随伴艦隊がゲートをくぐって太陽系のフォボス沖に帰還した。
 第二特別攻撃作戦開始から二十日後、パープルキティは恒星からの光量とスペクトルの変化を観測した。超新星爆発の兆候と思われた。パープルキティの艦長、高田アリサ大佐はゲート制御指令部の佐々木武史中将にこの状況を報告した。
 地球人類側のゲート制御部隊は、ゲート通信によるアリサ大佐からの連絡ののち、急遽三時間後にゲートを開いた。敵地惑星系の恒星は以前と比べ物にならないほどの強い光を放出しており、パープルキティの乗員は全員が減光用のゴーグルと放射線防護服を身につけていた。パープルキティは無事にゲートをくぐってフォボス沖に帰還した。