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第三百八十九話

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 多くのコンクリートで出来上がった魑魅魍魎たちを成敗していきながら、和氣を睨む高梨。魔力の消費度合いに関しては、以前よりも格段に器が大きくなった影響か、そこまで消耗していない様子であった。
 しかし、肝心の高梨は、と言うと。先ほどから、足の傷からの血液流出を避けるために、実に効率の悪い魔力の回し方をしていた結果、数分の足止めではあったのだが、既にガス欠気味であったのだ。
 多くのコンクリートを辺りから徴収してきたために、その辺りの地面ははげ気味。土が露呈して来ていた。

(――本当、あの子たちには申し訳ないな。ここで和氣を食い止めて消耗させるつもりが、せっかくの学園都市の構造を台無しにするような戦いになっちゃっている訳だし)

 そこで、和氣と高梨は、その一瞬だけ揺れを感じ取った。しかし、地震のような自然災害の揺れではなかった。陰謀論者が湧き出てきそうな、人工的なものを感じ取ったのだ。

「この小規模の小さな揺れは……?」

(……!! はァ、そう言うことか――『今の揺れ』で構造を理解できた! 本当に、因子が有る無しで大きく人生は変わるわなあ、こんだけの感知能力があったら!)

 恐らくは、音楽(ミュージック)フェスや学園祭が盛況であるが故の、歓喜に震える一般客の声や動きによる揺れが、土の能力者として新たに覚醒した和氣の脳を刺激したのだ。

(合同演習会の事件の際に、粗方あんときの『参加者』に構造を聞いておいてよかったぜ、『その時と少し違う』じゃあねえか……!!)

 高梨からすれば、何故か急に笑い出した薄気味悪い存在と言う認識でしかないだろうが、和氣にとっては『恨み』を晴らすことが出来る上での、狂気的な随喜の笑みであったのだ。
 何かしらの嫌な予感を察知した高梨は、咄嗟にその場を蹴って地面のコンクリートを破砕。装甲のサポートがないと見通せないほどの土煙を生じさせる。
 すぐさま頭部装甲のサポートを全開にしてその場を見通す高梨。その場には土の繭が出来上がっていた。

(――何が目的かは分からないけれど、一気に締める以外にないよね……そうじゃあないと私が持たない!!)

 すぐさま、ドライバー両端を押しこんで、傷を癒しながらも本来利き足ではない左足に膨大な魔力を込める。

『必殺承認! 多くの為政者を魅了する、至高の一蹴(オファリング・トゥ・ザ・ビラヴドゥ)!!』

 繭ごと蹴り壊そうと複数バク転を繰り返し、宙に飛び上がって思い切り上から蹴り下ろす。元々英雄の資格が備わっていたからこそ、その威力は馬鹿にならない。
 繭如き、まるで豆腐を砕くかのようなたやすさで蹴り壊すのだが、その内には誰も『居なかった』のだ。
 思わず動揺する高梨であったのだが、それこそが和氣の目論見であったのだ。土煙の中、別角度より出でるは、和氣の腕であったのだ。

「!! まさか……貴方……!?」

「そうだよ、俺は土の力を得ている。だからこうして――土に同化することだって可能なんだよ!!」

 思い切り引き寄せた後に、土の流動による推進力を増した蹴りによって、連絡橋側に蹴り飛ばす。
 道路に転がりながらも、体勢をどうにか元に戻す高梨であったが、その後の追撃が無いことに疑問を抱く。

(……普通、足を怪我させた存在を追及するのは目に見えている。それに、わざわざ近寄った上で攻撃、と言う選択肢を取らなくとも、どこからか手に入れてきた空間を削り取る力でどうとでも調理できる。なのに……)

 そこで、一つの可能性に気付いた。彼の復讐心をそのままインストールするならば、普通なら選ばない選択肢。だがそこに、高梨幸香(タカナシ サチカ)よりも恨めしい相手がいることを考慮すれば、まず過ぎるであろう選択肢。

「――まさか、和氣……貴方……!?」

 足の痛みを堪えながら、土煙が生まれた地点に駆け寄り、すぐさまその煙を払うと――本当の意味でそこに誰も居なかった、もぬけの殻となっていたのだ。土煙に同化した可能性を考えはしたが、土のベース能力者の天敵である海が煙の行き先に広がっているために、その可能性は有り得なかった。
 そして、その繭の底を見た瞬間に、高梨は戦慄する。
 足元だった場所には、ぽっかりと人間幅ほどの孔が開いていたのだ。
 あの一瞬にて、足元を削り取った上で土のベース能力でコンクリートより下に存在する、土台の土に同化。
 奥底に広がる合同演習場へ、無法なやり方で入場しようとしていたのだ。
 どのみち、各入り口は侵入者対策で規制が掛かっている。それに、学園の入り口には院が居座っており、生半可な戦いは出来ない。戦力をある程度分散させつつ、それでいて己が欲望を果たすために動く上での最適解は――正しく『正規の入り口以外で無理やり入り込むこと』であったのだ。

「クソッ、早く院ちゃんに伝えなきゃ……!」

 すぐさま変身を解除し、無線機で連絡を取ろうとするも、耳元に触れ『それ』に起きたことを知った。無線機が、完全に壊されていたのだ。

「ッ~!! 本当姑息なことは得意なのね!!」

 痛む足を庇いながらも、学園の方へ走り出した高梨。そこかしこで戦況に変化が起きていそうなほどの轟音が鳴り響きながらも、そして膨大なほどの魔力が衝突していたものの、それを気にするほどの余裕はなかった。
 『なぜか』、英雄学園以外で接した事のある魔力反応が、『英雄側に』あることには、疑問を抱いていたのだが。



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 しかし、肝心の高梨は、と言うと。先ほどから、足の傷からの血液流出を避けるために、実に効率の悪い魔力の回し方をしていた結果、数分の足止めではあったのだが、既にガス欠気味であったのだ。
 多くのコンクリートを辺りから徴収してきたために、その辺りの地面ははげ気味。土が露呈して来ていた。
(――本当、あの子たちには申し訳ないな。ここで和氣を食い止めて消耗させるつもりが、せっかくの学園都市の構造を台無しにするような戦いになっちゃっている訳だし)
 そこで、和氣と高梨は、その一瞬だけ揺れを感じ取った。しかし、地震のような自然災害の揺れではなかった。陰謀論者が湧き出てきそうな、人工的なものを感じ取ったのだ。
「この小規模の小さな揺れは……?」
(……!! はァ、そう言うことか――『今の揺れ』で構造を理解できた! 本当に、因子が有る無しで大きく人生は変わるわなあ、こんだけの感知能力があったら!)
 恐らくは、|音楽《ミュージック》フェスや学園祭が盛況であるが故の、歓喜に震える一般客の声や動きによる揺れが、土の能力者として新たに覚醒した和氣の脳を刺激したのだ。
(合同演習会の事件の際に、粗方あんときの『参加者』に構造を聞いておいてよかったぜ、『その時と少し違う』じゃあねえか……!!)
 高梨からすれば、何故か急に笑い出した薄気味悪い存在と言う認識でしかないだろうが、和氣にとっては『恨み』を晴らすことが出来る上での、狂気的な随喜の笑みであったのだ。
 何かしらの嫌な予感を察知した高梨は、咄嗟にその場を蹴って地面のコンクリートを破砕。装甲のサポートがないと見通せないほどの土煙を生じさせる。
 すぐさま頭部装甲のサポートを全開にしてその場を見通す高梨。その場には土の繭が出来上がっていた。
(――何が目的かは分からないけれど、一気に締める以外にないよね……そうじゃあないと私が持たない!!)
 すぐさま、ドライバー両端を押しこんで、傷を癒しながらも本来利き足ではない左足に膨大な魔力を込める。
『必殺承認! |多くの為政者を魅了する、至高の一蹴《オファリング・トゥ・ザ・ビラヴドゥ》!!』
 繭ごと蹴り壊そうと複数バク転を繰り返し、宙に飛び上がって思い切り上から蹴り下ろす。元々英雄の資格が備わっていたからこそ、その威力は馬鹿にならない。
 繭如き、まるで豆腐を砕くかのようなたやすさで蹴り壊すのだが、その内には誰も『居なかった』のだ。
 思わず動揺する高梨であったのだが、それこそが和氣の目論見であったのだ。土煙の中、別角度より出でるは、和氣の腕であったのだ。
「!! まさか……貴方……!?」
「そうだよ、俺は土の力を得ている。だからこうして――土に同化することだって可能なんだよ!!」
 思い切り引き寄せた後に、土の流動による推進力を増した蹴りによって、連絡橋側に蹴り飛ばす。
 道路に転がりながらも、体勢をどうにか元に戻す高梨であったが、その後の追撃が無いことに疑問を抱く。
(……普通、足を怪我させた存在を追及するのは目に見えている。それに、わざわざ近寄った上で攻撃、と言う選択肢を取らなくとも、どこからか手に入れてきた空間を削り取る力でどうとでも調理できる。なのに……)
 そこで、一つの可能性に気付いた。彼の復讐心をそのままインストールするならば、普通なら選ばない選択肢。だがそこに、|高梨幸香《タカナシ サチカ》よりも恨めしい相手がいることを考慮すれば、まず過ぎるであろう選択肢。
「――まさか、和氣……貴方……!?」
 足の痛みを堪えながら、土煙が生まれた地点に駆け寄り、すぐさまその煙を払うと――本当の意味でそこに誰も居なかった、もぬけの殻となっていたのだ。土煙に同化した可能性を考えはしたが、土のベース能力者の天敵である海が煙の行き先に広がっているために、その可能性は有り得なかった。
 そして、その繭の底を見た瞬間に、高梨は戦慄する。
 足元だった場所には、ぽっかりと人間幅ほどの孔が開いていたのだ。
 あの一瞬にて、足元を削り取った上で土のベース能力でコンクリートより下に存在する、土台の土に同化。
 奥底に広がる合同演習場へ、無法なやり方で入場しようとしていたのだ。
 どのみち、各入り口は侵入者対策で規制が掛かっている。それに、学園の入り口には院が居座っており、生半可な戦いは出来ない。戦力をある程度分散させつつ、それでいて己が欲望を果たすために動く上での最適解は――正しく『正規の入り口以外で無理やり入り込むこと』であったのだ。
「クソッ、早く院ちゃんに伝えなきゃ……!」
 すぐさま変身を解除し、無線機で連絡を取ろうとするも、耳元に触れ『それ』に起きたことを知った。無線機が、完全に壊されていたのだ。
「ッ~!! 本当姑息なことは得意なのね!!」
 痛む足を庇いながらも、学園の方へ走り出した高梨。そこかしこで戦況に変化が起きていそうなほどの轟音が鳴り響きながらも、そして膨大なほどの魔力が衝突していたものの、それを気にするほどの余裕はなかった。
 『なぜか』、英雄学園以外で接した事のある魔力反応が、『英雄側に』あることには、疑問を抱いていたのだが。