第三百八十八話
ー/ー 高梨と和氣の出会いは、ほんの数か月前。時系列としては、礼安たちが入学するかしないか、と言った頃合い。まだ幹部連中はカルマの手が掛かっていない状況であるため、高梨も救う算段が付いていたために、因子を覚醒させている状態で――高梨は和氣に勝負を挑んだのだった。
(――何だよ、クソガキ。俺が統治している栃木支部に……何か用か?)
(簡単よ。私が勝ったら――栃木支部の支部長は私に譲りなさい。もっと分かりやすく表現するなら……決闘よ)
高梨には、それをするだけの覚悟が備わっていた。何故ならば、高梨の同級生や関係者たちが、深く関わったことのある面子たちが、一人の男の身勝手に振り回されていたのだから。
他の幹部も、和氣同様芸能界に虐げられた存在ばかり。それで心を病んだ結果、教会に救いを求めるようになったのだが……彼ら、あるいは彼女らと和氣は、実際似て非なるものであったのだ。
幹部連中は、文字通り大人の歪みに囚われた結果、操り人形となり身を滅ぼした。ただ、芸能界で人を喜ばせる『エンターテイナー』として、多くの経験を積み重ねながら精進していこうとする、努力の塊であった。
しかし、和氣に関しては――被害者でありながら、『完全な被害者』ではなかったのだ。表ざたになった内容だけでも、マネージャーに対しての暴言や暴力行為、日常生活においての倫理の低下、挙句の果てには女性を軽視する発言の他に女性問題など、度重なるトラブルの末に芸能界から干されたのだ。
そのため、系統としては加害者に近かったのだ。元々穏やかな性格が芸能界と言う荒波に揉まれた結果……だなんてお涙頂戴なエピソードは一切なく、ただ本人が粗暴であったのだ。他者に対する慈しみの心すらない、ただの外道であったのだ。
しかし、芸能界に長くいた影響か、誰にも見下されたくはないプライドと上昇志向は人一倍であり、狡猾さだけではなくその野心には目を見張るものがある、実に面倒な存在であるのだ。
(女風情が、俺に敵うと思うか?? こう見えても、金で雇ったコーチのおかげで、俺は総合格闘技をマスターした! 女に負ける道理はない!)
(――なら、私の方が上。私には――『因子』があるから)
その彼女の発言の意図は、正しくその教会の歪な構造にあった。
元々、英雄学園からドロップアウトした劣等者や、あらゆるハラスメント問題で心を壊された社会不適合者、それから一般社会から鼻つまみ者同然の扱いを受けている反社会的勢力や根っからの悪人がこぞって集まり、社会的や実力上優等な存在である、金にしか目が無い政治家や自分を救ってくれなかった英雄をカルマのために、あるいは己が欲望のために打倒する、そのために教会というものはある。
英雄や政治家を良いように扱えるように、高い利益を齎したものに相応の謝礼を支払っていく中、その多額の金を用いて自分に施す違法改造行為……それ即ち『因子の違法摘出手術』。高い金と素体を用意しながら、元々その才覚すらなかったものが人工的に新たな領域に目覚める、最悪の非人道的実験。
教会に入るものは、往々にして劣等。そんな存在に因子が備わっているだなんてことは滅多にない。そのため、そんな存在が支部長を務めている場所は少ない。そんな存在が頂点の椅子に座っている支部は、どんな新興の支部であっても一目置かれることに間違いはないのだ。
(それでも――やる? 無駄な怪我だけは、私は望まないけれど。でも……私は新香ちゃんたちを傷付けた、貴方を許さない。やるからには……全力でやらせてもらうわ)
(……ッ! ハッ、ハッタリだろそんな物!! 吠え面かくんじゃあねえぞ!!)
だが、結果は案の定高梨の圧勝。大金叩いてコーチを雇った上でのトレーニングは、因子持ち相手には一切の意味が無かったのだ。成すすべなく、慈悲すらかけられた結果傷一つおうことはなく、その場にて仰ぎ見ていたのだ。
凡人は、どう足掻いても因子持ちに勝てない。
そんな分かり切った事実を、身をもって知った和氣は、激情と憎悪の狭間に放り込まれたのだった。
そこから、高梨が事実上支配する栃木支部と言う、現体制が完成したのだ。
(――何だよ、クソガキ。俺が統治している栃木支部に……何か用か?)
(簡単よ。私が勝ったら――栃木支部の支部長は私に譲りなさい。もっと分かりやすく表現するなら……決闘よ)
高梨には、それをするだけの覚悟が備わっていた。何故ならば、高梨の同級生や関係者たちが、深く関わったことのある面子たちが、一人の男の身勝手に振り回されていたのだから。
他の幹部も、和氣同様芸能界に虐げられた存在ばかり。それで心を病んだ結果、教会に救いを求めるようになったのだが……彼ら、あるいは彼女らと和氣は、実際似て非なるものであったのだ。
幹部連中は、文字通り大人の歪みに囚われた結果、操り人形となり身を滅ぼした。ただ、芸能界で人を喜ばせる『エンターテイナー』として、多くの経験を積み重ねながら精進していこうとする、努力の塊であった。
しかし、和氣に関しては――被害者でありながら、『完全な被害者』ではなかったのだ。表ざたになった内容だけでも、マネージャーに対しての暴言や暴力行為、日常生活においての倫理の低下、挙句の果てには女性を軽視する発言の他に女性問題など、度重なるトラブルの末に芸能界から干されたのだ。
そのため、系統としては加害者に近かったのだ。元々穏やかな性格が芸能界と言う荒波に揉まれた結果……だなんてお涙頂戴なエピソードは一切なく、ただ本人が粗暴であったのだ。他者に対する慈しみの心すらない、ただの外道であったのだ。
しかし、芸能界に長くいた影響か、誰にも見下されたくはないプライドと上昇志向は人一倍であり、狡猾さだけではなくその野心には目を見張るものがある、実に面倒な存在であるのだ。
(女風情が、俺に敵うと思うか?? こう見えても、金で雇ったコーチのおかげで、俺は総合格闘技をマスターした! 女に負ける道理はない!)
(――なら、私の方が上。私には――『因子』があるから)
その彼女の発言の意図は、正しくその教会の歪な構造にあった。
元々、英雄学園からドロップアウトした劣等者や、あらゆるハラスメント問題で心を壊された社会不適合者、それから一般社会から鼻つまみ者同然の扱いを受けている反社会的勢力や根っからの悪人がこぞって集まり、社会的や実力上優等な存在である、金にしか目が無い政治家や自分を救ってくれなかった英雄をカルマのために、あるいは己が欲望のために打倒する、そのために教会というものはある。
英雄や政治家を良いように扱えるように、高い利益を齎したものに相応の謝礼を支払っていく中、その多額の金を用いて自分に施す違法改造行為……それ即ち『因子の違法摘出手術』。高い金と素体を用意しながら、元々その才覚すらなかったものが人工的に新たな領域に目覚める、最悪の非人道的実験。
教会に入るものは、往々にして劣等。そんな存在に因子が備わっているだなんてことは滅多にない。そのため、そんな存在が支部長を務めている場所は少ない。そんな存在が頂点の椅子に座っている支部は、どんな新興の支部であっても一目置かれることに間違いはないのだ。
(それでも――やる? 無駄な怪我だけは、私は望まないけれど。でも……私は新香ちゃんたちを傷付けた、貴方を許さない。やるからには……全力でやらせてもらうわ)
(……ッ! ハッ、ハッタリだろそんな物!! 吠え面かくんじゃあねえぞ!!)
だが、結果は案の定高梨の圧勝。大金叩いてコーチを雇った上でのトレーニングは、因子持ち相手には一切の意味が無かったのだ。成すすべなく、慈悲すらかけられた結果傷一つおうことはなく、その場にて仰ぎ見ていたのだ。
凡人は、どう足掻いても因子持ちに勝てない。
そんな分かり切った事実を、身をもって知った和氣は、激情と憎悪の狭間に放り込まれたのだった。
そこから、高梨が事実上支配する栃木支部と言う、現体制が完成したのだ。
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