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第三百八十六話

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 さらに、両手で現在高梨のいる地点を見据えながら、諸手を広げその空間を消し飛ばさんとする和氣。その分圧縮・消失させるためにかかる力はそれ相応にかかるだろうが、人工因子(じんこういんし)が齎す力はそれを容易にするほどの莫大な膂力であった。
 すぐさまその空間消失を回避する高梨。すぐさま信一郎から渡されていたデバイスドライバーを下腹部に装着する。

「ハッ、結局お前は英雄(ソッチ)側に寝返った! 俺のことをとやかくは言えないはずだ!! 手前(テメェ)だけの力でどうしようもできねェから、英雄学園(オカミ)に泣きついたんじゃあねえのか!?」

 それに対し、高梨は予想外のことを語るのだった。

「――そうかもね、ある意味……そうだったのかもしれない。一人ではどうにもならないという確信があったからこそ……私は貴方だけじゃあない、カルマにすら楯突く選択を取ったのかもしれない」

 高梨には、英雄と同じような『弱者救済』を目的とする欲望があった。それは、ひとえに『過去の経験』から。ある意味自分本位でありながら、他者本位でもある願いは、高梨を英雄へと成長させるのだ。
 痛みを経験した者は、往々にして誰かに同じ痛みを背負って欲しくないと考えるものが多い。性根が腐っていない限り、幸せの共有はすれど痛みの共有はしないものである。

「――私は、人間の醜さ、人間の愚かさを知った。その結果、克服こそしたけれど、一時期拒食症になって死の淵に立たされる怖さを知った。きっと……それよりも英雄学園の子たち……今回の作戦人員に加わってくれた、院ちゃんらの方が悲惨な運命をたどっているだろうに、それでも前を向いて歩いている。いつまでも個人の復讐にこだわって生きるよりも、そっちの方がよっぽど建設的な生き方であることを示してくれた。だから――私は和氣(あなた)には賛同できないんだ」

 高梨が手に取るは、『クレオパトラ』が描かれたライセンス。元々中学時代には具現化していない状態であったが、芸能界で多くを経験している内に、彼女の手元に現れた――彼女の力の根源。

「……私は、最終的に殺しを目的とする復讐劇には付き合えない。だから貴方を――私が倒すんだ」

『認証、古代エジプトの女傑(じょけつ)・クレオパトラ七世! 多くの者を魅了した絶世の美女でありながら、高い教養にて多くの者を導く、至高のトップレディが、遂に降臨!!』

 すぐさまドライバー内に装填し、元々顕現していたクレオパトラの幻像が魔力によって実体化する。眼前の外道を打ち崩さんと、不敵な笑みを浮かべていたのだった。
 その見た目は、『絶世の美女』と後世で語られるにふさわしいほどの美貌を持ち合わせていた。凛々しい鷲鼻に、多少の吊り目。服装としては、昔の人間であるためそこまで着込んでいる訳ではないが、華美な装飾を細部に凝らした、焔纏うドレスを着用。美女の元に美女がやってくる、天が二物以上のものを与えた証である。

『――全く、随分遅いこと、サチカ。私とて、それほど暇な存在ではありませんことよ?』

「ごめんね、クレオパトラ。でも……初めてだけどさ、私と一緒に――『英雄(ヒーロー)』として……戦ってくれないかな」

『――フフッ、それを現代の分類における英傑である、私に命じるというのね。正しく愚問と言うべきでしょうね、サチカ』

「……そっか」

 静かに変身体勢を取り、魔力を辺りに満たしていく。その魔力量は支部長であるために、学生以上のものが辺りに放出されていくのだ。

「――変、身ッ!!」

 すぐさまドライバーの右側を押しこんで、魔力で生成された装甲を身にまとっていく。圧縮・生成されるは、実に美しい装甲であった。
 まるで透き通った宝石(ルビー)のような、数多くの宝飾品があしらわれている腕部装甲に、どこか女性的なデザインの、赤を基調としたエジプト風デザインの胸部装甲、頭部装甲は金色の蛇の装飾が施されており、彼女が恋に落ちたカエサルを彷彿とさせる、古代ローマ帝国の国章が側面に描かれている。
 全体的に礼安たちのものよりも、女性的なドレスを彷彿とさせるようなデザインになっており、腰元にたなびくグラデーションのかかっているドレス生地が彼女の因子元であるクレオパトラの『らしさ』を追求している。元々英雄志望であった上に、本人の想像力が幸いしてか、より美しく機能的なデザインになっているのだ。

「――私は、教会の人間としてではなく……一人の芸能人として、そして……幻の英雄(ヒーロー)として、貴方をここで倒す。手加減なんて言葉、この場にあると思わないで」

「ハッ、言ってろ!! 以前とは違う、俺の力に恐れ戦け、女風情が!!」

 誰も予想できなかったであろう、現栃木支部支部長と現栃木支部副支部長が、学園都市エントランスにて激突する。それぞれの思い、それぞれの欲望を内に秘めながら、最大級の内輪揉めが開幕したのだった。



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 さらに、両手で現在高梨のいる地点を見据えながら、諸手を広げその空間を消し飛ばさんとする和氣。その分圧縮・消失させるためにかかる力はそれ相応にかかるだろうが、|人工因子《じんこういんし》が齎す力はそれを容易にするほどの莫大な膂力であった。
 すぐさまその空間消失を回避する高梨。すぐさま信一郎から渡されていたデバイスドライバーを下腹部に装着する。
「ハッ、結局お前は|英雄《ソッチ》側に寝返った! 俺のことをとやかくは言えないはずだ!! |手前《テメェ》だけの力でどうしようもできねェから、|英雄学園《オカミ》に泣きついたんじゃあねえのか!?」
 それに対し、高梨は予想外のことを語るのだった。
「――そうかもね、ある意味……そうだったのかもしれない。一人ではどうにもならないという確信があったからこそ……私は貴方だけじゃあない、カルマにすら楯突く選択を取ったのかもしれない」
 高梨には、英雄と同じような『弱者救済』を目的とする欲望があった。それは、ひとえに『過去の経験』から。ある意味自分本位でありながら、他者本位でもある願いは、高梨を英雄へと成長させるのだ。
 痛みを経験した者は、往々にして誰かに同じ痛みを背負って欲しくないと考えるものが多い。性根が腐っていない限り、幸せの共有はすれど痛みの共有はしないものである。
「――私は、人間の醜さ、人間の愚かさを知った。その結果、克服こそしたけれど、一時期拒食症になって死の淵に立たされる怖さを知った。きっと……それよりも英雄学園の子たち……今回の作戦人員に加わってくれた、院ちゃんらの方が悲惨な運命をたどっているだろうに、それでも前を向いて歩いている。いつまでも個人の復讐にこだわって生きるよりも、そっちの方がよっぽど建設的な生き方であることを示してくれた。だから――私は|和氣《あなた》には賛同できないんだ」
 高梨が手に取るは、『クレオパトラ』が描かれたライセンス。元々中学時代には具現化していない状態であったが、芸能界で多くを経験している内に、彼女の手元に現れた――彼女の力の根源。
「……私は、最終的に殺しを目的とする復讐劇には付き合えない。だから貴方を――私が倒すんだ」
『認証、古代エジプトの|女傑《じょけつ》・クレオパトラ七世! 多くの者を魅了した絶世の美女でありながら、高い教養にて多くの者を導く、至高のトップレディが、遂に降臨!!』
 すぐさまドライバー内に装填し、元々顕現していたクレオパトラの幻像が魔力によって実体化する。眼前の外道を打ち崩さんと、不敵な笑みを浮かべていたのだった。
 その見た目は、『絶世の美女』と後世で語られるにふさわしいほどの美貌を持ち合わせていた。凛々しい鷲鼻に、多少の吊り目。服装としては、昔の人間であるためそこまで着込んでいる訳ではないが、華美な装飾を細部に凝らした、焔纏うドレスを着用。美女の元に美女がやってくる、天が二物以上のものを与えた証である。
『――全く、随分遅いこと、サチカ。私とて、それほど暇な存在ではありませんことよ?』
「ごめんね、クレオパトラ。でも……初めてだけどさ、私と一緒に――『|英雄《ヒーロー》』として……戦ってくれないかな」
『――フフッ、それを現代の分類における英傑である、私に命じるというのね。正しく愚問と言うべきでしょうね、サチカ』
「……そっか」
 静かに変身体勢を取り、魔力を辺りに満たしていく。その魔力量は支部長であるために、学生以上のものが辺りに放出されていくのだ。
「――変、身ッ!!」
 すぐさまドライバーの右側を押しこんで、魔力で生成された装甲を身にまとっていく。圧縮・生成されるは、実に美しい装甲であった。
 まるで透き通った|宝石《ルビー》のような、数多くの宝飾品があしらわれている腕部装甲に、どこか女性的なデザインの、赤を基調としたエジプト風デザインの胸部装甲、頭部装甲は金色の蛇の装飾が施されており、彼女が恋に落ちたカエサルを彷彿とさせる、古代ローマ帝国の国章が側面に描かれている。
 全体的に礼安たちのものよりも、女性的なドレスを彷彿とさせるようなデザインになっており、腰元にたなびくグラデーションのかかっているドレス生地が彼女の因子元であるクレオパトラの『らしさ』を追求している。元々英雄志望であった上に、本人の想像力が幸いしてか、より美しく機能的なデザインになっているのだ。
「――私は、教会の人間としてではなく……一人の芸能人として、そして……幻の|英雄《ヒーロー》として、貴方をここで倒す。手加減なんて言葉、この場にあると思わないで」
「ハッ、言ってろ!! 以前とは違う、俺の力に恐れ戦け、女風情が!!」
 誰も予想できなかったであろう、現栃木支部支部長と現栃木支部副支部長が、学園都市エントランスにて激突する。それぞれの思い、それぞれの欲望を内に秘めながら、最大級の内輪揉めが開幕したのだった。