第三百八十三話
ー/ー あまりにも時間の進みが早い、特異な那須ハイランドパーク。
これは一般人にも言えることだが、「楽しすぎて時間が過ぎるのがあっという間」と言う不思議な感覚がある。逆もまたしかり、その場で経験することが苦痛そのものであるか、あるいは退屈でしかない場合、「過ぎる時間が遅く感じる」と言うこともあるだろう。
今まさに、当人がどう感じるか否かなどかなぐり捨てて、それが起こっているのだ。これまでその理において人類が叶うはずもなかった時間の操作など、どんな実力者や研究者であれ不可能なものであった。昔あった漫画にて頻出していたタイムマシンが、二千五十年現在一切出来上がっていないことがそれを示している。
あまりにもの異常現象に、自分たちが相手取っている存在が、どれほどの存在なのかを思い知る。これを相手に勝利して見せた信一郎も、まさに異次元を超えた存在なのだが、意思一つで自分たちなど殺されてしまうだろうに、なぜこのようなことを企んでいたのかが気になって仕方がなかった。
「――礼安さんは、無事なんでしょうね」
「無論だとも。流石にカルマさんが自分から提示した約束を反故にするだなんてことはしないし。――ほら、噂をすれば何とやら、だよ」
指で示す方には、これまでにないほど神妙な表情の礼安と、口元しかわからない状況でも、態度で見て取れるほど子供のように嬉しそうな様子が見て取れるカルマがいた。一切傷はつけられておらず、ただジェットコースターを堪能しただけであった。
『いやあ、こういう業務をしているとね? こうして羽を伸ばして何かを楽しむ、だなんてこと簡単には出来ないのさ。それ込みで今回のネタバラシ会を企画したのはあるよねえ、信者から徴収した分、そして各所での反社会的な裏稼業によって、資金は潤沢にあるし』
「……」
『どうしたんだい、私の礼安。そんな難しい顔しちゃって。そんな楽しくなかったかい?』
「――いや、ジェットコースターは楽しかったよ。でも……本当に私たちに『手出し』する気が無いんだと思って」
その言葉で、エヴァの中で疑念が膨れ上がる。こうまで綺麗に主力が分断できれば、それらを各個撃破することは卑怯でも何でもない、理に適った作戦の一種として捉えられる。現に、カルマ主導で栃木支部は英雄学園に兵隊を送り込んでいる。学園祭云々を潰す目的、にしては大分仰々しい気はするが。
それなのにも拘らず、現時点でこちら側にしている工作は『時間操作』程度。当人に影響は一切ないために、余計に気味が悪かったのだ。こうして那須ハイランドパークを貸し切り、わざわざ当人が出向くメリットが存在する、その事実がどうも理解しきれなかったのだ。
『も~、心配性だなあ。私は一切そう言うの抜きに楽しみたかっただけなんだって。私は日々の疲れを癒すべく楽しみたい、その報酬として君らが未だ知り得ない情報やら、これまでの答え合わせやら……しかるべき報酬を明け渡す。実際のところ、君らに齎される利の方が割と多いんだよね、今回の小旅行』
人に被害を与えることをちらつかせていたものの、確かに見返りとしては上々。しかし、そこまで『有能な経営者』のような一面が備わっていたか、と、エヴァ自身はカルマを見る目が多少変わったのだった。
『そして、さっきジェットコースターを経験したから……それなりの報酬を君らに与えちゃおうと思ってね。現在時刻は早回しして……丁度お昼時。どうかな、色々昼食を取りながらの質疑応答に応じようと思うんだけど』
「――エヴァちゃん、断る理由しかないよ」
「ええ。ですが……流石にこちらに分がありすぎませんか? 何かしらの裏を感じざるを得ないんですが」
『もー、純粋無垢な礼安だった時の方が、私は御しやすかったんだけどなあ……分かったよ、そんな心配なら……とびきり大きく上等な『とちぎ和牛』、用意するけど?』
まさかの食い物で釣ろうとするカルマ。礼安の好みを知ってのことであったのだが、エヴァはそこまで興味はなかった。しかし……謎の涎を啜る音と間抜けすぎる巨大な腹の音が、横から聞こえてきたのだった。
「礼安さん!? 仮にも敵から送られてくるものですよ!?」
「だ、だってぇ……体がお肉を欲しているというかぁ……!!」
ここの所、気を張って透の武器作成を行っていた上に、礼安はその手伝いを行っており、缶詰め状態かつ、迂闊に自らの抱えているものがバレないよう、外にも出ることが出来なかった二人。碌な食事を取っていなかったために、礼安の腹から実に間抜けな腹の音が鳴り響くのだった。
『アハハ! まあこれはリサーチ済みだったんだけど……お腹減っているでしょう? 構成員に用意させるからさ、思う存分お肉と白米、食べようじゃあないの! そこで気になることを、思う存分ぶつけてくれたまえ、質疑応答タイムだ』
これは一般人にも言えることだが、「楽しすぎて時間が過ぎるのがあっという間」と言う不思議な感覚がある。逆もまたしかり、その場で経験することが苦痛そのものであるか、あるいは退屈でしかない場合、「過ぎる時間が遅く感じる」と言うこともあるだろう。
今まさに、当人がどう感じるか否かなどかなぐり捨てて、それが起こっているのだ。これまでその理において人類が叶うはずもなかった時間の操作など、どんな実力者や研究者であれ不可能なものであった。昔あった漫画にて頻出していたタイムマシンが、二千五十年現在一切出来上がっていないことがそれを示している。
あまりにもの異常現象に、自分たちが相手取っている存在が、どれほどの存在なのかを思い知る。これを相手に勝利して見せた信一郎も、まさに異次元を超えた存在なのだが、意思一つで自分たちなど殺されてしまうだろうに、なぜこのようなことを企んでいたのかが気になって仕方がなかった。
「――礼安さんは、無事なんでしょうね」
「無論だとも。流石にカルマさんが自分から提示した約束を反故にするだなんてことはしないし。――ほら、噂をすれば何とやら、だよ」
指で示す方には、これまでにないほど神妙な表情の礼安と、口元しかわからない状況でも、態度で見て取れるほど子供のように嬉しそうな様子が見て取れるカルマがいた。一切傷はつけられておらず、ただジェットコースターを堪能しただけであった。
『いやあ、こういう業務をしているとね? こうして羽を伸ばして何かを楽しむ、だなんてこと簡単には出来ないのさ。それ込みで今回のネタバラシ会を企画したのはあるよねえ、信者から徴収した分、そして各所での反社会的な裏稼業によって、資金は潤沢にあるし』
「……」
『どうしたんだい、私の礼安。そんな難しい顔しちゃって。そんな楽しくなかったかい?』
「――いや、ジェットコースターは楽しかったよ。でも……本当に私たちに『手出し』する気が無いんだと思って」
その言葉で、エヴァの中で疑念が膨れ上がる。こうまで綺麗に主力が分断できれば、それらを各個撃破することは卑怯でも何でもない、理に適った作戦の一種として捉えられる。現に、カルマ主導で栃木支部は英雄学園に兵隊を送り込んでいる。学園祭云々を潰す目的、にしては大分仰々しい気はするが。
それなのにも拘らず、現時点でこちら側にしている工作は『時間操作』程度。当人に影響は一切ないために、余計に気味が悪かったのだ。こうして那須ハイランドパークを貸し切り、わざわざ当人が出向くメリットが存在する、その事実がどうも理解しきれなかったのだ。
『も~、心配性だなあ。私は一切そう言うの抜きに楽しみたかっただけなんだって。私は日々の疲れを癒すべく楽しみたい、その報酬として君らが未だ知り得ない情報やら、これまでの答え合わせやら……しかるべき報酬を明け渡す。実際のところ、君らに齎される利の方が割と多いんだよね、今回の小旅行』
人に被害を与えることをちらつかせていたものの、確かに見返りとしては上々。しかし、そこまで『有能な経営者』のような一面が備わっていたか、と、エヴァ自身はカルマを見る目が多少変わったのだった。
『そして、さっきジェットコースターを経験したから……それなりの報酬を君らに与えちゃおうと思ってね。現在時刻は早回しして……丁度お昼時。どうかな、色々昼食を取りながらの質疑応答に応じようと思うんだけど』
「――エヴァちゃん、断る理由しかないよ」
「ええ。ですが……流石にこちらに分がありすぎませんか? 何かしらの裏を感じざるを得ないんですが」
『もー、純粋無垢な礼安だった時の方が、私は御しやすかったんだけどなあ……分かったよ、そんな心配なら……とびきり大きく上等な『とちぎ和牛』、用意するけど?』
まさかの食い物で釣ろうとするカルマ。礼安の好みを知ってのことであったのだが、エヴァはそこまで興味はなかった。しかし……謎の涎を啜る音と間抜けすぎる巨大な腹の音が、横から聞こえてきたのだった。
「礼安さん!? 仮にも敵から送られてくるものですよ!?」
「だ、だってぇ……体がお肉を欲しているというかぁ……!!」
ここの所、気を張って透の武器作成を行っていた上に、礼安はその手伝いを行っており、缶詰め状態かつ、迂闊に自らの抱えているものがバレないよう、外にも出ることが出来なかった二人。碌な食事を取っていなかったために、礼安の腹から実に間抜けな腹の音が鳴り響くのだった。
『アハハ! まあこれはリサーチ済みだったんだけど……お腹減っているでしょう? 構成員に用意させるからさ、思う存分お肉と白米、食べようじゃあないの! そこで気になることを、思う存分ぶつけてくれたまえ、質疑応答タイムだ』
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