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第三百七十八話

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 早朝時、大して人も車も居ない街を切り裂くように、速度違反ギリギリの速度でバイクを走らせるエヴァ。後ろには礼安が乗っている状況ではあったが、自分たちが人質に『なりに行く』中で、一秒の遅れもあってはならないと、全力で走らせていたのだった。

「――エヴァちゃん、一ついいかな」

「はい? 何でしょうか」

 直接後ろを見ている訳ではないが、エヴァに対しどこか心配そうな目を向けていた礼安。

「……多分だけど、パパにバレている気がして。心、見てみたんだけど……私たちを気遣う色……見えたんだ」

「……まさかぁ。きっとかなりの遠出ですから、それで私たちを心配してくれたんじゃあないですか?」

「――でも、そう言うエヴァちゃんも……ほんのり『嘘』の色になってる。でもそこに悪意が一切ないの。誰かを傷付けないための……嘘って事?」

 思った以上の察しの良さに、一つ息を吐くと――エヴァは困ったように笑って見せた。

「……本当は、あのテレビ通話の時……私が学園長にさりげなくSOSを出していたんです。おおよそ基本的には察することのできない、モールス信号式の暗号ではありますが。それに勘付いた、いえ……勘付いてくれたのでしょう。だから、あちらから特に茶々を入れてくることは無かった。普通だったら、急に顔を見せなくなった礼安さんのことが心配で心配でたまらないでしょうから」

 どこまで行っても、どこまで非情になれようと、信一郎は礼安と院の父親である。普通なら、どこまでも気に掛けてしまうものである。例え異性の娘だろうと、それなりに踏み入って彼女らを気に掛けるだろう。

「私は……もう両親はいません。アメリカで殺されました。でも……生きている間、確かな愛情を私に注いでくれました。信一郎さんを見ていると……そんな昔の父と母を想起させるんです。だから……学園内の大人の中でも、人一倍信頼しているといいますか」

 肝心要の内容を語りたがらない。必要以上に真剣な表情を見せたりしない。それは、礼安が『あの悲劇』を経験してから、彼が様変わりした証拠である。どこまでも深淵に落ちていく礼安を、少しでも元のように明るくさせようと努力した結果、あそこまでの秘匿体質になったのかもしれなかった。

「――きっと、これから学園の方も忙しくなることでしょう。詳しいことは一切分かりませんが、あちらはあちらで……これからやってくるであろう栃木支部を相手どることでしょう」

「――そうだね。私達も現地に出向いて、少しでも被害を食い止めるお手伝いをしなきゃ。色々と……聞きたいこともあるし」

 その『色々』と言う言葉に、どれほどのものが包含されているのか。そんなことは当人ではないため理解しきれなかったが、エヴァもエヴァで聞きたいことは山ほどある。その答え合わせのためにも、バイクを全力で走らせるのだった。



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 早朝時、大して人も車も居ない街を切り裂くように、速度違反ギリギリの速度でバイクを走らせるエヴァ。後ろには礼安が乗っている状況ではあったが、自分たちが人質に『なりに行く』中で、一秒の遅れもあってはならないと、全力で走らせていたのだった。
「――エヴァちゃん、一ついいかな」
「はい? 何でしょうか」
 直接後ろを見ている訳ではないが、エヴァに対しどこか心配そうな目を向けていた礼安。
「……多分だけど、パパにバレている気がして。心、見てみたんだけど……私たちを気遣う色……見えたんだ」
「……まさかぁ。きっとかなりの遠出ですから、それで私たちを心配してくれたんじゃあないですか?」
「――でも、そう言うエヴァちゃんも……ほんのり『嘘』の色になってる。でもそこに悪意が一切ないの。誰かを傷付けないための……嘘って事?」
 思った以上の察しの良さに、一つ息を吐くと――エヴァは困ったように笑って見せた。
「……本当は、あのテレビ通話の時……私が学園長にさりげなくSOSを出していたんです。おおよそ基本的には察することのできない、モールス信号式の暗号ではありますが。それに勘付いた、いえ……勘付いてくれたのでしょう。だから、あちらから特に茶々を入れてくることは無かった。普通だったら、急に顔を見せなくなった礼安さんのことが心配で心配でたまらないでしょうから」
 どこまで行っても、どこまで非情になれようと、信一郎は礼安と院の父親である。普通なら、どこまでも気に掛けてしまうものである。例え異性の娘だろうと、それなりに踏み入って彼女らを気に掛けるだろう。
「私は……もう両親はいません。アメリカで殺されました。でも……生きている間、確かな愛情を私に注いでくれました。信一郎さんを見ていると……そんな昔の父と母を想起させるんです。だから……学園内の大人の中でも、人一倍信頼しているといいますか」
 肝心要の内容を語りたがらない。必要以上に真剣な表情を見せたりしない。それは、礼安が『あの悲劇』を経験してから、彼が様変わりした証拠である。どこまでも深淵に落ちていく礼安を、少しでも元のように明るくさせようと努力した結果、あそこまでの秘匿体質になったのかもしれなかった。
「――きっと、これから学園の方も忙しくなることでしょう。詳しいことは一切分かりませんが、あちらはあちらで……これからやってくるであろう栃木支部を相手どることでしょう」
「――そうだね。私達も現地に出向いて、少しでも被害を食い止めるお手伝いをしなきゃ。色々と……聞きたいこともあるし」
 その『色々』と言う言葉に、どれほどのものが包含されているのか。そんなことは当人ではないため理解しきれなかったが、エヴァもエヴァで聞きたいことは山ほどある。その答え合わせのためにも、バイクを全力で走らせるのだった。