第三百七十三話
ー/ー そこからの体感経過感覚は早いもので、偽りの生活を送り続けて……残り準備期間が一週間になった時。
昼間から、スーツ姿の女性が一人きり、アタッシュケースを持ちながらも連絡橋を歩き学園都市内に入り込んだ。他でもなく、高梨幸香であった。他の生徒に気付かれる、だなんてことはどうでもよく、数日前の謝罪と決意表明のためにも……この場にやってきたのだった。
それを信一郎の言伝で迎えに行くは、院と透の二名のみ。牽引役も兼ねているため、実に丁度良かったのだ。
ただ。これほど真面目な登場をしたのにも拘らず、高梨は肝心な部分が抜けている人物であった。よりにもよって、今日は三十八度を優に超える酷暑日。そんなときにクールビズ対応のスーツではないものを着ていたのなら……それ即ち暑さで沈黙することは必然である。
「あーもー、高梨さん!! 何で今日に限ってその恰好できたんですの!?」
「いやね……こういう登場にちょっと憧れていたというか……やってみたら想像以上の地獄だった」
その場に駆けつけたのは、院と透。疑いの目を向ける透であったが、高梨の目は非常に真っ直ぐを見据えているものであった。院は二人の間に何があったのかは一切知らないため、すぐさま冷房のよく効いた屋内に運び込むことにした。
「……あのねえ、流石にこんな酷暑日で真っ黒かつパンツスタイルのオフィススーツは死ぬって。 私だって、盛大なクールビズを決行中だってのに」
「それのどこがクールビズだなんて真っ当な範疇に収まってんだよ」
その恰好は、まさかの山梨旅行に来ていった、浮かれたサングラスとアロハシャツにアロハパンツ。おまけにビーチサンダルも履いており、気分は南国旅行。それをこの学園長室で最高権力者が着用していると考えると、どうも脳がおかしくなりそうであった。
しかも、今回の議題が非常に真面目なものであるために、余計にミスマッチ感漂うセレクトであった。
一通り呼吸を整える時間を貰った後に、高梨は面を上げ真剣な表情を見せた。
「――今回は、以前のような現地視察、と言うものではありません。それは……変装していないから分かっていると思うんですけど」
「……オーケー。では、答えを聞こうか、高梨さん」
静かに頷くと、高梨はアタッシュケースの中身を開示する。そこに封じられていたのは……機密資料の数々であった。それぞれの栃木支部幹部連中の能力の種類だったり、栃木支部の面々が違法摘出手術でどんな因子を得たのかだったりなど、多種多様な情報の数々であった。
「……これらは、栃木支部の各種データです。基本的に、表面だけ情報を攫うだけのマスコミ連中にはどう回収しようもない、お宝の数々です」
「ここまでの情報……どこで、そこまで……」
それらの情報を一通り閲覧しながらも、内心透は疑問が肥大化していた。もし仮に的だった場合、そこまでする理由が彼女にあるのか、だなんてことを思考していたのだ。
そして、その思考を察知したかのように――高梨は衝撃の一言を言い放つのだった。
「――私は……本当は栃木支部の支部長。『本来なら』……『暴食』の力を所有する存在でした。こうしてここに居るのは……宣戦布告のためではありません。過ぎたる力を得た副支部長……和氣和弘を打倒したいんです」
「……その言葉、待っていたよ」
実に冷静な信一郎をよそに、あまりにもその現実に追いつけていない様子の院と透は、高梨を呆けながらも凝視していた。
「嘘ですわよね……? 高梨さんが……」
「でも……支部長なら……メリットは何だよ!? 俺らを結局……騙していたってことかよ!!」
「まあ待ちなさい、二人とも。『急いては事を仕損じる』、いついかなる時もそれは鉄則として動かなければ……『本当の味方』すら居なくなるよ」
その発言に引っ掛かりを覚えた二人は、高梨に話の主導権を渋々握らせる。基本的にほぼ何も知らなかった二人であるために、茶々を入れるほどの価値はないのだ。
「――まず、事の経緯をこれまでの栃木支部の流れと共に話します。基本的に、栃木支部は……それこそ、先代支部長である廿六木、と言う存在から始まりました。立ち上がりは他支部よりも非常に遅いものでしたが、結束力は関東地方現最強支部である群馬支部、それに匹敵するものでした。何故なら……」
「その構成メンバーは、往々にして『とある高校の卒業生』、所謂OBやOGが担当していた。基本的に各支部が暴走した際の抑止力になれるよう、カルマ主体となって作り上げた、防衛装置のようなものだね。他の支部と比べると、そもそもの出来上がるまでの道のりが異なっていたんだ」
昼間から、スーツ姿の女性が一人きり、アタッシュケースを持ちながらも連絡橋を歩き学園都市内に入り込んだ。他でもなく、高梨幸香であった。他の生徒に気付かれる、だなんてことはどうでもよく、数日前の謝罪と決意表明のためにも……この場にやってきたのだった。
それを信一郎の言伝で迎えに行くは、院と透の二名のみ。牽引役も兼ねているため、実に丁度良かったのだ。
ただ。これほど真面目な登場をしたのにも拘らず、高梨は肝心な部分が抜けている人物であった。よりにもよって、今日は三十八度を優に超える酷暑日。そんなときにクールビズ対応のスーツではないものを着ていたのなら……それ即ち暑さで沈黙することは必然である。
「あーもー、高梨さん!! 何で今日に限ってその恰好できたんですの!?」
「いやね……こういう登場にちょっと憧れていたというか……やってみたら想像以上の地獄だった」
その場に駆けつけたのは、院と透。疑いの目を向ける透であったが、高梨の目は非常に真っ直ぐを見据えているものであった。院は二人の間に何があったのかは一切知らないため、すぐさま冷房のよく効いた屋内に運び込むことにした。
「……あのねえ、流石にこんな酷暑日で真っ黒かつパンツスタイルのオフィススーツは死ぬって。 私だって、盛大なクールビズを決行中だってのに」
「それのどこがクールビズだなんて真っ当な範疇に収まってんだよ」
その恰好は、まさかの山梨旅行に来ていった、浮かれたサングラスとアロハシャツにアロハパンツ。おまけにビーチサンダルも履いており、気分は南国旅行。それをこの学園長室で最高権力者が着用していると考えると、どうも脳がおかしくなりそうであった。
しかも、今回の議題が非常に真面目なものであるために、余計にミスマッチ感漂うセレクトであった。
一通り呼吸を整える時間を貰った後に、高梨は面を上げ真剣な表情を見せた。
「――今回は、以前のような現地視察、と言うものではありません。それは……変装していないから分かっていると思うんですけど」
「……オーケー。では、答えを聞こうか、高梨さん」
静かに頷くと、高梨はアタッシュケースの中身を開示する。そこに封じられていたのは……機密資料の数々であった。それぞれの栃木支部幹部連中の能力の種類だったり、栃木支部の面々が違法摘出手術でどんな因子を得たのかだったりなど、多種多様な情報の数々であった。
「……これらは、栃木支部の各種データです。基本的に、表面だけ情報を攫うだけのマスコミ連中にはどう回収しようもない、お宝の数々です」
「ここまでの情報……どこで、そこまで……」
それらの情報を一通り閲覧しながらも、内心透は疑問が肥大化していた。もし仮に的だった場合、そこまでする理由が彼女にあるのか、だなんてことを思考していたのだ。
そして、その思考を察知したかのように――高梨は衝撃の一言を言い放つのだった。
「――私は……本当は栃木支部の支部長。『本来なら』……『暴食』の力を所有する存在でした。こうしてここに居るのは……宣戦布告のためではありません。過ぎたる力を得た副支部長……和氣和弘を打倒したいんです」
「……その言葉、待っていたよ」
実に冷静な信一郎をよそに、あまりにもその現実に追いつけていない様子の院と透は、高梨を呆けながらも凝視していた。
「嘘ですわよね……? 高梨さんが……」
「でも……支部長なら……メリットは何だよ!? 俺らを結局……騙していたってことかよ!!」
「まあ待ちなさい、二人とも。『急いては事を仕損じる』、いついかなる時もそれは鉄則として動かなければ……『本当の味方』すら居なくなるよ」
その発言に引っ掛かりを覚えた二人は、高梨に話の主導権を渋々握らせる。基本的にほぼ何も知らなかった二人であるために、茶々を入れるほどの価値はないのだ。
「――まず、事の経緯をこれまでの栃木支部の流れと共に話します。基本的に、栃木支部は……それこそ、先代支部長である廿六木、と言う存在から始まりました。立ち上がりは他支部よりも非常に遅いものでしたが、結束力は関東地方現最強支部である群馬支部、それに匹敵するものでした。何故なら……」
「その構成メンバーは、往々にして『とある高校の卒業生』、所謂OBやOGが担当していた。基本的に各支部が暴走した際の抑止力になれるよう、カルマ主体となって作り上げた、防衛装置のようなものだね。他の支部と比べると、そもそもの出来上がるまでの道のりが異なっていたんだ」
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