ep118 シヒロの行方

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「あ、あなたたちは何者なんですか!?」

 起き抜けにシヒロが叫んだ。知らない部屋の中で眠っていたらしい。そして何より、シヒロの知らない人間が二人、そこにいた。
 
「騒ぐな。別に取って喰おうというわけじゃない」

 アイが腕を組みながら冷徹な調子で吐きすてた。

「おいおいそんな怖い顔したら小娘ちゃんが怖がっちまうだろ?」

 長髪の屈強な男がやや軽い口調で言った。

「や、やっぱりフリーダム…ですか」

 シヒロはびくびくと子犬のように怯えながらも目の前に立っている男と女を必死に睨んだ。

「シヒロちゃん…だったか。まあ安心しな。事が終わったら解放してやる。痛めつけるつもりもねえし、大人しくしていてくれるんならこのままなんにもしねえさ」

 長髪の男が言うように、シヒロは縛られてもいない上、ご丁寧にソファーに寝かされていた。

「で、でも、あなたは〔フリーダム〕なんでしょう? だったらあのキラースとも仲間ってことですよね? そ、そんな人の言うこと、ぼくは信用できません……」

「ん? シヒロちゃんはキラースのクソヤローを知っているのか?」

「ボス。キラースはサンダースを襲撃していたんだよ。報告はあっただろう? そこにこの娘もいたんだよ」

 アイがやや苛立ちながら口を挟んだ。

「あーあーそうだったな。そんでシヒロちゃんはキラースのイメージでオレたちのことも見ているってわけか」

「わ、悪いですか」

「悪いぜ。看過できねえ。オレらをあんな小者と一緒にすんじゃねえ。ハッキリ言ってそりゃあ侮辱だ」

 男は眼をギロリと光らせた。

「!」

 シヒロは恐怖に竦んだ。

「オレはジェイズ・キング。この街、ヘッドフィールドを仕切っているモンだ。そこのアイは元大盗賊の女頭領でオレの右腕だ」

 荒々しい見た目とは裏腹に、意外にも男はきちんと自己紹介をした。それは彼なりの相手への礼儀だった。でなければわざわざジェイズとアイが人質のシヒロに直接顔を合わせる理由も必要もない。といっても彼らが礼儀を示した相手とは、シヒロではない。その背後に控える銀髪の剣士に対してだ。

「え? フリーダムではないんですか?」

 シヒロは目を丸くする。
 ジェイズはふっと頬を緩める。

「いや、フリーダムの幹部でもある。とはいっても〔ヘッドフィールドのジェイズキング〕としての方が世間で名が通っているけどな。まっ、シヒロちゃんみたいなカタギの女の子にゃ縁遠いハナシか」

「ぼ、ぼくを攫った目的は……なんですか」

「んなこたぁ、言われなくてもわかるだろ? 魔剣使いだよ」

「クローさんを……魔剣使いをどうするつもりなんですか?」

「そいつは、ツラ拝んでから決めるさ。まっ、シヒロちゃんがここにいるんなら魔剣使いもいずれ来るだろ?」

 ジェイズは危険な笑みをニイッと浮かべた。

「!」

 シヒロの心身は押し潰されたように圧迫された。直感的に彼女は、ジェイズという男の中に今までにない激烈な強者の何かを見てとった。それはシヴィスにもキラースにもない、海底火山の下で静かに煮えたぎるマグマのような何かだった。


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「あ、あなたたちは何者なんですか!?」
 起き抜けにシヒロが叫んだ。知らない部屋の中で眠っていたらしい。そして何より、シヒロの知らない人間が二人、そこにいた。
「騒ぐな。別に取って喰おうというわけじゃない」
 アイが腕を組みながら冷徹な調子で吐きすてた。
「おいおいそんな怖い顔したら小娘ちゃんが怖がっちまうだろ?」
 長髪の屈強な男がやや軽い口調で言った。
「や、やっぱりフリーダム…ですか」
 シヒロはびくびくと子犬のように怯えながらも目の前に立っている男と女を必死に睨んだ。
「シヒロちゃん…だったか。まあ安心しな。事が終わったら解放してやる。痛めつけるつもりもねえし、大人しくしていてくれるんならこのままなんにもしねえさ」
 長髪の男が言うように、シヒロは縛られてもいない上、ご丁寧にソファーに寝かされていた。
「で、でも、あなたは〔フリーダム〕なんでしょう? だったらあのキラースとも仲間ってことですよね? そ、そんな人の言うこと、ぼくは信用できません……」
「ん? シヒロちゃんはキラースのクソヤローを知っているのか?」
「ボス。キラースはサンダースを襲撃していたんだよ。報告はあっただろう? そこにこの娘もいたんだよ」
 アイがやや苛立ちながら口を挟んだ。
「あーあーそうだったな。そんでシヒロちゃんはキラースのイメージでオレたちのことも見ているってわけか」
「わ、悪いですか」
「悪いぜ。看過できねえ。オレらをあんな小者と一緒にすんじゃねえ。ハッキリ言ってそりゃあ侮辱だ」
 男は眼をギロリと光らせた。
「!」
 シヒロは恐怖に竦んだ。
「オレはジェイズ・キング。この街、ヘッドフィールドを仕切っているモンだ。そこのアイは元大盗賊の女頭領でオレの右腕だ」
 荒々しい見た目とは裏腹に、意外にも男はきちんと自己紹介をした。それは彼なりの相手への礼儀だった。でなければわざわざジェイズとアイが人質のシヒロに直接顔を合わせる理由も必要もない。といっても彼らが礼儀を示した相手とは、シヒロではない。その背後に控える銀髪の剣士に対してだ。
「え? フリーダムではないんですか?」
 シヒロは目を丸くする。
 ジェイズはふっと頬を緩める。
「いや、フリーダムの幹部でもある。とはいっても〔ヘッドフィールドのジェイズキング〕としての方が世間で名が通っているけどな。まっ、シヒロちゃんみたいなカタギの女の子にゃ縁遠いハナシか」
「ぼ、ぼくを攫った目的は……なんですか」
「んなこたぁ、言われなくてもわかるだろ? 魔剣使いだよ」
「クローさんを……魔剣使いをどうするつもりなんですか?」
「そいつは、ツラ拝んでから決めるさ。まっ、シヒロちゃんがここにいるんなら魔剣使いもいずれ来るだろ?」
 ジェイズは危険な笑みをニイッと浮かべた。
「!」
 シヒロの心身は押し潰されたように圧迫された。直感的に彼女は、ジェイズという男の中に今までにない激烈な強者の何かを見てとった。それはシヴィスにもキラースにもない、海底火山の下で静かに煮えたぎるマグマのような何かだった。