届かなかった招待状
ー/ー 結婚式の招待状が届かなかったことを、私は長いあいだ、気にしないふりをして過ごしてきた。
「忙しかったのだろう」「人数の都合があったのだろう」
そう自分に言い聞かせ、無理やり納得させていた。学生時代、互いの部屋の鍵を預け合うほど近かった彼女。
人生の輝かしい節目において、私は最初から、集合写真の外側にいた。
式の後も連絡はなかった。
こちらからも踏み込めなかった。
年に一度、年賀状だけが、細い糸のように続いていた。
けれど、招待状が来なかった理由を問う言葉は一度も書けなかった。
理由を知れば、積み上げた月日すら嘘になりそうで、私は臆病な沈黙を選び続けた。
数年後、駅の雑踏で偶然、彼女と再会した。
彼女は母親になっていて、私は相変わらずの一人だった。
ベビーカーの横で、彼女は少し疲れ、それでも以前より穏やかな笑顔を見せた。
近くのカフェで、当たり障りのない近況を交わした後、彼女がふっと視線を落とした。
「……ずっと、言えなかったことがあるの」
結婚式に私を呼ばなかった理由は、皮肉にも私の言葉だった。
プロポーズされた直後、幸せの絶頂にいた彼女に、私は冗談のつもりでこう言ったらしい。
「その人、本当に大丈夫?」
記憶をたどっても、私には覚えがなかった。
けれど、その何気ない一言は、彼女を深い不安に突き落とし、幾夜も眠れぬ時間を強いた。式の日、私の顔を見る勇気が持てなかったのだという。
あわてて謝罪を口にしようとしたが、彼女はそれを遮るように静かに首を振った。
「いいの。謝ってほしくて言ったんじゃないの。ただ、これを言わない限り、あなたと笑って会うことは一生できないと思ったから」
帰り道、駅ビルのガラスに映る自分の口元が、あの頃と同じ形で歪んでいることに気づいた。
何の気なしに、冗談のように投げた言葉が、大切な未来を曇らせ、数年もの歳月が失われた。
言葉を放った私は、覚えてすらいない、
そんな残酷な事実。
別れ際、幼い子供が小さな手を私に振った。
私は無理に笑って振り返しながら、ようやく理解した。
招待状は、届かなかったのではない。
私の無神経な一言が、私自身の名前を招待リストから消してしまったのだ。
胸の奥に、遅すぎた後悔の感触だけが、いつまでも静かに残り続けていた。
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