ep116 拉致
ー/ー 【登場人物】
☆クロー・ラキアード
主人公の青年。銀髪の魔剣使い。転生前は中年男。
ロットンやサンダースでの強敵との闘いを経て、魔導剣士(世間では魔剣使いと呼ばれている)として日増しに強くなっている。
☆謎の声
クローを異世界に導いたと思われる謎の存在。
アドバイスのみならず、その力で度々クローを手助けする。
謎に満ちたクローのサポーター的存在。
☆シヒロ・モリセット
作家を目指す十六歳の少女。
クローに助けられたことをきっかけに彼の旅に同行することに。
性格は素直で優しく、言葉づかいも丁寧。
まだまだ見た目は幼いが、非凡な魔法の才を持つ。
☆トレブル
背の低い金髪のチンピラ。武器はダガーナイフ。
元々はフリーダムの幹部であるシヴィスの部下だったが、クローに敗れて彼の部下になる。
☆ブースト
スキンヘッドの肥満体系のチンピラ。武器は鈍器。
トレブル同様、シヴィスの部下だったがクローに敗れて彼の部下になる。
☆カレン・ホールズワース
国際平和維持軍(勇者軍)特別部隊隊長。
紅髪の美人魔法剣士で勇者の妹。
強力な魔法剣を行使し、強くも華麗なる技を駆使して戦う。
サンダースでのキラースとの闘いではクローと共闘。
その後、クローとの決闘に敗れる。
☆エレサ
砂色の髪に紫色の瞳のダークエルフ。
強力な闇の魔法を使う。
キラースの手により身体に爆破魔術を施され、どうすることもできなかったが、クローに手によって解放される。
☆キラース
〔フリーダム〕の幹部。
狡猾で残忍な紫髪の爆破魔術師。
サンダースにてクロー達と戦うが、不利と見るや早々に退避。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サンダース北端から北西に約百キロ。
ならず者の街、ヘッドフィールド。
そこはギャング組織が支配する街だった。お世辞にも豊かとは言えないその街には薄汚れた低層建物が点在し、乾いた風がよく吹き抜けている。
「ボス。本気でやるのか? その仕事」
襟足の短い髪をした盗賊風の女が、確認するように言った。
「当然だ。一応オレにも立場ってもんがあるからなぁ」
黒く荒々しい長髪が印象的な屈強そうな男が、上半身のタトゥーを鈍く光らせて答えた。
「……気が進まないな」
「まあそう言うな。お前が適任なんだよ。頼むぜ、アイ」
「これが〔狂戦士〕と恐れられるお前がやるべき仕事なのか?」
「仕方ねえさ。オレも今は〔フリーダム〕の幹部だしなぁ。まっ、そんなわけだから、元大盗賊のお前の偸盗術でちゃっちゃと拉致ってきてくれや。そのシヒロって小娘ちゃんをよ」
男の言葉にアイは面白くなさそうな顔で了承すると、そそくさと建物を出ていった。
「姉御!」
「アイの姉御!」
「行ってらっしゃいませ!」
アイが街路を歩いていると、部下たちのギャングどもが彼女に敬意を持った声をかけた。
「ああ……」
アイは素っ気なく返事した。
「姉御、いつにもまして機嫌悪そうだな……」
部下どもは遠ざかっていく彼女の背中を目で追いながらヒソヒソと話した。
その日。アイは夕闇に紛れるように街から姿を消した。
数日後のこと。
その夜、クローはある者に呼び出されていつもの宿屋にはいなかった。そのタイミングで事件は起こった。
「おいブースト! 嬢ちゃんは見なかったか!?」
やけに切羽詰まったような表情のトレブルが、宿屋の食堂で酒を飲むブーストに勢いよく尋ねた。
「なんだよ?」
トレブルは小首を傾げる。
「嬢ちゃんはちょっと前に執筆するっつって部屋に行ったっきりで見てねえが?」
「さっきから部屋にもどこにもいねえんだよ!」
「は? 出てったところも見てねえぞ?」
「だから焦ってんだろうが! フリーダムの仕業かもしれねえ! クソッ! よりによってダンナが外している時に!」
しばらくして……。
「おいオマエ。なにをしている」
街の外れで馬に乗ろうとするローブの者に向かいエレサが呼びかけた。
「なにをと言われても……街を出立するだけだが」
その者は静かに答えた。エレサは怪訝に目を細める。
「そういう意味じゃない。その背負っている娘をどうするんだ?」
病人なのかどうか知らないが、その者は、ローブに包まれて眠る者を背負っていた。エレサはそれについて尋ねたのだった。
「ああこれか。この娘は病気でね。別の街で医者に見せるつもりだ」
態度も口調も自然な答え方だった。だが、それが嘘だという事をすでにエレサは見抜いていた。
「その娘はシヒロという名の少女ではないのか?」
一瞬だけ沈黙が訪れたものの、その者はやけに潔かった。
「お前はこの娘の友人なのか?」
「オマエは何者だ」
エレサの声が鋭利に低くなる。
「フリーダムか?」
「お前はこの娘の個人的な友人なのか? エルフが魔剣使いの仲間にいるとは聞いていなかったが……」
「やはりオマエはフリーダムか!」
エレサはその者にバッと飛びかかった。その瞬間、その者はふわっとシヒロを馬に乗せると同時にパンッと馬を叩いて走らせた。
「おい! その娘が落馬してケガしたらどうする!」
エレサが怒りの蹴りをローブの者へ放った。バスッと見事に命中。と思いきや、彼女が撃ち込んだのは一枚の布、すなわちローブのみだった。
「エルフ! 宿にメッセージを残した! 魔剣使いに伝えておけ!」
その者はいつの間にか疾駆していた馬に騎乗していた。襟足の短い髪をした盗賊風の女は、おそろしいほどの乗馬術で見る見るうちに遠ざかっていく。
「ダメだ。下手に魔法を放てばシヒロが危ない。それにあの女……おそらくかなり強い」
エレサは悔しさを滲ませながら二の足を踏んだ。
夜のサンダースの街外れ。ひゅうっと肌寒い風がエレサの砂色の髪を冷たく撫でて通りすぎる。
招かれざる訪問者は、まもなく馬の蹄の音とともにシヒロを連れ去って遠い闇に溶けていった。
☆クロー・ラキアード
主人公の青年。銀髪の魔剣使い。転生前は中年男。
ロットンやサンダースでの強敵との闘いを経て、魔導剣士(世間では魔剣使いと呼ばれている)として日増しに強くなっている。
☆謎の声
クローを異世界に導いたと思われる謎の存在。
アドバイスのみならず、その力で度々クローを手助けする。
謎に満ちたクローのサポーター的存在。
☆シヒロ・モリセット
作家を目指す十六歳の少女。
クローに助けられたことをきっかけに彼の旅に同行することに。
性格は素直で優しく、言葉づかいも丁寧。
まだまだ見た目は幼いが、非凡な魔法の才を持つ。
☆トレブル
背の低い金髪のチンピラ。武器はダガーナイフ。
元々はフリーダムの幹部であるシヴィスの部下だったが、クローに敗れて彼の部下になる。
☆ブースト
スキンヘッドの肥満体系のチンピラ。武器は鈍器。
トレブル同様、シヴィスの部下だったがクローに敗れて彼の部下になる。
☆カレン・ホールズワース
国際平和維持軍(勇者軍)特別部隊隊長。
紅髪の美人魔法剣士で勇者の妹。
強力な魔法剣を行使し、強くも華麗なる技を駆使して戦う。
サンダースでのキラースとの闘いではクローと共闘。
その後、クローとの決闘に敗れる。
☆エレサ
砂色の髪に紫色の瞳のダークエルフ。
強力な闇の魔法を使う。
キラースの手により身体に爆破魔術を施され、どうすることもできなかったが、クローに手によって解放される。
☆キラース
〔フリーダム〕の幹部。
狡猾で残忍な紫髪の爆破魔術師。
サンダースにてクロー達と戦うが、不利と見るや早々に退避。
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サンダース北端から北西に約百キロ。
ならず者の街、ヘッドフィールド。
そこはギャング組織が支配する街だった。お世辞にも豊かとは言えないその街には薄汚れた低層建物が点在し、乾いた風がよく吹き抜けている。
「ボス。本気でやるのか? その仕事」
襟足の短い髪をした盗賊風の女が、確認するように言った。
「当然だ。一応オレにも立場ってもんがあるからなぁ」
黒く荒々しい長髪が印象的な屈強そうな男が、上半身のタトゥーを鈍く光らせて答えた。
「……気が進まないな」
「まあそう言うな。お前が適任なんだよ。頼むぜ、アイ」
「これが〔狂戦士〕と恐れられるお前がやるべき仕事なのか?」
「仕方ねえさ。オレも今は〔フリーダム〕の幹部だしなぁ。まっ、そんなわけだから、元大盗賊のお前の偸盗術でちゃっちゃと拉致ってきてくれや。そのシヒロって小娘ちゃんをよ」
男の言葉にアイは面白くなさそうな顔で了承すると、そそくさと建物を出ていった。
「姉御!」
「アイの姉御!」
「行ってらっしゃいませ!」
アイが街路を歩いていると、部下たちのギャングどもが彼女に敬意を持った声をかけた。
「ああ……」
アイは素っ気なく返事した。
「姉御、いつにもまして機嫌悪そうだな……」
部下どもは遠ざかっていく彼女の背中を目で追いながらヒソヒソと話した。
その日。アイは夕闇に紛れるように街から姿を消した。
数日後のこと。
その夜、クローはある者に呼び出されていつもの宿屋にはいなかった。そのタイミングで事件は起こった。
「おいブースト! 嬢ちゃんは見なかったか!?」
やけに切羽詰まったような表情のトレブルが、宿屋の食堂で酒を飲むブーストに勢いよく尋ねた。
「なんだよ?」
トレブルは小首を傾げる。
「嬢ちゃんはちょっと前に執筆するっつって部屋に行ったっきりで見てねえが?」
「さっきから部屋にもどこにもいねえんだよ!」
「は? 出てったところも見てねえぞ?」
「だから焦ってんだろうが! フリーダムの仕業かもしれねえ! クソッ! よりによってダンナが外している時に!」
しばらくして……。
「おいオマエ。なにをしている」
街の外れで馬に乗ろうとするローブの者に向かいエレサが呼びかけた。
「なにをと言われても……街を出立するだけだが」
その者は静かに答えた。エレサは怪訝に目を細める。
「そういう意味じゃない。その背負っている娘をどうするんだ?」
病人なのかどうか知らないが、その者は、ローブに包まれて眠る者を背負っていた。エレサはそれについて尋ねたのだった。
「ああこれか。この娘は病気でね。別の街で医者に見せるつもりだ」
態度も口調も自然な答え方だった。だが、それが嘘だという事をすでにエレサは見抜いていた。
「その娘はシヒロという名の少女ではないのか?」
一瞬だけ沈黙が訪れたものの、その者はやけに潔かった。
「お前はこの娘の友人なのか?」
「オマエは何者だ」
エレサの声が鋭利に低くなる。
「フリーダムか?」
「お前はこの娘の個人的な友人なのか? エルフが魔剣使いの仲間にいるとは聞いていなかったが……」
「やはりオマエはフリーダムか!」
エレサはその者にバッと飛びかかった。その瞬間、その者はふわっとシヒロを馬に乗せると同時にパンッと馬を叩いて走らせた。
「おい! その娘が落馬してケガしたらどうする!」
エレサが怒りの蹴りをローブの者へ放った。バスッと見事に命中。と思いきや、彼女が撃ち込んだのは一枚の布、すなわちローブのみだった。
「エルフ! 宿にメッセージを残した! 魔剣使いに伝えておけ!」
その者はいつの間にか疾駆していた馬に騎乗していた。襟足の短い髪をした盗賊風の女は、おそろしいほどの乗馬術で見る見るうちに遠ざかっていく。
「ダメだ。下手に魔法を放てばシヒロが危ない。それにあの女……おそらくかなり強い」
エレサは悔しさを滲ませながら二の足を踏んだ。
夜のサンダースの街外れ。ひゅうっと肌寒い風がエレサの砂色の髪を冷たく撫でて通りすぎる。
招かれざる訪問者は、まもなく馬の蹄の音とともにシヒロを連れ去って遠い闇に溶けていった。
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