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来訪者

ー/ー




「!?……妖力反応・接近中!」
「「「!?」」」


 その日は、1月も終わりに差し掛かったある日15時過ぎだった。

 事務所内を掃除していたマリアが突然感知した警戒メッセージを聞いて、全員に緊張が走る。


 妖怪がここに……!?


「何が来るか解るか?」


 一番に反応した雪之丞が、緊迫した声でマリアに問い掛ける。

 それと同時に俺と爺さんも、張り詰めた表情でマリアの言葉を待ったが…………


「過去データ該当あり・人狼の少女です」
「ジンロウだぁ?」
「小僧もしかして……」
「ああ、多分あいつ(・・・)で間違いないだろうな」

 
 緊張と戸惑いの入り混じった声を上げる武威とは対象的に、拍子抜けした感じで顔を見合わせる俺と爺さん……


「マリア、儂等の知ってる人狼で間違いないのか?」
「イエス・Dr.カオス・個体名『シロ』です」

 
 やっぱり……


「お前等は知ってんのか?」
「そういや、お前はあの事件に関わってなかったな」


 自分とは違う反応に驚く雪之丞に俺達は『人狼の辻斬り事件』について簡単に説明した。




    ◇◇◇


「なるほど……事件の関係者か。それが、何でこんなところに?」
「さあ……?」


 あいつは、よく言えば “天真爛漫” 悪く言えば “馬鹿” な奴(子供だから仕方ない)だからな……んな大したこと考えてるとは思えない。だけど、こんなところにシロの興味の惹きそうなもんあるか?


「来ました」


 答えが出る前に来たか。相変わらず脚だけは速いこった……

 そう思って、窓から下を見ると早速ウチの雑魚霊達からの “歓迎” を受けてるあいつが居た。

 戸惑ってるようだったが、すぐさま右手に霊波刀を出現させると周りの連中を片っ端から斬り伏せ始めた。


 以前に比べて、随分と伸びたな………今は、普通の刀の七割程度の長さを出せてる。


「へぇ……いい動きじゃねぇか♪」
「お前等、気ぃ合いそうだな」


 いつの間にか隣に来た雪之丞が、シロの動きを見て感嘆の声を上げる。

 2人共好戦的だからな。出会って、5秒でやり合うんじゃねぇか?


「迎えに行ってやったらどうじゃ?あれじゃ入って来るまでに時間が掛かるぞ」
「そうだな。ちょっと行ってくる」


 後に続いて来た、爺さんに促される形で俺は下の階へ降りる。

 シロがやられるとは思わないが、一匹一匹倒してたんじゃどうやったって時間が掛かる。俺達だって基本的には、事務所の出入りで邪魔な奴しか除霊しないんだ。馬鹿正直に全部相手にしてたら日が暮れちまう。

 そんな事を考えつつも、玄関の前で雑魚が居ないのを確認すると一気に扉を開け放つ。そして、入って来ないよう直ぐに閉める。

 出入りする度にこんなこと繰り返すなんて、正気の沙汰とは思えねぇが、最近はそれが自然になって何も感じなくなってる。

 本当に慣れとは恐ろしい……


「シロ!!」


 そして、敷地の外れの方で孤軍奮闘するシロに大声で呼び掛ける。


「先生!!」


 俺の声に気付いたシロが、振り向くと満面の笑みを見せる。

 本当に飼い主を見つけた犬みたいな反応するよな。悪い気はしないが、何がそんなに嬉しいんだか……それとも、雑魚でも沢山いると不安になるのか?


「全部倒さなくいい!こっちに来い!!」


 言いながら、霊手を顕現させると五本指を鞭状に伸ばして周りの連中を蹴散らす。


「解りました!今行くでござるよ!!」


 おおっ!何かよく解らねぇけど、一気にテンションが上がったぞ!?雑魚を斬り伏せながら、凄い速さで近付いてくる。

 苦戦しそうなら、加勢に行こうと思ったけど必要ねぇなこりゃ。近くに来たら扉を開くだけでいいな。

 そう思ってる間にも、シロはどんどん距離を詰めてくる。おいおい……ちょっと速すぎるぞ!





来訪者 シロ
「先生〜!!!」


 ガチャッ!


「のわぁ〜〜〜!!!!」



 ゴロゴロゴロゴロ………!!ガッシャーン!!!



 俺が扉を開いたと同時に勢い良くダイブしてきたシロが事務所に転がり込むと、数回転がった後にオフィスデスクに派手にぶつかって漸く止まった。


「先生ぇ〜……」
「速すぎだ。どんだけ勢い付けんだよ?」


 扉を閉めると同時に、体が逆さまになって涙目のシロに文句を言う。何でダイブすんだよ?んな急がなくても最後の方、かなり余裕あっただろ。


「先生が、自分の胸に飛び込めと言うから……」
「言ってねえ!」


 …………そういや、こういう奴だったな。

 もし、扉を開けなかったら押し倒された後、顔面を舐め回されて、唾液だらけにされたのか?


 ……言葉にすると卑猥過ぎる…………


 んな、よく解らないことで若干ブルーになりながら改めてシロを見る。

 見た目は記憶と特に変わってないな。闊達な中学生の容姿をした中身小学生。特徴的な長い銀髪と前髪の赤毛もそのまま。

 最後に会ったのはいつだ?

 確か犬の予防接種を受けさせた時だったか?妙神山に籠もってたせいで、時間の感覚が曖昧になって解らん……少なくとも、俺の体感では数年振りだ。

 そんな事を考えてると、さっきの音が聞こえたのか爺さん達も降りてきた。
 

「おお〜、久しぶりじゃの犬ころ♪」
「シロ・久しぶり」
「狼でござる!こちらこそ、お久しぶりでござる。あの時は、お世話になり申した!」
「取り敢えず立て」


 逆さになったまま挨拶を返すシロを立たせると、今度は面白いものを見るように雪之丞が声を掛ける。多分、今から手合わせが楽しみなのかもしれない。


「上から見てたぜ、お前がシロか!俺の事は『武威』って呼んでくれ。一応、ここの所長をしてる」
「ぶ………ぶい……?横島先生の新たな雇い主は、伊達雪之丞殿とお聞きしていたのですが……?」
「「「……………………」」」


 そう言や、そうだったな……

 この前、西条が来て以来こいつは自分を『武威』と呼ばねぇとキレ出しやがるんだ。

※『勲章』参照


「俺を知ってるのか……!?伊達雪之丞であってるよ。でも、俺の事は『武威』と呼べ。武士の『武』に威勢の『威』で『武威』だ」
「え……え〜と、ぶ…ぶしの………」
「まだ、10歳には難しい字だ……取り敢えず、そいつを『武威』と呼べばいい」


 放っとくと、話が進まなそうなんで取り敢えずフォローする。


「クハハハハッ、ガキンチョには難しかったか?」
「むっ……!拙者犬塚シロと申す者、先生の剣の弟子にござる!決して、ガキンチョではないでごさる!!」


 10歳は、普通にガキだと思うが……ただ、雪之丞は別の所に反応する。
 

「先生?剣の弟子……?」
「別に気にしなくていい」


 そうだった……あったな。んな “設定” ………いや、本人は至って真面目なんだろうけど。

 初対面の頃、俺の霊手(剣形態)を見たこいつに、それを教わりたいとせがまれた。当時のシロは、短刀程度の霊波刀しか出せなかったからな。
 
 それで、あの時に簡単な使い方を教えたんだ。正直、俺もあの時は殆ど感覚で出してたから大したことは伝えられなかったけど……


「それより、お前何しに来たんだ?」
「実は__」



    ◇◇◇


「随分と思い切ったな……」
「先生が居ないと知った時は、ショックで寝込みそうだったでござる……」


 それは言い過ぎだろ。

 悄気げたように呟くシロに内心で突っ込むが、こいつの話を聞いて驚いた。


 シロは数週間程から、先生のところに修行目的で住み込んでいるらしい。連日、長老に頼みこんでやっと里を降りる許可が出たとのことだ。

 そして、その住み込み条件に除霊の手伝いをさせられてるらしいが、それが忙しくて毎日大変だとボヤいている。

 それでもって、ここに来た目的が俺に修行を付けて貰うこと………一番気になった理由が、一番どうでもいいことだった。

 何で俺なんだよ?

 
 ちなみに、下で立ち話もあれなんで、今は全員2階に来てる。俺達は元からあるソファに座って、シロはパイプ椅子に座らせて、向かいあってる感じだ。


「本当は、すぐに先生のところに来たかったでござる。でも、毎日のように除霊を手伝わされるし、それに……」


 シロも先生の人使いの荒さに参ってるみたいだな。あの糞女のことだから、身体能力の高い人狼を “タダでこき使えて” 大笑いしてんじゃねぇか?

 まぁ、さっきの動きを見る限りこいつが体力で潰れることはねぇだろうから、精神の問題か……ただ、それよりもシロにしては珍しく口籠ったことに違和感を覚えた。

 
「それに?」


 俺が先を促すとシロは、躊躇いながらも伏し目がちにしながら口を開いた。


「…………先生の名前を出すだけで、美神殿が怒るでござる……もう、尋常じゃないくらいに…………恐くて「先生の所へ行きたい」なんて言えないでござる。事務所で先生の話は禁句でござるよ。今日もここには、内緒で来たのでござる」
「………………マジか……!?」


 まさか、そんな事になってたとは……

 …………ま…まぁ、あの辞め方じゃ良く思われてるわけがねぇけど、予想以上だな。あれから、半年以上経ってんだぞ……今まで特に妨害も無かったから忘れ掛けてたけど、あいつは物凄く根に持つ女だから恐ろしいことこの上ねぇ。


「ほぅほぅ…………」
「……大分、姐さんに好かれてるな」


 若干引きつった顔で口を開くが、まだ解ってないようなんで、この2人にも現実を突き付けてやる。
 
 
「他人事じゃねぇよ……あの女なら俺と一緒にいるだけで同罪と見做してくるぞ………解るだろ?」

「「………………恐ろしいな」」
「恐ろしいんだよ……!!」
 

 俺が2人にそう言うと、今度はシロが上目遣いに聞いてくる。

 
「せ、先生……何故、そこまで美神殿に嫌われてしまったのでござるか?」
「聞いてないのか?」

「だから、恐くて聞けないでござる……」
「じゃあ、聞かなくていいし、知らなくていい」


 触らぬ神に祟りなしだ……


「わ、解ったでござる……じゃ、じゃあ」
「ん?」


 何だ……?まだ、何かあるのか?


「拙者に修行を付けて下さい!先生!!」
「だから、要らねぇだろ……?」

 


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「!?……妖力反応・接近中!」
「「「!?」」」
 その日は、1月も終わりに差し掛かったある日15時過ぎだった。
 事務所内を掃除していたマリアが突然感知した警戒メッセージを聞いて、全員に緊張が走る。
 妖怪がここに……!?
「何が来るか解るか?」
 一番に反応した雪之丞が、緊迫した声でマリアに問い掛ける。
 それと同時に俺と爺さんも、張り詰めた表情でマリアの言葉を待ったが…………
「過去データ該当あり・人狼の少女です」
「ジンロウだぁ?」
「小僧もしかして……」
「ああ、多分|あいつ《・・・》で間違いないだろうな」
 緊張と戸惑いの入り混じった声を上げる武威とは対象的に、拍子抜けした感じで顔を見合わせる俺と爺さん……
「マリア、儂等の知ってる人狼で間違いないのか?」
「イエス・Dr.カオス・個体名『シロ』です」
 やっぱり……
「お前等は知ってんのか?」
「そういや、お前はあの事件に関わってなかったな」
 自分とは違う反応に驚く雪之丞に俺達は『人狼の辻斬り事件』について簡単に説明した。
    ◇◇◇
「なるほど……事件の関係者か。それが、何でこんなところに?」
「さあ……?」
 あいつは、よく言えば “天真爛漫” 悪く言えば “馬鹿” な奴(子供だから仕方ない)だからな……んな大したこと考えてるとは思えない。だけど、こんなところにシロの興味の惹きそうなもんあるか?
「来ました」
 答えが出る前に来たか。相変わらず脚だけは速いこった……
 そう思って、窓から下を見ると早速ウチの雑魚霊達からの “歓迎” を受けてるあいつが居た。
 戸惑ってるようだったが、すぐさま右手に霊波刀を出現させると周りの連中を片っ端から斬り伏せ始めた。
 以前に比べて、随分と伸びたな………今は、普通の刀の七割程度の長さを出せてる。
「へぇ……いい動きじゃねぇか♪」
「お前等、気ぃ合いそうだな」
 いつの間にか隣に来た雪之丞が、シロの動きを見て感嘆の声を上げる。
 2人共好戦的だからな。出会って、5秒でやり合うんじゃねぇか?
「迎えに行ってやったらどうじゃ?あれじゃ入って来るまでに時間が掛かるぞ」
「そうだな。ちょっと行ってくる」
 後に続いて来た、爺さんに促される形で俺は下の階へ降りる。
 シロがやられるとは思わないが、一匹一匹倒してたんじゃどうやったって時間が掛かる。俺達だって基本的には、事務所の出入りで邪魔な奴しか除霊しないんだ。馬鹿正直に全部相手にしてたら日が暮れちまう。
 そんな事を考えつつも、玄関の前で雑魚が居ないのを確認すると一気に扉を開け放つ。そして、入って来ないよう直ぐに閉める。
 出入りする度にこんなこと繰り返すなんて、正気の沙汰とは思えねぇが、最近はそれが自然になって何も感じなくなってる。
 本当に慣れとは恐ろしい……
「シロ!!」
 そして、敷地の外れの方で孤軍奮闘するシロに大声で呼び掛ける。
「先生!!」
 俺の声に気付いたシロが、振り向くと満面の笑みを見せる。
 本当に飼い主を見つけた犬みたいな反応するよな。悪い気はしないが、何がそんなに嬉しいんだか……それとも、雑魚でも沢山いると不安になるのか?
「全部倒さなくいい!こっちに来い!!」
 言いながら、霊手を顕現させると五本指を鞭状に伸ばして周りの連中を蹴散らす。
「解りました!今行くでござるよ!!」
 おおっ!何かよく解らねぇけど、一気にテンションが上がったぞ!?雑魚を斬り伏せながら、凄い速さで近付いてくる。
 苦戦しそうなら、加勢に行こうと思ったけど必要ねぇなこりゃ。近くに来たら扉を開くだけでいいな。
 そう思ってる間にも、シロはどんどん距離を詰めてくる。おいおい……ちょっと速すぎるぞ!
「先生〜!!!」
 ガチャッ!
「のわぁ〜〜〜!!!!」
 ゴロゴロゴロゴロ………!!ガッシャーン!!!
 俺が扉を開いたと同時に勢い良くダイブしてきたシロが事務所に転がり込むと、数回転がった後にオフィスデスクに派手にぶつかって漸く止まった。
「先生ぇ〜……」
「速すぎだ。どんだけ勢い付けんだよ?」
 扉を閉めると同時に、体が逆さまになって涙目のシロに文句を言う。何でダイブすんだよ?んな急がなくても最後の方、かなり余裕あっただろ。
「先生が、自分の胸に飛び込めと言うから……」
「言ってねえ!」
 …………そういや、こういう奴だったな。
 もし、扉を開けなかったら押し倒された後、顔面を舐め回されて、唾液だらけにされたのか?
 ……言葉にすると卑猥過ぎる…………
 んな、よく解らないことで若干ブルーになりながら改めてシロを見る。
 見た目は記憶と特に変わってないな。闊達な中学生の容姿をした中身小学生。特徴的な長い銀髪と前髪の赤毛もそのまま。
 最後に会ったのはいつだ?
 確か犬の予防接種を受けさせた時だったか?妙神山に籠もってたせいで、時間の感覚が曖昧になって解らん……少なくとも、俺の体感では数年振りだ。
 そんな事を考えてると、さっきの音が聞こえたのか爺さん達も降りてきた。
「おお〜、久しぶりじゃの犬ころ♪」
「シロ・久しぶり」
「狼でござる!こちらこそ、お久しぶりでござる。あの時は、お世話になり申した!」
「取り敢えず立て」
 逆さになったまま挨拶を返すシロを立たせると、今度は面白いものを見るように雪之丞が声を掛ける。多分、今から手合わせが楽しみなのかもしれない。
「上から見てたぜ、お前がシロか!俺の事は『武威』って呼んでくれ。一応、ここの所長をしてる」
「ぶ………ぶい……?横島先生の新たな雇い主は、伊達雪之丞殿とお聞きしていたのですが……?」
「「「……………………」」」
 そう言や、そうだったな……
 この前、西条が来て以来こいつは自分を『武威』と呼ばねぇとキレ出しやがるんだ。
※『勲章』参照
「俺を知ってるのか……!?伊達雪之丞であってるよ。でも、俺の事は『武威』と呼べ。武士の『武』に威勢の『威』で『武威』だ」
「え……え〜と、ぶ…ぶしの………」
「まだ、10歳には難しい字だ……取り敢えず、そいつを『武威』と呼べばいい」
 放っとくと、話が進まなそうなんで取り敢えずフォローする。
「クハハハハッ、ガキンチョには難しかったか?」
「むっ……!拙者犬塚シロと申す者、先生の剣の弟子にござる!決して、ガキンチョではないでごさる!!」
 10歳は、普通にガキだと思うが……ただ、雪之丞は別の所に反応する。
「先生?剣の弟子……?」
「別に気にしなくていい」
 そうだった……あったな。んな “設定” ………いや、本人は至って真面目なんだろうけど。
 初対面の頃、俺の霊手(剣形態)を見たこいつに、それを教わりたいとせがまれた。当時のシロは、短刀程度の霊波刀しか出せなかったからな。
 それで、あの時に簡単な使い方を教えたんだ。正直、俺もあの時は殆ど感覚で出してたから大したことは伝えられなかったけど……
「それより、お前何しに来たんだ?」
「実は__」
    ◇◇◇
「随分と思い切ったな……」
「先生が居ないと知った時は、ショックで寝込みそうだったでござる……」
 それは言い過ぎだろ。
 悄気げたように呟くシロに内心で突っ込むが、こいつの話を聞いて驚いた。
 シロは数週間程から、先生のところに修行目的で住み込んでいるらしい。連日、長老に頼みこんでやっと里を降りる許可が出たとのことだ。
 そして、その住み込み条件に除霊の手伝いをさせられてるらしいが、それが忙しくて毎日大変だとボヤいている。
 それでもって、ここに来た目的が俺に修行を付けて貰うこと………一番気になった理由が、一番どうでもいいことだった。
 何で俺なんだよ?
 ちなみに、下で立ち話もあれなんで、今は全員2階に来てる。俺達は元からあるソファに座って、シロはパイプ椅子に座らせて、向かいあってる感じだ。
「本当は、すぐに先生のところに来たかったでござる。でも、毎日のように除霊を手伝わされるし、それに……」
 シロも先生の人使いの荒さに参ってるみたいだな。あの糞女のことだから、身体能力の高い人狼を “タダでこき使えて” 大笑いしてんじゃねぇか?
 まぁ、さっきの動きを見る限りこいつが体力で潰れることはねぇだろうから、精神の問題か……ただ、それよりもシロにしては珍しく口籠ったことに違和感を覚えた。
「それに?」
 俺が先を促すとシロは、躊躇いながらも伏し目がちにしながら口を開いた。
「…………先生の名前を出すだけで、美神殿が怒るでござる……もう、尋常じゃないくらいに…………恐くて「先生の所へ行きたい」なんて言えないでござる。事務所で先生の話は禁句でござるよ。今日もここには、内緒で来たのでござる」
「………………マジか……!?」
 まさか、そんな事になってたとは……
 …………ま…まぁ、あの辞め方じゃ良く思われてるわけがねぇけど、予想以上だな。あれから、半年以上経ってんだぞ……今まで特に妨害も無かったから忘れ掛けてたけど、あいつは物凄く根に持つ女だから恐ろしいことこの上ねぇ。
「ほぅほぅ…………」
「……大分、姐さんに好かれてるな」
 若干引きつった顔で口を開くが、まだ解ってないようなんで、この2人にも現実を突き付けてやる。
「他人事じゃねぇよ……あの女なら俺と一緒にいるだけで同罪と見做してくるぞ………解るだろ?」
「「………………恐ろしいな」」
「恐ろしいんだよ……!!」
 俺が2人にそう言うと、今度はシロが上目遣いに聞いてくる。
「せ、先生……何故、そこまで美神殿に嫌われてしまったのでござるか?」
「聞いてないのか?」
「だから、恐くて聞けないでござる……」
「じゃあ、聞かなくていいし、知らなくていい」
 触らぬ神に祟りなしだ……
「わ、解ったでござる……じゃ、じゃあ」
「ん?」
 何だ……?まだ、何かあるのか?
「拙者に修行を付けて下さい!先生!!」
「だから、要らねぇだろ……?」