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子孫

ー/ー



「俺は、妖怪の子孫かもしれないんだ……」
「…………何だ?唐突に……」
 

 クラスメイトのいきなりの告白(?)に、顔を顰めながら返す俺。

 朝、人が席に着くなり待ち構えてたようにやって来たと思ったら、そのまま神妙な顔をして語り出しやがった……まぁ、子孫が妖怪だったって事例は、確かにあるけど…………


「そのままの意味だよ」
「…………何の妖怪の子孫なんだ?」


 仕方なく聞き返すが、正直何でもいい……

 今の時点で妖気を全く感じないってものあるが、経験上こいつの持って来る話は大抵禄でもねぇ……とまでは言わないが、正直どうでもいい内容ばかりだった。

 根拠はねぇが、今回も似たような臭いがプンプンして来やがる。


 ちなみにこいつの名前は『渡辺(こおり)』………1年の時から同じクラスに居る男で、霊能武道大会の時にも名前を借りたりと、それなりに付き合いがある。

※『霊能武道大会』参照

 そう……それなりに仲が良くて、それなりに付き合いが長くて、それなのに勉強出来て、それなりに運動出来て、それなりにいいヤツで、それにりにイケメンで、それなりに不細工で、それなりに優しくて、それなりに頼りがいがあって、それなりに鬱陶しくて…………要するに、特に何の面白みも無い男ってことで……いや、流石に言い過ぎか………

 でも、まぁ……あれだ。

 悪い奴ではないが、地味にウザい………そんな感じ。


「 “のっぺらぼう”だ…… 」
「そうか……」

 
 その妖怪のことは、知ってる。

 直接見たわけじゃないが、この仕事をしてれば自然とそういう情報も入ってくるからな。


 妖怪『のっぺらぼう』……顔全体がのっぺりとしていて、目も鼻も……とにかく口意外のパーツが無い見た目の不気味な妖怪だ。

 ただ、恐ろしいのは見た目だけで危険はない。

 あれは、民謡やおとぎ話には人を驚かせ、恐怖に陥れる存在とあるけど、実際はその見た目をただ驚かれてるだけで、本人に悪意の無い人畜無害の妖怪なんだ。
 
 元は、顔を見られたくない罪人や醜い顔をした人間が “こんな顔要らない” と邪念を持ち続ける内に妖怪化して、顔が無くなったってのが始まりらしい。

 そして、先祖がそれだったと言われたら、あり得る話ではあるけど…………


 
「もっと……何かないか…………?俺、のっぺらぼうかもしれないんだぞ」
「のっぺらぼうじゃなくて、それの子孫かも知れないんだろ?その前に、その根拠を教えてくれよ。何で、そんな話になったんだ?」


 俺がそうに言うとそいつは、何故かゆっくりと低いトーンの声で語り始めた……
 

「いや、この前帰りが遅くなってな……」
「学校の帰りか……?」


 …………何?怪談の積りか?要らねぇよ、そんな演出。

 
「ああ、掃除当番だったんだよ………」
「それで……」

「掃除を終わらせて皆で帰ろうと思ったら、ちょうど入って来た担任と鉢合わせしてよう、床を見たと思ったら「汚い、やり直せ!」って言いだしやがった!それで、仕方なくやり直すハメになったんだ。マジであり得ねぇよ!!」
「………………その降り、今の話に関係あるか?」


 愚痴ってるようにしか聞こえねぇんだけど……
 

「いや、ないな……」
「ねぇなら、言うな……!!俺だって暇じゃねぇんだから、要点だけ話せ!」


 “朝は、いつも寝てる癖に……” とか隣の机妖怪が呟いた気がするが、多分気の所為だな。

  
「そうだな……どこまで話したっけ?」
「帰りが遅くなったとこまでだよ」


 ……と言うより、始まってすらないよな?


「ああ、そうだった。で、帰ったはいいんだけど、いつも通る道が工事中でさ、通れなかったんだよ」
「通れなかった?朝は、通れたのか?」


 道路工事が夕方から始まることは、よくあるからな。もしかしたら、さっきのは遅くなっていつもの道が通れなくなったって、言いたかったのか?
 
 
「いや、朝から通れなかったよ」
「……じゃあ、何で通れねぇのに行ったんだよ?」

「忘れてたんだよ!」
「偉そうに言うな……!!」


 もう、本当にこいつ追い返そうかな?さっきから、ずっと時間を無駄にしてる気がしてしょうがねぇんだけど……


「わ、悪かったよ……そ、それでな……」
「次、脱線したら話終わりにするからな」

「大丈夫だよ。ここからが本題だから」
「………………」


 端から、そこを話せよ……と言ったら、無駄に脱線しそうなんで我慢する。


「道が通れなかったから、周り道をしたんだけど遅くなったせいで、人気が殆どなかったんだ」
「うん……」


 妖怪の子孫かもって、話をしてんだよな?ここまで、それに掠ってすらいないんだけど本当に大丈夫?
 

「それで、何か怖ぇなぁ……なんて、思ってたら後ろから声を掛けられたんだよ」 
「誰に?」
 
「山下さん」
「えっ……だ、誰だって?」

「だから、山下さんだよ」
「いや、知らねぇよ?ひょっとして、俺も知ってる人なの?」


 咄嗟に過去に出会った人間の記憶辿ってみるけど、んな名前一向に出て来ねぇんだけど……


「んな、訳ねぇだろ!俺も昨日初めて会ったんだから」
「なら、解るかそんなもん!!お前、いい加減にしろよ!妖怪の子孫とか、のっぺらぼう何処行ったんだよ?何で俺が会ったこともねぇ、山下さんの話なんか聞かされなきゃならねぇんだ?」
「朝から、うるさいわよ……」


 どさくさに紛れて、口を挟む机妖怪の非難の声が何か虚しい……
 

「いや、違うんだ。聞いてくれ!これが本題なんだ」
「何だよ!?お前、『本題』2回目だかんな!これが本当に最後だぞ!次、変な事言ったら、もう聞かねぇからな!!」
「だから、うるさいって……」

「その山下さんが ”のっぺらぼう” だったんだよ!!」
「………………マジか……?」
「本当に……?」
 
 
 渡辺の言う事に驚く俺……と愛子。話に参加する気満々らしい。

 まぁ、それは兎も角オカルトに関わる仕事をしちゃいるが、俺はまだのっぺらぼうには会った経験は無い。そう考えれば、こいつも中々珍しい体験をしたのかもしれない。
 

「ああ、大マジだよ。顔見た時は、タマゲたぜ。始めに「いや〜、こんな所でお仲間に会うなんて?」って、凄いフレンドリーな感じで声掛けて来てな。意味は全く解んなかったけど、声の感じから危険は無いと思って振り向いたら……」
「顔が無かったわけか……?」
「それは、強烈な体験ね……」

「そうだよ。本当に顔が “のっぺり” してて、口しか無かった」
「そりゃ、確かに驚くわな……」

「んで、そのままビビって腰抜かしたら、その人いきなり大慌てしだしてさ、「あれっ!?勘違いでしたか?ごめんなさい」って言って、普通の顔になったんだよ。そうなったら、普通のサラリーマンのおじさんにしか見えなかったよ」
「顔を作ったんだな」


 彼等は自分の顔をのっぺりした状態から普通の顔に変化させる事が出来る。そして、普段は普通の顔をして人間の中に溶け込んで生活してるわけだ。

 驚かれるのは、何かの拍子に顔が元に戻っちまった運の悪い事故でしかない。
 
 現在では、それで彼等が迫害されないようGS協会も『のっぺらぼうは人と共存出来る存在』と積極的に情報公開してるから、昔のような騒ぎは大分少なくなってる。

 でも、珍しいことには変わりないから、昨日のこいつみたいに驚く人間が居るのも仕方のない話なんだろう。


 でも、今はそれ以上に気になる事が一つ……

  
「それで……お前を「仲間」って言ったの?その……のっぺらぼうの山下さんは?」


 散々、話が逸れまくってやっと始めの所に戻って来た気がする。

 
「そうなんだよ!その後も話たんだけど、あの人が言うには「先祖が私達がだったのかも」って……俺には、彼等と似たような気が溢れてるらしい。それで、俺を仲間と勘違いしたって」 
「なるほど……」
「『青春』の邂逅……かしら?」


 始めに結論から言っちまう…………どうでもいい。

 こいつには、それなりの体験だったのかもしれないが、関係ないこっちからしたら「ふ〜ん」で済んじまいそうな……そんな感じ。


「横島……俺、どうしたら良いと思う?」
「どうもしなくて良いだろ?」

「何でだよ!?」
「別に困ること無いだろ?お前、ちゃんと顔あるじゃん」

 
 地味過ぎて覚え難い顔だけど……

 
「あの人、こうも言ったんだ「自分達は、人の印象に残り辛いんだ」って……俺、昔から覚え難い顔って言われるんだよ。のっぺらぼうの血が流れてるからなんだろうか?」
「「……………………」」


 そういや、あったな。そんな特徴…………元から顔が無いのが影響してるんだか、顔を作っても彼等は人に中々覚えて貰えなんだ。

 そして、その特徴は目の前の男にも当て嵌まる。

 ステルスの奴は影こそ薄いが、顔自体は(暑苦しいから)皆覚えてる。

 でも、こいつの場合居れば気付くけど、居なくなれば綺麗に忘れちまう。その地味な顔の所為で……

 
「なあ……俺は、本当にどうしたらいいと思う?」
「…………解るかよ」


 そもそも、俺に何を期待してたんだ?

 一応、オカルトの枠組みに入る話だったけど、何か違う気がする。

 
「何か、無いのか?呪いを解くみたい感じで」
「子孫と呪いは違くね……?」
 
「本当に何も無いのか?」
「俺じゃ、無理だ。愛子、何かないか?」
「いや、私に聞かれても……」


 そりゃ、そうだよな………
 

「空振りかよ……」
「悪いな。ピートかス…タイガーに相談してみろよ」

「お前が来る前に、2人にも相談したんだよ」
「相談したんだ………で、駄目だから仕方なく俺の所に来た?」

「そんな感じ」
「……もう、整形しろ」


 この野郎………!

 
「んな金ねぇよ」
「働いて貯めりゃいいだろ?」


 もぅ、勝手にしやがれ……

 
「もっと、手っ取り早い解決方法とかねぇかなぁ?」
「じゃあ、マジックで顔に何か描いたらどうだ?」
 
「はぁ!?何を描くんだよ」
「だから、目と鼻を……」
「また、テキトーなこと……(愛子)」
 
「あるもん描いてどうすんだよ!!?」
「なら、取り敢えず周りを黒く塗っときゃ、目立つんじゃねぇか?」
 
「巫山戯んな!俺はパンダじゃねぇんだ!!」
「じゃあ、赤にすりゃもっと目立つぞ。歌舞伎役者みたいだ」

「馬鹿野郎!赤ペンじゃ赤チン塗りたくったようにしかならねぇよ!?」←今どき知ってる人いるかな?
「青にするか?」
 
「色じゃねぇ!!塗ることから、離れろや!!!」
「だったら、額に『バカ』とでも書いとけよ。それなら皆覚えてくれるぞ!」

「アホかっ!何で『バカ』!?書くなら、せめて『渡辺』だろ!?」
「今、書いてやろうか?」

「止めろ!ボケッ!!」
「いつまで、ボケ続けるのよ……?」


 確かに……流石に面倒くさくなってきたな。
 
 
「もう、山下さんに相談しろ。もう一回、その道通りゃ会えんじゃねぇの?」


 
 ちなみに後日良く調べてみたら、ただの勘違いだったらしい。

 こいつ、本当何なんだよ……?
 


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「俺は、妖怪の子孫かもしれないんだ……」「…………何だ?唐突に……」
 クラスメイトのいきなりの告白(?)に、顔を顰めながら返す俺。
 朝、人が席に着くなり待ち構えてたようにやって来たと思ったら、そのまま神妙な顔をして語り出しやがった……まぁ、子孫が妖怪だったって事例は、確かにあるけど…………
「そのままの意味だよ」
「…………何の妖怪の子孫なんだ?」
 仕方なく聞き返すが、正直何でもいい……
 今の時点で妖気を全く感じないってものあるが、経験上こいつの持って来る話は大抵禄でもねぇ……とまでは言わないが、正直どうでもいい内容ばかりだった。
 根拠はねぇが、今回も似たような臭いがプンプンして来やがる。
 ちなみにこいつの名前は『渡辺|郡《こおり》』………1年の時から同じクラスに居る男で、霊能武道大会の時にも名前を借りたりと、それなりに付き合いがある。
※『霊能武道大会』参照
 そう……それなりに仲が良くて、それなりに付き合いが長くて、それなのに勉強出来て、それなりに運動出来て、それなりにいいヤツで、それにりにイケメンで、それなりに不細工で、それなりに優しくて、それなりに頼りがいがあって、それなりに鬱陶しくて…………要するに、特に何の面白みも無い男ってことで……いや、流石に言い過ぎか………
 でも、まぁ……あれだ。
 悪い奴ではないが、地味にウザい………そんな感じ。
「 “のっぺらぼう”だ…… 」
「そうか……」
 その妖怪のことは、知ってる。
 直接見たわけじゃないが、この仕事をしてれば自然とそういう情報も入ってくるからな。
 妖怪『のっぺらぼう』……顔全体がのっぺりとしていて、目も鼻も……とにかく口意外のパーツが無い見た目の不気味な妖怪だ。
 ただ、恐ろしいのは見た目だけで危険はない。
 あれは、民謡やおとぎ話には人を驚かせ、恐怖に陥れる存在とあるけど、実際はその見た目をただ驚かれてるだけで、本人に悪意の無い人畜無害の妖怪なんだ。
 元は、顔を見られたくない罪人や醜い顔をした人間が “こんな顔要らない” と邪念を持ち続ける内に妖怪化して、顔が無くなったってのが始まりらしい。
 そして、先祖がそれだったと言われたら、あり得る話ではあるけど…………
「もっと……何かないか…………?俺、のっぺらぼうかもしれないんだぞ」
「のっぺらぼうじゃなくて、それの子孫かも知れないんだろ?その前に、その根拠を教えてくれよ。何で、そんな話になったんだ?」
 俺がそうに言うとそいつは、何故かゆっくりと低いトーンの声で語り始めた……
「いや、この前帰りが遅くなってな……」
「学校の帰りか……?」
 …………何?怪談の積りか?要らねぇよ、そんな演出。
「ああ、掃除当番だったんだよ………」
「それで……」
「掃除を終わらせて皆で帰ろうと思ったら、ちょうど入って来た担任と鉢合わせしてよう、床を見たと思ったら「汚い、やり直せ!」って言いだしやがった!それで、仕方なくやり直すハメになったんだ。マジであり得ねぇよ!!」
「………………その降り、今の話に関係あるか?」
 愚痴ってるようにしか聞こえねぇんだけど……
「いや、ないな……」
「ねぇなら、言うな……!!俺だって暇じゃねぇんだから、要点だけ話せ!」
 “朝は、いつも寝てる癖に……” とか隣の机妖怪が呟いた気がするが、多分気の所為だな。
「そうだな……どこまで話したっけ?」
「帰りが遅くなったとこまでだよ」
 ……と言うより、始まってすらないよな?
「ああ、そうだった。で、帰ったはいいんだけど、いつも通る道が工事中でさ、通れなかったんだよ」
「通れなかった?朝は、通れたのか?」
 道路工事が夕方から始まることは、よくあるからな。もしかしたら、さっきのは遅くなっていつもの道が通れなくなったって、言いたかったのか?
「いや、朝から通れなかったよ」
「……じゃあ、何で通れねぇのに行ったんだよ?」
「忘れてたんだよ!」
「偉そうに言うな……!!」
 もう、本当にこいつ追い返そうかな?さっきから、ずっと時間を無駄にしてる気がしてしょうがねぇんだけど……
「わ、悪かったよ……そ、それでな……」
「次、脱線したら話終わりにするからな」
「大丈夫だよ。ここからが本題だから」
「………………」
 端から、そこを話せよ……と言ったら、無駄に脱線しそうなんで我慢する。
「道が通れなかったから、周り道をしたんだけど遅くなったせいで、人気が殆どなかったんだ」
「うん……」
 妖怪の子孫かもって、話をしてんだよな?ここまで、それに掠ってすらいないんだけど本当に大丈夫?
「それで、何か怖ぇなぁ……なんて、思ってたら後ろから声を掛けられたんだよ」 
「誰に?」
「山下さん」
「えっ……だ、誰だって?」
「だから、山下さんだよ」
「いや、知らねぇよ?ひょっとして、俺も知ってる人なの?」
 咄嗟に過去に出会った人間の記憶辿ってみるけど、んな名前一向に出て来ねぇんだけど……
「んな、訳ねぇだろ!俺も昨日初めて会ったんだから」
「なら、解るかそんなもん!!お前、いい加減にしろよ!妖怪の子孫とか、のっぺらぼう何処行ったんだよ?何で俺が会ったこともねぇ、山下さんの話なんか聞かされなきゃならねぇんだ?」
「朝から、うるさいわよ……」
 どさくさに紛れて、口を挟む机妖怪の非難の声が何か虚しい……
「いや、違うんだ。聞いてくれ!これが本題なんだ」
「何だよ!?お前、『本題』2回目だかんな!これが本当に最後だぞ!次、変な事言ったら、もう聞かねぇからな!!」
「だから、うるさいって……」
「その山下さんが ”のっぺらぼう” だったんだよ!!」
「………………マジか……?」
「本当に……?」
 渡辺の言う事に驚く俺……と愛子。話に参加する気満々らしい。
 まぁ、それは兎も角オカルトに関わる仕事をしちゃいるが、俺はまだのっぺらぼうには会った経験は無い。そう考えれば、こいつも中々珍しい体験をしたのかもしれない。
「ああ、大マジだよ。顔見た時は、タマゲたぜ。始めに「いや〜、こんな所でお仲間に会うなんて?」って、凄いフレンドリーな感じで声掛けて来てな。意味は全く解んなかったけど、声の感じから危険は無いと思って振り向いたら……」
「顔が無かったわけか……?」
「それは、強烈な体験ね……」
「そうだよ。本当に顔が “のっぺり” してて、口しか無かった」
「そりゃ、確かに驚くわな……」
「んで、そのままビビって腰抜かしたら、その人いきなり大慌てしだしてさ、「あれっ!?勘違いでしたか?ごめんなさい」って言って、普通の顔になったんだよ。そうなったら、普通のサラリーマンのおじさんにしか見えなかったよ」
「顔を作ったんだな」
 彼等は自分の顔をのっぺりした状態から普通の顔に変化させる事が出来る。そして、普段は普通の顔をして人間の中に溶け込んで生活してるわけだ。
 驚かれるのは、何かの拍子に顔が元に戻っちまった運の悪い事故でしかない。
 現在では、それで彼等が迫害されないようGS協会も『のっぺらぼうは人と共存出来る存在』と積極的に情報公開してるから、昔のような騒ぎは大分少なくなってる。
 でも、珍しいことには変わりないから、昨日のこいつみたいに驚く人間が居るのも仕方のない話なんだろう。
 でも、今はそれ以上に気になる事が一つ……
「それで……お前を「仲間」って言ったの?その……のっぺらぼうの山下さんは?」
 散々、話が逸れまくってやっと始めの所に戻って来た気がする。
「そうなんだよ!その後も話たんだけど、あの人が言うには「先祖が私達がだったのかも」って……俺には、彼等と似たような気が溢れてるらしい。それで、俺を仲間と勘違いしたって」 
「なるほど……」
「『青春』の邂逅……かしら?」
 始めに結論から言っちまう…………どうでもいい。
 こいつには、それなりの体験だったのかもしれないが、関係ないこっちからしたら「ふ〜ん」で済んじまいそうな……そんな感じ。
「横島……俺、どうしたら良いと思う?」
「どうもしなくて良いだろ?」
「何でだよ!?」
「別に困ること無いだろ?お前、ちゃんと顔あるじゃん」
 地味過ぎて覚え難い顔だけど……
「あの人、こうも言ったんだ「自分達は、人の印象に残り辛いんだ」って……俺、昔から覚え難い顔って言われるんだよ。のっぺらぼうの血が流れてるからなんだろうか?」
「「……………………」」
 そういや、あったな。そんな特徴…………元から顔が無いのが影響してるんだか、顔を作っても彼等は人に中々覚えて貰えなんだ。
 そして、その特徴は目の前の男にも当て嵌まる。
 ステルスの奴は影こそ薄いが、顔自体は(暑苦しいから)皆覚えてる。
 でも、こいつの場合居れば気付くけど、居なくなれば綺麗に忘れちまう。その地味な顔の所為で……
「なあ……俺は、本当にどうしたらいいと思う?」
「…………解るかよ」
 そもそも、俺に何を期待してたんだ?
 一応、オカルトの枠組みに入る話だったけど、何か違う気がする。
「何か、無いのか?呪いを解くみたい感じで」
「子孫と呪いは違くね……?」
「本当に何も無いのか?」
「俺じゃ、無理だ。愛子、何かないか?」
「いや、私に聞かれても……」
 そりゃ、そうだよな………
「空振りかよ……」
「悪いな。ピートかス…タイガーに相談してみろよ」
「お前が来る前に、2人にも相談したんだよ」
「相談したんだ………で、駄目だから仕方なく俺の所に来た?」
「そんな感じ」
「……もう、整形しろ」
 この野郎………!
「んな金ねぇよ」
「働いて貯めりゃいいだろ?」
 もぅ、勝手にしやがれ……
「もっと、手っ取り早い解決方法とかねぇかなぁ?」
「じゃあ、マジックで顔に何か描いたらどうだ?」
「はぁ!?何を描くんだよ」
「だから、目と鼻を……」
「また、テキトーなこと……(愛子)」
「あるもん描いてどうすんだよ!!?」
「なら、取り敢えず周りを黒く塗っときゃ、目立つんじゃねぇか?」
「巫山戯んな!俺はパンダじゃねぇんだ!!」
「じゃあ、赤にすりゃもっと目立つぞ。歌舞伎役者みたいだ」
「馬鹿野郎!赤ペンじゃ赤チン塗りたくったようにしかならねぇよ!?」←今どき知ってる人いるかな?
「青にするか?」
「色じゃねぇ!!塗ることから、離れろや!!!」
「だったら、額に『バカ』とでも書いとけよ。それなら皆覚えてくれるぞ!」
「アホかっ!何で『バカ』!?書くなら、せめて『渡辺』だろ!?」
「今、書いてやろうか?」
「止めろ!ボケッ!!」
「いつまで、ボケ続けるのよ……?」
 確かに……流石に面倒くさくなってきたな。
「もう、山下さんに相談しろ。もう一回、その道通りゃ会えんじゃねぇの?」
 ちなみに後日良く調べてみたら、ただの勘違いだったらしい。
 こいつ、本当何なんだよ……?