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第93話 合戦準備

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 リリスの予想通り、異星生物の主力艦隊は第一随伴艦隊の正面に現れた。さらに,小惑星の裏に隠れていた艦隊は後ろに回り込み、敵の二つの艦隊は第一随伴艦隊を包囲しつつあった。

「敵の艦隊は我々に相対速度を合わせつつあります」と通信科のエリカ。

「正面の敵との距離は?」と恵子。

「一万三千キロメートル」とエリカ。

「まだ遠いな」とリリス。

「敵が荷電粒子砲を撃ってきたようです」とエリカ。

「この距離では当たるはずがない」とリリス。「百メートル先から針の穴を射抜くより難しい」


「比叡の山口中佐よりリリス様宛に入電です」とエリカ。

「つなげ」とリリス。

 正面モニターに山口中佐の上半身が映し出された。

「何の用だ」とリリス。

「敵が撃ってきました」と吾郎。

「どうせ当たらんし、直撃コースだとしても艦を取りまく磁場で軌道が曲げられる。気にするな」とリリス。

「撃ち返さないのですか?」と吾郎。

「当たらんと言っとるだろう」とリリス。「敵も味方もビームの有効射程距離はせいぜい百キロメートルだ。砲術の教科書に書いてなかったか? それに防御用の磁場が邪魔で、こちらからも荷電粒子砲を打つことはできん」

「わかりました」と吾郎。

「敵は我々と相対速度を合わせながら接近してくるはずだ。敵との接触まで、あと二時間はある。飯でも食っておけ」とリリス。「それから、いじめっ子が気になるからと言って、いちいち電話をかけてくるな。わたしはお前のママじゃないぞ」

「申し訳ありません」
 吾郎は敬礼をして通信を切った。

「小学校の先生になった気分だわ」とリリス。

「彼らはこれが初陣です」と恵子。「大目に見てあげてもいいのではないでしょうか」

「私は子供が嫌いなのよ」とリリス。


 二時間後、敵の艦影が光学望遠鏡に映る距離まで近づいた。

「距離千八百キロメートル」とエリカ。

「照明弾を撃て」とリリス。「敵の前衛を直接確認する」

「早苗、照明弾百発を敵に撃って」と恵子。

「レールガン、一番から十番まで、照明弾を各十発ずつ射撃用意」と砲雷長の岩田早苗中尉。「目標、敵艦隊中央部。距離千八百キロメートル。撃て!」

 約二分後、着弾した照明弾の光が朝風の艦橋から見えた。

「光学望遠鏡の映像をモニターに出せ」とリリス。

「エリカ、映像を出して」と恵子。

「正面の敵はアルファクラスが十隻、ベータクラスが多数か」とリリス。「レーダーの映像からすると、我々の上下左右に敵が展開している」

「完全に包囲されています」と恵子。

「だが、薄い包囲だ。突破は容易だ」とリリス。「だが、主力にしては数が少ないのが気になる」

「そろそろ準備をしてもよろしいでしょうか?」と恵子。


「後続の艦長どもを呼び出せ」とリリス。

 正面のモニターに五人の艦長が映し出された。

「これからおよそ三十分後に敵と接触する」とリリス。「おそらく敵は大群で我々を囲い込んで体当たり攻撃を仕掛けてくる。でかい敵も小さい敵も関係ない。百キロメートル圏内に入った敵を核砲弾で片っ端から撃ち落とせ。三十キロメートル圏内に入った敵はパルスレーザー砲で狙い撃ちにしろ。質問はあるか?」

 リリスは少し間をおいて、艦長たちの反応を見た。

「合戦準備」
 リリスは指揮下の艦長たちに伝えた。
「密集隊形のまま、敵の中央を突破する」

「第一種戦闘配置を発令する」と恵子。

「第一種戦闘配置発令、繰り返す、第一種戦闘配置発令」
 エリカが放送して警報を鳴らした。



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 リリスの予想通り、異星生物の主力艦隊は第一随伴艦隊の正面に現れた。さらに,小惑星の裏に隠れていた艦隊は後ろに回り込み、敵の二つの艦隊は第一随伴艦隊を包囲しつつあった。
「敵の艦隊は我々に相対速度を合わせつつあります」と通信科のエリカ。
「正面の敵との距離は?」と恵子。
「一万三千キロメートル」とエリカ。
「まだ遠いな」とリリス。
「敵が荷電粒子砲を撃ってきたようです」とエリカ。
「この距離では当たるはずがない」とリリス。「百メートル先から針の穴を射抜くより難しい」
「比叡の山口中佐よりリリス様宛に入電です」とエリカ。
「つなげ」とリリス。
 正面モニターに山口中佐の上半身が映し出された。
「何の用だ」とリリス。
「敵が撃ってきました」と吾郎。
「どうせ当たらんし、直撃コースだとしても艦を取りまく磁場で軌道が曲げられる。気にするな」とリリス。
「撃ち返さないのですか?」と吾郎。
「当たらんと言っとるだろう」とリリス。「敵も味方もビームの有効射程距離はせいぜい百キロメートルだ。砲術の教科書に書いてなかったか? それに防御用の磁場が邪魔で、こちらからも荷電粒子砲を打つことはできん」
「わかりました」と吾郎。
「敵は我々と相対速度を合わせながら接近してくるはずだ。敵との接触まで、あと二時間はある。飯でも食っておけ」とリリス。「それから、いじめっ子が気になるからと言って、いちいち電話をかけてくるな。わたしはお前のママじゃないぞ」
「申し訳ありません」
 吾郎は敬礼をして通信を切った。
「小学校の先生になった気分だわ」とリリス。
「彼らはこれが初陣です」と恵子。「大目に見てあげてもいいのではないでしょうか」
「私は子供が嫌いなのよ」とリリス。
 二時間後、敵の艦影が光学望遠鏡に映る距離まで近づいた。
「距離千八百キロメートル」とエリカ。
「照明弾を撃て」とリリス。「敵の前衛を直接確認する」
「早苗、照明弾百発を敵に撃って」と恵子。
「レールガン、一番から十番まで、照明弾を各十発ずつ射撃用意」と砲雷長の岩田早苗中尉。「目標、敵艦隊中央部。距離千八百キロメートル。撃て!」
 約二分後、着弾した照明弾の光が朝風の艦橋から見えた。
「光学望遠鏡の映像をモニターに出せ」とリリス。
「エリカ、映像を出して」と恵子。
「正面の敵はアルファクラスが十隻、ベータクラスが多数か」とリリス。「レーダーの映像からすると、我々の上下左右に敵が展開している」
「完全に包囲されています」と恵子。
「だが、薄い包囲だ。突破は容易だ」とリリス。「だが、主力にしては数が少ないのが気になる」
「そろそろ準備をしてもよろしいでしょうか?」と恵子。
「後続の艦長どもを呼び出せ」とリリス。
 正面のモニターに五人の艦長が映し出された。
「これからおよそ三十分後に敵と接触する」とリリス。「おそらく敵は大群で我々を囲い込んで体当たり攻撃を仕掛けてくる。でかい敵も小さい敵も関係ない。百キロメートル圏内に入った敵を核砲弾で片っ端から撃ち落とせ。三十キロメートル圏内に入った敵はパルスレーザー砲で狙い撃ちにしろ。質問はあるか?」
 リリスは少し間をおいて、艦長たちの反応を見た。
「合戦準備」
 リリスは指揮下の艦長たちに伝えた。
「密集隊形のまま、敵の中央を突破する」
「第一種戦闘配置を発令する」と恵子。
「第一種戦闘配置発令、繰り返す、第一種戦闘配置発令」
 エリカが放送して警報を鳴らした。