%(パーセンテージ)の食卓
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充電器を 抜く手首には 八十二
減りゆく数字が今日の取り分
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朝、スマホの充電器を抜くのと同じ動作で、左手首の「ライフ・インジケーター」を確認する。
「82%」
昨夜は深く眠れたせいか、昨日より0.1ポイントの減少で済んでいる。
この世界では、人の寿命は「電池残量」として可視化されている。
かつてのように「あと何年」という不確かな単位ではなく、細胞の摩耗度から算出される絶対的なパーセンテージ。それが1%を切ると、人は例外なく「シャットダウン」を迎える。
「あんたまた夜更かししたでしょ。ほら、減りが早くなってるわよ」
母さんがトーストを齧りながら、僕の手首を指差した。母さんのインジケーターは45%。折り返し地点を過ぎた彼女の数字は、僕のものより少しだけ色が濃く、重みがあるように見えた。
「読書してただけだよ。面白いSFを見つけてさ」
「趣味にリソースを割くのはいいけど、急速充電(睡眠)をおろそかにしちゃダメよ。一度減った最大容量は戻らないんだから」
母さんの言うことはもっともだ。この「寿命電池」は、モバイルバッテリーのように継ぎ足し充電ができない。良質な食事と睡眠で「減りを遅くする」ことしかできないのだ。
駅までの道、すれ違う人々の手首にはそれぞれの数字が浮かんでいる。
98%で無邪気に走る子供。
12%で穏やかに公園のベンチに座る老人。
かつては「死」は突然訪れる恐怖だったというが、今は違う。数字が減れば、それに見合った生き方にシフトするだけだ。
僕はふと、自分の「82%」を見つめた。
もし、この数字が隠されていたら、僕はもっとがむしゃらに、あるいはもっと怯えて生きていただろうか。
「……さて、今日はこの1%分、何をしようかな」
僕はスマホをポケットにしまい、少しだけ歩幅を広げた。
この数字は、終わりへのカウントダウンじゃない。今日という一日を、どれだけ贅沢に「消費」するかを決めるための、自由の指標なのだ。
春の陽光を浴びた植物たちが、数字を持たない命を精一杯に輝かせていた。
** 日記風雑感 **
人間も充電できるものならしたいよね。
本当に……
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