「じゃあ、この前アパートに来た人たちはオカルトGメンって人達で、横島さんに
お手伝いを頼みに来たんですね」
「ああ……と言っても、さっき言ったように大した事はしてないんだけどね。危険な事は全てプロの人達がやってくれたよ」
冬の澄みきった朝、息を吐くと白く霧が立ち昇る。ザンスの一件は3日前に終わったばかりだが、昨日で冬休みは終わり、今日から学校だ。
※西条が横島達に精霊石を渡すのは、ここから数日後です
その学校へ続く道を、俺は自分の部屋に住む女の子と歩いてる。そして、もっと言えば誤魔化してる。
気立ての良いこの娘に嘘をつくのは、気が引けたが仕方ない。「テロの重要参考人(ほぼ容疑者)にされて、本物と議事堂でやり合いました」なんて、普通に考えて喋れない(勿論、口止めもされてる)。
まぁ、言った所で頭のおかしい奴と思われるのがオチだがな……
「でも、小鳩ちゃん。大した事はしてないけど、この事はGメンの人達から喋らないように言われてるんだ。事が事だからね。君は、喋ったりしない娘だとは思うけど……この事は内緒にしといてね」
「ふふっ……解っています」
解っています……か。
ペラペラ喋ったりする娘じゃないから、別に心配はしてないけど………何で嬉しそうなんだ?
何となくそんな事を思いながら、歩き慣れた道を歩く。
その先にあるのは、普段から面倒くせぇとしか思っていなかった、あの窮屈な狭い空間。それでも、少し行かなかっただけで懐かしく感じるんだから不思議だ。
「じゃあ、またね」
「はい!」
妙な感慨を抱きながら校舎まで来ると、俺は教室へ上がる為一緒に登校してきた小鳩ちゃんに別れを告げる。
あの娘は、別れ際も何か嬉しそうだった。
◇◇◇
「おはよう……」
教室に入った俺が、いつも通り気怠そうな挨拶をすると。慣れ親しんだ連中が口々に返してくる。
「明けましておめでとうございます」
「おめでとうございますジャー」
「おめでとう。横島君」
ピート、ステルス、愛子……連中の顔を見ると、一気に日常に戻って来た感覚が蘇る………蘇りはするが……
「年が明けたくらいで、おめでたいか?」
身も蓋もねぇとは思うが、自然と口から出て来ちまう……
一生懸命生きてようが、ダラダラ生きてようが時間が過ぎれば勝手に年は過ぎて来んだ。習慣で言ってるのかもしれないが、いちいち律儀に「おめでとう」なんて正直言って面倒くさい。
「新年一発目から、それですか……」
「デリカシー無いんジャー………」
「……やっぱり、横島君ね」
「悪かったな……」
………ただ、予想通り俺の考えは連中に全く理解されず、見事に総スカンされる。これも、日常……
そして、そんな空気を綺麗に切り替える(と言うより、端から何も無かったかのように……)愛子が口を開く。
「それは、そうと……横島君も知ってるでしょ?ザンスの話」
「あんだけTVでやってりゃあな………」
…………正確に言えば、やられてたんだが……
「西条さん、大活躍だったみたいですね。メディアは、タレント並みに扱ってますよ」
「羨ましいんジャー……!!」
「タイガー君、本音が二重に聴こえて来るんだけど………でも、その気持ちも解るわ。あの人、格好良いし……ああ、『青春』だわ♪」
あいつが格好良い事の何処が青春なんだか、皆目見当も付かねぇが……まぁ、いい。
俺は、黙っていた。
絶対、話題にはなってるとは思ってたけど、この話題には余り触れたくない。
そう思ってると、今度はピートが口を開く。
「そう言えば、横島さんも雪之丞も仕事だったんですか?」
「ん………!?」
思わず、「違う。事務所でゴロゴロしてた」と答えそうになる所をギリギリで飲み込む。
「……電話したか?」
「ええ。部屋にも、事務所にも繋がらなかったんですよ。何処かへ行っていたんですか?」
危なかった……もし、あのまま答えてたら速攻で嘘がバレたろう。
「ああ……2人で栃木の山奥に居たよ」
「仕事ですか?」
「そうだけど、何か用があったのか?」
「皆で初詣に行くことになったんで、声を掛けようと思ったんですよ」
初詣………?
俺達が西条に連行されたのが1月3日の夕方で、それ以降に誘われたって事だよな?遅くないか?いや……
「そうか……年末からの仕事に一区切り着いたのか?」
先生の場合だと、正月はダラダラして仕事どころか外にすら一歩も出なかったが、本来GSに年末休みなんか無い。年の移り変わるその瀬戸際は霊障も活発になるから、逆に稼ぎ時と言えるだろう。
年末年始は、俺達も似たような事してたから。失念してた。
……………………まぁ、あの人は仕事があってもやらないだけで、俺達にはそもそも仕事すら無かったんだが……
「ええ。タイガーともそんなことを話してて、なら皆を誘おうって話になったんですよ」
「そりゃ、タイミングが悪かったな……」
「本当よ。横島君も『青春』の一部に成れたのに」
愛子はんな事言っちゃいるが、タイミングとしては寧ろ良かったかもな………もし、(電話を)受けた後に西条が来てたら、それこそ大騒ぎになってた可能性がある。
「ええ♪始めは私達だけの積りだったけど、流れで色んな人に声を掛けたら、クラスの人達が沢山集まって皆でワイワイガヤガヤ♪あぁ……『青春』だったわ♪♪」
「楽しそうだな……」
「しっかし、横島さんも雪之丞さんも仕事熱心ですのぉ〜、ワッシ等が休みに入っても仕事してるなんて」
「いや……年末年始だらけ捲って、流石に勘が鈍りそうだったから無理やり仕事を入れたんだよ」
…………西条が来なかったら、最後までダラダラしてた気がする。勿論、鍛錬はしてるが、鍛錬以外は絶対そんな感じだ。
もし、西条が来なくて、ピートの電話受けたら俺達初詣に行ったんだろうか……?あのテンションじゃ、面倒くさがってパスした気さえする。
年が開けて、 “おめでたい” とは思わなくても、ダラダラはしたくなる。いや、ダラダラしたくなってるから、そう思わないのか?
糞どうでもいい………