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第91話 随伴艦隊の索敵

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 特別攻撃艦翆鶴(すいかく)に続いて、第一随伴艦隊は防空隊攻撃艦の朝風を先頭に、海軍巡洋艦の比叡、春日、ベルン、ボーズ、高雄が縦列で進みゲートをくぐった。

「敵の残骸に気をつけて進んで」と艦長の佐藤恵子大尉。

「わかってる」と航海長の山本綾子中尉。

「この宙域は放射線の強度が高い。速度を上げて早く通り抜けよ」と艦隊司令のリリス大佐。

「了解しました」と恵子。「速度上げろ」

「第一戦速!」と機関長の栗原舞大尉。


「後続にも速度を上げさせろ」とリリス。

「エリカ、『増速せよ、我に続け』と後続に伝達して」と恵子。

「了解しました」と通信科の白石エリカ中尉。


 前方にいた翆鶴は光学迷彩を船体に施して、後方の随伴艦隊の視界から消えた。一旦ゲートの裏側にまわりこむルートをとる予定である。

「行ったわね」と艦隊司令の一条リリス大佐はつぶやいて立ち上がり、翆鶴がいた方向に敬礼をした。

 他の艦橋の船員たちもリリスに倣って敬礼をした。


 敵の残骸は予想以上に多く、周囲一万キロメートル以上にわたって焼け焦げた残骸が浮遊していた。残骸をよけて見通しの良い宙域に出るまでに半日以上かかってしまった。

 ゲートから敵母星までの距離は、およそ一千万キロメートルあった。いくら加速しても四日はかかる距離だった。できるだけ接近して敵を牽制しなくてはならない。

「敵の母星に向けて加速しろ」と指令のリリス。

「進路を敵母星に向けて艦を加速して」と艦長の恵子。

「敵母星との合流ポイントに進路取ります」と航海長の綾子。

「増速! 第二戦速」と機関長の舞。

 加速により艦が揺れ、後ろ向きの慣性力が発生した。

「後続はどうだ?」とリリス。

「少し遅れているようです」と通信科のエリカ。

「またか」とリリス。「ついてこさせろ」とリリス。

「『我に続け』と後続に伝達して」と恵子。

「了解しました」とエリカ。

「敵がいませんね」と司令部付きの参謀に転属した川本サキ中尉。

「敵の偵察隊がいるはずだ」とリリス。「無人機を出して索敵しろ」

「航空隊指揮所、無人機で索敵して」と恵子。

「了解」
 航空隊指揮所の佐々木孝子大尉から無線で返事があった。


 半日探しても敵は現れなかった。

「敵はどこにいる?」とリリスが独り言をつぶやいた。「なぜ出てこない?」

「我々の核兵器を警戒しているのでしょうか」とサキ。

「かもしれん」とリリス。「だが逃げても意味がない。何かの作戦だろう」


「すべての重力エンジンを稼働してさらに加速する。進路も修正しろ」とリリス。「後続の連中にも加速させろ」

「巡洋艦比叡の艦長から入電です」とエリカ。

「正面のモニターに出せ」とリリス。

 比叡の艦長、山口吾郎中佐の映像が映し出された。吾郎がリリスの姿を見て、敬礼した。

「何の用だ」とリリス。

「意見具申であります」と吾郎。

「早く言え」とリリス。

「すでに丸一日以上前進しております。さらに加速しては、ゲートから離れすぎてしまうのではないでしょうか?」と吾郎。

「敵と遭遇するまで前進する」とリリス。「距離など関係ない」

「この宙域ではレーダーにも光学センサーにも敵の反応がありません」と吾郎。

「敵は敵の母星にいるはずだ」とリリス。

「母星まで行くのでありますか?」
 吾郎は驚いた声を上げた。

「仕方ないだろう」とリリス。

「敵の罠ではないでしょうか」と吾郎。

「おそらくな」とリリス。

「危険であります」と吾郎。

「ついてきたくないなら帰れ」とリリス。「お前たちはただの荷物だ」

 吾郎は言葉に詰まった。

「我々の任務は陽動だ」とリリス。「敵を引き付けられるのであれば、罠でも構わん」

「敵の動きを確認するのが先ではないでしょうか」と吾郎。

「そんな暇はない」とリリス。「涙の魔術師様の白鷺(はくろ)翠鶴(すいかく)は現在加速中なのだ。敵に攻撃させるわけにはいかん」

「しかし……」と吾郎。

「貴官は特別攻撃作戦の意味を知らんのか?」とリリス。「もう一度言う。命が惜しいのなら、ここで引き返してゲートへ帰れ」

 リリスは通信を切った。



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 特別攻撃艦|翆鶴《すいかく》に続いて、第一随伴艦隊は防空隊攻撃艦の朝風を先頭に、海軍巡洋艦の比叡、春日、ベルン、ボーズ、高雄が縦列で進みゲートをくぐった。
「敵の残骸に気をつけて進んで」と艦長の佐藤恵子大尉。
「わかってる」と航海長の山本綾子中尉。
「この宙域は放射線の強度が高い。速度を上げて早く通り抜けよ」と艦隊司令のリリス大佐。
「了解しました」と恵子。「速度上げろ」
「第一戦速!」と機関長の栗原舞大尉。
「後続にも速度を上げさせろ」とリリス。
「エリカ、『増速せよ、我に続け』と後続に伝達して」と恵子。
「了解しました」と通信科の白石エリカ中尉。
 前方にいた翆鶴は光学迷彩を船体に施して、後方の随伴艦隊の視界から消えた。一旦ゲートの裏側にまわりこむルートをとる予定である。
「行ったわね」と艦隊司令の一条リリス大佐はつぶやいて立ち上がり、翆鶴がいた方向に敬礼をした。
 他の艦橋の船員たちもリリスに倣って敬礼をした。
 敵の残骸は予想以上に多く、周囲一万キロメートル以上にわたって焼け焦げた残骸が浮遊していた。残骸をよけて見通しの良い宙域に出るまでに半日以上かかってしまった。
 ゲートから敵母星までの距離は、およそ一千万キロメートルあった。いくら加速しても四日はかかる距離だった。できるだけ接近して敵を牽制しなくてはならない。
「敵の母星に向けて加速しろ」と指令のリリス。
「進路を敵母星に向けて艦を加速して」と艦長の恵子。
「敵母星との合流ポイントに進路取ります」と航海長の綾子。
「増速! 第二戦速」と機関長の舞。
 加速により艦が揺れ、後ろ向きの慣性力が発生した。
「後続はどうだ?」とリリス。
「少し遅れているようです」と通信科のエリカ。
「またか」とリリス。「ついてこさせろ」とリリス。
「『我に続け』と後続に伝達して」と恵子。
「了解しました」とエリカ。
「敵がいませんね」と司令部付きの参謀に転属した川本サキ中尉。
「敵の偵察隊がいるはずだ」とリリス。「無人機を出して索敵しろ」
「航空隊指揮所、無人機で索敵して」と恵子。
「了解」
 航空隊指揮所の佐々木孝子大尉から無線で返事があった。
 半日探しても敵は現れなかった。
「敵はどこにいる?」とリリスが独り言をつぶやいた。「なぜ出てこない?」
「我々の核兵器を警戒しているのでしょうか」とサキ。
「かもしれん」とリリス。「だが逃げても意味がない。何かの作戦だろう」
「すべての重力エンジンを稼働してさらに加速する。進路も修正しろ」とリリス。「後続の連中にも加速させろ」
「巡洋艦比叡の艦長から入電です」とエリカ。
「正面のモニターに出せ」とリリス。
 比叡の艦長、山口吾郎中佐の映像が映し出された。吾郎がリリスの姿を見て、敬礼した。
「何の用だ」とリリス。
「意見具申であります」と吾郎。
「早く言え」とリリス。
「すでに丸一日以上前進しております。さらに加速しては、ゲートから離れすぎてしまうのではないでしょうか?」と吾郎。
「敵と遭遇するまで前進する」とリリス。「距離など関係ない」
「この宙域ではレーダーにも光学センサーにも敵の反応がありません」と吾郎。
「敵は敵の母星にいるはずだ」とリリス。
「母星まで行くのでありますか?」
 吾郎は驚いた声を上げた。
「仕方ないだろう」とリリス。
「敵の罠ではないでしょうか」と吾郎。
「おそらくな」とリリス。
「危険であります」と吾郎。
「ついてきたくないなら帰れ」とリリス。「お前たちはただの荷物だ」
 吾郎は言葉に詰まった。
「我々の任務は陽動だ」とリリス。「敵を引き付けられるのであれば、罠でも構わん」
「敵の動きを確認するのが先ではないでしょうか」と吾郎。
「そんな暇はない」とリリス。「涙の魔術師様の|白鷺《はくろ》と|翠鶴《すいかく》は現在加速中なのだ。敵に攻撃させるわけにはいかん」
「しかし……」と吾郎。
「貴官は特別攻撃作戦の意味を知らんのか?」とリリス。「もう一度言う。命が惜しいのなら、ここで引き返してゲートへ帰れ」
 リリスは通信を切った。