激突・二(ザンス編)
ー/ー
俺は、通路を走りながら西条に訴える。
「奴がそっちに向かっています!国王を安全な場所まで避難させて下さい!!」
事前の打ち合わせだと、この秘密避難通路は走れば数分で抜けられるらしい。もう既に奴は入り込んでるかもしれない。
“了解した。直ぐに避__”
…………………………なんだ?途切れた!?
奴の仕業か……!?
そう頭に浮かぶと同時に西条の切羽詰まった声が文珠から響く。
“やられた………!”
やられた……?そうか!
「違う!今入って来た奴がテロリストです!!」
“解ってる!”
……爺さんの読み通り首相に化けたか。
多分、俺達が居なかったら本物を拘束した後に変装して、自然に国王に近づく積りだったんだろう。だが、計画が崩れたことで本物の拘束に失敗しちまった。
だから、敢えて本物のいる所に変装して現れて場を混乱させる気だ。
「部長殿、気を付けて下さい!奴は、精霊獣を2体同時に…………部長殿!?」
返事がない……いくら、文珠に意識を集中してもそこから声が響いて来る事は無かった。
不味いな………想像以上に現場は混乱してるらしい。
文珠による念話は、音声じゃなく霊波によって直接相手の脳内へ届く。
だから、例え周りが騒音に溢れていても基本的に通話が可能なんだが、それはあくまで会話に集中していた場合だ。
つまり、西条達は集中すら出来ない状況に追い込まれてる……
そう考えてる間に、雪之丞が先に通路の突き当りに着いた。人が屈みながら入れるの程度の扉がそこにある。
確か、この先が首相のプライベートルームに繋がってる筈……
雪之丞は、やや余裕を持って……俺は少し窮屈になりながらドアを潜る。
「ヤベェぞ、現場は大混乱だ」
「やってくれるぜ……!あんの野郎、この “借り” は高く着くぞ!!」
迎賓館とはまた違った豪勢な部屋で追い付きざまに現状を伝えると、目を血走らせながら吐き捨てる。
どうやら、さっき出し抜かれたことが相当頭に来てるようだ……
「鴉……!」
重厚な扉を乱暴に開いて、議事堂に向かって走りだした雪之丞が呟く。
語調は静かだが、声色には強烈な怒りを感じる……奴の中は憤怒のエネルギーが暴発寸前って所か?
「あん?」
「俺が合図したら、 “アレ” を頼む……」
「………………」
………………こりゃ、止めても無理だな。変にブレーキ掛けるより、寧ろ後押しした方が得策か……
「…………しくじるなよ」
そんな、やりとり交わして10秒もしない内に議事堂のドアに着いた。奴が開いた後で半開きのままになっていて、そこから罵声やら悲鳴が木霊してる。
ドヴァキッ!!
その扉を雪之丞が、勢いよく蹴破る!文字通り蹴破った!!
魔装術と奴の怒りのエネルギーを諸に受けた重厚な扉は、蝶番を外れて上下真っ二つに折れて、空中を派手にぶっ跳ぶ!
そこに見えたのは国王と西条達、そしてテロリストが精霊獣でやり合ってる光景だった。
テロリストの顔は、首相の物に変わってる。恐らくだが、乱入して場を騒然とさせたドサクサで精霊獣の乱戦に持ち込んだんだろう。
他の政治家達は避難を開始していて、SPや警備員達は国王達を遠巻きに見守るしか出来ないでいる。
術者を撃っちまえば精霊獣を無力化出来るんだが、国王達に当たる可能性があって撃てねぇんだろう。それは、西条を始めとしたオカルトGメン達も同様だった。
そして、肝心の国王達…………2対1の図式だが、精霊獣の数は同じ。
…………そう、2対1……国王の他にザンス人を思わせる褐色の肌と長い黒髪が特徴的な若い女が1人居て、そいつも女を騎士を思わせるような精霊獣(蛇の精霊獣を相手にしている)を操っていた。
護衛は全滅してるって報道だったが、誤報だったのか?いや、そんな事より………
1体より、2体操る方が当然負担はデカいはず……にも関わらず、奴は全く引けを取ってない…………いや、押してる。
国王は互角にやり合えてるが、女の方は防戦一方だ。
ありゃ、長くは保たねぇ…………援護してやりてぇが、SP達が躊躇してるのと同様巻き込む可能性があって、それも出来ねぇ……
ここまで来て見てることしか出来ないことに歯痒さを覚えるが、この時は何も打開策が思い浮かばなった。
ただ、そんなもどかしさを抱いたところで何も変わらない。時間が経つ毎に、事態は目に見えて悪化していく………
ギリギリの一歩手前で何とか踏み止まっていた、女の精霊獣だが、遂にガードをこじ開けられて蛇に胸を貫かれちまった!
精霊獣は、精霊石のエネルギーをガソリンのように使用することで動かせる。
体が多少損傷してもエネルギーさえ補充出来れば復元出来るそうだが、著しい損傷を受けた場合はその限りじゃない。
…………今のように。
「精霊石ガッ!!」
胸を貫かれたと同時に女の指輪の精霊石は砕け散り、精霊獣もそのまま霧散していく。
…………思えば、この時のテロリストは本当に狡猾だった。
精霊獣を失った時点で、女は完全に無力化……そのまま放置して、国王に自分の精霊獣を向かわせるのが普通に思えた。
だが、奴はそうしなかった。護る手段を失った女に攻撃を続行した。
「キャラット!!」
国王に娘を護らせる為に…………後で知った事だが、彼女は国王の娘……王女だったんだ。
咄嗟に精霊獣を操る国王だったが、この時点で国王の精霊獣は奴の精霊獣に組み付かれてた。
…………だとしたら、娘を護る手段なんて一つしかない。
彼は、この国に来るのに並々ならぬ覚悟を持って来たはずだ。例え、大勢を敵に回そうとも国の為に大事を成さなくてはならない。
その為には、周りの者を危険にさらしても自分は必ず生き残らなくちゃならない。
ただ、それでもいざとなれば肉親を想う情が勝る……
自分の使命を理解しつつも、娘を思う親なら “そうせざる” お得ない……
テロリストは、その “想い” を “利用” した…………
「父上!!」
国王は、迷うこと無くキャラットの前に体を滑り込ませた!
そこに容赦なく振り下ろされる蛇の拳!
糞!こんな事になるなら連絡用だけじゃなくて、もっと文珠を渡しときゃ良かった……だが、後悔したところでどうにもならない。今から投げても間に合わねぇ…………
畜生、人間じゃ精霊獣の一撃を防ぎ切れない。2人一緒に叩き潰される!
…………この時は、本当にそう思った。
ズシャッ!!
終わったと思った瞬間、そんな音と共にたたっ斬られる精霊獣の右手……
キャラットと精霊獣に割って入ったのは、国王だけじゃなかった。
「あんの野郎、いつの間に…………!?」
いつの間にか形態変化して、魔装戦斧を構える雪之丞がそこに居た……
全く気づかなかった…………あいつ、どのタイミングで行ったんだ?
「糞ッ……マタ、オ前カ…………!!」
「……お前、本当に苛つくなっ……!!!」
1度ならず、2度も邪魔をされたことに再び怒りを深めるテロリスト…………すげぇな、怒りの霊圧がここまで伝わって来やがる。
ただ、雪之丞も負けてない。敵が沈み込むような深い怒りとするなら、あいつのはどこまでも燃え上がる激しい炎のような怒りか?
「イイ加減ニシロ!!コレハ我等ノ神聖ナ闘イダ、関係ナイ奴ガ邪魔ヲスルナ!!」
「神聖……?知らねぇよ!!戦争でも、何でも勝手にやれやっ!」
周りが固唾を飲んで見守る中、雪之丞は奴を睨んで更に吼える!
「…………だがなぁ、無関係な人間を平然と巻き込む……テメェの “下劣さ” だけは、どう考えても我慢出来ねぇんだ!!
へぇ………格好いい……格好いいじゃねぇか。

「腐ったテメェの根性、たたっ斬る!!」
そう言って、奴に戦斧を向ける雪之丞。
その “無関係の人間” ってのが実は自分のことで、殺しの濡衣を着せられたことに只管ブチ切れてるように見えるのは多分、俺の脳と耳が腐ってるからなんだよな?雪之丞……
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“了解した。直ぐに避__”
…………………………なんだ?途切れた!?
奴の仕業か……!?
そう頭に浮かぶと同時に西条の切羽詰まった声が文珠から響く。
“やられた………!”
やられた……?そうか!
「違う!今入って来た奴がテロリストです!!」
“解ってる!”
……爺さんの読み通り首相に化けたか。
多分、俺達が居なかったら本物を拘束した後に変装して、自然に国王に近づく積りだったんだろう。だが、計画が崩れたことで本物の拘束に失敗しちまった。
だから、敢えて本物のいる所に変装して現れて場を混乱させる気だ。
「部長殿、気を付けて下さい!奴は、精霊獣を2体同時に…………部長殿!?」
返事がない……いくら、文珠に意識を集中してもそこから声が響いて来る事は無かった。
不味いな………想像以上に現場は混乱してるらしい。
文珠による念話は、音声じゃなく霊波によって直接相手の脳内へ届く。
だから、例え周りが騒音に溢れていても基本的に通話が可能なんだが、それはあくまで会話に集中していた場合だ。
つまり、西条達は集中すら出来ない状況に追い込まれてる……
そう考えてる間に、雪之丞が先に通路の突き当りに着いた。人が屈みながら入れるの程度の扉がそこにある。
確か、この先が首相のプライベートルームに繋がってる筈……
雪之丞は、やや余裕を持って……俺は少し窮屈になりながらドアを潜る。
「ヤベェぞ、現場は大混乱だ」
「やってくれるぜ……!あんの野郎、この “借り” は高く着くぞ!!」
迎賓館とはまた違った豪勢な部屋で追い付きざまに現状を伝えると、目を血走らせながら吐き捨てる。
どうやら、さっき出し抜かれたことが相当頭に来てるようだ……
「鴉……!」
重厚な扉を乱暴に開いて、議事堂に向かって走りだした雪之丞が呟く。
語調は静かだが、声色には強烈な怒りを感じる……奴の中は憤怒のエネルギーが暴発寸前って所か?
「あん?」
「俺が合図したら、 “アレ” を頼む……」
「………………」
………………こりゃ、止めても無理だな。変にブレーキ掛けるより、寧ろ後押しした方が得策か……
「…………しくじるなよ」
そんな、やりとり交わして10秒もしない内に議事堂のドアに着いた。奴が開いた後で半開きのままになっていて、そこから罵声やら悲鳴が木霊してる。
ドヴァキッ!!
その扉を雪之丞が、勢いよく蹴破る!文字通り蹴破った!!
魔装術と奴の怒りのエネルギーを諸に受けた重厚な扉は、蝶番を外れて上下真っ二つに折れて、空中を派手にぶっ跳ぶ!
そこに見えたのは国王と西条達、そしてテロリストが精霊獣でやり合ってる光景だった。
テロリストの顔は、首相の物に変わってる。恐らくだが、乱入して場を騒然とさせたドサクサで精霊獣の乱戦に持ち込んだんだろう。
他の政治家達は避難を開始していて、SPや警備員達は国王達を遠巻きに見守るしか出来ないでいる。
術者を撃っちまえば精霊獣を無力化出来るんだが、国王達に当たる可能性があって撃てねぇんだろう。それは、西条を始めとしたオカルトGメン達も同様だった。
そして、肝心の国王達…………2対1の図式だが、精霊獣の数は同じ。
…………そう、2対1……国王の他にザンス人を思わせる褐色の肌と長い黒髪が特徴的な若い女が1人居て、そいつも女を騎士を思わせるような精霊獣(蛇の精霊獣を相手にしている)を操っていた。
護衛は全滅してるって報道だったが、誤報だったのか?いや、そんな事より………
1体より、2体操る方が当然負担はデカいはず……にも関わらず、奴は全く引けを取ってない…………いや、押してる。
国王は互角にやり合えてるが、女の方は防戦一方だ。
ありゃ、長くは保たねぇ…………援護してやりてぇが、SP達が躊躇してるのと同様巻き込む可能性があって、それも出来ねぇ……
ここまで来て見てることしか出来ないことに歯痒さを覚えるが、この時は何も打開策が思い浮かばなった。
ただ、そんな|もどかしさ《・・・・・》を抱いたところで何も変わらない。時間が経つ毎に、事態は目に見えて悪化していく………
ギリギリの一歩手前で何とか踏み止まっていた、女の精霊獣だが、遂にガードをこじ開けられて蛇に胸を貫かれちまった!
精霊獣は、精霊石のエネルギーをガソリンのように使用することで動かせる。
体が多少損傷してもエネルギーさえ補充出来れば復元出来るそうだが、著しい損傷を受けた場合はその限りじゃない。
…………今のように。
「精霊石ガッ!!」
胸を貫かれたと同時に女の指輪の精霊石は砕け散り、精霊獣もそのまま霧散していく。
…………思えば、この時のテロリストは本当に狡猾だった。
精霊獣を失った時点で、女は完全に無力化……そのまま放置して、国王に自分の精霊獣を向かわせるのが普通に思えた。
だが、奴はそうしなかった。護る手段を失った女に攻撃を続行した。
「キャラット!!」
国王に|娘《・》を護らせる為に…………後で知った事だが、彼女は国王の娘……王女だったんだ。
咄嗟に精霊獣を操る国王だったが、この時点で国王の精霊獣は奴の精霊獣に組み付かれてた。
…………だとしたら、娘を護る手段なんて一つしかない。
彼は、この国に来るのに並々ならぬ覚悟を持って来たはずだ。例え、大勢を敵に回そうとも国の為に大事を成さなくてはならない。
その為には、周りの者を危険にさらしても自分は必ず生き残らなくちゃならない。
ただ、それでもいざとなれば肉親を想う情が勝る……
自分の使命を理解しつつも、娘を思う親なら “そうせざる” お得ない……
テロリストは、その “想い” を “利用” した…………
「父上!!」
国王は、迷うこと無くキャラットの前に体を滑り込ませた!
そこに容赦なく振り下ろされる蛇の拳!
糞!こんな事になるなら連絡用だけじゃなくて、もっと文珠を渡しときゃ良かった……だが、後悔したところでどうにもならない。今から投げても間に合わねぇ…………
畜生、人間じゃ精霊獣の一撃を防ぎ切れない。2人一緒に叩き潰される!
…………この時は、本当にそう思った。
ズシャッ!!
終わったと思った瞬間、そんな音と共にたたっ斬られる精霊獣の右手……
キャラットと精霊獣に割って入ったのは、国王だけじゃなかった。
「あんの野郎、いつの間に…………!?」
いつの間にか形態変化して、魔装戦斧を構える雪之丞がそこに居た……
全く気づかなかった…………あいつ、どのタイミングで行ったんだ?
「糞ッ……マタ、オ前カ…………!!」
「……お前、本当に苛つくなっ……!!!」
1度ならず、2度も邪魔をされたことに再び怒りを深めるテロリスト…………すげぇな、怒りの霊圧がここまで伝わって来やがる。
ただ、雪之丞も負けてない。敵が沈み込むような深い怒りとするなら、あいつのはどこまでも燃え上がる激しい炎のような怒りか?
「イイ加減ニシロ!!コレハ我等ノ神聖ナ闘イダ、関係ナイ奴ガ邪魔ヲスルナ!!」
「神聖……?知らねぇよ!!戦争でも、何でも勝手にやれやっ!」
周りが固唾を飲んで見守る中、雪之丞は奴を睨んで更に吼える!
「…………だがなぁ、無関係な人間を平然と巻き込む……テメェの “下劣さ” だけは、どう考えても我慢出来ねぇんだ!!
へぇ………格好いい……格好いいじゃねぇか。
「腐ったテメェの根性、たたっ斬る!!」
そう言って、奴に戦斧を向ける雪之丞。
その “無関係の人間” ってのが実は自分のことで、殺しの濡衣を着せられたことに只管ブチ切れてるように見えるのは多分、俺の脳と耳が腐ってるからなんだよな?雪之丞……