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激突(ザンス編)

ー/ー




「はっ!関係ねぇ、俺は無神論者だ!神なんか端から信じねぇ!!」


 …………何か熱い台詞っぽいけど、これ以上言うと場が醒めるから気になる人間は、前回の最後を読み直して欲しい。


  

「魔装術!」


 雪之丞は、いつもの掛け声と共に霊気の鎧を展開させる。


「行くぜっ!」

 
 そして、間を置かずそのまま突っ込む!
 
 相手の出方を見るなんて考えは、この男にはない。どんな相手にも突撃して先制攻撃!それがこの男の戦闘スタイルであり、真骨頂だ。


「ソレガ霊気ノ鎧……フンッ」


 魔装術を知ってるか。

 やっぱり俺達を囮にしただけあって、色々調べは付いてるようだな……雪之丞が踏み込むと同時に、男も右手の指輪を掲げる。
 指輪が光ると同時に、頭の両端に角の生えた悪魔のような精霊獣が出現する。

 1回目が獅子、2回目が犀(サイ)と来て今度は悪魔か……これで最後だよな?

 西条の話だと精霊獣を作るには非常に時間や労力、そして金が掛かるから、そんなに数は揃えられないらしい…………いや、決めつけるな。

 
 とにかく、 “手筈通り” に進めば……


「オラよっ!」


 バゴォッ!!


 挨拶代わりにの先制攻撃、上手く相手の懐に潜り込んでからの右ストレートが精霊獣の胸にヒットする……


「硬ぇな……」


 そう呟くとともに、敵の返す手を跳躍して躱す。


 …………今のはかなり綺麗に入ったのに、ダメージは無いようだ。やっぱり、人と精霊獣では出力や耐久性に大きな差があるようだ。


「行ケッ……!」


 攻守交代、今度は奴の精霊獣がその剛腕を繰り出してくる!

 それを雪之丞は、相手のサイドに回り込むような形で回避しなが隙を窺う……
 
 あいつが他の脳筋と違うのは、自分の攻撃が通じないと解った瞬間、すぐに別の手段に切り替えるられる所だ。決して自分の力を過信せず、何も見てないようで、常に相手を観察して最善手を探り出す。

 誰に教わったわけでもない……多分、あいつのセンスなんだと思う…………

 まぁ…俺と初めてやりあった時は、これが災いして攻めきれなかったんだけどな…………雪之丞がただの単細胞だったら、俺は間違いなく死んでた……


「オラオラッ!」
「チッ……!!」
 

 今度は横合いから連撃で精霊獣を突く!

 奴は確かにデカくて強力だが、その分小回りが効かないのか面白いようにヒットする。

 ……ただ、当てることは出来てもダメージには程遠いな。まぁ、さっきの一撃からそれは解りきってたことだが…………

 だが、こっちが仕留められさえしなければ、別に倒せなくてもいい。


「シッ!」


 掛け声と共に俺は、鞭状に伸ばした霊手を振り下ろす。隙を伺っていたのは雪之丞だけじゃない。

 だが、あいつと違って俺の狙いは、精霊獣じゃなく術者の方だ。


「チッ」


 俺の一撃を奴はサイドステップして躱す、けれど俺に注意を向けたことで精霊獣の動きが僅かに鈍った……

 そして、その隙を逃す雪之丞じゃない!


「貰いっ!」


 バゴンッ!!


 今度は精霊獣の顎に、下から跳躍した勢いのまま左アッパーを叩き込む!

 それでも、仕留めるには至らない……ただ、勢いよく突かれたことで、その巨体を背中から汚水の流れる排水路に倒れ込ませた。


 バシャーンッ!


 汚水が跳ね上がり、タダでさえ臭い下水路内に更なる悪臭が充満する……が、それを気にしてる場合じゃない…………


 よし、行ける!

 精霊獣をまともに相手出来なくても、上手く連携して術者を妨害出来れば無力化出来る。

 そして、無力化出来りゃ術者は無防備だ。

 
 俺は振るった霊手を戻すと、奴との距離を詰めるために一気に駆け出す!

 精霊獣が倒れている、今がチャンス…………

 そう思った瞬間、こっちを向いた奴がニヤリと嗤うと雪之丞にやったように右手を掲げた!

 精霊獣をけしかける気か!?

 ………いや、あれは今漸く起き上がろうとしてる。そもそも、俺から距離が遠すぎる。


 そう思った、次の瞬間だった……!!


「なっ!!?」


 奴の精霊石が光りだして、 “2体目” の精霊獣が現れた!!

 近寄ったことで気付いたが、奴は精霊石を右手に “2個” 嵌めてやがった……!

 これも西条から聞いたことだが、精霊獣は制御が難しく、霊気の消費も激しいから基本1人1体が普通。現に1回目、2回目の襲撃では1体しか使って来なかった…………けど、現実に奴は今が2体制御してる。

 畜生!さっき、決めつけるなって自分に言ったばからなのに…………!!
 

 ただ、そんなことでイチイチ落ち込んでる場合じゃねぇ、俺はさっき踏み出したことで、新たな精霊獣に突っ込んでる形になっちまってる。

 そして、その……今度は蛇の獣人かよ…………そいつが俺に拳を振り上げてる所だった。

 このまま行けゃ、間違いなく拳が刺さって……いや、叩き潰されて死ぬ。

 かと言って、止まれねぇ!既に勢いがつき過ぎてるし、よしんば止まれても結果は同じだ。


 …………なら、一か八か……


「ふっ!」


 踏み込む足に更に力を込める。加えて、両手を突き出して前に飛ぶ!!

 形としては野球のヘッドスライディングに酷似してるな。

 そして、勢いのまま飛んだと同時に右足のブーツの踵に精霊獣の一撃が掠った……当に間一髪。

 そのまま前転して、振り向く!精霊獣の攻撃に備える為だ……


「何……!?」


 だが、予想に反して追撃は来なかった…………俺の方には……


「逃げろ、雪之丞!!」


 新たに呼び出した蛇の精霊獣は、俺には目もくれず暗殺者を小脇に抱えると、立ち上がった方と一緒に雪之丞に向かって突進して行った!
 

「糞がっ!」


 2体一遍に来られたら、流石に雪之丞でもヤバい……幸いにもあいつは壁際に居たが、横には開けた場所だったんで奴等から真横に逸れて突進を避ける。


 ボゴォーーーン!!


 数秒前に雪之丞が居た場所から弾ける凄まじい轟音!

 精霊獣2体同時の突進で、コンクリートの壁に大穴が空いちまった……


「大丈夫か!?」
「ああ、問題ねぇ……」


 目線を砂埃舞い上がる穴の方に向けて、警戒しながら声を掛けると奴も同じ方向に視線を向けながら答える。

 取り敢えず、無事な事に安心するが気の抜ける状況じゃねぇ。

 そうして、2人して穴からの攻撃に備える…………







 


 ………………………………………………攻撃が来ない……?

 


「糞っ!!」
「しまった!!」


 数秒間の沈黙の後、2人して歯噛みする。

 くっそ!奴が俺を無視した段階で気付くべきだった!!

 奴は、端から俺達なんか相手にしてねぇ。議事堂に潜入して、国王を襲撃する気だ。

 雪之丞が居たのは、ちょうど議事堂に続くドアの前。

 穴を空けた直後に精霊獣を引っ込めて、そのまま中に入ったんだ!


「駄目だ、瓦礫が邪魔だ!」
  

 雪之丞が苛立ち紛れに吐き捨てる!

 急いで追おうとする俺達だが、穴が空いた時に落ちてきた瓦礫がちょうど通路を塞いじまった……


「仕方ねぇ、ブッ飛ばす!」
「止せっ!これ以上崩したら下敷きになる」


 霊波砲を撃とうとする雪之丞を慌てて止める。

 この下水道はかなり大型で天井まで4mほどある。精霊獣が余裕で動けるくらいだ。それくらい、だだっ広い空間ではあるんだが変に衝撃を与えて崩落なんかしかたら、それこそジ・エンドだぞ。


「じゃあ、どうすんだよ!?」
「細かく “砕く” 」


 俺は文珠を1個取り出すと、言葉通り『砕』と刻み瓦礫に向かって投擲する。

 そして、念じると発動した文珠の発する霊気の光を浴びた瓦礫は瞬く間に「パチパチ」と音を立てながら細かい “砂利” に姿を変える。


「なんとか通れそうだな……!!」
「ああ、急ぐぞ!」


 通路を完全に塞いでた瓦礫だが、細かくした事で高さが減って通路の上半分が見える状態になった。

 これで取り敢えずは通れるが、ここに至るまで数分掛かっちまった……ここで、このロスは痛すぎる。
 

 そんな時にタイミング悪い “援軍” がやって来た。


「おおぉ〜い!小僧共ぉ〜!!」


 カオスの爺さんが走りながら、大声を上げる。傍らにはマリアも居るし、オカルトGメン………西条の部下達も来た。

 ……実を言うと、暗殺者が来た時点で『通』と刻んだ文珠(レシーバーだと通信音で敵に悟られる可能性があったから)で近場に待機してた連中に連絡してあった。

※互いに文珠を持ってる必要があるが、発動させれば時空を越えても “念話” 出来る

 前後から、はさみ打ち…… “あわよくば” 先に無力化した奴をGメン達に引き渡す積りだったんだが、上手く行かねぇな。


「テロリストは……」
「逃げられた!奴は議事堂だ!!」


 爺さんに半分自棄になりながら、吐き捨てると返事を待たずに通路へ向かう。

 雪之丞は、既に瓦礫の上を通って入ろうとしてる。こういう時にチビ(・・)って羨ましいな……

 ………と、本人に言った瞬間に頭突きが飛んできそうな事を考えながら後を追う。下らない事が頭に浮かんじゃいるが、その実かなり焦ってる。

 寧ろ無意識に下らないことを考えて、落ち着こうとしてるのかもしれない……?


「……って、そんなこと考えてる場合じゃねぇ」


 やっとの想いで瓦礫を越えて通路に降りると、悪態をつきながら別の文珠に意識を飛ばす。

 ちなみに雪之丞は、俺の5、6m先を走ってる。 
 

「部長殿、聞こえますか?鴉です!」


 今、西条は護衛と言うことで国王のすぐ側に待機してる筈だ。当初は、3人で敵を迎え撃つ事を考えてたんだが、爺さんの予想が外れたリスクを考慮してこんな形になった。それが、結果的に不幸中の幸いになってるのは皮肉としか言いようがない。

 奴に、通路を進みながら文珠を通して語り掛ける。咄嗟に連絡がつくよう事前に、奴にも文珠を1つだけ渡してる。
 
 そして数秒後、文珠にやや緊張した感じの声が返ってくる。


 “……こちら西条。鴉君どうしたんだ?”
「すみません、テロリストの侵入を許してしまいました!国王が危険です!!」

 


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「はっ!関係ねぇ、俺は無神論者だ!神なんか端から信じねぇ!!」
 …………何か熱い台詞っぽいけど、これ以上言うと場が醒めるから気になる人間は、前回の最後を読み直して欲しい。
「魔装術!」
 雪之丞は、いつもの掛け声と共に霊気の鎧を展開させる。
「行くぜっ!」
 そして、間を置かずそのまま突っ込む!
 相手の出方を見るなんて考えは、この男にはない。どんな相手にも突撃して先制攻撃!それがこの男の戦闘スタイルであり、真骨頂だ。
「ソレガ霊気ノ鎧……フンッ」
 魔装術を知ってるか。
 やっぱり俺達を囮にしただけあって、色々調べは付いてるようだな……雪之丞が踏み込むと同時に、男も右手の指輪を掲げる。
 指輪が光ると同時に、頭の両端に角の生えた悪魔のような精霊獣が出現する。
 1回目が獅子、2回目が犀(サイ)と来て今度は悪魔か……これで最後だよな?
 西条の話だと精霊獣を作るには非常に時間や労力、そして金が掛かるから、そんなに数は揃えられないらしい…………いや、決めつけるな。
 とにかく、 “手筈通り” に進めば……
「オラよっ!」
 バゴォッ!!
 挨拶代わりにの先制攻撃、上手く相手の懐に潜り込んでからの右ストレートが精霊獣の胸にヒットする……
「硬ぇな……」
 そう呟くとともに、敵の返す手を跳躍して躱す。
 …………今のはかなり綺麗に入ったのに、ダメージは無いようだ。やっぱり、人と精霊獣では出力や耐久性に大きな差があるようだ。
「行ケッ……!」
 攻守交代、今度は奴の精霊獣がその剛腕を繰り出してくる!
 それを雪之丞は、相手のサイドに回り込むような形で回避しなが隙を窺う……
 あいつが他の脳筋と違うのは、自分の攻撃が通じないと解った瞬間、すぐに別の手段に切り替えるられる所だ。決して自分の力を過信せず、何も見てないようで、常に相手を観察して最善手を探り出す。
 誰に教わったわけでもない……多分、あいつのセンスなんだと思う…………
 まぁ…俺と初めてやりあった時は、これが災いして攻めきれなかったんだけどな…………雪之丞がただの単細胞だったら、俺は間違いなく死んでた……
「オラオラッ!」
「チッ……!!」
 今度は横合いから連撃で精霊獣を突く!
 奴は確かにデカくて強力だが、その分小回りが効かないのか面白いようにヒットする。
 ……ただ、当てることは出来てもダメージには程遠いな。まぁ、さっきの一撃からそれは解りきってたことだが…………
 だが、こっちが仕留められさえしなければ、別に倒せなくてもいい。
「シッ!」
 掛け声と共に俺は、鞭状に伸ばした霊手を振り下ろす。隙を伺っていたのは雪之丞だけじゃない。
 だが、あいつと違って俺の狙いは、精霊獣じゃなく術者の方だ。
「チッ」
 俺の一撃を奴はサイドステップして躱す、けれど俺に注意を向けたことで精霊獣の動きが僅かに鈍った……
 そして、その隙を逃す雪之丞じゃない!
「貰いっ!」
 バゴンッ!!
 今度は精霊獣の顎に、下から跳躍した勢いのまま左アッパーを叩き込む!
 それでも、仕留めるには至らない……ただ、勢いよく突かれたことで、その巨体を背中から汚水の流れる排水路に倒れ込ませた。
 バシャーンッ!
 汚水が跳ね上がり、タダでさえ臭い下水路内に更なる悪臭が充満する……が、それを気にしてる場合じゃない…………
 よし、行ける!
 精霊獣をまともに相手出来なくても、上手く連携して術者を妨害出来れば無力化出来る。
 そして、無力化出来りゃ術者は無防備だ。
 俺は振るった霊手を戻すと、奴との距離を詰めるために一気に駆け出す!
 精霊獣が倒れている、今がチャンス…………
 そう思った瞬間、こっちを向いた奴がニヤリと嗤うと雪之丞にやったように右手を掲げた!
 精霊獣をけしかける気か!?
 ………いや、あれは今漸く起き上がろうとしてる。そもそも、俺から距離が遠すぎる。
 そう思った、次の瞬間だった……!!
「なっ!!?」
 奴の精霊石が光りだして、 “2体目” の精霊獣が現れた!!
 近寄ったことで気付いたが、奴は精霊石を右手に “2個” 嵌めてやがった……!
 これも西条から聞いたことだが、精霊獣は制御が難しく、霊気の消費も激しいから基本1人1体が普通。現に1回目、2回目の襲撃では1体しか使って来なかった…………けど、現実に奴は今が2体制御してる。
 畜生!さっき、決めつけるなって自分に言ったばからなのに…………!!
 ただ、そんなことでイチイチ落ち込んでる場合じゃねぇ、俺はさっき踏み出したことで、新たな精霊獣に突っ込んでる形になっちまってる。
 そして、その……今度は蛇の獣人かよ…………そいつが俺に拳を振り上げてる所だった。
 このまま行けゃ、間違いなく拳が刺さって……いや、叩き潰されて死ぬ。
 かと言って、止まれねぇ!既に勢いがつき過ぎてるし、よしんば止まれても結果は同じだ。
 …………なら、一か八か……
「ふっ!」
 踏み込む足に更に力を込める。加えて、両手を突き出して前に飛ぶ!!
 形としては野球のヘッドスライディングに酷似してるな。
 そして、勢いのまま飛んだと同時に右足のブーツの踵に精霊獣の一撃が掠った……当に間一髪。
 そのまま前転して、振り向く!精霊獣の攻撃に備える為だ……
「何……!?」
 だが、予想に反して追撃は来なかった…………俺の方には……
「逃げろ、雪之丞!!」
 新たに呼び出した蛇の精霊獣は、俺には目もくれず暗殺者を小脇に抱えると、立ち上がった方と一緒に雪之丞に向かって突進して行った!
「糞がっ!」
 2体一遍に来られたら、流石に雪之丞でもヤバい……幸いにもあいつは壁際に居たが、横には開けた場所だったんで奴等から真横に逸れて突進を避ける。
 ボゴォーーーン!!
 数秒前に雪之丞が居た場所から弾ける凄まじい轟音!
 精霊獣2体同時の突進で、コンクリートの壁に大穴が空いちまった……
「大丈夫か!?」
「ああ、問題ねぇ……」
 目線を砂埃舞い上がる穴の方に向けて、警戒しながら声を掛けると奴も同じ方向に視線を向けながら答える。
 取り敢えず、無事な事に安心するが気の抜ける状況じゃねぇ。
 そうして、2人して穴からの攻撃に備える…………
 ………………………………………………攻撃が来ない……?
「糞っ!!」
「しまった!!」
 数秒間の沈黙の後、2人して歯噛みする。
 くっそ!奴が俺を無視した段階で気付くべきだった!!
 奴は、端から俺達なんか相手にしてねぇ。議事堂に潜入して、国王を襲撃する気だ。
 雪之丞が居たのは、ちょうど議事堂に続くドアの前。
 穴を空けた直後に精霊獣を引っ込めて、そのまま中に入ったんだ!
「駄目だ、瓦礫が邪魔だ!」
 雪之丞が苛立ち紛れに吐き捨てる!
 急いで追おうとする俺達だが、穴が空いた時に落ちてきた瓦礫がちょうど通路を塞いじまった……
「仕方ねぇ、ブッ飛ばす!」
「止せっ!これ以上崩したら下敷きになる」
 霊波砲を撃とうとする雪之丞を慌てて止める。
 この下水道はかなり大型で天井まで4mほどある。精霊獣が余裕で動けるくらいだ。それくらい、だだっ広い空間ではあるんだが変に衝撃を与えて崩落なんかしかたら、それこそジ・エンドだぞ。
「じゃあ、どうすんだよ!?」
「細かく “砕く” 」
 俺は文珠を1個取り出すと、言葉通り『砕』と刻み瓦礫に向かって投擲する。
 そして、念じると発動した文珠の発する霊気の光を浴びた瓦礫は瞬く間に「パチパチ」と音を立てながら細かい “砂利” に姿を変える。
「なんとか通れそうだな……!!」
「ああ、急ぐぞ!」
 通路を完全に塞いでた瓦礫だが、細かくした事で高さが減って通路の上半分が見える状態になった。
 これで取り敢えずは通れるが、ここに至るまで数分掛かっちまった……ここで、このロスは痛すぎる。
 そんな時にタイミング悪い “援軍” がやって来た。
「おおぉ〜い!小僧共ぉ〜!!」
 カオスの爺さんが走りながら、大声を上げる。傍らにはマリアも居るし、オカルトGメン………西条の部下達も来た。
 ……実を言うと、暗殺者が来た時点で『通』と刻んだ文珠(レシーバーだと通信音で敵に悟られる可能性があったから)で近場に待機してた連中に連絡してあった。
※互いに文珠を持ってる必要があるが、発動させれば時空を越えても “念話” 出来る
 前後から、はさみ打ち…… “あわよくば” 先に無力化した奴をGメン達に引き渡す積りだったんだが、上手く行かねぇな。
「テロリストは……」
「逃げられた!奴は議事堂だ!!」
 爺さんに半分自棄になりながら、吐き捨てると返事を待たずに通路へ向かう。
 雪之丞は、既に瓦礫の上を通って入ろうとしてる。こういう時に|チビ《・・》って羨ましいな……
 ………と、本人に言った瞬間に頭突きが飛んできそうな事を考えながら後を追う。下らない事が頭に浮かんじゃいるが、その実かなり焦ってる。
 寧ろ無意識に下らないことを考えて、落ち着こうとしてるのかもしれない……?
「……って、そんなこと考えてる場合じゃねぇ」
 やっとの想いで瓦礫を越えて通路に降りると、悪態をつきながら別の文珠に意識を飛ばす。
 ちなみに雪之丞は、俺の5、6m先を走ってる。 
「部長殿、聞こえますか?鴉です!」
 今、西条は護衛と言うことで国王のすぐ側に待機してる筈だ。当初は、3人で敵を迎え撃つ事を考えてたんだが、爺さんの予想が外れたリスクを考慮してこんな形になった。それが、結果的に不幸中の幸いになってるのは皮肉としか言いようがない。
 奴に、通路を進みながら文珠を通して語り掛ける。咄嗟に連絡がつくよう事前に、奴にも文珠を1つだけ渡してる。
 そして数秒後、文珠にやや緊張した感じの声が返ってくる。
 “……こちら西条。鴉君どうしたんだ?”
「すみません、テロリストの侵入を許してしまいました!国王が危険です!!」