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雪山にて

ー/ー



 エリシアはフェードラの秘宝を求めるパーティのアドバイザーとして依頼を受けていた。



 集合場所の雪山のコテージ。



 周囲は一面の銀世界で、近くに人影はない。エリシアは新調したばかりのカシミヤのコートを羽織り、優雅にパーティの到着を待っていた。



(遅いですわね。全くだらしない)



 ふと遠くから足音が聞こえた。



 ——ガサ



 ドアが開き、一人目が中に入ってくる。背の高い戦士風の男だ。



「遅れてすいません。吹雪がひどくて」



 彼はそう言いながら、黒光りするテカテカのダウンジャケットを脱ぎ、雪を払った。まるでゴミ袋を被っているような見た目だ。



「……」



 エリシアは言葉を発せず、彼をじっと見つめた。その視線には明らかな軽蔑が含まれている。

 さらにもう一人、後ろからシーフが入ってきた。



「くぅ〜寒いねぇ!」



 こちらもまた、ゴミ袋と見間違うほどの黒いダウンジャケットを着ている。



「……」



 エリシアは再び黙り込む。その視線はシーフにも突き刺さるようだったが、本人はまったく気づいていない様子だ。



「寒いなぁ。やっぱこのジャケット、暖かくて助かるよ!」

「同感だな。これ、安くていいよな」



 戦士とシーフがそんな会話を交わしながら笑っている。



「……」



 コテージのドアが再び開く音がした。



 三人目の到着者、魔法使いの男性が吹雪の中から姿を現した。



「早く帰って味噌ラーメン食べたいよ……」



 彼の体を覆っているのは、まるで青いゴミ袋のようなテカテカしたダウンジャケットだった。

 エリシアはその光景に目を細める。



(全員してどうしてこう……ゴミ袋みたいな恰好ばかりなのですの?)



 ため息をつく間もなく、次の人物が現れた。

 四人目は僧侶の男性だ。



「神の慈悲もあったもんじゃねえな!こんな寒いところ、試練でもなんでもねえぞ!」



 彼のダウンジャケットもまた、黒光りするゴミ袋を彷彿とさせるデザインだった。

 エリシアはついに言葉を失い、その場で呆然と立ち尽くした。



「……」



 エリシアは静かに椅子から立ち上がった。



「……帰りますわ。」



 凛とした声がコテージの中に響き渡る。



「えっ?」



 パーティメンバーたちは一瞬耳を疑った。

 だが彼女の動きは一切の迷いもない。彼らの目の前でカシミヤのコートを整え、くるりと背を向けると、ドアに向かって歩き出した。



「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」



 戦士が慌てて手を伸ばす。



「エリシアさん、まさか本気で帰るつもりじゃ……」

「その通りですわ。」



 きっぱりとした言葉が返ってきた。



「こんな寒さの中でゴミ袋ファッションの皆さんと冒険するなど、私には耐えられませんの。あとはお好きになさって!」



 エリシアはドアノブを掴み、一気に外へ飛び出した。



「エリシアさ〜ん!」



 僧侶が情けない声を上げたが、エリシアはその声すら風に流されるまま無視した。



「待ってください!せめて秘宝を見つけるまで一緒に……!」



 魔法使いも追いすがろうとしたが、エリシアの背中はもう白い吹雪の中に消えかけていた。

 振り向きざま、彼女は冷たく言い放つ。



「私を頼らず冒険する経験も、大事ですわよ!」



 そして、白銀の風景に紛れるようにその姿は完全に見えなくなった。

 コテージの中には取り残された冒険者たちだけがぽつんと立ち尽くしていた。



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 エリシアはフェードラの秘宝を求めるパーティのアドバイザーとして依頼を受けていた。
 集合場所の雪山のコテージ。
 周囲は一面の銀世界で、近くに人影はない。エリシアは新調したばかりのカシミヤのコートを羽織り、優雅にパーティの到着を待っていた。
(遅いですわね。全くだらしない)
 ふと遠くから足音が聞こえた。
 ——ガサ
 ドアが開き、一人目が中に入ってくる。背の高い戦士風の男だ。
「遅れてすいません。吹雪がひどくて」
 彼はそう言いながら、黒光りするテカテカのダウンジャケットを脱ぎ、雪を払った。まるでゴミ袋を被っているような見た目だ。
「……」
 エリシアは言葉を発せず、彼をじっと見つめた。その視線には明らかな軽蔑が含まれている。
 さらにもう一人、後ろからシーフが入ってきた。
「くぅ〜寒いねぇ!」
 こちらもまた、ゴミ袋と見間違うほどの黒いダウンジャケットを着ている。
「……」
 エリシアは再び黙り込む。その視線はシーフにも突き刺さるようだったが、本人はまったく気づいていない様子だ。
「寒いなぁ。やっぱこのジャケット、暖かくて助かるよ!」
「同感だな。これ、安くていいよな」
 戦士とシーフがそんな会話を交わしながら笑っている。
「……」
 コテージのドアが再び開く音がした。
 三人目の到着者、魔法使いの男性が吹雪の中から姿を現した。
「早く帰って味噌ラーメン食べたいよ……」
 彼の体を覆っているのは、まるで青いゴミ袋のようなテカテカしたダウンジャケットだった。
 エリシアはその光景に目を細める。
(全員してどうしてこう……ゴミ袋みたいな恰好ばかりなのですの?)
 ため息をつく間もなく、次の人物が現れた。
 四人目は僧侶の男性だ。
「神の慈悲もあったもんじゃねえな!こんな寒いところ、試練でもなんでもねえぞ!」
 彼のダウンジャケットもまた、黒光りするゴミ袋を彷彿とさせるデザインだった。
 エリシアはついに言葉を失い、その場で呆然と立ち尽くした。
「……」
 エリシアは静かに椅子から立ち上がった。
「……帰りますわ。」
 凛とした声がコテージの中に響き渡る。
「えっ?」
 パーティメンバーたちは一瞬耳を疑った。
 だが彼女の動きは一切の迷いもない。彼らの目の前でカシミヤのコートを整え、くるりと背を向けると、ドアに向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
 戦士が慌てて手を伸ばす。
「エリシアさん、まさか本気で帰るつもりじゃ……」
「その通りですわ。」
 きっぱりとした言葉が返ってきた。
「こんな寒さの中でゴミ袋ファッションの皆さんと冒険するなど、私には耐えられませんの。あとはお好きになさって!」
 エリシアはドアノブを掴み、一気に外へ飛び出した。
「エリシアさ〜ん!」
 僧侶が情けない声を上げたが、エリシアはその声すら風に流されるまま無視した。
「待ってください!せめて秘宝を見つけるまで一緒に……!」
 魔法使いも追いすがろうとしたが、エリシアの背中はもう白い吹雪の中に消えかけていた。
 振り向きざま、彼女は冷たく言い放つ。
「私を頼らず冒険する経験も、大事ですわよ!」
 そして、白銀の風景に紛れるようにその姿は完全に見えなくなった。
 コテージの中には取り残された冒険者たちだけがぽつんと立ち尽くしていた。