第三百六十三話
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良いように丸め込まれたような気がする一行ではあったが、院と透、そして信玄は高梨と共に学園を後にしていた。
「――実にもどかしくはありますが、現状はお父様の言うとおりにするしかありませんね。相手にカルマがいる状況というのは今回が二度目ですが……こうも気分の悪いものなのですね」
「予め認識している状況は、今回が初めてだな。以前は礼安っちを乗っ取って動いていたのもあるし」
「――世間で話題になっている渦中に自ら入り込むと、こういう不思議な気持ちなんだね。英雄じゃあないのに、英雄になった気分だよ」
信玄も透もその言葉に何となく頷いていたものの、原初の疑問が脳裏に過ぎった瞬間に、多量の汗を掻きながら、横並びになって歩く高梨の顔を凝視してしまう。
「「――いや何で高梨幸香が今ここにいるんだよ!?」」
「あ~……やっぱりそこに行き着くよねェ……」
頬を指で掻きながら、困ったように笑う高梨。院と共に、先週あったこと含め全てを明かした。全てを明かすまで語った現場は、ものの見事に五倍速で手短に送られた。
全てを聞いた後、二人は高梨のプロ精神に感銘を受けながら、今回は透がその役目を請け負うことになった。院と信玄は、これから痛手を負った丙良の様子を見に行くことになった。
「では、後はよろしくお願いしますわ、透。もし容体が良くなったら、デバイスの方に連絡を入れますわね」
「了解、それまで高梨さんをエスコートしておく」
二人と別れた透と高梨は、先週とは異なる場所の案内を行うことに。しっかりとサングラスとマスクを着用したために、透が学園内に入り込んだ不審者を案内しているような、実に奇妙な絵面となっていた。
「――しかし、会場すら出来ていない中で視察だとか……やっていることが行動力抜群な社長みたいなもんッスね。オフの状態であっても仕事熱心なのは感心するッスけど、体に毒じゃあないッスか?」
「まあ、大変だよ。基本的には、表に出さないけれどヘロヘロ状態でここにやってくることがほとんどだと思っていいかも。今日も現場大変だったし、帰ったら台本の読みこみが待ってる」
ほんの少し見せたバッグの中身には、これまで撮影してきた台本のスペアたちが数冊。本人の努力込みではあるのだが、主役級の女優ながらここまでの本数を同時進行で撮影できるだなんて、尋常でないほどの体力と根性、そして圧倒的な記憶力を持ち合わせている。
「――本当、大した根性ッスよ。俺らとそこまで年齢変わんねェってのに。ちょっと怪しい恰好したお忍びとは言え、通常そこまでやらねえッス」
昨今、どんな政治家だろうと現地に赴いてありとあらゆる政策を思考する、だなんて殊勝な考えを持つ政治家は滅多にいない。夏ならば冷房の、冬ならば暖房のよく効いた恵まれた空間内で、大して国民のことを考えない施策を考え付くだろう。国の金が足りないのなら国民から毟り取った上で、自分たちの腹の肉の足しにしていく、意地汚い家畜そのもの。
そんな中で、たった一日だけの催し事のために、どういうプランニングでこの学園を盛り上げるか、そしてどういったターゲットがいていかに盛り上げるべきか、それを理論的に分析して学んでいく。仮に英雄学園の生徒になれたのなら、しっかりとした功績を残す一組の生徒になれるだろう。
「……そう言えば、さっき気になることがあったんで……聞いていいッスか」
「? 基本的に社外秘みたいな喋れないこと以外は何でも聞いていいよ?」
二人、海風そよぐ沿岸の通路にて、手すりに軽く身を寄せるか、肘を掛け海を眺めるかの崩れた体勢に。透は本当にこんなことを聞くべきか、逡巡をしていたものの、自らの内に巣食った疑念を晴らすためにも、聞くべきであると考えたのだ。
「――さっき、栃木支部を一網打尽にする作戦を学園長から明かされた時……どことなく、『悲しい顔』していたのは、気のせいッスか」
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良いように丸め込まれたような気がする一行ではあったが、院と透、そして信玄は高梨と共に学園を後にしていた。
「――実にもどかしくはありますが、現状はお父様の言うとおりにするしかありませんね。相手にカルマがいる状況というのは今回が二度目ですが……こうも気分の悪いものなのですね」
「予め認識している状況は、今回が初めてだな。以前は礼安っちを乗っ取って動いていたのもあるし」
「――世間で話題になっている渦中に自ら入り込むと、こういう不思議な気持ちなんだね。英雄じゃあないのに、英雄になった気分だよ」
信玄も透もその言葉に何となく頷いていたものの、原初の疑問が脳裏に過ぎった瞬間に、多量の汗を掻きながら、横並びになって歩く高梨の顔を凝視してしまう。
「「――いや何で|高梨幸香《タカナシ サチカ》が今ここにいるんだよ!?」」
「あ~……やっぱりそこに行き着くよねェ……」
頬を指で掻きながら、困ったように笑う高梨。院と共に、先週あったこと含め全てを明かした。全てを明かすまで語った現場は、ものの見事に五倍速で手短に送られた。
全てを聞いた後、二人は高梨のプロ精神に感銘を受けながら、今回は透がその役目を請け負うことになった。院と信玄は、これから痛手を負った丙良の様子を見に行くことになった。
「では、後はよろしくお願いしますわ、透。もし容体が良くなったら、デバイスの方に連絡を入れますわね」
「了解、それまで高梨さんをエスコートしておく」
二人と別れた透と高梨は、先週とは異なる場所の案内を行うことに。しっかりとサングラスとマスクを着用したために、透が学園内に入り込んだ不審者を案内しているような、実に奇妙な絵面となっていた。
「――しかし、会場すら出来ていない中で視察だとか……やっていることが行動力抜群な社長みたいなもんッスね。オフの状態であっても仕事熱心なのは感心するッスけど、体に毒じゃあないッスか?」
「まあ、大変だよ。基本的には、表に出さないけれどヘロヘロ状態でここにやってくることがほとんどだと思っていいかも。今日も現場大変だったし、帰ったら台本の読みこみが待ってる」
ほんの少し見せたバッグの中身には、これまで撮影してきた台本のスペアたちが数冊。本人の努力込みではあるのだが、主役級の女優ながらここまでの本数を同時進行で撮影できるだなんて、尋常でないほどの体力と根性、そして圧倒的な記憶力を持ち合わせている。
「――本当、大した根性ッスよ。俺らとそこまで年齢変わんねェってのに。ちょっと怪しい恰好したお忍びとは言え、通常そこまでやらねえッス」
昨今、どんな政治家だろうと現地に赴いてありとあらゆる政策を思考する、だなんて殊勝な考えを持つ政治家は滅多にいない。夏ならば冷房の、冬ならば暖房のよく効いた恵まれた空間内で、大して国民のことを考えない施策を考え付くだろう。国の金が足りないのなら国民から毟り取った上で、自分たちの腹の肉の足しにしていく、意地汚い家畜そのもの。
そんな中で、たった一日だけの催し事のために、どういうプランニングでこの学園を盛り上げるか、そしてどういったターゲットがいていかに盛り上げるべきか、それを理論的に分析して学んでいく。仮に英雄学園の生徒になれたのなら、しっかりとした功績を残す一組の生徒になれるだろう。
「……そう言えば、さっき気になることがあったんで……聞いていいッスか」
「? 基本的に社外秘みたいな喋れないこと以外は何でも聞いていいよ?」
二人、海風そよぐ沿岸の通路にて、手すりに軽く身を寄せるか、肘を掛け海を眺めるかの崩れた体勢に。透は本当にこんなことを聞くべきか、逡巡をしていたものの、自らの内に巣食った疑念を晴らすためにも、聞くべきであると考えたのだ。
「――さっき、栃木支部を一網打尽にする作戦を学園長から明かされた時……どことなく、『悲しい顔』していたのは、気のせいッスか」