表示設定
表示設定
目次 目次




第三百四十三話

ー/ー




『という訳で!! 『何でもアリ! 音楽(ミュージック)フェスティバトル!!』を学園祭時に同時進行で開催したいと思います!!』

 概要についてはこう。

・魔力を用いても構わないが、戦いが一切関係のない全組入り乱れたダンス・演奏・ミックス何でもありの音楽関連の競技を行う。
・年次違い、組違いの生徒が手を組むことは可能。しかし、同学年かつ同組の生徒が一緒のチームは組めない。
・今回招致予定の企業に、音楽関連の大企業アリ。ここでいい成績を残すことが出来れば、鳴り物入りでその業界に飛び入ることも可能、今後の活躍も保証付き。
・さらに、基本的に「一組だから」などのボーナスも一切ない。『誰であれ』活躍の可能性が存在する、新たな自分を発掘する場所。
・学業成績には一切関係ないため、将来を明るくするために頑張ってもらいたい

 ……らしい。
 それら全ての説明を聞いた一年次から三年次の生徒たちは……大いに沸いた。特にそれぞれの下の組の生徒が。一組や二組生徒に関しては、音楽関連の趣味がある存在は喜びこそしたものの、下の組の生徒と比べると、そこまでといった様子であった。

『今回、こうして体育館に集まってもらったのも、意味はあったろう? 基本的に勉学や素の力が一切関係しない『音楽(ミュージック)』という舞台上で、少しでも切磋琢磨してもらえれば幸いだよ、生徒諸君!』

 提案者同然である灰崎は頭を抱えながら舞台上に上がり、信一郎と仕方なく握手を交わす。

「いやあ、アイディアを貰えてよかったよ! 昨今『皆に活躍の場を用意してあげたい』と思っていたところでさァ!」

「……それで、音楽(ミュージック)フェスを出してくるあたり、信一郎さん……アンタの発想力の方が凄ェッスよ」

 非常に呆れ果てた表情で睨む灰崎をよそに、意に介す様子無く今回の協賛企業の列挙を行い始めた信一郎。それらの名前はこれまで関心の無かった生徒すら大いに沸かせる大企業ばかり。こういった異なる道を喜び始めるのは、他でもなく純粋に真なる英雄を目指す礼安たちが存在するからこそ。同じ土俵で戦うのではなく、別の戦場(フィールド)にて戦うことが賢い(クレバー)であることを重々理解しているのだ。
 さらに燃え盛る業火の中に多量の油を一気に注ぐように、ある人物の存在がやってくることが明かされる。

『さらに、だよ! 今回……この音楽(ミュージック)フェスティバトル、その成績上位者に関しては……昨今テレビ業界をドッカンドッカン沸かせているフレッシュな女優さん、『高梨幸香(タカナシ サチカ)』さんと共演が出来るよ! 下手したら、音楽業界だけじゃあなく、テレビや芸能界に進出できるチャンスだよ!!』

「ウッソでしょ、あのサッちゃんと共演できるかもしれないの!?」

「俺あの子の大ファンだよ!! 学業云々に関係ないだろうけど、俺全力出せるわ!!」

「あの子の出てるドラマとか名作揃いだからね~! 女だからこそ惚れるイケ(じょ)!!」

 高梨幸香(タカナシ サチカ)。元々眉目秀麗な雑誌モデルとして芸能界デビューした、現在二十七歳のモデル兼女優。「モデルだから演技力が」などの外野の声を撥ね退けるように、とある特撮作品にて華麗なデビューを果たした。
 本来ならスーツアクターにアクションパートを任せるのだが、処女作である作品においてモデル出身であることを忘れるほどの苛烈なアクションを見せ、主役俳優クラスと言えるほど一気に人気が大爆発。あらゆる作品に出ている上に、マルチなセンスを見せつけた結果、現在の芸能界において引っ張りだこと言える目玉(スター)的存在であった。
 さらに、最近そのマルチな才能がコメンテーターや音楽業にまで広がっており、『千年に一人の逸材』と称されるほどの存在そのものであった。もはや英雄学園に通う因子持ち以上にレアリティの高い存在こそ、高梨であった。
 未だ始まっていない現状況から、現在進行形で同級生や上級生と生存競争を繰り広げる中、礼安たちは非常に困惑していた。それもそのはず。

「私……踊るのへたっぴなんだけど……どうしよう院ちゃん?」

「……奇遇ですね、礼安さん……私も踊るのとか大の苦手過ぎます。まあ高梨さんことサッちゃんは私も好きな女優さんの一人ですが……そこに至るまでがキツ過ぎですね」

 そう、まさかのいつもの面子の内、最高クラスの戦力である英雄の卵、礼安とエヴァは律動(リズム)感覚が非常に低い。礼安に関しては本人が理解していないものの、超が付くほどの『音痴』。歌うのも踊るのも作曲するのも編曲するのも、才が無いため出来ないのだ。

「――まあ、仕方ないでしょうね……私は真来家の習い事の一つとして、ピアノ演奏と舞踏会を見据えたダンスレッスンも行っていましたが……」

「俺は一応……ストリートダンスと名ばかりのブレイクダンスならある程度経験あるぞ。まあ……プロの奴と比べたらそんな上手かねェんだけどさ」

 丙良も信玄も、付き合いでカラオケに行くくらいで特にこれといって目立った経験はない。灰崎に関しては、カラオケ自体は経験あるものの、ダンスは壊滅的。よりにもよって、一年次・二年次の最強面子のほとんどが音楽方面の才が無いという。まるで的確にこうなることを狙ったのかと勘ぐってしまうほどの、弱点(ウィークポイント)を的確についていたのだった。
 礼安たちが四苦八苦しながら、他の組や他の学年の生徒たちに声をかけていく中、院と透はどうするべきか迷っていた。

「今回は意図的に皆をバラけさせて、組の間に存在する(わだかま)りを解消しにかかっているのでしょうが……あまり他の組や武器科の人たちと深く関わった経験が少ないだけに……迷いますわね」

「俺ァ別に音楽業界に関わってどうのこうのとか、一切興味無ェんだけど……何なら、ウチのチビたちの方が興味あるくらいだからな。だからといって意図的に手を抜くだなんてのは、俺が許せねぇっていうか……」

 どう身を振るのが最適か、というのを思考していたその時。


「将来有望な真来ちゃん、俺と一緒にトゥギャザーしない??」

「天音透さん、私と一緒に音楽(ミュージック)フェスで汗かかない?」


 まさかの、お互いに上級生からスカウトのかかる、稀有な状況に見舞われたのだ。しかも、これまで接したことの無い存在に、少々辟易していた。
 信玄を超えるほど非常にちゃらんぽらんそうに見える男の方は、制服と私服を混じらせた何ともラフなスタイルの恰好であり、第一印象(ファースト・インプレッション)としては『チャラ男』という以外に他ならない。髪こそ染めていないものの、元々髪が長いのか後ろでポニーテールとして結び、前髪も長いのか女子用のピン止めで複数止めている。それぞれのデザインはしっかり異なっており、お洒落の一つとして取り入れているのだろう。
 もう一人の褐色の溌溂な女の方は、水泳部に所属している影響によって、塩素で髪が多少なり茶髪に塩素負けしている癖アリのショートヘアー。年齢には不相応な可愛らしい数年前の女児向けアニメ、その古びた髪留めを付けているのがチャームポイント。
 透とは正反対、と言わんばかりの豊満な『それ』を抑えるには、少々力不足と言わんばかりの半袖パーカーを着用しており、活発なのか短めのスカートでありながら動いても中が見えないような黒のロングスパッツを着用。透ほどに動ける存在であることは分かりやすいだろう。

「「すみません/すんません、どこの誰……??」」

「俺? 俺は武器科三年二組、上田青空(ウエダ ソラ)。聞かれるかもしれんから、DJ(ディスクジョッキー)経験は数あるバイトによって経験済みだぜ! 未だ残暑に悩むこの東京都に旋風(タイフーン)吹き荒らしてやろうぜ……♪」

「私は武器科二年一組、渡部かな(ワタベ カナ)よ。音楽経験こそないけれど、一目見た瞬間にビビっと来ちゃったの、私に音楽フェスのお世話――させて?」

 あまりにも唐突。あまりにも個性の爆発加減。流石個性の集合体たる英雄学園。自分たちもそれなりに曲者であることは理解しながらも、それ以上の存在は数多く存在することを、強く思い知らされる院と透であった。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第三百四十四話


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…




『という訳で!! 『何でもアリ! |音楽《ミュージック》フェスティバトル!!』を学園祭時に同時進行で開催したいと思います!!』
 概要についてはこう。
・魔力を用いても構わないが、戦いが一切関係のない全組入り乱れたダンス・演奏・ミックス何でもありの音楽関連の競技を行う。
・年次違い、組違いの生徒が手を組むことは可能。しかし、同学年かつ同組の生徒が一緒のチームは組めない。
・今回招致予定の企業に、音楽関連の大企業アリ。ここでいい成績を残すことが出来れば、鳴り物入りでその業界に飛び入ることも可能、今後の活躍も保証付き。
・さらに、基本的に「一組だから」などのボーナスも一切ない。『誰であれ』活躍の可能性が存在する、新たな自分を発掘する場所。
・学業成績には一切関係ないため、将来を明るくするために頑張ってもらいたい
 ……らしい。
 それら全ての説明を聞いた一年次から三年次の生徒たちは……大いに沸いた。特にそれぞれの下の組の生徒が。一組や二組生徒に関しては、音楽関連の趣味がある存在は喜びこそしたものの、下の組の生徒と比べると、そこまでといった様子であった。
『今回、こうして体育館に集まってもらったのも、意味はあったろう? 基本的に勉学や素の力が一切関係しない『|音楽《ミュージック》』という舞台上で、少しでも切磋琢磨してもらえれば幸いだよ、生徒諸君!』
 提案者同然である灰崎は頭を抱えながら舞台上に上がり、信一郎と仕方なく握手を交わす。
「いやあ、アイディアを貰えてよかったよ! 昨今『皆に活躍の場を用意してあげたい』と思っていたところでさァ!」
「……それで、|音楽《ミュージック》フェスを出してくるあたり、信一郎さん……アンタの発想力の方が凄ェッスよ」
 非常に呆れ果てた表情で睨む灰崎をよそに、意に介す様子無く今回の協賛企業の列挙を行い始めた信一郎。それらの名前はこれまで関心の無かった生徒すら大いに沸かせる大企業ばかり。こういった異なる道を喜び始めるのは、他でもなく純粋に真なる英雄を目指す礼安たちが存在するからこそ。同じ土俵で戦うのではなく、別の|戦場《フィールド》にて戦うことが|賢い《クレバー》であることを重々理解しているのだ。
 さらに燃え盛る業火の中に多量の油を一気に注ぐように、ある人物の存在がやってくることが明かされる。
『さらに、だよ! 今回……この|音楽《ミュージック》フェスティバトル、その成績上位者に関しては……昨今テレビ業界をドッカンドッカン沸かせているフレッシュな女優さん、『|高梨幸香《タカナシ サチカ》』さんと共演が出来るよ! 下手したら、音楽業界だけじゃあなく、テレビや芸能界に進出できるチャンスだよ!!』
「ウッソでしょ、あのサッちゃんと共演できるかもしれないの!?」
「俺あの子の大ファンだよ!! 学業云々に関係ないだろうけど、俺全力出せるわ!!」
「あの子の出てるドラマとか名作揃いだからね~! 女だからこそ惚れるイケ|女《じょ》!!」
 |高梨幸香《タカナシ サチカ》。元々眉目秀麗な雑誌モデルとして芸能界デビューした、現在二十七歳のモデル兼女優。「モデルだから演技力が」などの外野の声を撥ね退けるように、とある特撮作品にて華麗なデビューを果たした。
 本来ならスーツアクターにアクションパートを任せるのだが、処女作である作品においてモデル出身であることを忘れるほどの苛烈なアクションを見せ、主役俳優クラスと言えるほど一気に人気が大爆発。あらゆる作品に出ている上に、マルチなセンスを見せつけた結果、現在の芸能界において引っ張りだこと言える|目玉《スター》的存在であった。
 さらに、最近そのマルチな才能がコメンテーターや音楽業にまで広がっており、『千年に一人の逸材』と称されるほどの存在そのものであった。もはや英雄学園に通う因子持ち以上にレアリティの高い存在こそ、高梨であった。
 未だ始まっていない現状況から、現在進行形で同級生や上級生と生存競争を繰り広げる中、礼安たちは非常に困惑していた。それもそのはず。
「私……踊るのへたっぴなんだけど……どうしよう院ちゃん?」
「……奇遇ですね、礼安さん……私も踊るのとか大の苦手過ぎます。まあ高梨さんことサッちゃんは私も好きな女優さんの一人ですが……そこに至るまでがキツ過ぎですね」
 そう、まさかのいつもの面子の内、最高クラスの戦力である英雄の卵、礼安とエヴァは|律動《リズム》感覚が非常に低い。礼安に関しては本人が理解していないものの、超が付くほどの『音痴』。歌うのも踊るのも作曲するのも編曲するのも、才が無いため出来ないのだ。
「――まあ、仕方ないでしょうね……私は真来家の習い事の一つとして、ピアノ演奏と舞踏会を見据えたダンスレッスンも行っていましたが……」
「俺は一応……ストリートダンスと名ばかりのブレイクダンスならある程度経験あるぞ。まあ……プロの奴と比べたらそんな上手かねェんだけどさ」
 丙良も信玄も、付き合いでカラオケに行くくらいで特にこれといって目立った経験はない。灰崎に関しては、カラオケ自体は経験あるものの、ダンスは壊滅的。よりにもよって、一年次・二年次の最強面子のほとんどが音楽方面の才が無いという。まるで的確にこうなることを狙ったのかと勘ぐってしまうほどの、|弱点《ウィークポイント》を的確についていたのだった。
 礼安たちが四苦八苦しながら、他の組や他の学年の生徒たちに声をかけていく中、院と透はどうするべきか迷っていた。
「今回は意図的に皆をバラけさせて、組の間に存在する|蟠《わだかま》りを解消しにかかっているのでしょうが……あまり他の組や武器科の人たちと深く関わった経験が少ないだけに……迷いますわね」
「俺ァ別に音楽業界に関わってどうのこうのとか、一切興味無ェんだけど……何なら、ウチのチビたちの方が興味あるくらいだからな。だからといって意図的に手を抜くだなんてのは、俺が許せねぇっていうか……」
 どう身を振るのが最適か、というのを思考していたその時。
「将来有望な真来ちゃん、俺と一緒にトゥギャザーしない??」
「天音透さん、私と一緒に|音楽《ミュージック》フェスで汗かかない?」
 まさかの、お互いに上級生からスカウトのかかる、稀有な状況に見舞われたのだ。しかも、これまで接したことの無い存在に、少々辟易していた。
 信玄を超えるほど非常にちゃらんぽらんそうに見える男の方は、制服と私服を混じらせた何ともラフなスタイルの恰好であり、|第一印象《ファースト・インプレッション》としては『チャラ男』という以外に他ならない。髪こそ染めていないものの、元々髪が長いのか後ろでポニーテールとして結び、前髪も長いのか女子用のピン止めで複数止めている。それぞれのデザインはしっかり異なっており、お洒落の一つとして取り入れているのだろう。
 もう一人の褐色の溌溂な女の方は、水泳部に所属している影響によって、塩素で髪が多少なり茶髪に塩素負けしている癖アリのショートヘアー。年齢には不相応な可愛らしい数年前の女児向けアニメ、その古びた髪留めを付けているのがチャームポイント。
 透とは正反対、と言わんばかりの豊満な『それ』を抑えるには、少々力不足と言わんばかりの半袖パーカーを着用しており、活発なのか短めのスカートでありながら動いても中が見えないような黒のロングスパッツを着用。透ほどに動ける存在であることは分かりやすいだろう。
「「すみません/すんません、どこの誰……??」」
「俺? 俺は武器科三年二組、|上田青空《ウエダ ソラ》。聞かれるかもしれんから、|DJ《ディスクジョッキー》経験は数あるバイトによって経験済みだぜ! 未だ残暑に悩むこの東京都に|旋風《タイフーン》吹き荒らしてやろうぜ……♪」
「私は武器科二年一組、|渡部かな《ワタベ カナ》よ。音楽経験こそないけれど、一目見た瞬間にビビっと来ちゃったの、私に音楽フェスのお世話――させて?」
 あまりにも唐突。あまりにも個性の爆発加減。流石個性の集合体たる英雄学園。自分たちもそれなりに曲者であることは理解しながらも、それ以上の存在は数多く存在することを、強く思い知らされる院と透であった。