第百三十四話:技術(魔導)の実験と爆発

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「王立・竜の子学園」のカリキュラムには、座学や魔法実習だけでなく、この世界を支える「技術」の授業も組み込まれていた。

 今日の授業は、特別実習棟で行われる『魔導工学』。

 教壇に立つのは、二人の特別講師だ。

「いいかい、ガキども! 技術ってのは『魂』だ! 鉄を叩き、熱を込め、形にする! 理屈じゃねえ、パッションだ!」

 ドワーフ族の技術側妃、ボルタ・アイアンハンド。彼女は作業着の袖をまくり上げ、スパナを片手に熱弁を振るう。

「……訂正します。技術とは『法則の応用』です。マナの伝達効率を計算し、最適な回路を構築する。感情で鉄は動きません」

 エルフ族の知識側妃、イリス・アルゴリズム。彼女は白衣を纏い、黒板に複雑な数式を書き連ねながら、ボルタの言葉を冷徹に否定する。

「あぁん? イリス、てめぇまた俺の授業にケチつける気か?」
「非効率な指導を是正しているだけです。爆発オチはもうたくさんですので」

 火花を散らす二人の講師。

 ドワーフの「熱血職人魂」と、エルフの「超論理魔術」。
 水と油のような二人の授業を受ける子供たちは、作業台の前で困惑……していなかった。

「ねえねえ、今日は何作るの?」
「爆発しないやつがいいなー」

 子供たちは、この凸凹コンビの授業にもすっかり慣れていた。

「今日の課題は『ゴーレム(自律駆動人形)』の作成だ!」

 ボルタが宣言する。

「ただし、ただの土人形じゃねえ。ドワーフの動力機関と、エルフの制御回路を組み込んだ、ハイブリッドなやつを作ってみろ!」
「基礎設計図はこちらです。まずはこの通りに……」
「設計図なんて破り捨てろ! お前らの『想像力』を形にするんだよ!」
「ボルタ……。貴女は教育者として不適切です」


 ◇◆◇◆◇

 講師たちが揉めている間に、子供たちは班に分かれて作業を開始した。

 注目すべきは、ライオス(炎/八歳)の班だ。
 メンバーは、妹のノア(炎/五歳)、そしてテラの娘ソイル(土/七歳)。

「へへっ、ゴーレムか! 男のロマンだな!」

 ライオスが目を輝かせる。

「ねー、お兄ちゃん。どんなのにする? やっぱり強そうなやつ?」

 ノアもわくわくしている。

「決まってるだろ! 『最強の合体ロボ』だ!」

 ライオスは、粘土の塊を前にソイルに頼み込んだ。

「ソイル! お前の土魔法で、すっげー硬くてデカイ体を作ってくれ! 俺とノアで『動力』を入れるから!」
「ええ……? 合体ロボ……?」

 ソイルは首を傾げたが、ライオスの熱意に押されて頷いた。

「わかったわ。やるからには、簡単に壊れない丈夫な体にするね」

 ソイルが土に魔力を込める。

「大地の恵みよ、形となれ……」

 彼女の指先から生まれたのは、無骨だが非常に密度の高い、重厚な土のボディだった。テラの「守護」の性質を受け継いだその装甲は、鉄のように硬い。

「すっげぇ! サンキュー、ソイル!」
「次は私たちの番ね!」

 ライオスとノアは、その土人形の胸部に「動力炉」となる空洞を作り、そこに炎の魔石を詰め込んだ。
 通常なら、これだけではただの「熱い土人形」だ。動くわけがない。

 だが、ボルタの「魂を込めろ」という教えと、イリスの「回路を繋げ」という教えが、彼らの中で奇妙な化学反応を起こした。

「イリス先生が言ってた『マナの循環』って、要は血が巡るみたいなもんだろ?」
「ボルタ先生は『爆発力がパワーだ』って言ってたよ!」
「よし、じゃあ……この炎の熱を、全身に循環させて……爆発させるイメージで……!」

 ライオスが炎を注ぎ込む。
 ノアがそれを煽る。
 ソイルが、高まる内圧に耐えられるよう、外殻をさらに硬化させる。

 炎の「出力」と、土の「耐久」。

 相反するはずの二つの力が、子供たちの無邪気な連携によって、無理やり一つの形に押し込められていく。

「……ん? 何か、変な魔力波長が出ているな」

 異変に気付いたのは、生徒会長のシリウスだった。
 彼は蒸気魔法の使い手として、熱と圧力のバランスに敏感だ。

「ライオス! ちょっと待て、その出力係数は……!」
「完成だぁぁッ! 動け、俺たちの『スーパー・マグマ・ゴーレム』!」

 ライオスが叫んだ瞬間。


 ドクンッ。


 土人形の胸が赤熱し、全身に幾何学模様の赤いラインが走った。

「ガガ……ガガガ……」

 重厚な土人形が、軋んだ音を立てて立ち上がる。

 その動きは、魔法生物の滑らかさではなく、機械仕掛けのような力強さを持っていた。

「うおぉぉ! 動いた! すげぇ!」
「やったー! かっこいいー!」

 子供たちが歓声を上げる。

「なっ……!?」

 イリスが目を見開き、手元の解析端末を落としそうになった。

「ありえません……! 炎の熱膨張を土の圧縮で抑え込み、その反発力を動力に変換している……? こんな回路構造、教科書にはありません! 理論上、即座に自壊するはずです!」
「ギャハハハ! すげえじゃねえか!」

 ボルタが手を叩いて喜ぶ。

「見ろイリス! あれが『パッション』だ! 属性の相性なんて関係ねえ、無理やりねじ伏せて形にしやがった!」

 しかし、感動も束の間。

「ガガガ……出力、増大……」

 ゴーレムの目が怪しく光り、蒸気を吹き出し始めた。

「あ、あれ? 言うこと聞かないぞ?」

 ライオスが焦る。

「お兄ちゃん、熱いよ! どんどん熱くなってる!」

 ノアが後ずさる。

「暴走です! 退避してください!」

 シズクが叫び、水壁を展開する。



 暴走したゴーレムは、手当たり次第に訓練用の機材をなぎ倒し、壁に向かって突進を始めた。

「まずい! あの先には火薬庫が!」

 ボルタがスパナを構えるが、距離が遠い。

「演算……間に合いません!」

 イリスが術式を組むが、ゴーレムのデタラメな魔力構造に干渉できない。

「僕が止めます!」

 シリウスが飛び出すが、ゴーレムの装甲はソイルの魔力で強化されており、生半可な攻撃では傷つかない。

「くっ……! 硬い!」

 その時、ライオスが叫んだ。

「俺が作ったんだ! 俺が止める!」
「私も手伝う!」
「私も!」

 ライオス、ノア、ソイルの三人が、暴走するゴーレムの前に立ちふさがった。

「ソイル、足止めを頼む! ノアは排熱口を作れ! 俺が中のコアを冷やす!」

「わかった!」

 三人はアイコンタクトだけで意図を通じ合わせた。

 それは、親たちにはない、生まれながらにして異なる種族(属性)と混ざり合ってきた彼らだからこそできる「阿吽の呼吸」だった。

「大地の鎖!」

 ソイルが地面を隆起させ、ゴーレムの足を拘束する。

「そこっ!」

 ノアが炎の精密操作で、ゴーレムの装甲の一部を融解させ、穴を開ける。

「うおおおおッ! ……熱を、吸い出せ!」

 ライオスがその穴に手をかざし、逆に炎の魔力を「吸収」する制御を試みた。


 ジュゴオオオオッ!!


 猛烈な熱風が吹き荒れ、ゴーレムの動きが止まる。

 赤熱していたボディが急速に冷え、最後はガクンと膝をついて停止した。

「……はぁ、はぁ……。と、止まった……」

 ライオスがへたり込む。
 ソイルとノアも、煤だらけの顔で互いを見合わせ、笑った。

「やったね!」

 静まり返る実習棟。

 イリスは、停止したゴーレムの前に歩み寄り、震える手でその装甲に触れた。

「……炎の出力を下げるために、土の密度を瞬時に変化させ、熱伝導率を操作した……? これを、計算なしの『感覚』だけで……?」

 彼女は、信じられないものを見る目で子供たちを見た。

「……非論理的です。ですが……美しい解法です」
「ガハハハ! 見たかイリス! これが次世代の『発明』ってやつだ!」

 ボルタがライオスたちの頭を乱暴に撫で回す。

「よくやった! 爆発寸前だったが、その土壇場の機転……満点だ!」
「い、いやぁ……。怒られるかと思った」

 ライオスが頭をかく。
 ソイルは「もう、無茶ばっかり」と頬を膨らませつつも、まんざらでもなさそうだ。

 その時、防御壁の陰から水の双子が駆け寄ってきた。

「ライオス兄さん! 無茶しすぎです!」

 シズクが、珍しく声を荒らげながらライオスの元へ詰め寄る。

「熱を吸収するなんて……もし制御に失敗していたら、内側から焼かれていたんですよ!? 論理的に考えて、リスクが高すぎます!」
「うっせーな、シズク。成功したんだからいいだろ」
「良くありません! ……でも」

 シズクは俯き、少しだけ顔を赤らめて呟いた。

「……ソイルさんのサポートと、兄さんの判断……計算外に、かっこよかったです」
「あ? なんか言ったか?」
「なんでもありませんッ!」

 ぷいっとそっぽを向くシズクの横で、マリンがにこやかにソイルの手を取った。

「ソイルちゃん、すごかった~! あの土の拘束、私のお水じゃあんなに強くできなかったもん。……お兄ちゃんのこと、信じてくれてありがとうね」
「ううん、マリンちゃんたちの防御があったから、私たちも思いっきりやれたんだよ」

 ソイルは照れくさそうに笑い、ライオスもバツが悪そうに鼻をこすった。

「……ふふ」

 イリスは、小さく笑った。

「教科書を書き換える必要がありそうですね。貴方たちが作る未来は、私の計算よりもずっと……面白そうです」

 実験は(半分)失敗し、実習棟はまたしても半壊したが、そこには確かに「魔法」と「科学」、そして「異なる属性」が融合した、新しい可能性の種が芽吹いていた。

 そして、その光景を物陰から見ていたシェイドが、静かに報告書に書き記した。

『次世代のユニゾン、その萌芽を確認。属性間の障壁は、親世代よりも遥かに低い』




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「王立・竜の子学園」のカリキュラムには、座学や魔法実習だけでなく、この世界を支える「技術」の授業も組み込まれていた。
 今日の授業は、特別実習棟で行われる『魔導工学』。
 教壇に立つのは、二人の特別講師だ。
「いいかい、ガキども! 技術ってのは『魂』だ! 鉄を叩き、熱を込め、形にする! 理屈じゃねえ、パッションだ!」
 ドワーフ族の技術側妃、ボルタ・アイアンハンド。彼女は作業着の袖をまくり上げ、スパナを片手に熱弁を振るう。
「……訂正します。技術とは『法則の応用』です。マナの伝達効率を計算し、最適な回路を構築する。感情で鉄は動きません」
 エルフ族の知識側妃、イリス・アルゴリズム。彼女は白衣を纏い、黒板に複雑な数式を書き連ねながら、ボルタの言葉を冷徹に否定する。
「あぁん? イリス、てめぇまた俺の授業にケチつける気か?」
「非効率な指導を是正しているだけです。爆発オチはもうたくさんですので」
 火花を散らす二人の講師。
 ドワーフの「熱血職人魂」と、エルフの「超論理魔術」。
 水と油のような二人の授業を受ける子供たちは、作業台の前で困惑……していなかった。
「ねえねえ、今日は何作るの?」
「爆発しないやつがいいなー」
 子供たちは、この凸凹コンビの授業にもすっかり慣れていた。
「今日の課題は『ゴーレム(自律駆動人形)』の作成だ!」
 ボルタが宣言する。
「ただし、ただの土人形じゃねえ。ドワーフの動力機関と、エルフの制御回路を組み込んだ、ハイブリッドなやつを作ってみろ!」
「基礎設計図はこちらです。まずはこの通りに……」
「設計図なんて破り捨てろ! お前らの『想像力』を形にするんだよ!」
「ボルタ……。貴女は教育者として不適切です」
 ◇◆◇◆◇
 講師たちが揉めている間に、子供たちは班に分かれて作業を開始した。
 注目すべきは、ライオス(炎/八歳)の班だ。
 メンバーは、妹のノア(炎/五歳)、そしてテラの娘ソイル(土/七歳)。
「へへっ、ゴーレムか! 男のロマンだな!」
 ライオスが目を輝かせる。
「ねー、お兄ちゃん。どんなのにする? やっぱり強そうなやつ?」
 ノアもわくわくしている。
「決まってるだろ! 『最強の合体ロボ』だ!」
 ライオスは、粘土の塊を前にソイルに頼み込んだ。
「ソイル! お前の土魔法で、すっげー硬くてデカイ体を作ってくれ! 俺とノアで『動力』を入れるから!」
「ええ……? 合体ロボ……?」
 ソイルは首を傾げたが、ライオスの熱意に押されて頷いた。
「わかったわ。やるからには、簡単に壊れない丈夫な体にするね」
 ソイルが土に魔力を込める。
「大地の恵みよ、形となれ……」
 彼女の指先から生まれたのは、無骨だが非常に密度の高い、重厚な土のボディだった。テラの「守護」の性質を受け継いだその装甲は、鉄のように硬い。
「すっげぇ! サンキュー、ソイル!」
「次は私たちの番ね!」
 ライオスとノアは、その土人形の胸部に「動力炉」となる空洞を作り、そこに炎の魔石を詰め込んだ。
 通常なら、これだけではただの「熱い土人形」だ。動くわけがない。
 だが、ボルタの「魂を込めろ」という教えと、イリスの「回路を繋げ」という教えが、彼らの中で奇妙な化学反応を起こした。
「イリス先生が言ってた『マナの循環』って、要は血が巡るみたいなもんだろ?」
「ボルタ先生は『爆発力がパワーだ』って言ってたよ!」
「よし、じゃあ……この炎の熱を、全身に循環させて……爆発させるイメージで……!」
 ライオスが炎を注ぎ込む。
 ノアがそれを煽る。
 ソイルが、高まる内圧に耐えられるよう、外殻をさらに硬化させる。
 炎の「出力」と、土の「耐久」。
 相反するはずの二つの力が、子供たちの無邪気な連携によって、無理やり一つの形に押し込められていく。
「……ん? 何か、変な魔力波長が出ているな」
 異変に気付いたのは、生徒会長のシリウスだった。
 彼は蒸気魔法の使い手として、熱と圧力のバランスに敏感だ。
「ライオス! ちょっと待て、その出力係数は……!」
「完成だぁぁッ! 動け、俺たちの『スーパー・マグマ・ゴーレム』!」
 ライオスが叫んだ瞬間。
 ドクンッ。
 土人形の胸が赤熱し、全身に幾何学模様の赤いラインが走った。
「ガガ……ガガガ……」
 重厚な土人形が、軋んだ音を立てて立ち上がる。
 その動きは、魔法生物の滑らかさではなく、機械仕掛けのような力強さを持っていた。
「うおぉぉ! 動いた! すげぇ!」
「やったー! かっこいいー!」
 子供たちが歓声を上げる。
「なっ……!?」
 イリスが目を見開き、手元の解析端末を落としそうになった。
「ありえません……! 炎の熱膨張を土の圧縮で抑え込み、その反発力を動力に変換している……? こんな回路構造、教科書にはありません! 理論上、即座に自壊するはずです!」
「ギャハハハ! すげえじゃねえか!」
 ボルタが手を叩いて喜ぶ。
「見ろイリス! あれが『パッション』だ! 属性の相性なんて関係ねえ、無理やりねじ伏せて形にしやがった!」
 しかし、感動も束の間。
「ガガガ……出力、増大……」
 ゴーレムの目が怪しく光り、蒸気を吹き出し始めた。
「あ、あれ? 言うこと聞かないぞ?」
 ライオスが焦る。
「お兄ちゃん、熱いよ! どんどん熱くなってる!」
 ノアが後ずさる。
「暴走です! 退避してください!」
 シズクが叫び、水壁を展開する。
 暴走したゴーレムは、手当たり次第に訓練用の機材をなぎ倒し、壁に向かって突進を始めた。
「まずい! あの先には火薬庫が!」
 ボルタがスパナを構えるが、距離が遠い。
「演算……間に合いません!」
 イリスが術式を組むが、ゴーレムのデタラメな魔力構造に干渉できない。
「僕が止めます!」
 シリウスが飛び出すが、ゴーレムの装甲はソイルの魔力で強化されており、生半可な攻撃では傷つかない。
「くっ……! 硬い!」
 その時、ライオスが叫んだ。
「俺が作ったんだ! 俺が止める!」
「私も手伝う!」
「私も!」
 ライオス、ノア、ソイルの三人が、暴走するゴーレムの前に立ちふさがった。
「ソイル、足止めを頼む! ノアは排熱口を作れ! 俺が中のコアを冷やす!」
「わかった!」
 三人はアイコンタクトだけで意図を通じ合わせた。
 それは、親たちにはない、生まれながらにして異なる種族(属性)と混ざり合ってきた彼らだからこそできる「阿吽の呼吸」だった。
「大地の鎖!」
 ソイルが地面を隆起させ、ゴーレムの足を拘束する。
「そこっ!」
 ノアが炎の精密操作で、ゴーレムの装甲の一部を融解させ、穴を開ける。
「うおおおおッ! ……熱を、吸い出せ!」
 ライオスがその穴に手をかざし、逆に炎の魔力を「吸収」する制御を試みた。
 ジュゴオオオオッ!!
 猛烈な熱風が吹き荒れ、ゴーレムの動きが止まる。
 赤熱していたボディが急速に冷え、最後はガクンと膝をついて停止した。
「……はぁ、はぁ……。と、止まった……」
 ライオスがへたり込む。
 ソイルとノアも、煤だらけの顔で互いを見合わせ、笑った。
「やったね!」
 静まり返る実習棟。
 イリスは、停止したゴーレムの前に歩み寄り、震える手でその装甲に触れた。
「……炎の出力を下げるために、土の密度を瞬時に変化させ、熱伝導率を操作した……? これを、計算なしの『感覚』だけで……?」
 彼女は、信じられないものを見る目で子供たちを見た。
「……非論理的です。ですが……美しい解法です」
「ガハハハ! 見たかイリス! これが次世代の『発明』ってやつだ!」
 ボルタがライオスたちの頭を乱暴に撫で回す。
「よくやった! 爆発寸前だったが、その土壇場の機転……満点だ!」
「い、いやぁ……。怒られるかと思った」
 ライオスが頭をかく。
 ソイルは「もう、無茶ばっかり」と頬を膨らませつつも、まんざらでもなさそうだ。
 その時、防御壁の陰から水の双子が駆け寄ってきた。
「ライオス兄さん! 無茶しすぎです!」
 シズクが、珍しく声を荒らげながらライオスの元へ詰め寄る。
「熱を吸収するなんて……もし制御に失敗していたら、内側から焼かれていたんですよ!? 論理的に考えて、リスクが高すぎます!」
「うっせーな、シズク。成功したんだからいいだろ」
「良くありません! ……でも」
 シズクは俯き、少しだけ顔を赤らめて呟いた。
「……ソイルさんのサポートと、兄さんの判断……計算外に、かっこよかったです」
「あ? なんか言ったか?」
「なんでもありませんッ!」
 ぷいっとそっぽを向くシズクの横で、マリンがにこやかにソイルの手を取った。
「ソイルちゃん、すごかった~! あの土の拘束、私のお水じゃあんなに強くできなかったもん。……お兄ちゃんのこと、信じてくれてありがとうね」
「ううん、マリンちゃんたちの防御があったから、私たちも思いっきりやれたんだよ」
 ソイルは照れくさそうに笑い、ライオスもバツが悪そうに鼻をこすった。
「……ふふ」
 イリスは、小さく笑った。
「教科書を書き換える必要がありそうですね。貴方たちが作る未来は、私の計算よりもずっと……面白そうです」
 実験は(半分)失敗し、実習棟はまたしても半壊したが、そこには確かに「魔法」と「科学」、そして「異なる属性」が融合した、新しい可能性の種が芽吹いていた。
 そして、その光景を物陰から見ていたシェイドが、静かに報告書に書き記した。
『次世代のユニゾン、その萌芽を確認。属性間の障壁は、親世代よりも遥かに低い』