第百三十話:炎と水の代理戦争

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「王立・竜の子学園」の開校から数週間。

 今日は、記念すべき第一回授業参観の日である。

 新設された演習棟の観覧席には、普段は国政を担う重鎮たちが「保護者」として顔を揃えていた。

「ふふっ、夫よ。見ていなさい。我が息子ライオスが、このクラスで最強の炎を見せつける瞬間を!」
「非論理的です、レヴィア。魔法は火力ではありません。制御と効率こそが知性の証明。シズクの演算能力こそが、次世代のスタンダードになります」
「あらあら、お二人とも。勝負事ばかりでは心が荒みますよ。ソイルのように、お友達を支える優しさこそが大切ですわ」

 最前列に陣取ったのは、紅蓮の激情竜姫レヴィア、蒼玉の理性竜姫アクア、そして磐石の守護龍テラの三人だ。
 彼女たちは王妃としての正装ではなく、気合の入った「参観日用のドレス」に身を包んでいるが、そこから発せられる魔力オーラは戦場レベルだった。

 ヒカルは、三人の妻の間に挟まれながら、胃のあたりを押さえた。

「なあ、みんな……。あくまで授業参観だぞ? 子供たちの普段の様子を見るのが目的であって、品評会じゃないんだからな」

 ヒカルはちらりと空席の方を見た。

 今日も、風のセフィラ、光のルーナ、闇のヴァルキリアの三名は、それぞれの所領での重要な儀式や視察が重なり、欠席している。

(ゼファーからの報告だと、セフィラはリオとリベルを連れて『ついでに空の旅!』と遠回りしているらしいし、ルーナはアルテミスのお披露目で教会に缶詰め、ヴァルキリアはクロノスたちの闇魔法訓練を兼ねて地下迷宮へ潜っているそうだ)

「半分が不在でこれか……。全員揃っていたら、校舎が吹き飛んでいたかもしれないな」

 ヒカルの不吉な呟きをよそに、演習場の中央には、担任教師役のアウラ・アウラムが立った。

「えー、それではこれより、基礎魔力制御の実技演習を行います。保護者の皆様、くれぐれも結界の内側には手出し無用でお願いします。……修理予算が出ませんので」

 アウラは無表情で釘を刺したが、その瞳には諦めの色が漂っている。


 ◇◆◇◆◇

 演習が始まった。
 まずは、レヴィアの息子、ライオス(八歳)の出番だ。

「へへっ、見てろよ父上、母上! 俺様の炎で、このターゲットを消し炭にしてやる!」

 ライオスは元気よく前に出ると、訓練用の案山子に向かって掌を突き出した。

「燃えろぉぉッ!!」

 ボウッ!!

 ライオスの手から放たれたのは、子供とは思えない質量の火球だった。しかし、気合が入りすぎたのか、狙いは大きく逸れ、アウラ先生の髪をかすめて後方の壁を焦がした。

「ああっ! しまった!」

 ライオスが頭を抱える。


 その瞬間、観覧席から熱波が放たれた。

「ライオス! 気合が足りないわ! 狙いなんてどうでもいいの、もっと熱く! 空間ごと焼き尽くすつもりで放つのよ!」

 レヴィアが身を乗り出し、親指を立てる。

「母上!?」
「今のは風向きが悪かっただけよ! さあ、母さんが『愛の着火』を補助してあげるわ!」
「レヴィア様、介入は禁止です」

 アウラが淡々と注意するが、レヴィアの手からは既に支援魔法の炎が漏れ出している。

 次に、アクアの娘、シズク(六歳)が進み出た。彼女は眼鏡をクイッと押し上げ(伊達眼鏡だが、母の真似である)、冷静にターゲットを見据えた。

「距離、風速、湿度、計算完了。……穿て、水弾」


 ヒュン!


 指先から放たれた圧縮された水弾は、正確無比な軌道を描き、案山子の眉間を撃ち抜いた。

「完璧です!」

 シズクが涼しい顔で振り返る。

「素晴らしいわ、シズク! それこそが王家の理知!」

 アクアが立ち上がり、優雅に拍手をする。

「見たかしらレヴィア? これが教育の差よ。ただ喚き散らすだけの炎とは格が違いますわ」
「なんですって!? うちのライオスの将来性を侮辱する気!?」
「事実を述べたまでです。論理的に見て、制御できない力は無駄なエネルギーの浪費に過ぎません」

 二人の母の視線が空中で交錯し、バチバチと火花が散る。

 演習場では、他の子供たちもマイペースに課題をこなしていた。

 テラの娘、ソイル(七歳)は、魔法を使うのが苦手な友人の背中をさすりながら、「大丈夫、私が土で支えるから」と足場を作ってあげている。その横で、弟のグラウンド(三歳)は地面にお絵かきを始め、無意識に床石を隆起させていた。

 レヴィアの娘、ノア(五歳)は「お兄ちゃん、がんばれー」と棒読みで応援しながら、手元で小さな火の玉をお手玉のように操っている。アクアの娘、マリン(六歳)は、姉のシズクが撃ち抜いた案山子に「痛かったですねー」と水の治癒魔法をかけて修復してしまっている。




「……自由だな」

 ヒカルが遠い目をしていると、事態は急変した。

「母上たちがうるさいなぁ……。よーし、見てろよ! 俺だってコントロールくらいできる!」

 ライオスが名誉挽回とばかりに、最大出力の炎を練り上げた。

「待ちなさいライオス。その魔力密度は、貴方の制御キャパシティを超えています」

 シズクが警告するが、遅かった。

「うおおおおッ! 喰らえッ!」


 ドォォォォン!!


 ライオスの炎が暴発し、演習場の天井を直撃。崩落した瓦礫が、子供たちの頭上に降り注ぐ。

「危ない! ライオス、シズク!」

 ヒカルが立ち上がるより早く、二人の母親が動いた。

「私の息子に何をするのッ!!」

 レヴィアが防御結界ではなく、迎撃の炎を放つ。

「瓦礫を排除します。論理的粉砕!」

 アクアが高圧カッターのような水流を放つ。

 炎と水が空中で衝突した。


 ジュウウウウウウウッ!!


 凄まじい水蒸気爆発が発生し、演習場内は真っ白な蒸気に包まれた。

「きゃあああ!」
「見えない! 熱い!」

 子供たちの悲鳴が響く。視界ゼロ。熱湯のような蒸気が充満する最悪の状況だ。

「アウラ! 排気だ! テラ、子供たちを!」

  ヒカルが叫ぶ。

「了解です。……ああ、また予算が」

 アウラが嘆きながら術式を展開しようとする。

「お任せを! 大地の揺り籠(アース・クレイドル)!」

 テラが即座に反応し、子供たちの足元から土壁を隆起させ、物理的なシェルターを作ろうとするが、蒸気の拡散が早すぎる。




 その時だった。

 白一色の世界で、幼い声が響いた。

「もう! ママたちったら、またやりすぎ!」
「……ライオス兄さん、視界確保のため、熱源をお願いします」
「おう! 任せろ! 『ヒート・アップ』!」
「了解。座標固定。『クール・ダウン』……蒸気操作!」

 シュオオオオ……!

 充満していた高温の蒸気が、急速に一方向に収束し始めた。蒸気は螺旋を描きながら天井の穴へと吸い込まれ、あっという間に視界がクリアになる。

 そこに立っていたのは、背中合わせになったライオスとシズクだった。

 ライオスが炎で上昇気流を作り出し、シズクが水魔法で蒸気を粒子レベルで制御して、排気ダクト代わりの気流に乗せたのだ。

「ふぅ……。あっぶねー。ノア、マリン、ソイル、グラウンド、みんな無事か?」

 ライオスが汗を拭いながら振り返る。

「うん、お兄ちゃんすごい!」

 ノアが手を叩く。

「シズクお姉ちゃん、魔法きれいだった~」

 マリンが微笑む。

 ソイルはグラウンドを抱きかかえながら、「二人とも、ありがとう。怖かった……」と安堵の息を吐いた。

 静まり返る観覧席。

 レヴィアとアクアは、呆然と我が子たちを見下ろしていた。

「あの子たち……いつの間にあんな連携を?」
「炎の上昇気流を利用した強制排気……。私が教えたわけではありません。即興の応用……論理的に見て、天才的です」


 ヒカルは、二人の頭をポンポンと叩いた。

「見たか。お前たちが喧嘩している間に、子供たちは勝手に育ってるんだよ」

 ヒカルは壊れた手すりを乗り越え、演習場へと飛び降りた。

「ライオス、シズク! よくやった! 怪我はないか?」
「父上! ……へへ、まあね。でも、母上たちが暴れるのは勘弁してほしいぜ」
「同感です。学習環境の整備を要求します」
 二人は顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめた。

「ふん、まあ今回は助けてやったんだからな、シズク」
「助けられたのはそっちでしょ、ライオス兄さん」

 言い合いながらも、二人の間には確かな信頼が見えた。それは、親世代が長い時間をかけて築いた「絆」が、自然な形で次世代に受け継がれている証拠だった。

「……あーあ。これ、修理費どうすれば……?」 アウラが崩落した天井と、水浸しで焦げた床を見て呟く。 ヒカルは苦笑いしながら、観覧席の妻たちを指差した。 「もちろん、原因を作った二人に請求してくれ。ギルティア経由でな」

 レヴィアとアクアは、バツが悪そうに視線を逸らした。
 その横で、テラだけが「まあまあ、怪我の功名ですわ。子供たちの成長が見られたのですから」と、どこから出したのか分からないお茶をすすっていた。

 王立学園の初授業参観は、校舎の一部損壊という被害を出したものの、次世代の「可能性」を示す形で幕を閉じた。
 だが、これはまだ、学園生活のほんの序章に過ぎない。



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 今日は、記念すべき第一回授業参観の日である。
 新設された演習棟の観覧席には、普段は国政を担う重鎮たちが「保護者」として顔を揃えていた。
「ふふっ、夫よ。見ていなさい。我が息子ライオスが、このクラスで最強の炎を見せつける瞬間を!」
「非論理的です、レヴィア。魔法は火力ではありません。制御と効率こそが知性の証明。シズクの演算能力こそが、次世代のスタンダードになります」
「あらあら、お二人とも。勝負事ばかりでは心が荒みますよ。ソイルのように、お友達を支える優しさこそが大切ですわ」
 最前列に陣取ったのは、紅蓮の激情竜姫レヴィア、蒼玉の理性竜姫アクア、そして磐石の守護龍テラの三人だ。
 彼女たちは王妃としての正装ではなく、気合の入った「参観日用のドレス」に身を包んでいるが、そこから発せられる魔力オーラは戦場レベルだった。
 ヒカルは、三人の妻の間に挟まれながら、胃のあたりを押さえた。
「なあ、みんな……。あくまで授業参観だぞ? 子供たちの普段の様子を見るのが目的であって、品評会じゃないんだからな」
 ヒカルはちらりと空席の方を見た。
 今日も、風のセフィラ、光のルーナ、闇のヴァルキリアの三名は、それぞれの所領での重要な儀式や視察が重なり、欠席している。
(ゼファーからの報告だと、セフィラはリオとリベルを連れて『ついでに空の旅!』と遠回りしているらしいし、ルーナはアルテミスのお披露目で教会に缶詰め、ヴァルキリアはクロノスたちの闇魔法訓練を兼ねて地下迷宮へ潜っているそうだ)
「半分が不在でこれか……。全員揃っていたら、校舎が吹き飛んでいたかもしれないな」
 ヒカルの不吉な呟きをよそに、演習場の中央には、担任教師役のアウラ・アウラムが立った。
「えー、それではこれより、基礎魔力制御の実技演習を行います。保護者の皆様、くれぐれも結界の内側には手出し無用でお願いします。……修理予算が出ませんので」
 アウラは無表情で釘を刺したが、その瞳には諦めの色が漂っている。
 ◇◆◇◆◇
 演習が始まった。
 まずは、レヴィアの息子、ライオス(八歳)の出番だ。
「へへっ、見てろよ父上、母上! 俺様の炎で、このターゲットを消し炭にしてやる!」
 ライオスは元気よく前に出ると、訓練用の案山子に向かって掌を突き出した。
「燃えろぉぉッ!!」
 ボウッ!!
 ライオスの手から放たれたのは、子供とは思えない質量の火球だった。しかし、気合が入りすぎたのか、狙いは大きく逸れ、アウラ先生の髪をかすめて後方の壁を焦がした。
「ああっ! しまった!」
 ライオスが頭を抱える。
 その瞬間、観覧席から熱波が放たれた。
「ライオス! 気合が足りないわ! 狙いなんてどうでもいいの、もっと熱く! 空間ごと焼き尽くすつもりで放つのよ!」
 レヴィアが身を乗り出し、親指を立てる。
「母上!?」
「今のは風向きが悪かっただけよ! さあ、母さんが『愛の着火』を補助してあげるわ!」
「レヴィア様、介入は禁止です」
 アウラが淡々と注意するが、レヴィアの手からは既に支援魔法の炎が漏れ出している。
 次に、アクアの娘、シズク(六歳)が進み出た。彼女は眼鏡をクイッと押し上げ(伊達眼鏡だが、母の真似である)、冷静にターゲットを見据えた。
「距離、風速、湿度、計算完了。……穿て、水弾」
 ヒュン!
 指先から放たれた圧縮された水弾は、正確無比な軌道を描き、案山子の眉間を撃ち抜いた。
「完璧です!」
 シズクが涼しい顔で振り返る。
「素晴らしいわ、シズク! それこそが王家の理知!」
 アクアが立ち上がり、優雅に拍手をする。
「見たかしらレヴィア? これが教育の差よ。ただ喚き散らすだけの炎とは格が違いますわ」
「なんですって!? うちのライオスの将来性を侮辱する気!?」
「事実を述べたまでです。論理的に見て、制御できない力は無駄なエネルギーの浪費に過ぎません」
 二人の母の視線が空中で交錯し、バチバチと火花が散る。
 演習場では、他の子供たちもマイペースに課題をこなしていた。
 テラの娘、ソイル(七歳)は、魔法を使うのが苦手な友人の背中をさすりながら、「大丈夫、私が土で支えるから」と足場を作ってあげている。その横で、弟のグラウンド(三歳)は地面にお絵かきを始め、無意識に床石を隆起させていた。
 レヴィアの娘、ノア(五歳)は「お兄ちゃん、がんばれー」と棒読みで応援しながら、手元で小さな火の玉をお手玉のように操っている。アクアの娘、マリン(六歳)は、姉のシズクが撃ち抜いた案山子に「痛かったですねー」と水の治癒魔法をかけて修復してしまっている。
「……自由だな」
 ヒカルが遠い目をしていると、事態は急変した。
「母上たちがうるさいなぁ……。よーし、見てろよ! 俺だってコントロールくらいできる!」
 ライオスが名誉挽回とばかりに、最大出力の炎を練り上げた。
「待ちなさいライオス。その魔力密度は、貴方の制御キャパシティを超えています」
 シズクが警告するが、遅かった。
「うおおおおッ! 喰らえッ!」
 ドォォォォン!!
 ライオスの炎が暴発し、演習場の天井を直撃。崩落した瓦礫が、子供たちの頭上に降り注ぐ。
「危ない! ライオス、シズク!」
 ヒカルが立ち上がるより早く、二人の母親が動いた。
「私の息子に何をするのッ!!」
 レヴィアが防御結界ではなく、迎撃の炎を放つ。
「瓦礫を排除します。論理的粉砕!」
 アクアが高圧カッターのような水流を放つ。
 炎と水が空中で衝突した。
 ジュウウウウウウウッ!!
 凄まじい水蒸気爆発が発生し、演習場内は真っ白な蒸気に包まれた。
「きゃあああ!」
「見えない! 熱い!」
 子供たちの悲鳴が響く。視界ゼロ。熱湯のような蒸気が充満する最悪の状況だ。
「アウラ! 排気だ! テラ、子供たちを!」
  ヒカルが叫ぶ。
「了解です。……ああ、また予算が」
 アウラが嘆きながら術式を展開しようとする。
「お任せを! |大地の揺り籠《アース・クレイドル》!」
 テラが即座に反応し、子供たちの足元から土壁を隆起させ、物理的なシェルターを作ろうとするが、蒸気の拡散が早すぎる。
 その時だった。
 白一色の世界で、幼い声が響いた。
「もう! ママたちったら、またやりすぎ!」
「……ライオス兄さん、視界確保のため、熱源をお願いします」
「おう! 任せろ! 『ヒート・アップ』!」
「了解。座標固定。『クール・ダウン』……蒸気操作!」
 シュオオオオ……!
 充満していた高温の蒸気が、急速に一方向に収束し始めた。蒸気は螺旋を描きながら天井の穴へと吸い込まれ、あっという間に視界がクリアになる。
 そこに立っていたのは、背中合わせになったライオスとシズクだった。
 ライオスが炎で上昇気流を作り出し、シズクが水魔法で蒸気を粒子レベルで制御して、排気ダクト代わりの気流に乗せたのだ。
「ふぅ……。あっぶねー。ノア、マリン、ソイル、グラウンド、みんな無事か?」
 ライオスが汗を拭いながら振り返る。
「うん、お兄ちゃんすごい!」
 ノアが手を叩く。
「シズクお姉ちゃん、魔法きれいだった~」
 マリンが微笑む。
 ソイルはグラウンドを抱きかかえながら、「二人とも、ありがとう。怖かった……」と安堵の息を吐いた。
 静まり返る観覧席。
 レヴィアとアクアは、呆然と我が子たちを見下ろしていた。
「あの子たち……いつの間にあんな連携を?」
「炎の上昇気流を利用した強制排気……。私が教えたわけではありません。即興の応用……論理的に見て、天才的です」
 ヒカルは、二人の頭をポンポンと叩いた。
「見たか。お前たちが喧嘩している間に、子供たちは勝手に育ってるんだよ」
 ヒカルは壊れた手すりを乗り越え、演習場へと飛び降りた。
「ライオス、シズク! よくやった! 怪我はないか?」
「父上! ……へへ、まあね。でも、母上たちが暴れるのは勘弁してほしいぜ」
「同感です。学習環境の整備を要求します」
 二人は顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめた。
「ふん、まあ今回は助けてやったんだからな、シズク」
「助けられたのはそっちでしょ、ライオス兄さん」
 言い合いながらも、二人の間には確かな信頼が見えた。それは、親世代が長い時間をかけて築いた「絆」が、自然な形で次世代に受け継がれている証拠だった。
「……あーあ。これ、修理費どうすれば……?」 アウラが崩落した天井と、水浸しで焦げた床を見て呟く。 ヒカルは苦笑いしながら、観覧席の妻たちを指差した。 「もちろん、原因を作った二人に請求してくれ。ギルティア経由でな」
 レヴィアとアクアは、バツが悪そうに視線を逸らした。
 その横で、テラだけが「まあまあ、怪我の功名ですわ。子供たちの成長が見られたのですから」と、どこから出したのか分からないお茶をすすっていた。
 王立学園の初授業参観は、校舎の一部損壊という被害を出したものの、次世代の「可能性」を示す形で幕を閉じた。
 だが、これはまだ、学園生活のほんの序章に過ぎない。